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天使たちの歌声:史上最高のゴスペル・シンガー15人

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ゴスペル・ミュージックの影響は、ソウル、ロックン・ロール、そしてR&Bと、至るところまで広がっており、ジェームス・ブラウンからボブ・ディラン、そしてザ・ローリング・ストーンズまで、ありとあらゆる人々の作品中に見ることが出来る。そして、これは驚くことではないが、ベスト・ゴスペル・ソングはあらゆるタイプの音楽のアーティストによってレコーディングされ、ベスト・ゴスペル・シンガー達もまた、一般に考えられているよりも広い範囲のスタイルをカヴァーしている。

このリストには異なるタイプのヴォーカリストが入っているかも知れないが、自分達の信念について歌うことに関しては、みんな同様に情熱的だった。聖職者からロックン・ローラー、バックウッド・ブルースマンからカントリー・ランブラーまで、史上最高のゴスペル・シンガー15人のリストをご紹介しよう。

 

レヴァランド・ゲイリー・デイヴィス(1896-1972)

ゴスペル・ブルースは、サン・ハウス、ブラインド・ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムス等々、名パフォーマーによる長い伝統を誇るが、中でも最も著名なのはレヴァランド・ゲイリー・デイヴィスではないだろうか。ストリート・ミュージシャンとしてスタートしたレヴァランド・ゲイリー・デイヴィスは、そのプレイの簡潔さと声の深い哀愁感で、「I Heard The Angels Singing」といったゴスペル・ソングから物悲し気な雰囲気を引き出した、パワフルなゴスペル・シンガーだった。この盲目のシンガーの美しさと高い精神性は、ボブ・ディランやライ・クーダー等、数え切れないほどのミュージシャンに影響を与えた。ボブ・ディランは「Jesus Met The Woman At The Well」等、彼のナンバーを数曲レコーディングした。

Reverend Blind Gary Davis – Glory Halleloo (Live)

 

トーマス・A・ドーシー(1899-1993)

トーマス・A・ドーシーは、ゴスペル・ミュージック界の父として広く知られ、世界最高のゴスペル・ソングを数多く書いている。1968年には、暗殺される直前のマーティン・ルーサー・キングが、トーマス・A・ドーシーの最もよく知られた曲「Take My Hand, Precious Lord」の演奏を依頼している。その後この曲はアメリカ黒人運動のアンセムのような存在になった。元ジャズ・ピアニスト兼作曲家のトーマス・A・ドーシーは、初のゴスペル・コーラスの制作に加わり、自らの霊歌に礼拝堂の素材やブルースの雰囲気を加えた。彼はその後“ナショナル・コンベンション・オブ・ゴスペル・クワイアーズ・アンド・コーラサス”を共同設立。彼の作品中で最も美しい曲であろう「Peace In The Valley」は、1939年にある峡谷を通過する瞬間、ヨーロッパで始まったばかりの戦争を思いながら、電車の中で書かれたものだ。

Precious Lord, Take My Hand

 

マヘリア・ジャクソン (1911-1972)

マヘリア・ジャクソンのゴスペル・ミュージックのソウルフルな演奏は、大統領や皇族を含む、世界中のファンを魅了した。彼女のパワフルでメロディアスな声に、聴き手は目に涙を浮かべた。1947年リリースの『Move On Up A Little Higher』で、マヘリア・ジャクソンは100万枚を売り上げた初のゴスペル・アーティストとなり、同ジャンルをメインストリームへと押し上げた。1960年には、ケネディ大統領の就任式でアメリカ国歌を歌っている。またあの偉大なメイヴィス・ステイプルズ等無数のシンガーに、ゴスペルを始めるきっかけを与え、デューク・エリントンが自身のビッグ・バンドで、一緒にジャズをレコーディングして貰おうとした時、マヘリア・ジャクソンは「デューク、わたしの音楽は神の音楽なの」と言って彼の申し出を断ったエピソードも有名だ(それでも彼女は1970年にルイ・アームストロングと共演している)。

Move On Up a Little Higher

 

サリー・マーティン(1895-1988)

ジョージア州生まれのサリー・マーティンは、トーマス・A・ドーシーとマヘリア・ジャクソンと同時代で活躍したシンガーで、ショウで歌い、“ゴスペル・ミュージックの母”なる称号を得た。その後バプティスト教会で歌い始め、シカゴでトーマス・A・ドーシーと組んだ。また彼女はゴスペル出版社を設立し、サリー・マーティング・シンガーズと共に、のちにダイナ・ワシントンとして知られるようになる、ルース・ジョーンズを発掘している。

"He's So Wonderful"- Sallie Martin & Refreshing Springs COGIC

 

シスター・ロゼッタ・サープ(1915-1973)

