テイラー・スウィフト『Red』: かつてないほどポップに近づいた変化過渡期のアルバム

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才能溢れるスウェーデン人のプロデューサー兼作曲者であるマックス・マーティンは、ブリトニー・スピアーズやマルーン5といった多様なミュージシャンたちに世界で最もキャッチーなヒット曲の数々を提供してきた。テイラー・スウィフトの2012年のアルバム『Red』では、テイラー・スウィフトより18歳上のマーティンが、カントリー界のシンガーソングライターでもある彼女をよりメインストリームへと移行する手助けをした。

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マックス・マーティンがプロデュース/共作したスマッシュヒット「We Are Never Ever Getting Back Together」はテイラー初の全米No.1シングルとなった。センセーショナルな成功を収めたこのシングルは、リリース後50分間で、iTunesチャートの首位におどり出るという偉業を成し遂げた。

寂しくなる / あなたに喧嘩を吹っかけられることがなくなることも
そして私がそれに引っかかることも / 私は自分が正しいと主張して
あなたは逃げ隠れ心の平和を取り戻そうと
私の曲よりもクールなインディーズ・アルバムを聴く

といった痛烈なリリックは、2010年の終わりに3ヶ月間付き合った元カレで俳優のジェイク・ギレンホールのことを書いたと言われている。テイラー・スウィフトはそれを楽しそうに歌い、別れについての曲を歌う現代のクイーンとなった。彼女は『Red』について「激しく心揺さぶられた、クレイジーで冒険的な恋愛と失恋」を記録した作品だと語っている。

全16曲を収録したこの作品のもう一つのハイライトとなる感動的なバラード「All Too Well」では、若い恋人同士が“冷蔵庫の明かりの元でキッチンで踊る”と可愛らしい光景が描写されている。この曲についてテイラー・スウィフトはこう語っている。

「自分が言いたいことすべてにフィルターをかける必要があって、作るのに時間がかかりました。“All Too Well”は書くのに最も苦労した曲でした。最初は10分もある曲で、それだとアルバムに収めることができないから、物語のある曲として成り立つ形へとフィルターをかける必要があったんです」

2012年10月22日に発売された『Red』では、そもそもテイラー・スウィフトを有名にしたカントリー調ポップから離れて、一歩を踏み出した作品になっている。この変化は、より大人っぽく、シックな雰囲気のテイラー・スウィフトが写っているジャケット写真でも具現化されている。その頃になると彼女自身もスターとしての自覚を持ち始め、アルバムに収録されている「The Lucky One」は若いセレブリティについて歌った曲になっている。

しかし、どのようにして10代のカントリー・メガスターが自身のイメージを変えることができたのだろうか?

音楽的には、テイラー・スウィフトは経験豊富な編曲者であるパトリック・ウォーレンの指揮の下、バイオリン、ビオラ、ハープ、チェロを取り入れた。トム・ウェイツ、ベティ・ラヴェット、そしてレイ・ラモンターニュなどの幅広いアーチストたちからの依頼を受けるキーボーディストでもあるパトリック・ウォーレンは、ストリングスのアレンジを指揮する才能も持ち合わせており、過去にはエリック・クラプトン、シェリル・クロウ、そしてジョー・コッカーのアルバムを手掛けた経歴を持っている。

その他にも『Red』には、スノウ・パロールのヴォーカルであるギャリー・ライトボディ(「The Last Time」)やエド・シーラン(「Everything Has Changed」)との魅力的なデュエット、更には古き良きカントリー・ソング「Stay Stay Stay」や「I Almost Do」も収録している。

過渡期のアルバムである『Red』はそれまでのスウィフトの3作品に比べてメインストリーム・ポップの領域に侵入しており、それは成熟し、自信に満ち溢れた彼女の現れでもあるが、不思議とファンと心を打ち解ける親密さは保たれている。それこそが彼女が多くのファンを惹きつけてやまない要因といえる。エド・シーランが彼女の移り変わっていく方向性について語っているように「すべてのアーティストは進化しなければならない」。

Written By Martin Chilton


 

テイラー・スウィフト『Red (Taylor’s Version) 』
2021年11月12日発売
CDデラックス盤 / CD通常盤

・日本盤デラックス盤仕様:CD2枚組/歌詞対訳/ライナーノーツ付/紙ジャケ仕様/ギター・ピック付
・日本盤通常盤仕様:2枚組/歌詞対訳/ライナーノーツ付


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2019年8月23日発売
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