プログレッシヴ・ロックのベスト30曲:正典から選び抜いた必聴の名曲たち

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Neil Peart - Photo: Mick Hutson/Redferns

プログレッシヴ・ロックの正典から選び抜いたベスト・ソングに目をやると、人生のあらゆる重要事項について歌われた曲が見つかるだろう。精神の旅、永遠の愛、高速レーシングカー、そして小便のかかった雪を避ける必要性。もちろん不滅のギター及びシンセサイザー・ソロ、そして、思わずスパンコールがあしらわれたケープを羽織ってしまいそうなほど多用されるトリッキーな拍子記号だ。

このジャンルの音楽を30曲に絞り込むのは簡単ではなかったが、少なくとも、かなり長めの曲をいくつか挙げている。さらには、大作と遜色のない4~5分の曲もいくつか加えている。

この記事は、長年の歴史の中で生まれたプログレッシヴ・ロック最高峰の楽曲を選んだものだ。多様性を考慮して、同じバンドを2回以上登場させることは避けた。さぁ、ヘッドフォンの音量を上げて、宇宙へと旅立とう。

楽曲はプレイリストでも展開中(Apple Music / Spotify)。

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30位:ソフト・マシーン「Nettle Bed」

「面白いほどキャッチー」という表現が、複雑かつ野心的なジャズ曲をその作風とするソフト・マシーンに使用されることはほとんどない。だが、彼らのアルバム『Seven』の冒頭を飾るこの曲は、面白いほどにキャッチーなプログレッシヴ・ロック・ナンバーだ。

作曲者のカール・ジェンキンスが、エレクトリック・ピアノによる快活なリフで下支えし、そこにキーボード奏者マイク・ラトリッジ(当時は唯一のオリジナル・メンバーだった)が入手したばかりのシンセサイザーのソロで装飾を施す。過小評価されるドラマー、ジョン・マーシャルも激しく追走している。

 

29位:フォーカス「Hocus Pocus」

フォーカスは、本質的には、クラシックやジャズの傾向を帯びた実直なプレイヤーから成るプログレッシヴ・ロック・バンドであった(今なおそうだ)。だが、彼らには風変わりなユーモアのセンスもあり、それはしばしば、希少なヴォーカル曲で発揮された。

今回選んだ「Hocus Pocus」はリハーサルでのお遊びから始まったものだ。ヤン・アッカーマンによるザクザクとしたアリーナ・ロック風リフに、オルガン奏者タイス・ファン・レールが一世一代のヨーデルで反応し、ドラマーのピエール・ファン・デル・リンデンが隙あらばソロを入れる。

これは思いがけないヒットとなり、今なお愛されている曲だ。たとえ、このシングルをきっかけに『Moving Waves』を購入した誰もが、その他のアルバム曲との大きな違いに少なからず衝撃を受けたであろうとしてもだ。

 

28位:バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト「Poor Man’s Moody Blues」

ことの発端はシンガー/ギタリストのジョン・リーズが抱いた、バンドのことを「貧乏人のムーディー・ブルース」と評したジャーナリストへの報復だった。彼はあまりにムカつき、家に帰って「Nights In Satin」を改作したほどだった。

同じ韻の配列とテンポを使用し、さらには「I love you / 愛しているよ」というフレーズを核にコーラスを作ったのだ。あらゆる困難を乗り越え、彼は独自の美しい曲をものにしている。ゆえにこの曲はロマンティックな感情の迸りと壮大なジョークを兼ね備えているのだ。

 

27位:ドリーム・シアター「Octavarium」

ドリーム・シアターはプログレッシヴ・メタルの王者であるが、この24分の大作はプログレ・サイドにしっかりと立脚している。“彼らは常に高速メタルに傾倒している”と考えているならば、このプログレッシヴ・ロック曲の最初の12分間における豊潤かつ旋律的な作風に耳を傾けていただきたい(心配ご無用、高速パートも後半12分に出てきて、文句なしのスリルをもたらしてくれる)。

この作品における全ての引用元を解読するには何週間もかかるだろう。まず手始めに、これがピンク・フロイドとラモーンズの両方をその歌詞に引用している唯一のプログレッシヴ・ロック曲であることは間違いない。

 

