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WBC2026の公式サントラを担当したラテン界トッププロデューサーのタイニーとは

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2026年3月に開幕となったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の公式サウンドトラック『2026 World Baseball Classic』が3月6日に配信された。ここには3曲の楽曲が収録され、ベッキー・G(Becky G)、YEONJUN、マイク・タワーズ(Myke Towers)、ヤング・ミコ(Young Miko)、そして日本からは藤井 風らが参加した計3曲が収録されている。

このサウンドトラックのミュージック・プロデューサーには、現在のラテン界トッププロデューサーであるタイニー(Tainy)が抜擢され、アルバート・ハイプ(Albert Hype)とホタ・ロサ(Jota Rosa)と共に手がけた。日本ではまだ知名度が高いとは言えないタイニーだが、「史上初めて米Billboardのプロデューサー・チャートで通算100週を超え1位を記録」、「プロデュースした楽曲の総再生数は優に100億回以上」という輝かしい実績を誇っている。

そんな彼の経歴や、代表曲、日本からの影響などをご紹介。

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2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の公式サウンドトラックを制作するプロデューサーとして、世界中の注目を集めているタイニー(Tainy)。彼の名は、レゲトン、ラテン・トラップ、エレクトロニック、ポップといった多岐にわたるジャンルで、数々のヒット曲を生み出してきたプロデューサーとして、特に北米や南米の音楽シーンでは知らぬ者のない存在となっている。

彼がどのようなキャリアを歩み、なぜこれほど多くのアーティストから信頼されているのか、その背景に迫る。

 

生い立ちと音楽的影響

1989年にプエルトリコで生まれたタイニーは、母親がドミニカ共和国出身であることから、彼の幼少期はプエルトリコの文化とドミニカ共和国の文化が入り混じった環境で育った。彼の家では常に音楽が流れており、サルサ、メレンゲ、バチャータといったラテン音楽が日常の一部であったそうだ。

しかしタイニーの音楽的嗜好はそれだけにとどまらず、彼が初めて買ったアルバムがリンキン・パークの『Hybrid Theory』であったと語っておりロックやラップ、ヒップホップなど幅広いジャンルを聴いており、この幼少期に培われた多様な音楽ジャンルが、後の彼の革新的なサウンドの源泉になることになる。

10代になると、タイニーは自身でも音楽を制作することに興味を持つようになる。転機となったのは、彼の兄の友人を通じて音楽プロデューサー、ネリー “エル・アルマ・セクレタ”(Nely “El Arma Secreta”)と出会ったことだ。ネリーはタイニーにFL Studioという音楽制作ソフトウェアの使い方を教え、彼の才能を見出した。

当時のタイニーはパソコンを持っていなかったため、ネリーからソフトウェアをもらうと、母親に頼んで買ってもらったパソコンで楽曲制作を開始。学校の勉強や宿題をこなしながら、徹夜でビート制作に没頭する日々を過ごしたという。毎週のようにネリーに制作したビートのCD-Rを渡し、アドバイスをもらいながら、タイニーはプロデューサーとしての腕を磨いていった。

 

プロデューサーとしての出世作や代表曲

タイニーの才能は、メンターであるネリーを通じて、ダディ・ヤンキーの超ヒット曲「Gasolina」やドン・オマールのアルバムをプロデュースしたレゲトン界の伝説的なプロデューサーデュオであるルーニー・テューンズ(Luny Tunes)の耳に届くこととなる。

ある日、タイニーがスタジオに着くとネリーはいなかったが、代わりにルーニー・テューンズフランシスコ・“ルーニ”・サルダーニャがいた。その時のことをタイニーはインタビュイーでこう語っている。

「ルーニは『君ができることを見せてくれ』と言ったんです。だから僕はゼロからビートを作り始めたんです。彼はそれを聞くと暴れるように興奮してくれて、その日に契約を結ぶことになりました」

そうしてタイニーはわずか15歳で、ルーニー・テューンズのレーベル「Mas Flow」からリリースされたコンピレーションアルバム『Mas Flow 2』の1曲目のイントロを担当し、プロデューサーとしてデビューを飾った。これが、タイニーが初の仕事と語るキャリアの始まりであった。

01.Intro – Mas Flow 2 (Mas Flow 2)

そしてタイニー初期の商業的成功は、ザイオン・アンド・レノックス(Zion & Lennox)のためにプロデュースした楽曲から生まれた。彼は700ドルでビートを販売したが、これは彼にとって初めて自分の音楽がお金になった瞬間であり、夢の実現であったと語る。

その後、ウィシン・イ・ヤンデル(Wisin & Yandel)のヒット曲をプロデュースしたことで、プエルトリコで彼の名前は広く知られるようになった。自分の曲がバイクや車の窓を全開にして爆音で流れているのを耳にした時、「成功した」と実感したとタイニーは語っている。

Wisin & Yandel – Pam Pam (Official Video)

 

