ザ・フー『Who Are You』解説:パンクの時代を生き残り、キース・ムーンの最後となった作品

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70年代中盤から後半にかけて、イギリスで一大勢力となっていたパンク・バンドやパンクのファンたちはレッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズのような70年代初期のロックンロールのスーパースターたちを軽蔑していた。しかしザ・フーに向ける視線は違っていた。彼らのほとんどはザ・フーを尊敬しており、1978年にリリースされたアルバム『Who Are You』はパンクが台頭していた70年代の終わりにバンドの存在感を確かなものにすることに成功したのだ。

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初期ザ・フーのシングルが持っていたエネルギーと破壊への欲望は、悪名高いセックス・ピストルズが1966年のザ・フーのヒット曲「Substitute」を自身のライブセットで頻繁にカバーしていたことで知られている。また、1973年にリリースされたザ・フーの野心的な2枚組アルバム『Quadrophenia(四重人格)』を基にしたフランク・ロッダムが監督した1979年の映画『さらば青春の光』の主役には、セックス・ピストルズのジョニー・ロットンを起用することが当初検討されていたほどだ。

セックス・ピストルズのポール・クックとスティーブ・ジョーンズはザ・フーのギタリストでメイン・ソングライターのピート・タウンゼントの飲み友達にまでなっており、この三人組がロンドンで夜遊びをした後に起こった事件はザ・フーの1978年のヒット曲「Who Are You」にインスピレーションを与えている。「Who Are You」の中では、ピート・タウンゼントがある深夜に警官から「ソーホーの玄関で / woke up in a Soho doorway」で「起きて帰れますか? / If you can get up and walk away」と起こされたという体験が歌われているのだ。

シンセが効いたダイナミックなサウンドは、テレビドラマ『CSI:科学捜査班』のテーマもとしても使用され、英米でトップ20入りを果たしている。

1978年8月18日にリリースされたザ・フーの8枚目のスタジオ・アルバム『Who Are You』は、イギリスではゴールド・ディスクを獲得し、アメリカではダブル・プラチナ・セールスを記録した。しかしこの売上結果は、逆境を乗り越えてつかみ取った勝利のようなものであった。というのも、バンドは1976年10月からアルバム録音のためにライヴ活動を休止していたが、ヴォーカリストのロジャー・ダルトリーは喉の手術をうけ、ドラマーのキース・ムーンの健康状態の悪化によって、『Who Are You』のレコーディング・セッションは遅々として進まなかったのだ。

しかしザ・フーは強力で一貫したハード・ロック・アルバムを完成させた。その中には「Guitar and Pen」やピート・タウンゼントの最も複雑なストリングスとシンセサイザーによるアレンジが施された意欲的な「Love Is Coming Down」など、FMラジオで放送されるような派手なアンセムが収録されていた。パンクがまだ流行していた頃にリリースされた『Who Are You』だったが、パンク的なニヒリズム的な攻撃性に影響を受けたのはそのタイトル曲とジョン・エントウィッスルが作曲した「Trick Of The Light」だけであった。

酷い健康状態のなか『Who Are You』のレコーディングを終えたキース・ムーンだったが、彼はアルバムのリリースから3週間で亡くなってしまった。しかし、1979年に発表されたアンソロジー『The Kids Are Alright』が批評家たちから絶賛されたことで、ザ・フーは70年代が終わっても生き残ることになった。パンクの時代であっても自身の信頼性を維持したザ・フーは、その後も元スモール・フェイセスのドラマー、ケニー・ジョーンズを迎えて『Face Dances』と『It’s Hard』という2枚の大ヒット・アルバムを録音し、1982年に一時的ではあったが解散したのだった。

Written By Tim Peacock




ザ・フー『Who Are You』
LP / iTunes / Apple Music / Spotify


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