ザ・ローリング・ストーンズのシンボル「ベロ・マーク」こと「Lips and Tongue」の誕生と歴史

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あの年の4月、ロンドンのザ・ローリング・ストーンズ・オフィスのデザイナーであるジョー・バーグマンは、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの学生だったジョン・パッシュに手紙を送った。その中でジョー・バーグマンは、‘公式発表用の便せんに使えそうなロゴかシンボル’のデザインを進めるようにとジョン・パッシュに指示していた。この時点では、関係者の誰ひとりとして、そのあとこのデザインがどういうものになるか予想だにしていなかった。

ジョン・パッシュは、あの有名な「舌と唇 / Lips and Tongue」のロゴであるベロ・マークを考案した人物として現在よく知られている。しかし一部の人は、あれはアンディ・ウォーホルが考案したものだといまだに言いふらしている。しかしその主張は、ただの勘違いにすぎない。アンディ・ウォーホルは、確かに1971年のザ・ローリング・ストーンズのアルバム『Sticky Fingers』ではジャケット・デザインを担当している。しかし、このベロ・マークのデザインには関わっていない。

ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに頼んでロゴのデザイン案を作ってもらったらどうだろうか…と提案したのはミック・ジャガーだった。その話を聞いてロイヤル・カレッジのとある教員が推薦してきたのがジョン・パッシュ。彼は当時24歳の大学院生だった。

ジョン・パッシュは当時をこう振り返る。「チェーン・ウォークにあったミック・ジャガーの家に行ったら、ミックが近所のインド雑貨店で手に入れた印刷物のイラストを見せてくれてね。そこには、ヒンドゥー教で時間、変化、力、破壊を司るカーリー神が描かれていた。ミックは、新しいロゴを突飛なものにしようと考えて、それを持ち出してきたんだ。そのイラストを見ると、カーリー神の口と舌がすぐに目に飛び込んできた。ミックの顔の特徴と似ているという点についてはあまり考えていなかった。出発点になったのはカーリー神。個人的には、ストーンズのシンボルをああいう風にデザインするというのは、反権威主義的な意志表示のように感じていたよ」。

「舌と唇」のロゴが初めて世間の人の目に触れたのは、1971年4月16日(アメリカでは5月7日)に発表されたシングル「Brown Sugar」でのことだった。ただしシングルのレーベル面(ページ上画像)を見ればわかる通り、このロゴはザ・ローリング・ストーンズの四角の「スタンプ」に比べると添え物のような扱いになっていた。そもそもザ・ローリング・ストーンズ・レーベルのシンボルマークは、このスタンプのほうだったのだ。その数週間後に出た『Sticky Fingers』では、インサートに「舌と唇」のロゴがさらに大きく印刷されていた。

ほぼ半世紀が過ぎた今、このロゴは地球上で飛び抜けて認知されやすいブランド・イメージのひとつとなっている。また、これは儲けを生み出すロゴでもある。ロゴとしての認知度で言えば、自社のロゴを宣伝するために巨額な宣伝費を投じてきたナイキやコカコーラと肩を並べるくらいになっている。

ここで過去50年間にこのロゴがどのように使われ、どのように変化してきたのか見てみよう。ただし、その前にまず1964年にイギリスの音楽雑誌に登場した広告にも注目したい。これは、あの有名なロゴの原型だったのかもしれない。

ミックの唇をあしらった1964年の広告

『Sticky Fingers』のインサート

1972年USツアーのポスター
1973年のシングル「Angie(邦題: 悲しみのアンジー)」の広告に登場したロゴの変形版

1973年のオーストラリア・ツアー・ポスター

1978年のアルバム『Some Girls(邦題: 女たち)』のステッカー。1971年のインサートに描かれたロゴとは微妙に異なっている。また、舌に描かれた白のストライプの本数が1本のヴァージョンと2本のヴァージョンがあることに注目。

1978年のツアー・ポスター。やはり、さりげなくロゴが描き込まれている
1981年のアルバム『Sucking In The Seventies』

1981年のツアー・ポスター2種類


1990年の「Steel Wheels」ツアー・プログラム。唇の色使いが従来とはかなり異なる。これ以降は、この配色がよく使われるようになる。

1994年の「Voodoo Lounge」ツアー

2002年の「Licks」ツアー・ポスター

ザ・ローリング・ストーンズ結成50周年記念本。斬新なエンボス加工になっており、ロゴが小さなバッジの集合で描かれている。

2014年のツアー・ポスター

2015年の「Zip Code」ツアー

Written by Richard Havers


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