マリリン・マンソンのベスト・ソング20曲:アンチクライスト・スーパースターの最高に奇妙な名曲達

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Photo courtesy of Universal Music Group

もしフロリダ州が偉人を生み出す土地なのだとしたら、その誇るべき功績は、史上最高に奇妙なロック・アクト、マリリン・マンソン(Marilyn Manson)を生み出したことである。1989年、このバンドの名目上のフロントマン、ブライアン・ワーナーは、地元フォート・ロダーデールの友人でギタリストの故スコット・ピュートスカイ(別名デイジー・バーコウィッズ)と共に、ゴスメタル・バンド、Marilyn Manson And The Spooky Kidsを結成した。

長年、フロントマンとしての自我をヴィジュアルで打ち出していたブライアンはバンド唯一の固定メンバーとなり、ミュージシャンとプロデューサーのラインナップは彼の進化と共に変化し続けた。マリリン・マンソンのベスト20曲のプレイリストは、『Antichrist Superstar』や他のアルバムから彼の進化を取り揃えた内容になっている。

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デビュー:トレント・レズナ―との出会い

マリリン・マンソンは新しい試みから始まった。その試みとは、バンドのメンバー達が、それぞれにセレブと連続殺人犯の名前を合わせた名をつけることだ。だが、この反逆的な合体は、特に神を畏れる保守的な人々の慣習的な家族生活を破壊するより重いテーマや演出に変化していった。

ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーは、1993年、自身のナッシング・レコーズを刺激的なバンドで刷新するために、名前をマリリン・マンソンに縮めたバンドと契約した。彼らが手を組んだことを、カウンターカルチャーの主事としてトレントは自慢するべきだが、マンソンは、彼の師匠の最も奇妙な成功物語を後押しする役割を自ら引き受けたのだ。

間もなく、マリリン・マンソンはトレントがプロデュースしたデビュー・アルバム『Portrait Of An American Family』を発表する。このアルバムは生意気で、攻撃的にアンセミックであった。オープニング曲「Cake And Sodomy」は、痛快な悪口のシンガロング曲で、「俺はファックの神だ」と自己紹介するマンソンが、アルバムのムードを決定づけている。

彼らの郊外の生活の非難は中絶病院にも及ぶ。中絶反対の狂信者によるデヴィッド・ガン医師の殺害を歌った曲「Get Your Gunn」だ。また、学校に対する非難もある。

そして「Lunchbox」では、子供が悪態をつきまくるところから始まり、サビでいじめた子供達に復讐をするのだ。

 

『Smell The Children』:アンチクライストへの食前酒

1994年、ソルトレイク・シティは、すでに悪名高かったマリリン・マンソンのライブを、彼らの言動が下品で、卑猥で、不道徳な行為を先導しており、明らかに卑猥で趣味の良さに欠けると訴え、禁止しようとした。それでもなお、トレント・レズナーはナイン・インチ・ネイルズのソルトレイク・シティ公演の前座にマリリン・マンソンを招き、そこでマンソンはモルモン書を引き裂いた。それをうけてか、同年、神秘主義者のアントン・ラヴェイが、彼の悪魔協会でマンソンを崇めている。

悪名高くはあったが、彼らは実際のところ、EP『Smell The Children』の発表まで、成功を収めてはいなかった。このEPには、ユーリズミックスの「Sweet Dreams (Are Made Of This)」の葬送歌のようなカヴァーが収録されていた。『チキ・チキ・バン・バン』や『チャーリーとチョコレート工場』といった比較的ダークな子供の映画に似たテーマで構成されたEPは、プラチナムにまでなった。また、この作品は、より明瞭なインダストリアル・サウンドの彼らのブレイク作で、トレントとデイヴ・オギルヴィーがプロデュースする『Antichrist Superstar』の食前酒のような役割を果たしていた。

 

『Antichrist Superstar』“アンチ・クライスト”の最上の達成

セカンド・アルバム『Antichrist Superstar』に収録されたマンソンの地下を這うようなヴォーカルが鋭いギターと重なり合う好戦的な反体制ソング「The Beautiful People」は、“アンチ・クライスト”の最上の達成であり、今なおマリリン・マンソンのベスト曲のひとつであり続けている。そしてこの曲は、新しいファンの獲得にも繋がった。

ダークなアンビエント曲「Tourniquet」は、彼らがそれまでに作った曲の中で最もラブソングに近い曲、前衛的インダストリアルの「Cryptorchid」は彼らの斜に構えたアートロックの解釈となっていた。トレント・レズナーはプロデューサーとして「Cryptorchid」の調子外れに歌う美しさを、デヴィッド・リンチ監督の映画『ロストハイウェイ』用のマリリン・マンソンのサウンドトラック曲「Apple Of Sodom」で再び狙っている。

『Antichrist Superstar』に伴うツアーは独裁者のプロパガンダに傾倒した舞台セットで、さらなる社会批判を招いた。米国議会は、マリリン・マンソンが曲の歌詞を通じて暴力を推奨していると批判し、興行主とコンサート会場のオーナー、ライヴの外で抗議をする宗教団体によって、いくつもの公演が中止に追い込まれた。

