スウェーデンが誇る“謎”のメタル・バンド、ゴースト(Ghost)について知っておくべき10の事柄

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Photo: Mikael Eriksson

音楽、イメージ、ファッション。これらは常に密接に結びついている。1980年代スラッシュ・メタルには黒いスキニー・ジーンズと袖なしの黒いTシャツやジージャン。1990年代のグランジにはフランネル柄のネルシャツとコンバット・ブーツ。またはコミックの世界から現れた悪魔のようなKISSのメイクなどなどなど、上げればきりがないだろう。

しかし現在、音楽と同じぐらいまで徹底的にルックスにこだわるバンドの数は非常に少なくなりつつある。そんな中で、ゴースト(Ghost)は例外的な存在だといえよう。ギターやドラムと同様にコンセプトや背景、そして凝ったビジュアルといったものがゴーストのパフォーマンスに不可欠な要素となり、彼らの存在感を際立たせている。

それでは、スウェーデンのヘヴィ・メタル・バンド、ゴーストについての10の事柄を挙げていくことにしよう。

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1. 悪魔崇拝的なカルト感

宗教や悪魔崇拝のイメージは常にヘヴィ・メタルと絡み合ってきた。このジャンルの先駆者であるブラック・サバスは両者を結びつける達人だ。しかし、ゴーストはそれを次のレベルへと押し進めている。

まず彼らのライヴでは教会を模したステージがセットに組まれる。これは音楽を癒やしや救済として提供しようという発想であり、彼らのライヴは宗教的な奉仕活動に相当するという意味がある。

そしてバンド・メンバーのルックスもカルト的だ。繊細で魅力的な歌声を持つヴォーカリストは法王服を纏った悪魔教の神官のような衣装を身に着け、彼を支えるバンド・メンバー、ネームレス・グールズ(Nameless Ghouls/名もない墓荒らし)たちも金属製のマスクと黒ずくめの服装だ。

 

2. ゴーストのフロントマンたち

ゴーストのフロントマンは、これまでに4人が就任している。最初の人物がパパ・エメリトゥスだ。彼はデビュー・アルバム『Opus Eponymous』でリード・ヴォーカルを担当し、アルバムのリリースに伴って行われたコンサート・ツアーにも同行している。

2012年にはセカンド・アルバム『Infestissumam』のリリースに合わせてパパ・エメリトゥスから、パパ・エメリトゥス2世に交代。そして2015年には2世の弟であるパパ・エメリトゥス3世がその座を引き継ぎサード・アルバム『Meliora』期を担当した。

そのパパ・エメリトゥス3世は2017年9月、スウェーデンのヨーテボリでのライヴ中に追放され、すべてのパパの祖先で遥かに高齢(という設定)の、のちに“パパ・ニヒル”と呼ばれることになるパパ・エメリトゥス0世が就任する運びとなった。

2018年4月には、ゴーストの新しいフロントマンに“コピア枢機卿”(Cardinal Copia)が就任。当初彼はゴーストの法王服を完全に受け継ぐには時期尚早の修行中の神官であったが、『Prequelle』のツアー最終公演でパパ・ニヒルが死去し、コピア枢機卿がパパ・エメリトゥス4世へと昇格を果たしている。

3. その匿名性

2006年のバンド結成以来、ゴーストは頑なに正体を明かさずにいた。今までのフロントマンたちは決してインタビューを行うことはなく、プレス関係の職務はネームレス・グールズが担当していた。しかし現在ではゴーストの仕掛け人の名前はトビアス・フォージであると明かされている。彼がこれまでのフロントマンたちのキャラクターを演じ、現在はコピア枢機卿ことパパ・エメリトゥス4世を務めている。

頑なに秘密にしていたその正体がなぜ公になったのか? それはフォージが2017年にかつてのバンド・メンバー(ネームレス・グールズ)から金銭問題で訴えられた際、裁判で本名が出てしまうことがあったためだ。フロントマンの正体はバレてしまったが、今でもバックを務めるバック・バンドの現メンバーたちは、レコード店のサイン会などでは火、水、空気、土、エーテルといった各メンバーに割り当てられた錬金術のシンボルをサインするなどして、その正体を隠し続けている。

 

4. ひとつの曲から生まれた

ゴーストを結成する以前、トビアス・フォージはデス・メタル・バンドのリパグナント(Repugnant)や、スリーズ・メタルのクラッシュダイエット(Crashdïet)に在籍したことがあった。

2006年、フォージ自身が「おそらくこの世で最強のヘヴィ・メタルのリフ」と語るものを思いつき、続いて「夢の中で思いついた」コーラス・パートをそのリフに付け足した。この曲がゴーストのデビュー・アルバム『Opus Eponymous』に収録の「Stand By Him」に発展したのだ。

しかしフォージは自分のクリーンなルックスはこうしたダークなサウンドに合わないことをわかっていた。そして彼が新しい音楽プロジェクトの手段として生み出したのが、ゴーストのコンセプトとキャラクターというわけなのだ。

 