26位:ネクター「Remember the Future」

ネクターは最もメロディックなプログレッシヴ・ロック・バンドの一つであり、ザ・ビートルズを影響源にしていることはどのバンドよりも明白だ。

彼らの最も知られたコンセプト・アルバムのタイトル曲にして最重要曲は「Sun King」(この曲自体がフリートウッド・マックの「Albatross」を借用しているが)の夢想的なグルーヴをいくらか取り入れている。ネクターの曲は、そのアンセム風コーラスと脈打つ単音リフによって、これら2つの名曲と堂々と並び立つものとなっている。

 

25位:ゴング「You Never Blow Your Trip Forever」

ゴングの陽気なふざけ者、デヴィッド・アレンはバンドの『Radio Gnome Invisible(電波の精の物語)』三部作を最高の形で完結させるために、この11分に及ぶプログレッシヴ・ロック曲で、ありとあらゆるものを混ぜ合わた。

繰り返されるテンポ・チェンジ、魅惑的なソロ(スティーヴ・ヒレッジとディディエ・マレルブに敬意を表して)、どこからともなく現れるポップなフック、そして果てしない楽観主義。不条理でいて素晴らしい。

 

24位:タンジェント「Jinxed in Jersey」

タンジェントのリーダー、アンディ・ティリソンは、モダン・プログレ界で最も鋭い感性を誇る作詞家の一人であり、この歌と語りによる16分の曲でその最も機知に富む姿を披露している。歌詞には、全米ツアー中に自由の女神を訪れようとした際、彼をラッシュのメンバーだ勘違いした警官と遭遇するなど、あらゆることが上手くいかなかった様が詳細に綴られている。

音楽的には初期のジェネシスや円熟期のスティーリー・ダンを参照しているが、サウンドそのものはいずれにもそれほど似ていない。

 

23位:カンサス「Miracle Out of Nowhere」

アルバム『Leftoverture』のA面は、彼らのブレイクのきっかけとなったヒット「Carry On Wayward Son」で幕を開けるが、その最後を飾る「Miracle Out of Nowhere」こそがカンサスらしいナンバーと言えるかもしれない。

この曲は牧歌的なヴァースからインストゥルメンタルの超絶パートへと滑らかに移ろっていき、他の多くのカンサス楽曲と同様、魂の探究や見出される報いについて歌われている。また、フロントマンのスティーヴ・ウォルシュと今は亡きヴァイオリン奏者ロビー・スタインハートとがヴォーカル・パートを交代するという、カンサスの秘密兵器が使用されている。

 

22位:カン「Yoo Doo Right」

クラウトロックがプログレの一部なのか、あるいはそれ以外のものなのかの判断はあなたに委ねよう。だが、これはその決定版というべき一曲だ。

カンは、バブルガム風ポップを書きあげ、それを極限まで削ぎ落とし、21分もの恍惚的な時間を使って演奏することで、ポップの概念を覆すのだ。全くもって屈折している。そして、ありそうもないものであり、面白さに溢れている。

 

21位:キャラヴァン「Nine Feet Underground」

この曲はキャラヴァン結成当初の4人が残した最高の瞬間だ。LP片面を全て使った作品としては、演奏陣が奏でる親しみ易いグルーヴと、2つのヴォーカル・パートが紡ぐ卓越したメロディのおかげで、驚くほどタイトで聴き易い。

ベーシストのリチャード・シンクレアが歌う2ndヴォーカル・パートには、英国フォークの影響がひときわ愛らしく活かされている。

 

20位:ジェントル・ジャイアント「Free Hand」

そのサウンドは野心的で複雑にもかかわらず、ジェントル・ジャイアントは猪突猛進型のロック・バンドでもある。彼らの最高傑作と目されるアルバム『Free Hand』に収録されたこのタイトル曲は、それらを余す所なく詰め込んだものだ。

キーボーディストのケリー・ミネアは、うっとりするようなイントロを奏でた後、メインリフを激しく鳴らす。歌詞は明らかにかつての仕事関係者に向けられており、デレク・シャルマンはアリーナを揺るがすようなリード・ヴォーカルを提示している。彼が次のキャリアでレコード・レーベルの重役としてボン・ジョヴィを発掘することとなったのは偶然ではあるまい。

 

19位:エイジア「Sole Survivor」

エイジアの血流に大量のポップ成分が含まれていることは間違いなく、それゆえにMTVは彼らを好んでいたのだ。だがこの曲での彼らは、あらゆる点でファンが望んでいたスーパーグループだ。

