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ビリー・F・ギボンズ、砂漠で録音した新作アルバム『Hardware』制作裏話を語る

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Photo: Andrew Stuart

デビュー50周年を迎えたZZトップのフロントマン、ビリー・F・ギボンズ(Billy F Gibbons)が、自身3枚目のソロ・アルバム『Hardware』を2021年6月4日にリリース。ロックンロール全開の作品と評判を呼んでいるこの作品について、ビリーが語る最新インタビューを掲載します。

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Billy F Gibbons – Hardware: Under The Hood – Episode 1

━━ あなたの歴史、バンドの歴史、ソロの歴史の多くはテキサスに関連していますが、今作は砂漠の記録であり、カリフォルニアの記録であり、パンデミックの最中に砂漠ですべてのものから離れて作ったレコード(記録)です。砂漠の中で、いつもの日常と切り離されたことをするというのは、どのくらい重要だったのでしょうか?

いい質問ですね。『Hardware』がいつものテキサスから砂漠へ一歩を踏み出して制作をしたことには、ちょっと変わった始まりがあって、それはカルト、ガンズ・アンド・ローゼズやヴェルヴェット・リヴォルヴァーにも所属していたドラマー、マット・ソーラムからの電話でした。その電話からは、左利きのギタリストであり、あなた(インタビュアー)と俺の友人でもある、オースティン・ハンクスの声も聞こえてました。それは昨年6月のことで、彼らは家にいることに飽き飽きしていて、活動を再開しようとしていたんです。

その電話で彼らは「ジョシュア・ツリーの近くにレコーディング・スタジオを発見したんだ」と言いました。俺はその時ランチョ・デ・ラ・ルナでクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジと仕事をしていたので、そのことを伝えると、彼らは「まあ、近いね。道を隔てたところにあるから今から迎えに行って、案内するよ」と伝えてくれました。

「いいね、その辺はなんとなく知っているし、近いし、砂漠の真ん中だし」と返事をしたんです。でも。やつらが“道を隔てたところ”って言ってたところは、実際にスタジオがあったのは砂漠の奥にさらに20マイル(32km)も先に行ったところで(笑)。これが『Hardware』の始まりだけど、確かにあなたの言った通りで、この作品は俺たちがテキサスから、砂漠に着き、そしてロックンロールの狂気に入った記録でもありますね。

━━ 砂漠には独特の雰囲気や意味合いがありますが、あなたはそれを見事にアルバムに取り入れましたね。

砂漠については色んな議論があるし、文献や本を読んだり砂漠の写真を見たりして研究することもできるけど、確かに砂漠には、何か魔法のようなもの、神秘的なもの、何かしらのエネルギーがあって、砂漠に行けば、自分の好きなように作ることができるし刺激的だ、と気づいたんです。実際、高揚感を得られたし、創造的なプロセスをスタートさせるのにとても役立った。砂漠に行ったことのある人は多いと思うけど、砂漠に行くと何かが乗り移ってくる。とても興味深いですよね。

━━ 既に出来上がった曲とともに砂漠に向かったんですか、それとも砂漠に着いてから作曲し始めたんですか?

最初はスタジオを見てみたいという以上のものは何も持たずに、砂漠への旅を始めました。楽器に関しては、ギター、ドラムとか何でもあったけど、曲のストックは何もなくて手に持っていたのはペンだけで、作曲のアイデアを記すために紙を探してたような状態。何もないといっても、砂漠にいるので、曲のアイデアとして周りにあるものいえば、たくさんの砂や岩、サボテンの木、たくさんのガラガラヘビくらいだよ(笑)。でもそんな何もない状態では、何かを始めるしかないので、そのエネルギーを使って作業をしたんです。

━━ と言っても、ガラガラヘビや砂を歌ったアルバムではありませんよね。砂漠の影響はサウンドに出ていて音色にもそれが表れています。その痕跡がどこにあるのか教えてもらえますか?

ほとんどの人は、砂漠といったら、乾燥して、暑くて、埃っぽい場所をイメージしていると思う。最初に到着したときは、30分ほど見て帰るつもりだったけど、その30分が3ヶ月になり、お気に入りの楽器やドラムが届くのを待つ間、スタジオの中を見て回り、そこにあるものを使うことにしました。

スタジオにあったギターはとても古いフェンダー・ジャズマスターで、とても古いフェンダー・リヴァーブ・タンクに接続され、これまたとても古いフェンダー・アンプに接続されていた。(ドラマーの)マット・ソーラムを見ると、(ギターの)オースティンがいつものようにギターの上下をさかさまにして演奏していたので、マットは微笑んで彼を見ていたけど、結構まともなドラム・セットを見つけて彼も演奏に加わったんだ。

そこで鳴らされたサウンドは砂漠にいることへのアンチテーゼのようなもので、ギターの音がとてもサーフィン・サウンドだったので、俺たちは海を探したぐらい(笑)。海はなかったけど、サーフ・サウンドはあったので演奏し始めたんです。

砂漠の痕跡は予測不可能な形で現れたけど、そのサーフ・サウンドが最初に録音した曲で「俺はテキサスの寂しい町から来たウェスト・コースト・ジャンキー」と歌う「West Coast Junkie」になった。この曲は俺たちに笑顔をもたらすのに十分な出来だし、楽しい時間だったので、そこから俺たちはただスティックを拾って先に進むだけでした。

Billy F Gibbons – West Coast Junkie

 

━━ あなたはギタリストで、このグループには左利きのギタリストがいて、ドラマーもいますが、ベースのパートは誰が演奏しているのですか?