チャーチ・オブ・ゴッド教会〔訳注:プロテスタント教派の総称〕の巡回伝道者の母親に育てられたシスター・ロゼッタ・サープは、6歳の時から歌っていた。その後ジョン・ハモンドに見出され、カーネギー・ホールで行われたカウント・ベイシーの著名な“フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング”コンサートに迎え入れられ、それから間もなく、『Gospel Train』をレコーディング。1945年、彼女の曲「Strange Things Happening Every Day」が、R&Bトップ10入りした初ゴスペル・レコードとなった。シスター・ロゼッタ・サープはギタリストでもあり、ロックン・ローラーのパイオニアだったが、そのゴスペルの歌声は力強く真心がこもっていて、エルヴィス・プレスリーに多大な影響を与えている。

Sister Rosetta Tharpe – Up Above My Head

 

ハンク・ウィリアムス (1923-1953)

カントリー・ミュージックの巨匠であり、ソングライターとしても著名なハンク・ウィリアムスは、カントリー・ミュージック屈指のゴスペル・シンガーでもあった。その歌詞は罪と贖い、苦悩と解放に目を向けたものが多く、ゴスペル・スタンダードとなった1948年のナンバー「I Saw The Light」等の名作で堪能することが出来る。「When God Comes And Gathers His Jewels」等ハンク・ウィリアムスがレコーディングしたゴスペル・ソングは、彼の感傷的で物憂げな歌い方に向いていた。

Hank Williams – I Saw The Light

 

ジェームス・クリーヴランド (1931-1991)

アレサ・フランクリンにゴスペルの歌い方を教えたジェームス・クリーヴランド牧師は、“ゴスペルの王子”と呼ばれていた。彼は心に残るバリトン・ゴスペル・シンガーであると同時に、ピアニスト、作曲家、アレンジャー、そしてプロデューサーでもあった。グラミー賞を3度受賞し、「Everything Will Be All Right」、「The Love Of God」、「Peace Be Still」を含むゴスペル・ソング400曲の作曲及びアレンジでクレジットされ、ハリウッドのウォーク・オブ・フェイムの星を獲得した、初のゴスペル・アーティストとなった。ジェームス・クリーヴランドはまた、自分の最大の業績と公言する“ゴスペル・ミュージック・ワークショップ・オブ・アメリカ”をデトロイトに設立している。

James Cleveland – Where Is Your Faith In God

 

サム・クック(1931-1964)

この史上最高のゴスペル・シンガー・リストに入っている数人と同様に、サム・クックは黒人霊歌から世俗音楽へと簡単に飛び越えていった。少年時代にゴスペル・グループのザ・ハイウェイQCズで歌いながら仕事を学んでいった彼が、本格的にその名を挙げたのは、「Touch The Hem Of His Garment」等の逸品をレコーディングしたザ・ソウル・スターラーズでだった。サム・クックの滑らかでソウルフルな声は物語風のゴスペル・ソングに適しており、その幾つかは自らが書いている。その後サム・クックはソロとしてのキャリアをスタートさせる為にゴスペルから離れ、「(What A) Wonderful World」等の人気ヒット曲を発表。それでも彼は自らがペンを取った「A Change Is Gonna Come」等、ゴスペル調のソロ・ナンバーも幾つか手掛けた。

Sam Cooke – A Change Is Gonna Come (Official Lyric Video)

 

ジョニー・キャッシュ (1932-2003)

カントリー・ミュージックは常にゴスペルと強い繋がりがあり、それはハンク・ウィリアムスだけではなく、テネシー・アーニー・フォード(彼は自身のウィークリー・テレビ番組のエンディングでゴスペル・ソングを流していた)等、数多くのパフォーマーに感じられた。中でもジョニー・キャッシュは心のこもったゴスペル・ソングを数多く送り出しており、それは1959年発表の初ゴスペル・アルバム『Hymns』を始め、幾つかの作品で聴くことが出来る。ジョニー・キャッシュ曰く、「ゴスペル・ミュージックはこの身体の中に深く染み込んでいる。ゴスペル・ソングを歌わないコンサートなど俺には出来ない。これを聴いて育ったんだ。綿農園で育ち、退屈な仕事をしていた子供時代に、俺の励みになった」。

Johnny Cash & June Carter – A Gospel Medley

 

エルヴィス・プレスリー (1935-1977)

エルヴィス・プレスリーは正当な“キング・オブ・ロックン・ロール”だったかも知れないが、彼はまたベスト・ゴスペル・シンガーにその名を連ねる存在であり、アンドレ・クラウチ作曲の「He Touched Me」のカヴァーでグラミー賞も獲得している。エルヴィス・プレスリーと数年間ツアーしたスウェーデン人ミュージシャンのペール・エリック・ハリン曰く、「エルヴィスはゴスペル・ミュージックとは特別な繋がりがあった。アイドルとしてずっと半端なく崇拝されていたエルヴィスにとって、ゴスペルを歌うのは憂さ晴らしにもなっていた。あれだけ狂信的に崇拝されてきた人が、単純にみんなとツルみながら、‘There’s Somebody Bigger Than You And I’といったような曲を歌うのが好きだというのは、なんだか凄くジーンとくることだと思う」。