スティーヴ・ハウとカール・パーマーは存在感を示し、ジョン・ウェットンは逆境に打ち勝つ物語を勢いよく歌い出す。このトラックこそが親しみ易さを美徳とするのだ。

 

18位:ピーター・ガブリエル「Lay Your Hands On Me」

『Security』はピーター・ガブリエルの最もプログレッシヴ・ロック色の濃いアルバムに位置付けられるもので、新しく手に入れた電子楽器であるフェアライトによって音楽的可能性を押し広げ、同時に歌詞も感情の複雑な領域に果敢に踏み込んでいる。

このアルバムの最重要曲には、日々の身体的接触の必要性が歌われており、間違いなくコロナ時代にも反響を得た楽曲だ。当時のツアーを見た誰もが、最後のコーラスでガブリエルが聴衆にその身を預けたトラストフォールを覚えているだろう。

 

17位:プロコル・ハルム「A Salty Dog」

この曲はプロコル・ハルムの最も重要なプログレッシヴ・ロック曲の一つであり、彼らがキャリアを通じて演奏し続けてきた一曲だ。ゲイリー・ブルッカーの堂々たるヴォーカルとB.J.ウィルソンの荘厳なドラミングを味わうには打ってつけである。

作詞家のキース・リードは、彼らしくこの物語に解釈の余地を残している。筆者の耳には、話者が海賊としての英雄的行為を告白しているように聞こえる。

 

16位:ジェスロ・タル「Heavy Horses」

『Thick as a Brick』を探してる? ここでは代わりに個人的なお気に入りを。イアン・アンダーソンはプログレッシヴ・ロックとは付かず離れずの関係を保ってきたが、全編に亘ってフォーク色が濃厚なアルバム『Heavy Horses』のタイトル曲となるこのナンバーでは、明らかに密接な関わりを持っている。

英国の役馬がもたらす力、そしてそれに象徴される生活様式が、イアン・アンダーソンのイマジネーションを9分間に及ぶプログレッシヴ・ロックの上で掻き立てる。その冒頭にはマーティン・バレのお馴染みのリフが配され、さらには、ゲスト・ヴァイオリニスト、ダリル・ウェイ(カーヴド・エアで知られる)がいくらか明るさをもたらす。ドラマーのバリモア・バーロウの叩くビートは、駆ける馬のひずめの音のようだ。

 

15位:マイク・オールドフィールド「Ommadawn, Part 1」

LP片面いっぱいを使うトラックは常にマイク・オールドフィールドの十八番だったが、この曲は代表曲「Tubular Bells」には申し訳ないが、彼の最も才気溢れる1曲だ。

この曲「Ommadawn, Part 1」は2つのメイン・テーマが19分間に亘って発展していく。幾重もの構造から成るこの作品は次々とクライマックスを迎えるが、その最高潮となるのがアフリカのドラム/チャント・セクション(ここでの賛辞は実姉でもあるヴォーカリスト、サリーに)であり、その後も荒々しいギター・ソロが続く。最後に今一度再現される冒頭のテーマには思わず息を飲んでしまう。

 

14位:ルネッサンス「Mother Russia」

シンフォニックな壮大さはルネッサンスはお手のものであったが、反体制の作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンのヒロイズムを歌ったこの堂々たるプログレッシヴ・ロック曲で、彼らは最もドラマティックな姿を見せてくれた。

この曲でのアニー・ハズラムのヴォーカルはまさに琴線に触れるものであり、共感と人道的な怒りを表現している。そしてバンドは、暗くて凍えるようなロシアの風景をみるみるうちに描き出すのだ。

 

13位:マリリオン「Kayleigh」

この4分間のシングルはコンセプト・アルバム『Misplaced Childhood』の一部を切り取ったものだが、これ単体でもプログレ界最高峰の失恋ソングとなっている。

マリリオンの初代リード・シンガーであるフィッシュは、ここでも赤裸々に感情を吐露する詞を書いており、恋の成り行きを詳細に綴っている。しかしこの曲が終わる時、彼女はもういないのだ。このプログレッシヴ・ロック曲は1985年に英国でNo.1となったが、その年に生まれ、ケイリーと名付けられた女性が何人いたことだろう。

 

12位:ザ・ムーディー・ブルース「Legend of a Mind」

ティモシー・リアリーに敬意を表したムーディー・ブルースのこの6分間のプログレ・ソングを好きになるにはLSDは必要なかった。このプログレッシヴ・ロック曲はそれ自体がトリップなのだ。

