Stories
ミニー・リパートン『Her Chess Years』チェス時代の作品の幅広さと深さ
スティーヴィー・ワンダーは、故ミニー・リパートンについて、「彼女と仕事をすることができて光栄だった。彼女はとても才能のある女性で、生前にその驚異的な歌声に見合う評価を得られなかった」と語った。彼女の才能は、コンピレーション・アルバム『Minnie Riperton: Her Chess Years』を通して輝きを放っている。1963年から1971年にかけてレコーディングされた16曲を収録したアルバムで、ガール・バンドのザ・ジェムズから、シカゴ発のサイケデリック・ソウル・グループ、ロータリー・コネクションまでの曲が含まれている。
シカゴ出身のミニー・リパートンは、オペラを学んだ経歴と貴重な5オクターブの歌声を持つシンガーで、彼女に匹敵するヴォーカル技能を持つ同世代シンガーは、ほとんど皆無だった。10代でチェス・レコードと契約を結んだ後、スティーヴィー・ワンダーがプロデュースしたアルバムでソロ・アーティストとしての成功する前に、彼女はバック・ヴォーカリストとして活動していた。
ザ・ジェムズと共に歌うことによって、ミニー・リパートンは才能を発表する機会を得て、「All Of It」と「Lonely Girl」（アンドレア・デイヴィス名義）というちょっとしたヒット曲も出した。このコンピレーション・アルバムの冒頭の2曲だ。両方とも、彼女の華やかなハイトーン・ファルセット・ヴォーカルを披露している。
1968年、彼女はロータリー・コネクションのリード・ヴォーカリストになり、マーシャル・チェスによってマディ・ウォーターズとハウリン・ウルフのアルバムのバック・バンドに起用されて少し有名になった。ミニー・リパートンはロータリー・コネクションで6枚のアルバムをレコーディングした。その中にサイケデリックとソウルとクリスマスを融合した一枚があったが、その作品を代表する曲として、チェスのソングライター、キャッシュ・マッコール（別名モリス・ドリソン）作曲の「Christmas Love」とサイケデリックな編曲を施された「Silent Night」が、『Her Chess Years』には収録されている。
チェスのソングライター兼ロータリー・コネクションの創始メンバーで、「Magical World」を作曲したシドニー・バーンズは、ミニー・リパートンの最高のヴォーカルのいくつかは、彼女が実験的なバンドのリード・シンガーで、チェスの参加にあるカデット・レコードでレコーディングをしていた60年代後半に登場していると信じている。彼女達は、エリック・クラプトンが共作したクリームの曲「Tales Of Brave Ulysses」や、ジャック・ブルース作曲のクリームのヒット曲「We’re Going Wrong」をレコーディングした。シドニー・バーンズはこう言った。「ミニーが‘We’re Going Wrong’で高音を出すのですが、それは過去に誰も出したことのなかった音で、その後も誰も出せていない音だと確信しています」。
その他に成功した曲は、オーティス・レディングの「Respect」のスローでファンキーなカヴァーと、ジミ・ヘンドリックスの「Burning Of The Midnight Lamp」のカヴァーだ。それから、ロータリー・コネクションのジョン・ストックリン作曲の甘いアコースティック曲「A-Muse」もある。
『Her Chess Years』は、ミニー・リパートンの作品の複雑さと深みを見せてくれる。多くのアーティスト達が本当に若くして亡くなっているが、ミニー・リパートン（娘は、女優でコメディアンのマヤ・ルドルフ）が、31歳の若さで残酷にも乳がんで亡くなったことは、60年代と70年代に眩しく輝き、その先も何十年も素晴らしい曲を生み続けるはずだった彼女のキャリアを短命に終わらせてしまった。
Written By Martin Chilton
『Minnie Riperton: Her Chess Years』
『パーフェクト・エンジェル【デラックス・エディション】』
