レゲエ界のアイコン、ジミー・クリフが81歳で逝去。その功績を辿る

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Photo: Michael Ochs Archives/Getty Images

レゲエ界のアイコン、ジミー・クリフ(Jimmy Clif)が逝去した。享年81。ジャマイカ出身のジミーは、「You Can Get It If You Really Want」や「The Harder They Come」などのヒット曲でレゲエという音楽ジャンルを世界に広めた。

妻であるラティファ・チャンバーズが彼の公式SNSに次のような声明を投稿し、この訃報を伝えている。

「深い悲しみとともに、夫のジミー・クリフが発作とそれに続く肺炎のため逝去したことをお知らせいたします。彼の人生を共に歩んでくれた家族、友人、アーティスト仲間、仕事仲間の方々に心から感謝申し上げます。世界中のファンの皆さま、皆さんの支えこそが彼のキャリアを通じての力でした。彼はファンの皆さま一人ひとりの愛に心から感謝していました。ジミー、私の最愛の人、どうか安らかに眠ってください」

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ジャマイカでのキャリア初期

1944年7月30日にジェイムズ・チャンバーズとして生まれ、ジャマイカで育った彼は、10代でジミー・クリフとして音楽活動を始め、ボブ・マーリーのキャリアを手助けしたことで知られるレスリー・コングのプロデュースによるシングル「Hurricane Hattie」で最初の成功を収めた。

その後も「King of Kings」、「Dearest Beverley」、「Miss Jamaica」、「Pride and Passion」といったローカル・ヒットを次々と録音し、1964年のニューヨーク万国博覧会にはジャマイカ代表として出演した。

アイランド・レコード契約後の国際進出

1965年、アイランド・レコードと契約したジミー・クリフは、活動拠点をイギリスへと移し、本格的な国際進出を開始した。当初はロック市場へのアプローチが思うような成果を上げられなかったものの、1967年のデビュー・アルバム『Hard Road to Travel』は批評家から高い評価を獲得。

とりわけ英国のサイケデリック・ポップバンド、ニルヴァーナのメンバーが手がけた収録曲「Waterfall」は、ブラジルで大きなヒットを記録し、“インターナショナル・ソング・フェスティバル”でも優勝するなど、国際的な注目を集めた。

その後も、1969年に「Wonderful World, Beautiful People」が全英トップ10入りを果たし、1970年にはボブ・ディランからも称賛を受けたプロテスト・ソング「Vietnam」を発表。同年、キャット・スティーヴンスの名曲「Wild World」をカヴァーし、こちらも全英8位のヒットを記録するなど、レゲエの枠を超えて幅広いリスナーを魅了していった。

映画『ハーダー・ゼイ・カム』で掴んだアメリカでの成功

ジミー・クリフが、アメリカで大きく注目を浴びるきっかけとなったのは、1972年公開のペリー・ヘンゼル監督作『ハーダー・ゼイ・カム』(原題:The Harder They Come)だった。ジミーが成功を夢見ながら犯罪へと足を踏み入れていく若きミュージシャンを演じた同作のサウンドトラックは世界的なヒットを記録。

彼は本作に、タイトル曲「The Harder They Come」をはじめ、後年ニカラグアのサンディニスタ民族解放戦線のキャンペーン曲としても使用され、社会的な広がりを見せた「You Can Get It If You Really Want」、「Many Rivers to Cross」、「Sitting in Limbo」などの名曲を提供した。

映画公開後、ジミーはアメリカで自身初の大規模コンサートを成功させ、1976年にはTV番組『サタデー・ナイト・ライブ』の初回シーズンにも出演。さらに1985年、ブルース・スプリングスティーンがライヴで披露した「Trapped」のカヴァー音源が、トリプル・プラチナムのセールスを記録したチャリティ・アルバム『We Are the World』に収録され、アメリカでの人気を決定づけた。

同年リリースのアルバム『Cliff Hanger』では、クール&ザ・ギャングのメンバーが参加し、自身初となるグラミー賞“最優秀レゲエ・アルバム賞”を受賞。彼は生涯で通算4度のグラミー賞受賞と7度のノミネート歴を誇っている。

ジミーはそのキャリアを通じ、ザ・ローリング・ストーンズ、ポール・サイモン、アニー・レノックス、スティングなど、ジャンルを越えたアーティストと数多くコラボレーションを実現。1986年にはロビン・ウィリアムズ主演のコメディ映画『クラブ・パラダイス』(原題:Club Paradise)にも出演し、同作のサウンドトラックにはエルヴィス・コステロとのコラボ曲「Seven Day Weekend」が収録されている。

2010年にロックの殿堂入りを果たしたジミー・クリフは、2012年のアルバム『Rebirth』で自身4度目のグラミー賞“最優秀レゲエ・アルバム賞”を受賞。彼の最後のアルバムは2022年の『Refugees』だった。

Written By Sam Armstrong



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