ザ・ビートルズと「Hello, Goodbye」のプロモ・フィルム

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Photo: Derek Bayes/ Iconic Images

1967年11月10日、ザ・ビートルズは最新シングル「Hello, Goodbye」を宣伝するプロモーション・フィルム3本を制作するため、ロンドン・ウェストエンドのサヴィル・シアターに赴いた。

この曲は、10月2日から11月2日までのあいだにアビイ・ロードで5度のレコーディング・セッションを重ねて完成している。発売はイギリスでは11月24日、アメリカではその3日後に予定されていた。曲の完成から発売まで3週間足らず、こうした素早い展開もあって、あのころのポップ・ミュージックは実に生き生きとしていた。

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ザ・ビートルズのマネージャー、ブライアン・エプスタインはNEMSという会社を運営していたが、そのNEMSは1965年にサヴィル・シアターと賃貸契約を結んだ。エプスタインの死から数カ月後の1967年11月になっても、その賃貸契約はまだ切れていなかった。

亡くなる前、エプスタインはこのサヴィル・シアターでたくさんのコンサートを日曜日に開催していた。たとえば1967年6月4日には、ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスのコンサートがここで開かれている。そのときジミは「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」をカヴァー演奏しており、その様子をポールとジョージは客席から目撃していた。ジミは1967年8月27日にサヴィル・シアターで2度目のコンサートを行う予定だった。しかしこの日エプスタインが亡くなったため、コンサートは中止になっている。

1967年11月、「Hello, Goodbye」の撮影は35mmカラー・フィルムを使って行われた。そこで監督役を務めたのはポールだった。のちに彼はこう語っている。

「映画の監督というのは、みんながやりたがる仕事。僕もずっと前から興味があった。実際に挑戦するまではね……。現場ではあまりにもたくさんのことが進行していて、あまりにもたくさんの判断をしなきゃいけない。だから、しまいには監督という仕事が嫌になったよ」

ザ・ビートルズは、BBCの番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」でこのフィルムが放送されることを期待していた。しかしそれに先立つ1966年6月、イギリスの音楽家組合がテレビでの口パク演奏をすべて禁止させることに成功。これによって、組合員であるミュージシャンの仕事は増えるだろう、組合側はそんな風に考えていた。こうした事情をふまえて、ジョージ・マーティンは「Hello, Goodbye」のヴィオラ抜きのリミックス・ヴァージョンを作り上げた。

しかしそれでも、ザ・ビートルズが口パク演奏をしていることは誰の目にも明らかだ。こうして、このプロモ・フィルムのテレビ放送は見送られた。シングル発売を翌日に控えた11月23日、「トップ・オブ・ザ・ポップス」では映画『ハード・デイズ・ナイト』の抜粋に「Hello, Goodbye」の音声を被せたものが流れた。少し奇妙なかたちでの放送にはなったが、それでもヒットの妨げにはならなかった。「Hello, Goodbye」は12月2日に全英チャートに入り、7週間連続で首位に留まった。また全米チャートでは首位を3週間維持している。

一方サヴィル・シアターで撮影した映像はアメリカでも使われる予定だったため、放送用のビデオテープはニール・アスピノールによってニューヨークまで運ばれた。アメリカでの初放映は、1967年11月26日の「エド・サリヴァン・ショー」でのこと。サリヴァンは、ザ・ビートルズからの電報を読み上げてからフィルムを流している。その2日後にはABCの番組「ハリウッド・パレス」でも放送された。

「Hello, Goodbye」のプロモ・フィルム3種類は、2015年発表のDVD/ブルーレイ『1+』にすべて収録された。ディスク2収録の2本のうち1本目のほうでは、ザ・ビートルズは「私服」を着ている。一方ディスク1に収められたヴァージョンは完全な別テイクで、メンバーは‘サージェント・ペパー’の衣装を身につけていた。そして3本目は前の2本を編集したうえで、さらに別の映像も加えてある(たとえばジョンがツイストを踊るシーン)。

Written By Richard Havers

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