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レナード・チェス曰く「人がどう思おうと気にしない」、チャック・ベリーの『Blues』

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チャック・ベリーと聞くとすぐに思い付く曲は、「Roll Over Beethoven」や「Johnny B Goode」、そして「Maybellene」のような拍動感を生む50年代のロックン・ロール・ヒットだろう。しかし崇拝される作曲家であるチャック・ベリーがチェス・レコードから 膨大な作品の数々を発売することにより、ギタープレイヤーとしての才能、そして他の作曲者が書いた曲をヴォーカリストとして解釈する才能を探索する機会も同時に得ることができる。それらの多数のカヴァーと、本人が手掛けた6つのトラックは、1983年にコンピレーション盤『Blues』として発売された。

このアルバムの最初に収録されている早いテンポの「House Of Blue Lights」は、テキサス出身の歌手エラ・メエ・モーズの40年代の楽曲である。『Blues』に収録されている多くの曲は1958年から1964年の間にチェス・レコードから発売されたシングル、又はアルバム収録曲で、セントルイス出身のチャック・ベリーがティーンの頃に喜んで聴いていた曲ばかりだ。例えば「Driftin’ Blues」は、ジョニー・ムーアズ・スリー・ブレイザーズがクラブで良く演奏していたレパートリーのひとつで、チャック・ベリーはそこから曲を知ることになった。

「Down The Road Apiece」は1940年からのブギウギ楽曲で、チャック・ベリーは特にエイモス・ミルバーンのヴァージョンを気に入っていた。チャック・ベリーのカヴァーは曲に新たな息を吹き込み、60年代にはザ・ローリング・ストーンズが再び蘇らせている。作曲はドン・レイ、彼は「House Of Blue Lights」も共作している。ちなみにドン・レイはアンドリューズ・シスターズ(特にアメリカ人のお気に入り「Boogie Woogie Bugle Boy」)などへ曲を提供したことによりアメリカ音楽に永続的な貢献を果たした。

『Blues』の楽しみのひとつは、勲章を授与された元海軍兵士だったジョニー・ジョンソンの素晴らしいピアノ演奏で、16曲の内14曲にフィーチャリングされている(残りの2曲ではボブ・スクリブンスとラファイエット・リークがキーボードを弾いている)。ジョニー・ジョンソンの巧みな演奏は、チャック・ベリーの歌と容赦ないリズムの完璧な引き立て役となっている。ピアノ演奏は「Wee Wee Hours」で秀でており、ソロ演奏者として活躍していた頃には不可欠なトラックとなった。

チャック・ベリーのような作曲者が他の人の曲をカヴァーし、非常に才能ある作曲者たちのお陰で作詞にも力を入れることもできた。ウィリー・ディクソンの曲は何度もチェス・レコードからのアルバムに収録され、チャック・ベリーの「I Just Want to Make Love To You」のヴァージョンはマディ・ウォーターズのヴァージョンの力強さと効力が不足している。しかし、チャック・ベリーのヴァージョンはザ・エクアドルズの甘いバック・ヴォーカルに助けられてもいる。ザ・エクアドルズは、エタ・ジェイムズやムーングロウズのハーヴィー・フークワなどのチェス・レコードの歌手たちが別名で活躍していたグループ名だ。

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チャック・ベリーは他にもW.C.ハンディ(「St Louis Blues」)、ジェイ・マクシャン(「Confessin’ The Blues」)、そしてビッグ・メイシオ・メリウェザー(「Worried Life Blues」)のスタンダードを素晴らしくカヴァーしているが、アルバムのハイライトは彼が作曲を手掛けたインストルメンタル「Deep Feeling」である。チャック・ベリーは、アンディ・カーク&ヒズ・クラウズ・オブ・ジョイの1939年のインストルメンタル「Floyd’s Guitar Blues」からのメロディを使用しているが、巧みなスティール・ギターによって曲を自分のものにしている。この楽曲はギタリストのマイク・ブルームフィールドに影響を与え、彼はチャック・ベリーの “細かいギターの挿入句”を称賛している。その他のチェス・レコードお馴染みのミュージシャン、ウィリー・ディクソン(アルバムの11曲でベースを演奏)、ヒューバート・サムリン、そしてドラムのフレッド・ビロウの音楽的スキルがこのインストゥルメンタル・トラックの手助けをしている。

「Sweet Sixteen」(チャック・ベリーのロック・トラック「Sweet Little Sixteen」とは別曲)は、アーメット・アーティガンのブルース・ソングで、1952年にはジョー・ターナーによっての小さなヒットとなった。アーメット・アーティガンは多様なキャリア経歴があり、アトランティック・レコードの設立や、ニューヨーク・コスモス・フットボール・チームを共同設立。彼はチャック・ベリーがブルースを歌うことを得意としていると信じ、その結果に大満足していた。チャック・ベリーはブルース・ソングについて「近所の人たちのために演奏している」と話しており、ロックン・ロールは「全人口に向けて演奏している」と話している。しかし彼はその生まれながらのブルースの才能を「Still Got The Blues」で発揮している。

車や旅についての曲はチャック・ベリーのアルバムにとって不可欠であり、チャック・ベリーはアメリカの最も有名な国道をテーマにしたジュリー・ロンドンの夫ボビー・トゥループが作曲した「Route 66」をカヴァーしている。チャック・ベリーのヴァージョンは、ミック・ジャガーの一番のお気に入りであり続けている。

チャック・ベリーは旅についてテーマの範囲をさらに広げ、あまり知られていない列車についての曲「All Aboard」をカヴァーし、以前のアルバム『Chuck Berry On Stage』に収録された。そのカヴァーには不快な嘘の観客たちの効果音が加えられているが、『Blues』にはオリジナルのスタジオ・ヴァージョンが収録されている。その陽気な曲には、L.C.デイヴィスのテノール・サックスがフィーチャリングされており、ユーティカ、シラキュース、バッファロー、そしてトピカなど幾つもの鉄道で行ける目的地の名を上げるベリーは機関車の音の真似をしている。

『Blues』は才能溢れる独特なミュージシャンを描写している。レナード・チェスはこう言った。「チャック・ベリーは独自のやり方でものをやり、人がどう思おうと気にしない。だからこそ彼の音楽にはオリジナリティがある」。


reDiscover:チャック・ベリー『Blues』

チャック・ベリー『Blues』

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