アンビエント・ミュージックのベスト・ソング20曲

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有り難いことに、アンビエント・ミュージックが時代遅れで、恥ずかしい過去の過ちのようにみなされていた長い時期は過ぎ去ったようだ。間違いなく、アンビエントはカム・バックしている!ぜひリラックスして、このジャンルの名曲の数々が提供する時間をゆっくりと楽しんでいただきたい。

70年代のアンビエント

ヴァージン・レコードは、70年代にアンビエントというジャンルが形成されるにあたって影響力を持っていた多数のレコードを有するレーベルだ。まず、マイク・オールドフィールドの最高に魅力的な1973年のアルバム『Tubular Bells』から始めよう。

このアルバムの楽曲は、ホラー映画『エクソシスト』のテーマ曲として使われたことによって、当初意図していたよりも”怖い曲”という印象を持たれてしまっているかもしれないが、マイク・オールドフィールドが、後に発展していく“ダーク・アンビエント”の先駆者であることを証明している。

ギリシャの作曲家、ヴァンゲリスも、ポリドール・レコードのためにミニマルなサウンドトラックを作っていた。『L’Apocalypse Des Animaux(動物の黙示録)』収録の「La Mort Du Loup(音楽家:熊)」は、明らかに何十年も先を行くアンビエント/ニューエイジ・ミュージックを提示していた。

それと同時期にヴァージンは、ドイツのタンジェリン・ドリームと契約を結んだ。タンジェリン・ドリームは、それ以前に何度も素晴らしい曲の数々を発表していたものの、なかなか成功にはいたらなかった。

しかし1974年に、18分に及ぶ素晴らしいアルバム・タイトル曲を収録したタイムレスな作品『Phaedra』で、究極のアンビエント・アルバムのひとつを生み出した。そして、後に『Rubycon』などのアルバムで、繰り返し成功を手にすることになる。

アンビエントはキャッチーでポップな曲で知られているジャンルではないが、フランスの作曲家、ジャン・ミッシェル・ジャールは、ポリドールから発売された1976年の『Oxygéne』で、それに近いことをおこなった。今聴くと、魅力的なヴィンテージ・サウンドでありながら、人生を支持する素敵なことを思い起こさせてくれる曲でもある。

ブライアン・イーノは、“アンビエント・ミュージック”という用語を、『Ambient』アルバム・シリーズによって広く知らしめた人物であるが、1977年のクラスターとのコラボレーションや、後の『Before And After Science』収録の「By This River」のバレアリックなヴォーカルで、完璧な作曲の極致にすでに足を踏み入れていた。

ヴァージン・レコードもまた、前衛的な音楽の開拓者で、後のジ・オーブのコラボレーター、スティーヴ・ヒレッジの1979年のアルバム『Rainbow Dome Musick』を発売した。長い2曲を収録したこのアルバムには、素敵な「Garden Of Paradise」が入っている。

 

80年代

80年代は、長く、前衛的な曲が好まれた時代であるが、新興のエレクトリック・シーンの先駆者達が、それを導いていた。その内の一人がアート・オブ・ノイズであり、1984年から根強く残っている「Moments In Love」は、10分を超える大作だ。

また、サイモン・ジェフスのペンギン・カフェ・オーケストラの出した曲の数々が、なぜチルアウト向けの曲として長い間人気になっていたかは、1987年の『Signs Of Life』収録の「Wildlife」を聴けば容易に理解できる。この曲は後に、あらゆるアンビエント・コンピレーションに収録された。

90年代

アンビエントは、レイヴ・シーンでハイになった人々が内省し、回復する場所を求めることによって、再び人気を獲得した。おそらく、このジャンルの中で最も象徴的な存在だったのは、ジ・オーブであろう。ジ・オーブの夢のような「Little Fluffy Clouds」は、90年代初期にあらゆる場所に広まり、このジャンルの内外で長く続いていく彼らのキャリアを築いた。