 

『Mechanical Animals』とコロンバイン高校銃乱射事件

1998年、バンドは『Antichrist Superstar』の次のアルバム『Mechanical Animals』をリリース。マリリン・マンソンは、このアルバムで初めて全米アルバム・チャートで初登場1位を記録した。マンソン・マンソンとナイン・インチ・ネイルズのバンド・メンバー、ショーン・ビーヴァン(『Antichrist Superstar』にも貢献した)が共同でプロデュースを手がけ、名声と薬物の乱用をメインテーマにしたアルバムは、現在においてマリリン・マンソンのベスト曲と見なされる曲を取り揃えた作品に仕上がった。

『Mechanical Animals』は人々の期待をもてあそんだ。ファースト・シングル「The Dope Show」は、インダストリアル・ロックとグラム・ロックを融合した曲で、彼らにグラミー賞の最優秀ハード・ロック・パフォーマンス賞のノミネートをもたらした。

もうひとつのシングル、「I Don’t Like The Drugs (But The Drugs Like Me)」も少しポップよりの曲で、明らかにデヴィッド・ボウイの「Fame」を参照しており、ゴスペルの聖歌隊がそのサウンドを強化している。

だが、このアルバムは、おそらくマンソンの最も(意図的ではないが)衝撃的なトラック「Coma White」で締めくくられる。これは、マンソンが当時のガールフレンド、ローズ・マッゴーワンに捧げた共感を呼ぶバラードである。

しかし、こうしたメインストリームへの進歩は、1999年のコロンバイン高校での銃乱射事件によって混乱状態となった。政治家からもメデイアからも批判を浴びせられたマリリン・マンソンは、ツアーの一握りの公演を中止した。そのわずか6ケ月後に、ポップ・カルチャーと暴力を考察した彼らの「Astonishing Panorama Of The Endtimes」が、MTVの番組『Celebrity Deathmatch』で使用され、後にこの曲は、グラミー賞の最優秀メタル・パフォーマンス賞にノミネートされた。

 

ある意味で最高に待望されていた作品

コロンバイン事件に続いて、高い評価を受けながらも広く禁止された次作『Holy Wood (In The Shadow Of The Valley Of Death)』は、ある意味で最高に待望されていた作品であった。メディアによるバンド批判への報復であったアルバムは、重いブーツの足音と撃鉄を起こす音で不気味に幕を開ける。決して引き下がることをしない彼らは、鮮やかで勇気あるシングル曲の数々を発表した。ザ・ビートルズの歌詞(「お前は革命が欲しいと言う」)を覆した苦悶の「Disposable Teens」は、ギリギリと痛めつけるサウンドが押し寄せる。

メランコリックな「The Nobodies」は、メディアに対抗する曲(「俺達は機械に餌をやり、祈った……お前らはあの日の視聴率を見ておくべきだったな」)で、後にマイケル・ムーアのドキュメンタリー映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』で使われている。

 

ミレニアム以降、マンソンの復活

2000年代には、『The Golden Age Of Grotesque』『Eat Me, Drink Me』『The High End Of Low』といった3枚のアルバムが発表された。

そして2010年代の幕開け、2012年にマンソンは8枚目のアルバム『Born Villain』をシングル「No Reflection」と共に発表。ナイン・インチ・ネイルズのメンバー、クリス・ヴレナと共同プロデュースしたこのアルバムは“復活作”と評された。そして、それは誇張ではなかった。

不気味で刺々しい「Overneath The Path Of Misery」のような曲は、まるでマンソンの深い傷のように感じられ、ただちにマリリン・マンソンのベスト曲としてのポジションを獲得した。

このことと、業界のパーティでサウンドトラックのプロデューサー、タイラー・ベイツと出会ったことにより、マンソンのアウトプットはリセットされたようである。彼らは、ブルージーでフックが満載のアルバム『The Pale Emperor』を3年後の2015年にリリース。ベイツとの制作上のパートナーシップは、クールでダークに光る「Slave Only Dreams To Be King」や、爆発的なサビの恍惚とした「Third Day Of A Seven Day Binge」を生み出した。

マンソンのベイツとの仕事は、10作目となる『Heaven Upside Down』でも続けられた。特にグルーヴィーなゴスの「Saturnalia」は、マンソンがホラーのギミックを超えるキャリアを望むようになったことを提示している。この印象的な曲は、バウハウスの「Bela Lugosi’s Dead」に対する彼の回答であり、威嚇するようなベースとバリトン・ヴォーカルが夜の雰囲気をかもし出している。

しかし、マンソンはショッキングになることを諦めたわけではない。『Heaven Upside Down』の不吉でインダストリアルな「We Know Where You Fucking Live」は、マリリン・マンソンのベスト曲のように急所を突く。そして、私達が期待しているのはまさにそういう曲だ。マリリン・マンソンはもう「ファックの神」ではないかもしれないが、彼は今も最高のブギーマン(不気味な殺人鬼)であり続ける。

Written By Nisha Gopalan



マリリン・マンソン『WE ARE CHAOS』
2020年9月11日発売
CD / iTunes / Apple Music



 

 

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