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リンゴ・スターのソロ作品を振り返る:精力的に活動を続ける82歳のビートルズ

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Photo: Kevin Winter/Getty Images

リンゴ・スター(Ringo Starr)は、史上最も有名なグループであるザ・ビートルズのメンバーとして、また“平和と愛(Peace and Love)”を地球上に広める、楽しいことが大好きな外向的な人物として知られている。しかし、本名リチャード・スターキー卿の人生という本の中には、誰もが読んだことがあるわけではない章がたくさんある。

例えば、彼が幼少期に克服した貧困と病気、ザ・ビートルズ解散後の数年間にソロ・アーティストとして世界的に大成功したその規模、それらを知らない人もいるかもしれない。また、1969年の映画『マジック・クリスチャン』で重要や役どころであるグランド卿の養子を演じ、フランク・ザッパによる1971年の映画『200モーテルズ』といった多くの映画に出演し、1972年にはマーク・ボランを描いた『ボーン・トゥ・ブギー』では監督を務めている。

また、リンゴが『きかんしゃトーマス』の初代ナレーターとして子供たちに愛されていたことや、ハウリン・ウルフ、B.B.キング、ラヴィ・シャンカールなど、数えきれないほどのミュージシャンのゲストとして活躍していることを見過ごしている人もいるかもいれない。また、彼が率いるオールスター・バンドは様々なゲストが参加しており、その活動期間はザ・ビートルズより3倍以上長い。

リンゴは1940年7月7日に生まれ、その80年後にビートルズ・メンバーで初の80代となった。毎年、自分の誕生日には、世界の平和と愛の精神を促進することに献身してきた彼は、パンデミック(世界的大流行)のときでさえ、衰えを知らない。またプライベートでは、1981年には『007/私を愛したスパイ』のボンドガールである、バーバラ・バッハと結婚している。

この記事では、2019年には20枚目のアルバムという驚くべきランドマークを達成し、2021年には最新EP2枚を発売日、2022年現在もツアーも続ける、リンゴのソロ・キャリアに焦点を当てる。

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成功したシングル

リンゴのソロ・デビューとなったアルバムは1970年3月に発売された『Sentimental Journey』で、ビートルズ最後のスタジオ・アルバム『Let It Be』の直前に発表された。同年9月にはカントリー調のセカンド・アルバム『Beaucoups of Blues』を発表し、またもや驚かせた。

『Beaucoups of Blues』のタイトル曲はラジオ局でヒットするには至らなかったが、このセットは、ビートルズが『Help!』に収録されたバック・オーエンス「Act Naturally」のカバーで初めて耳にしたリンゴのカントリーへの愛を思い起こさせるものであった。ここからまもなく彼のチャート上の動きは劇的に変化し、4年弱の間に7曲の全米トップ10ヒットを放つことになる。

チャートで成功した最初の2曲は、彼の作品によく見られるように、友人たちの助けを借りて完成させたものだ。1971年、雰囲気のある「It Don’t Come Easy」が世界中でトップ10入りを果たし全米全英で4位に、翌年にはジョージ・ハリスンのプロデュースで、踏みつけるような独特の「Back Off Boogaloo」が全米9位、全英2位と続いた。

It Don't Come Easy

さらに、ジョージが12弦ギターとハーモニーで参加した「Photograph」、ポール・マッカートニーがカズーの演奏で参加したジョニー・バーネットの「You’re Sixteen」のリメイクで、全米チャートに2曲続けて1位を記録した。

Ringo Starr – You're Sixteen You're Beautiful (And You're Mine)

全米トップ5の人気曲「Oh My My」では、マーサ・リーヴスとメリー・クレイトンがバック・ボーカルを務め、キーボードにはかつて「第5のビートルズ」候補だったビリー・プレストンが参加している。

Oh My My

1955年にプラターズでヒットした「Only You」は、リンゴが15歳の時、リバプールの貧しい都心部で相当な苦労をしながら育った曲で、リンゴはさらに若い頃に戻ったような気分になった。また、両A面として収録されたのは、1970年代半ばの狂乱の時代を共に過ごしたエルトン・ジョンが書いた「Snookeroo」だ。

Ringo Starr – Only You (And You Alone)

 

リンゴのセンチメンタル・ジャーニー

リンゴは常に自分より前の、そしてロックンロール以前の時代の曲を好んでいた。ソロデビュー作『Sentimental Journey』は、リンゴの母エルシーが好きだった曲を集めたLPで、そのほとんどはリンゴが生まれる前に初めて録音されたものだ。「Stardust」「Night and Day」から「Bye Bye Blackbird」「Whispering Grass (Don’t Tell the Trees)」まで、スターキー家の集まりの定番曲ばかりだった。