Billy Gibbons & The BFGといえば、ギター2本とドラムのトリオだけど確かに低音は存在していて、ライヴでは、ちょっと変わったやり方で演奏してます。今回のスタジオでは、1本のフェンダー・ベース・ギターがどんどん色んな人のプレイヤーの手に回っていきました。

俺はオースティン・ハンクスのことを裏表のないギタリストと呼んでいるけど、ベースについては見事な裏表のある演奏をするんですよ。その後2人のエンジニア、マイク・フィオレンティーノとチャド・シュローサーが弾いて、そして、びっくりするかもしれないけどマット・ソーラムも演奏したんですよ。彼は素晴らしいドラムを演奏しますが、実は素晴らしいベース・プレイヤーでもある。でも、ベースを録音するために、かなり回り道をしましたね(笑)。

━━ マット・ソーラムはガンズ・アンド・ローゼズやヴェルヴェット・リヴォルヴァーを支えるダイナミックなドラマーだと思われていますが、このアルバムではとても繊細な演奏をしています。彼は本当に多才なドラマーですが、その点はこれまであまり評価されていないですよね。

あなたが言うようにマット・ソーラムは、間違いなく多才という言葉がピッタリのドラマーだよね。「West Coast Junkie」から始まったこのレコーディングでは、彼がいつも期待されているような大げさな叩き方ではなく、微妙な質感での演奏も披露してくれたんです。

セッションの終盤ではバラードとまではいかないまでも、最後を締めくくるにふさわしい曲にしようとして、砂漠での経験から感じたことや集めた要素をリストアップしていって、そういった言葉をカウボーイ映画で使われるようなサウンドに重ねることにしたんです。

「この歌詞が合うかどうか試してみたいので、まだメロディは決めていないが、俺のやり方で話してみよう」と言ったら、1テイク目でエンジニアのチャドとマイクがやってきて、腕をふり上げて「それだ!」と言ってくれたんです。俺が「話していただけで、歌っていなかったけど」と言うと彼らは「メッセージは届いている」と言うのです。そのワン・テイクを俺たち採用しました。これは、アルバムの結末に向けての良い方法でしたね。

作業が終わるのを待っている間、俺たちはそれぞれDJをしていたのですが、俺がサー・ダグラス・クインテットや後のテキサス・トルネードスでお馴染みの曲で、キーボード奏者でヴォックス・オルガン奏者でもあるオージー・メイヤーズが作曲した「Hey Baby, Que Paso」という曲をかけました。かけたのはオリジナル・シングルだったんだけど、珍しい盤だったからか、「そのヴァージョンはどこで手に入れたの? 他のバンドがやっているのは何度も聴いたことがあるけど、このヴァージョンは聴いたことがない」って言ってくるんですよ。「これはオージー・メイヤーズのオリジナル・トラックだよ」と答えると、「最高だったけど、2番の歌詞がよくわからないから、もう一度かけてくれない?」と言ってきました。そして何度も再生してみたけど、やはり2番の歌詞が分からなかったので、サンアントニオにいるオージー本人に電話をしたんです。

オージーは、俺たちがオリジナル・ヴァージョンを演奏することを知って喜んでくれたけど、「2番のサビの歌詞はなんて言っているのですか?」と聞くと、「何だと思う?サン・アントワンと韻を踏むスペイン語のフレーズを探していたとき、”las palabras”(言葉)がなかなか思い浮かばなかったんだ」って。

俺は、「2番目のサビの歌詞を作ってくれればクレジットに入れますよ。偽のスペイン語、スパングリッシュでいいので」と言うと彼は「いや、ではスランギッシュで」と言いました(笑)。そんなこんなで「Desert High」から「Hey Baby, Que Paso」でレコーディングを締めくくったというわけ。

Billy F Gibbons – Hey Baby Que Paso (Official Audio)

 

━━「Hey Baby, Que Paso」は、典型的なテキサスの曲であり、あなたの歴史、成長過程、国境の向こう側のラジオを聴いていたことと結びついてるのですね。この曲は、砂漠に入り込んだテキサスの一部であり、このレコードの中で最もテキサスらしい部分ですね。

確かに。俺たちはテキサスから離れた場所にいるけど、「Hey Baby, Que Paso」の俺たちのヴァージョンを再生してみると、どこにいても誰もがあの冒頭のセリフをすぐに拾ってくれるのがとても面白いと感じたんです。どこにいても「Hey Baby, Que Paso」を歌えば、(テキサツの別名)ローン・スター・​ステイトの一員であることを主張できるんです。

Interview By Andy Langer



ビリー・F・ギボンズ『Hardware』

2021年6月4日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music



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