フルート奏者レイ・トーマスが作曲及び歌唱を担ったこの曲は、悟りへの異なる道のりに思いを巡らせ、さらには瞑想やロマンティックな愛を歌ったアルバム『In Search of the Lost Chord』のキーとなるトラックであった。

トーマスは印象的なフルート・ソロを施すが、それを宇宙にまで連れていくのはマイク・ピンダーのこの世のものとは思えないメロトロンだ。そして、ザ・ムーディー・ブルースは覚醒状態にあっても驚くほどメロディックなのだ。

 

11位:トランスアトランティック「Stranger in Your Soul」

現代のスーパーグループ、トランスアトランティックは彼らにとっての由緒正しいプログレッシヴ・ロックを愛しているが、彼ら自身はあらゆるものをより大きく、より壮麗に、そしてより長尺に演奏する。

「Stranger in Your Soul」は30分に及ぶものの、メロディのクライマックスが幾度も訪れるゆえに、決して冗長には感じられない。魂の転生は彼らの大好きな歌詞のテーマだが、このトラックには「立ち上がれ、君たちの時代なのだから!」という極めて刺激的なコーラスが配されている。

 

10位:ユートピア「The Seven Rays」

初代ユートピアは、その最盛期にはバンドの並外れたテクニックとトッド・ラングレンのポップの魔法との橋渡しを成し遂げていた。

「The Seven Rays」は宇宙的だがハードであり、リズム・セクションはファンクのニュアンスを帯び、ラングレンの詞は都市生活における精神性のようなものを示している。そこにはゴスペルの香りも漂うが、当時は無名だった他ならぬルーサー・ヴァンドロスがバック・コーラスを率いていた。

 

9位:フランク・ザッパ「Don’t Eat the Yellow Snow (suite)」

選曲の際に「Inca Roads」が念頭にあったのは間違いないが、このプログレッシヴ・ロック曲の方がより相応しいかもしれない。というのも、そこには、チャンスさえあればこのジャンルがどれだけ面白くなれるか、を浮き彫りにしているからだ。

それが証明されたこの『Apostrophe』内の小組曲「Don’t Eat the Yellow Snow (suite) 」では、フランク・ザッパが7/4拍子のベース・リフの上で荒唐無稽なエスキモーのストーリーを展開する。物語と音楽はいずれも組曲が進むにつれてさらに奇妙なものになっていく。この曲は思いがけずシングル・リリースされているものの、今なおその栄光を誇るアルバムの方を聴くべきである。

 

8位:ジェネシス「Unquiet Slumbers for the Sleepers…/…In That Quiet Earth / Afterglow」

ピーター・ガブリエルが脱退し、『The Lamb Lies Down on Broadway』/「Supper’s Ready」期を終えたジェネシスから、プログレッシヴ・ロックが抜け出すことはなかった。

このメドレーの中の示唆に富むインストゥルメンタルは、ギタリスト、スティーヴ・ハケットの名演の一つであり、タイトルに引用されたエミリー・ブロンテの一節から虹色のムードを引き出している。ここにはドラマティックな展開やエッジの効いたリフが溢れているが、それらは全て、ジェネシスのカタログの中でも最も情熱的なラヴ・ソングによって収束する、フィル・コリンズがシンガーとして達した高みをはっきりと示した最初期の一曲である。

 

7位:ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター「Man-Erg」

ピーター・ハミルのように歌詞に実存主義の論文を入れ込むことは誰もできない。アルバム『Pawn Hearts』のキーとなるこのトラックで、彼が殺し屋、天使、難民、そして孤独に生きる平凡な男と対峙すると、そのサウンドは見せかけの平穏から徹底的な混沌へと高揚していく。

ハミルの喉を切り裂くようなヴォーカルは、サックス奏者デヴィッド・ジャクソンという好敵手を得ている。彼は、このバンドにリード・ギターがほとんど必要ないことを示したのだ。

 

6位:ケイト・ブッシュ「Suspended in Gaffa」

ケイト・ブッシュは、屈折した傑作『The Dreaming』のハイライトとなるこのトラックで、演劇的要素を全開している。彼女がこんな風に歌ったことはそれまでになく、もちろん誰一人としてそんなことをした人はいなかった。

コーラスにおけるあの「I want it all! / その全てが欲しい!」というシャウトは今なお身震いをもたらす。そして、実存の危機と粘着テープによる拘束とを同一視する人は世界に彼女以外いないだろう。