1974年の『Goodnight Vienna』に収録されたロジャー・ミラーの「Husbands and Wives」や、1976年の『Ringo’s Rotogravure』でのブルース・チャンネルの「Hey! Baby」など、リンゴは自身が好きなアーティストや楽曲をよくカバーしていた。その後のアルバムでは、デイヴ・スチュワート、ヴァン・ダイク・パークス、トッド・ラングレン、ジョー・ウォルシュといった友人たちと共作した新曲に焦点が当てられている。

しかし、リンゴのレコードには、オールスター・バンドのどの公演でもそうであるように、常にストレートなロックンロールのための余地がある。最近では、ザ・ビートルズが1964年に発売したEP『Long Tall Sally』でリンゴがバンドと歌ったカール・パーキンスの「Matchbox」でライヴを開始していたりもする。ロニー・ドネガンの「Rock Island Line」を経由して、彼を形成したスキッフル・サウンドへの訪問や、バディ・ホリーから抗しがたい影響を受けた「Think It Over」を収録したリンゴ2012のアルバム『Ringo 2012』も聞き所のある1枚だ。

Think It Over

 

数多くのゲスト出演

リンゴは自分の作品に出演してくれる人たちを寛大に受け入れるが、それと同じように、彼はいつも仲間のアーティストに自分の時間と名前を提供してきた。2003年にリリースされたジュールズ・ホランドのアルバム『Jack o’ the Green』のために、ザ・ビートルズのデビュー・アルバム『Please Please Me』収録曲「Boys」のカバーにゲスト参加したことを思い起こせばわかり易いであろう。あるいは、同じくロックンロールの開拓者であるジェリー・リー・ルイスが2006年に発表した『Last Man Standing』では、チャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」に参加している。

リンゴはザ・ビートルズがまだ結成されていた頃から、1968年11月に新設アップル・レーベルから初めてリリースされたジョージ・ハリスンの『Wonderwall Music』に出演。翌年には、エリック・クラプトン、スティーブ・ウィンウッド、チャーリー・ワッツ、ビル・ワイマンらといったミュージシャンが参加した『The London Howlin’ Wolf Sessions』にリンゴも参加した。1971年の『B.B.King In London』でも、ウィンウッド、ピーター・グリーン、ドクター・ジョン、スティーブ・マリオットらと同様の役割を果たし、大きな喜びを分かち合っている。

I Ain't Superstitious

その他にも、スティーヴン・スティルスやレオン・ラッセル、ハリー・ニルソンやキース・ムーン、カーリー・サイモンやピーター・フランプトンなど、数え切れないほどの友人たちとセッションを重ねた。ジョージ・ハリスンの『The Concert for Bangladesh』、ザ・バンドの『The Last Waltz』、アーティスト・ユナイテッド・アゲインスト・アパルトヘイトが発売した1985年のシングル「Sun City」など、当時のアメリカの音楽業界では、大きな特別な出来事があれば、リンゴはしばしばそこにいたのだ。

Artists United Against Apartheid – Sun City (music video)

 

かつてのビートルズと一緒に

リンゴ・スターは何年にもわたって、かつてのザ・ビートルズの仲間全員をレコーディングに招待してきた。1973年の『Ringo』は、元ザ・ビートルズの4人全員が参加した唯一のアルバムで、ジョン・レノンが書いた皮肉たっぷりの楽曲に、ジョンとジョージの二人が参加した「I’m the Greatest」が収録されている。また、ポールとリンダ・マッカートニーは、同じく『Ringo』のために「Six O’Clock」を作曲し、ポールがピアノとシンセサイザー、そしてバッキング・ヴォーカルを担当している。

I'm The Greatest

ジョンとジョージが亡くなった後、リンゴはスタジオとステージの両方で、ポール・マッカートニーと何度も親交を深めている。リンゴとポールは数多くのグループ関連イベントに一緒に出演し、ポールは2018年末にロンドンのThe O2で旧友をステージに招き、ザ・ローリング・ストーンズのロニー・ウッドも登場して「Get Back」を披露した。

Get Back by Paul McCartney & Ringo Starr & Ronnie Wood [Live at O2 Arena, London – 16-12-2018]

2019年の秋には、リンゴの20枚目のソロ・アルバム『What’s My Name』の収録曲で、ジョン・レノンによる悲しい曲「Grow Old With Me」にて二人は再び共演を果たした。世界はリンゴ・スターとともに成長し、年を重ねているのだ。

Ringo Starr – Grow Old With Me (Lyric Video)

Written By Paul Sexton




リンゴ・スター『Change The World』
2021年9月24日発売
CD&Analog / iTunes / Apple Music / Amazon Music
日本盤のみ:解説・歌詞対訳付/SHM-CD仕様



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