メインストリームにまで届いた活動

そのキャリアはさらに加速し、2000年代のレゲトン黄金期を支え、数々のヒット曲を生み出してきたタイニーは、次第にその独特のサウンドで業界に欠かせない存在となる。

2010年代に入ると、コロンビアを代表するJ.バルヴィン(J Balvin)の楽曲やアルバムのプロデュースだけではなく、人気アニメの映画化第3弾『スポンジ・ボブ: スポンジ・オン・ザ・ラン』(2020年)では二人の共同名義として主題歌「Aqua」を発売。

Tainy, J. Balvin – Agua (Music From "Sponge On The Run" Movie)

さらに2026年の第68回グラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞し、スーパーボウルのハーフタイムショーにも出演して一躍時の人となったバッド・バニー(Bad Bunny)の作品にも多く参加しており、現在バニーのミュージック・ビデオの中でYouTubeで最も再生されているTOP3曲全てがタイニーがプロデュースで参加している楽曲だ(「DÁKITI」17億再生、「MÍA」16億再生、「CALLAÍTA」12億再生)。

BAD BUNNY x JHAY CORTEZ – DÁKITI (Video Oficial)

そして2018年、カーディ・B(Cardi B)、バッド・バニー、J.バルヴィンによる「I Like It」をプロデュース。この曲は全米シングルチャートで1位を獲得し、それだけではなく米BillboardやApple Music、Los Angeles Times、The New York Timesらが年間ベストソングで1位に選出し、ラテン音楽の枠を完全に超えたタイニーの影響力を決定づけた。

Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It [Official Music Video]

 

日本に影響を受けた自身のアルバム『DATA

2023年には、アーティストとして初めてのソロ名義のアルバム『DATA』をリリース。

人間関係とテクノロジーをテーマしたこのアルバムは、「歌によって命を吹き込まれたサイボーグのセナ(聖菜)を描く映画」として構想されたもので、そのジャケット写真をみてもわかるように日本の文化であるアニメに大きな影響を受けており、アルバムのアートワークには押井守監督による1995年のアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のアートディレクターを務めた小倉宏昌が担当している。

マイク・タワーズをゲストに迎えた1曲目の「obstáculo」のミュージック・ビデオの冒頭では日本語が大きく表示される。

obstáculo – Tainy, Myke Towers (Official Video)

ヤング・ミコとThe Maríasが参加した8曲目の「mañana」のヴィジュアライザーは、日本の地方にある神社で撮影したように思われる。

mañana – Tainy, Young Miko, The Marias (Official Visualizer)

このアルバムで極めつけなのはダディ・ヤンキー、フェイド、Sechが参加した11曲目の「La Baby」だ。バッド・ギャル、ベッキー・G、カミラ・カベロ、エレナ・ローズらのラテン音楽界を代表する女性アーティストが参加しているミュージック・ビデオでは「データ」「ギャル」「ガチ勢」といった日本語が何度も表示される。

LA BABY – Tainy, Daddy Yankee, Feid, Sech (Official Video)

12曲目の「me jodi…」のヴィジュアライザーも詳細は不明だが、どこかの舞台のようなところで撮影されている。

me jodi… – Tainy, Arcangel (Official Visualizer)

タイニーにBillboardのスペイン語版に自身とアニメについてこう語っている。

「日本の文化は、音楽制作を始める前から僕の人生において常に特別で影響力のある存在でした。アニメを観ることで幼い頃から想像力が広がって、細部へのこだわりや、日本の(他の芸術分野)にも触れたんです。アニメーションは想像力を拡張し、現実とは異なる…この世のものとは思えない何かを創造するために、何でも試してみようという気持ちにさせてくれると思います」

 

WBC公式サウンドトラック

そんな彼が今回、2026年のWBC公式サウンドトラックという、スポーツと音楽の世界を繋ぐ新たな挑戦を行った。

タイニーは様々な文化が交差するWBCの世界観を演出するため、世界中のトップアーティストとタッグを組み、日本語、韓国語、スペイン語、英語による多言語のサウンドトラックを創り上げた。

1曲目「Make It Count」には、ベッキー・G、TOMORROW X TOGETHERのYEONJUN、そしてラテン・グラミー賞に6度ノミネートされているマイク・タワーズが参加。ラテン・ポップ、レゲトン、そしてK-POPといった異なる音楽ジャンルを融合させ、複数の文化が交差するWBCの地位をより強固なものにしている。

2曲目のヤング・ミコ(Young Miko)をフィーチャーした「MVP」は、母国プエルトリコの誇りと、プエルトリコに深く息づく野球への情熱を刻み込んだ一曲。

3曲目のジャンルを超越したアーティストとして知られる藤井 風が参加した「My Place」は、野球のスピリット、そして前回大会の優勝国である日本の功績を祝した、タイニーとのボーダーレスなコラボレーション曲に仕上がっている。

今回担当することについて、タイニーは米Billboardでは次のように語っている。

「異なる文化や音楽スタイルを融合させ、多様なアーティストを起用して真にグローバルな作品を作り上げたことが全てです。プエルトリコでは、野球は常に生活の一部でした。だからこそ、私たちの素晴らしい野球の遺産を称えることは、常に大切にしていることなんです」

Written by uDiscover Team


Various Artists『2026 World Baseball Classic』
2026年3月6日発売
 iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



 

 

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