 

5位:エマーソン、レイク&パーマー「Karn Evil 9: First Impression」

不恰好なタイトルながら、この楽曲はエマーソン、レイク&パーマー史上最もヘヴィでストレートなものとなっており、その二つのパートはそもそも『Brain Salad Surgery』のA面とB面を繋ぐ役割を担っていた。

それは不穏な未来像から始まり、キース・エマーソンの重厚なオルガン・リフとグレッグ・レイクの力強いヴォーカルに煽られていく。パート2は、かの有名な「Welcome back, my friends / おかえり、友よ」セクションで、非現実的なサーカスへと誘う。根底にあるテーマは、大衆娯楽が自然や人権の消滅から人々の目を逸らさせる世界である。それは全くもって予言とはならなかった。

 

4位:ピンク・フロイド「Shine On You Crazy Diamond」

ピンク・フロイドの最高峰シングルであろうこの曲は、極めて印象深いものであり、究極的にはバンドの創始者シド・バレットへの愛あるトリビュートである。

デヴィッド・ギルモアの輪郭のはっきりしたイントロのソロから、ロジャー・ウォーターズの空へと響くようなコーラスに至るまで、このトラックの全てが心に染み入ってくる。そして、『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいて欲しい)』の最初と最後に2つのパートに別れて配置されているものの、一体化された一つの楽曲のように感じられるのだ。

この曲は『Dark Side of the Moon(狂気)』のような名盤を創り上げた旧フロイドの最後の姿であり、やがて彼らは辛辣な社会的主張に全勢力を注ぐことになる。

 

3位:ラッシュ「Red Barchetta」

ここでは「Cygnus X-1 Book Ⅱ: Hemispheres」が妥当な選曲だと思われるが、最もロックンロールな題材である高速車での爆走を歌ったこの曲でいくことにした。もちろん、ニール・パートが書いた詞は、それを危険と自由への誘惑のメタファーにしており、バンドもそれに相応しい反応を示している。

そしてアレックス・ライフソンは滑らかにギアを変えながら、物語の局面ごとに新たなリフを提示する。ゲディ・リーは当時のヴォーカル能力を思いきり駆使しており、ここでもその若さを誇りながら思春期の話者と共鳴している。

 

2位:キング・クリムゾン「21st Century Schizoid Man」

今や古典であるが、このプログレッシヴ・ロック曲が1969年にどれほど衝撃的な響きをもたらしたかを想像していただきたい。

ロバート・フリップと仲間達以外にこのような未来の衝撃を、ましてやギターとサックスのブレイクで聴かれる喧噪のようなもので世に問うことができる者はいないだろう。グレック・レイクの歪んだヴォーカルはあまりに威嚇的で、ほどなく少年聖歌隊のようなヴォーカルが彼のトレードマークとなるとは想像もできないだろう。

クリムゾンが生まれ変わるたびに『In the Court of the Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)』からのこの名曲が演奏されるが、21世紀になってもこの曲の実演が聴けるのは紛れもない刺激である。

 

1位:イエス「Close to the Edge(危機)」

イエスのスタジオでの方法論について読んだことがあるのなら、彼らが大量のアイディアを出し合い、それらを縫い合わせていたことはご存じであろう。ゆえに、これほど美しくシームレスに作品を編み上げたことは奇跡である。まさに天国を訪れているとしか言いようのないものに取り組みつつも、「Close to the Edge」の不思議はそれがポップ・ソングのような構造を有していることだ。

3つのヴァース、ミドルエイト、キーボード・ソロ、そしてフィナーレとなるコーラス。しかしながら、イエスのあのハーモニーは良い意味で天国のような響きを獲得し、ビル・ブルーフォードのドラミングは頑丈な下支えとなり、そして、リック・ウェイクマンのハモンド・オルガン・ソロはあらゆるプログレッシヴ・ロックの中でも最も歓喜に満ちた瞬間となっているのだ。

Written By Brett Milano


本記事の楽曲はプレイリストでも展開中

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ラッシュ『Signals』(40周年記念エディション)
2023年4月28日発売
2023年5月31日日本盤CD発売


マイク・オールドフィールド『Tubular Bells – 50th Anniversary Edition』
2023年5月26日発売
CD

ムーディー・ブルース『To Our Children’s Children’s Children / The Royal Albert Hall Concert December 1969』
2023年5月12日発売
4CD+ブルーレイ



 

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