あまり今日的ではない音楽と見なされていたが、ヴァージンが契約したエニグマの「Sadeness Part 1」は、1990年に、グレゴリア聖歌に対する熱に火をつけた曲だ。そして、この曲は理解しやすい雰囲気を持っており、エニグマを今日に至るまで世界的に有名にしたのである。同様に、同年ポリドールから発表されたBBGの「Snappiness」も、発売以来ずっと人気を保っている。

人気アーティスト達がこのジャンルと戯れていたことが明らかになったことを示す曲として、これまで未発表だった1991年のアンダーワールドの「Dirty Epic」のアンビエント・ミックスがある。これは、近年発表された『dubnobasswithmyheadman』のスーパー・デラックス盤に収録されている。

1993年になると、堰を切ったように溢れ出し、ヴァージンから発売されたウィリアム・オービットの「Water From A Vine Leaf」などのアンビエント・スタンダード曲が、あらゆる場所で流れるようになった。この曲は、より穏やかな音楽を求める若者達が増えてきたことを象徴している。

その翌年、ヴァージンはザ・フューチャー・サウンド・オブ・ロンドンの名作『Lifeforms』を発表。このアルバムには、当時のアートの状況を反映した曲「Dead Skin Cells」が収録されていた。このアルバムは敏感なリスナー達に大歓迎されて、それ以来、ザ・フューチャー・サウンド・オブ・ロンドンの2人組と、彼らのよりサイケデリックなプロジェクト、アモルファス・アンドロジナスはカルト的な人気を誇っている。

ユニオン・シティー出身のヴォイジャー(トニー・ソープ、ザ・ムーディ・ボーイズとしても知られている)もまた、当時を代表するアーティストで、1993年の「Arrival」は、彼の常套のアシッド・ナンバーの数々と並んで、天に飛翔するような素敵な20分を提供する曲である。

90年代中盤、アンビエントは急速に他のエレクトロニック・ジャンルに吸収されていった。その結果、驚異的にエキサイティングなクロスオーヴァーする楽曲が誕生した。ゴールディーの究極のドラムンベース「Inner City Life」もそのうちの1曲である。

他にも、アンビエント、バレアリック、チルアウトで成功した曲は無数にあったため、1997年にアイランドが発表した『Dreams Of Freedom (Ambient Translations Of Bob Marley In Dub)』を見過ごしていた人がいても仕方ないであろう。しかしながら、これはベテラン・プロデューサーのビル・ラズウェルが手がけており、「The Heathen」はテツ・イノウエが手伝っている。

同様に、深く掘り起こさないと、ウォーターゲイトによるポップ・トランス曲「Heart Of Asia」のAstroリミックス(商業的に強いポジティーヴァからのリリース)は見つけることはできないだろう。映画『戦場のメリークリスマス』の坂本龍一によるテーマ曲を基盤にしたこの曲は、常に解釈において順応性のあった曲を、完全に見事なアンビエントにしている。

現在のアンビエント音楽のリヴァイヴァルが起こっている要因のひとつは、このジャンルとクラシック音楽をまたにかけて作曲している作曲家達の新しい波が、ようやく認められるようになったからだ。それはアンビエントが始まった時から、アンビエント曲の要素のひとつであった。

2008年には、テクノ・プロデューサーのカール・クレイグとモーリッツ・フォン・オズワルドが、ドイツ・グラモフォンのカタログにあるクラシック曲をリコンポーズした『ReComposed』を発表。そこに穏やかにループする「Movement 6」が収録されていた。

マックス・リヒターの2015年の画期的な『Sleep』もまた、ドイツ・グラモフォンから発売され、アンビエントの歴史において重要な新章になった。特に、『Sleep』のショート・バージョンに収録された「Dream 3(in the midst of my life)」は重要な曲である。

アンビエント・アルバムが、再び90年代初期のような盛り上がりを見せている現在、次の名曲の数々が聞ける日は遠くないであろう。

Written By Phil Smith



 

 

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