Elvis Presley How Great Thou Art Live 1977

 

シャーリー・シーザー(1938年生まれ)

シャーリー・シーザーが12歳の時に亡くなった父親のジムはシンガーだった。彼女はその跡を継いでシンガーの道を目指し、伝説のカラヴァンズと活動後、ソロ・キャリアを開始。グラミー賞を受賞した初めての黒人女性ゴスペル・シンガーになった。その後グラミー賞を更に10個受賞し、ゴールド・アルバムを3枚獲得している。彼女はその素晴らしいゴスペル・ヴォイスに加え、音楽についての知識も豊富で、2008年には、アメリカ財務省でゴスペル・ミュージックの発展に関するスピーチを行なった。

He'll Do It Again

 

アレサ・フランクリン (1942-2018) 

1956年に父親が牧師を務めるニュー・ベセル・バプティスト教会で、アルバム『Songs Of Faith』をレコーディングした時、アレサ・フランクリンは僅か14歳だった。メインストリーム・エンターテインメントの世界に足を踏み入れる以前のアレサ・フランクリンは、才能溢れるゴスペル・シンガーであり(例えるならば、エイミー・グラントのような)、史上最高のゴスペル・シンガーのひとりになる為に必要な、高く力強い音を出すことの出来る声を持っていた。アレサ・フランクリンのアルバム『Amazing Grace』(1972年)は、彼女のアルバム中で最も売れた作品のひとつであり、ロックの時代に於いて、ゴスペルの魅力を商業ベースに乗せた。2012年には、ゴスペル・ミュージックの殿堂入りを果たした。

Amazing Grace (Live at New Temple Missionary Baptist Church, Los Angeles, January 13, 1972)…

 

アンドレ・クラウチ (1942-2015)

「The Blood Will Never Lose Its Power」を書いた時、アンドレ・クラウチは僅か13歳だった。“コンテンポラリー・ゴスペルの父”として知られる彼は、間違いなく同世代で最高のゴスペル・シンガーのひとりであり、成功したヴォーカル・アレンジャー、ソングライター、そしてクワイアのリーダーだった。マイケル・ジャクソンやマドンナの為の合唱曲(及び映画『ライオンキング』のサウンドトラック)で、彼は世界的名声を得た。子供の頃には吃音があったが、ゴスペルを歌うことでそれを克服したと言うアンドレ・クラウチは、その後コンテンポラリーなフィーリングのあるゴスペル・サウンドを開拓していった。

Andraé Crouch – "The Promise"

 

ヨランダ・アダムス (1961年生まれ)

駆け出しの頃、成功したゴスペル・シンガー達(特にトラメイン・ホーキンズとシャーリー・シーザー)が大きな励みになっていたとアダムスは言う。女優としても名声を得た彼女は、自身の全国ネット・ゴスペル・ラジオ番組のホストを務め、世界中で800万枚近くのレコードを売り上げ、“コンテンポラリー・ゴスペルの女王”として知られる。どうか彼女の「Yes, Jesus Loves Me」と、ホイットニー・ヒューストンのゴスペル・ヒット作「Jesus Loves Me」を混同しませんように。

Yolanda Adams – Yes Jesus Loves Me

 

カーク・フランクリン (1970年生まれ)

カーク・フランクリンはヒップホップとゴスペルを融合させ、多少の物議を醸しながらも、1,300万枚以上のアルバム・セールスを記録した史上最も売れたゴスペル・アーティストと言えよう。またグラミーを12個獲得し、ザ・ファミリー、ゴッズ・プロパティ、ワン・ネイション・クルー(1NC)等都会派ゴスペル・クワイアを率い成功を手にした。フランクリンは、スピリチュアル・ミュージックが、21世紀を代表するゴスペル・シンガー達の手によってどのように発展しているかを示す、ひとつの例に過ぎない。キム・バレルやリチャード・スモールウッドといったスターや、それからベベ、セス・ウィナンス、チャンス・ザ・ラッパー、カニエ・ウェスト、トッド・デュラニー、ドリンダ・クラーク-コール等の若手シンガー達もまた、みんなモダン・ゴスペルを異なる方法や力強い声で解釈している。

Kirk Franklin, The Family – Jesus Paid It All (Live) (from Whatcha Lookin' 4)

 

Written By Martin Chilton


もっとお探しの方は、「史上最高のゴスペル・ソング25曲」リストをチェック。

♪ プレイリスト『Forever Gospel


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