5. ゴースト誕生の日にフォージの兄が亡くなった

「Stand By Him」に加えて、フォージは「Prime Mover」と「Death Knell」を作曲し、それらのレコーディングのために2008年にリパグナント時代にバンドメイトだったグフタス・リンドストロームと共にスタジオに入った。

これらの楽曲は2010年3月12日にMySpaceで発表され、彼らとの契約を望むレコード・レーベルや事務所から好反応を得ることになった。しかし不幸なことにフォージが作品をアップロードしたその日、彼の兄のセバスチャンが心臓病で亡くなってしまった。フォージの兄は、彼の13歳年上であり、ゴーストに影響を与える多くのアーティストたちをフォージに教えてくれ、彼が心から尊敬していた人物だった。

6. サイケからAORまでの幅広い影響

音楽の世界では外見と内面が必ずしも一致しないことはめずらしくない。キング・ダイヤモンドやマーシフル・フェイトなどのブラック・メタルがフォージに大きな影響を与えたのは確かだが、ゴーストの音楽がポップ・ミュージックやAORから影響を受けていると聞いて驚くかもしれない。

ドゥーム・メタル、ハード・ロック、プログレ・ロック、アリーナ・ロック、サイケデリック・ロックなど、さまざまなジャンルの音楽を表現の手段に用いているゴーストだが、そのサウンドの根底にあるのはブラック・メタルで、その上でフォージはこう語っている。

「クラシック・ロックから映画音楽、1980年代の誰も知らないようなアンダーグラウンドのメタル・バンド、そしてハーモニー豊かで感動的なスケールの大きな音楽に至るまでのすべてから影響を受けている」

7. スタジオ・バンドとライヴ・バンドは異なっている

ゴーストのフロントマンの正体が2017年の権利関係の裁判沙汰によって明かされた時、フォージがどのようにバンドを捉えていたのかを述べた正確な記録が残されている。彼にとってのゴーストというバンドは、「自らの作品をライヴのステージで再現するためにミュージシャンを雇ったソロ・プロジェクト」であると述べているのだ。

フォージはスタジオですべての楽器を自らレコーディングし、楽曲に似合うと思うお気に入りのミュージシャンを招くということをしばしば行なっている。ゴーストのツアー・メンバー達はそれぞれが自分のバンドを持っており、ツアーの合間は自分たちのプロジェクトに取り組んでもらい、新鮮な気持ちでまた戻ってもらえれば良いと考えているのだ。

8. デイヴ・グロールはかつてメンバーだったことがある

バック・バンドのネームレス・グールズの正体は謎のままだが、彼らはショーの後、会場の外で出待ちしているファンに対してとても優しく接している。ただし彼らはゴーストというバンドの匿名性を固く守り、自分たちで正体や写真などをSNSに上げないため、フロントマン以外のメンバーたちの正体が誰なのかについての憶測が止むことがない。

しかし2013年8月、Fuse Newsのジャック・オズボーンとのインタビューで、フー・ファイターズのフロントマンでかつてはニルヴァーナのドラマーだったデイヴ・グロールが、ネームレス・グールズの衣装を着て、ゴーストとしてライヴを行なったことがあると語ったのだ。ちなみにデイヴ・グロールはゴーストの2013年のEP『If You Have Ghost』のプロデュースを担当している。

9. アメリカから拒否される

ゴーストの物議を醸すイメージや歌詞のテーマ、そしてアートワークが必ずしも好意的に受け取られるわけではない。セカンド・アルバム『Infestissumam』のレコーディングで合唱隊が必要になったのだが、スタジオのあるナッシュヴィルでゴーストの曲を歌ってくれる合唱隊はひとつも見つけられなかった。

さらに、アルバムをプレスする段になった際は、アメリカ国内のどのプレス工場もジャケットのアートワークに嫌悪感を示して快諾してくれなかった。またゴーストの初期の時には、どこのチェーン店もテレビ番組もラジオ局も彼らの音楽をサポートしてくれることはなかった。

Infestissumamのジャケット写真

しかし年月を経て、アメリカの大半は彼らに対して好意的になってくれたようだ。2015年10月、CBSの人気番組『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』のハロウィン特集の際にバンドが出演を果たしている。

 

10. 複数の受賞経験

メインストリームの文化圏に受け入れられつつあるが、ゴーストは故郷であるスウェーデンでは既に複数の賞を受賞している。ゴーストはスウェディッシュ・グラミー賞と言われる“Grammis”にて、2014年のアルバム『Infestissumam』、2015年のアルバム『Meliora』、そして2016年のEP『Popstar』で、3年連続で“最優秀ハード・ロック / メタル・アルバム”を受賞。

そして2016年には、『Meliora』に収録されている「Cirice」で、本家米グラミー賞の“最優秀メタル・パフォーマンス賞”を獲得。さらに2019年には『Prequelle』が’“最優秀ロック・アルバム”、「Rats」が“最優秀ロック・ソング”にノミネートされている。

Written By Caren Gibson



最新アルバム
ゴースト『IMPERA』

2022年3月11日発売
CD / iTunes Store / Apple Music

 


 

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