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ザ・ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが80歳で逝去。その功績を辿る

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Photo: Shirlaine Forrest/WireImage

ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のドラマーであり、ロック界で最も尊敬されるミュージシャンの一人であるチャーリー・ワッツ(Charlie Watts)が2021年8月24日に80歳で亡くなった。このチャーリーのパブリシストは以下のようなコメントを発表している。

「我々の愛するチャーリー・ワッツの死を発表することは、計り知れない悲しみを伴います。本日、ロンドンの病院で家族に囲まれながら静かに息を引き取りました。チャーリーは、大切な夫、父、祖父であり、同世代で最も偉大なドラマーの一人でした。私たちは、この困難な時期に、彼の家族、バンドメンバー、そして親しい友人たちのプライバシーを尊重することをお願いします」

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ストーンズのライブデビューから約7ヵ月後の1963年1月、チャーリー・ワッツはバンドからの熱烈なラブコールを受け、ストーンズに加入した。その後、2021年9月に行われる予定のバンドの全米ツアー「No Filter」再開時には、病気療養のために欠席が発表されていたが、それまでの60年間、常にバンドを支え続けた。

チャーリーのドラマーとしての卓越性は議論の余地がなく、ストーンズの仲間たち、特にキース・リチャーズは、数え切れないほどのインタビューの中で、チャーリーとともに演奏できたことがいかに幸運であったか、彼のいないストーンズは想像できないと、頻繁に賛辞を贈っていた。1979年のインタビューではこう語っている。

「チャーリーはいつもそこにいるけど、みんなに知らせようとはしない。そんなドラマーは滅多にいないよ。みんなミックとキースがローリング・ストーンズだと思っている。でも、もしチャーリーがドラムをやっていなかったら、チャーリー・ワッツこそがストーンズであることがわかるだろう」

彼が友人や他人から温かく愛されるもう一つの要素は、彼の並外れた謙虚さだった。彼はスポットライトを浴びることが好きではなく、バンドのスタジアムやアリーナでのショーで紹介されても、お辞儀をしたり、話したりするのを嫌がったことは有名だ。それに加えて、ロック界で最も小さいドラムキットと言われていた7つのアイテムを使うのみだった。

彼が個人的に愛していたジャズの世界では、自分のグループのリーダーを務めたり、小さなクラブのステージで演奏したり、ビッグバンドからクインテット、カルテットまでさまざまな編成でレコードに参加し、楽しく演奏していながら、仲間のミュージシャンのために脚光を浴びるようにも努力していた。

その生涯

本名チャールズ・ロバート・ワッツは、1941年6月2日、ロンドン北部のウェンブリーで生まれた。その名前は、イギリス国鉄で運転手として働いていた父親の名前にちなんで名付けられた。母リリアンは専業主婦で、チャーリーと妹のリディア(1944年生まれ)は、第2次世界大戦による広範囲の爆撃被害を受けた後、何十万も建てられたプレハブの家で、決して快適とはいえない環境で育った。

彼は、自分がドラマーになりたいと思ったきっかけとなったレコードは、西海岸のサックス奏者ジェリー・マリガンがチコ・ハミルトンをドラムに迎えて演奏した1952年の「Walking Shoes」だったと語っている。

チャーリーは、14歳のときに両親からドラムキットを買ってもらい、16歳のときには町中で演奏していたという。1961年、チャーリーはアレクシス・コーナーに誘われて、彼のバンドであるブルース・インコーポレイテッドに参加したが、それは後にコミックや映画のスターとなるダドリー・ムーアのジャズ・トリオで短期間演奏しただけだった。そんなとき、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学びながら歌っていた、若きシンガーのミック・ジャガーと出会ったのだ。

チャーリーがストーンズに参加し始めの頃は、まだ広告代理店のグラフィック・デザイナーとしての仕事を続けていた。その仕事をやめて本格的にプロのミュージシャンになったのは、ストーンズがデッカと契約し、チャック・ベリーの「Come On」をカバーした最初のシングルをリリースした後の1963年6月のことだった。

Come On ((Original Single Mono Version))

1964年には、ストーンズの上昇気流はとんでもないのになっていたが、その名声と経済的な繁栄にもかかわらず、チャーリーは様々な誘惑になびくことがなく、バンドメンバーが共有していたチェルシーのエディス・グローブにある粗末なアパートを出て、サセックスに物件を購入していた。その後何十年にもわたって、ストーンズの周りでは、論争、死、薬物逮捕、人事異動などが渦巻いていたが、チャーリーはドラマーとして堅実にバンドを支えていた。皮肉なことに、チャーリーが最も酒や薬に溺れたのは、バンドメンバーの多くが禁酒を始めていた1980年代だった。

「19th Nervous Breakdown」のような熱狂的なヒット曲から、「Honky Tonk Women」や「Start Me Up」のようなロックの定番曲、「Gimme Shelter」の陰鬱な威嚇、そして「Waiting On A Friend」の繊細さまで、スタジオでもステージでも、彼はどんな雰囲気にも対応し、それを高めていった。

19th Nervous Breakdown (Mono Version)

チャーリーは、バンドの録音を聴き返すことはなく、“世界で最も偉大なロックンロール・バンド”の一員であることには自信を持っていなかったが、その一方で、バンドの功績に大きな誇りを持っていた。2010年、彼はこう語っている。

「私にインタビューしてくれたある人にこう説明しようとしていた。ローリング・ストーンズの一員であることはひとつのことだが、それを外から見るということは、私はやったことはないし、その興味も気力もない。でも、その中にいることは素晴らしいことだよ」

彼は、バンドの壮大なツアーのために、快適な環境がありながら世界中を旅しなければならないことに対しては率直に不満を持ち、セットリストが2時間半の長さになることにも同様に批判的であった。ツアー中の退屈をしのぐために、彼はツアー中に寝たベッドをすべてスケッチし、それを日記になぞらえていた。ツアー中での残りの時間は、ジャズクラブで他のミュージシャンの演奏を聴いたり、スーツや靴を買ったりして過ごしていた。彼はGQにこう語っている。

「私は非常に伝統的な服装をしていますね。オールドイングリッシュだ。でもどこのお店に行っても、私の体に合うものはありません。なぜなら私は小さいからね」(チャーリーの身長は約173cmと欧米では小柄)

ジャズへの愛

ジャズのことになると、彼は一日中、チャーリー・パーカーやジェリー・ロール・モートンの初期のレコードをコレクションし、幼なじみで後にコラボレーターとなったデイヴ・グリーンと一緒に演奏したことを思い出しては、熱く語っていた。また、エルビン・ジョーンズ、アート・ブレイキー、フィル・シーメン、ロイ・ヘインズ、トニー・ウィリアムスなどのドラマーを非常に尊敬していた。

ストーンズとしてのスケジュールが許せば彼は自身のソロ活動を行い、1986年にはチャーリー・ワッツ・オーケストラとして初のアルバム『Live at Fulham Town Hall』を、1990年代にはクインテットとして、グレート・アメリカン・ソングブックを解釈した2枚のアルバム『Warm and Tender』(1993年)や『Long Ago and Far Away』(1996年)など、ジャズの作品を積極的にリリースしている。

また、ピアニストのアクセル・ツヴィンゲンバーガーとベン・ウォーターズにベースのデイヴ・グリーンを加えたThe ABC&D Of Boogie Woogieとの共演やレコーディングを経て、2010年にはアルバム『The Magic of Boogie Woogie』を発表。当時チャーリーはこのバンドについて「私にとって(ニューヨークのクラブ)Café Societyでの1939年の夜に最も近いものであり、それは私の理想でもあります」と語っていた。

Duc De Woogie Boogie (Live)

チャーリーの友人でもあるドラマーのジム・ケルトナーは『Drum!』誌に、友人のスタイルについてこう語っている。

「彼自身はそれを説明することができないし、私もそのことについて彼とあまり詳しく話したいとは思わない。私はただただその演奏に感嘆するだけなんだ」

そしてチャーリーは、2008年に自分のアプローチをこう要約しています。

「私は、ドラマーは伴奏者であるという理論で育ちました。ドラムソロは好きではありません。尊敬する人もいますが、基本的にはバンドと一緒に演奏するドラマーが好みです。ロックンロールの難しさは、その規則性にある。私のやり方は、ダンスサウンドにすることですね。スウィングしたりバウンスしたりね」

Written By Paul Sexton



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