Columns
坂本花織選手の使用曲「Time To Say Goodbye」で話題のサラ・ブライトマンと幻の名曲録音秘話

1980年代から20年以上にわたって東芝EMIの洋楽ディレクターを務め、2025年には『東芝EMI洋楽部の輝ける日々』という書籍も発売した森 俊一郎さんが、“吉野家七味”として音楽出版社フジパシフィックミュージックの公式noteにて連載を執筆中。
今回はミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のフィギュアスケートにて銀メダルを獲得した坂本花織選手がショートプログラムの演技で使用して話題となっている「Time To Say Goodbye」を歌うサラ・ブライトマンについて。他の連載はこちら。
<関連記事>
・サラ・ブライトマン記事一覧
・坂本花織選手の使用曲「Time To Say Goodbye」が2050%と急上昇
楽曲に込められた本当の意味
サラ・ブライトマンと言えば「Time To Say Goodbye」ですかね、世間的には?アンドレア・ボチェッリとのデュエットで、1996年に発表された当時だけでも、ヨーロッパで1,000万枚を超えるセールス!と聞いた記憶がある。
タイトルから別れの歌(一方が一方へ別れを告げて去る…)と理解している人も多いかもしれないが、本来の歌詞(イタリア語)はむしろ逆で、「2人で旅立ち、見知らぬ場所で生きて行こう」という大意。WEBサイト『世界の民謡・童謡』からそのクライマックス部分の日本語訳を引用する。
旅立ちの時/見たことも行ったこともない場所で
あなたと生きていこう/君と旅立とう
船に乗って海へ/私は知ってる
もうどこにもない海/旅立ちの時
このように、恋人同士やパートナー同士が分かれる、という歌ではなく、この先の未来へ向けて“現在に別れを告げて二人で一歩踏み出す”ことだとわかる。
そう思って聴くと、2026年のミラノ・コルティナ五輪で、当大会を最後に競技人生から引退する坂本花織選手がショートプログラム用に選んだのがこの曲、というのは実にしっくりくる。これまでの競技人生からさらに次の高みへと進むために自分を勇気づけるような、そんな内容だからこそ選ばれた曲なのだろう。
団体戦や個人のショートプログラムの後にはサラ・ブライトマン本人から坂本選手に対して、選んでくれたことへの感謝のメッセージがサプライズで届いたという。いい話だ。
『ニュースステーション』テーマ曲の録音裏話
サラ・ブライトマン。アンドリュー・ロイド・ウェバーに見いだされ、ミュージカルの世界で脚光を浴びた。「オペラ座の怪人」もこの人、出てます。その後ソロ・アーティストとしてさらに世界的な名声は高まり、“クラシカル・クロスオーヴァー”というまさに大人の鑑賞に堪えるポップ・ミュージックのいちジャンルを開拓するに至る。
そんなサラが2003年に『Harem』というアルバムをリリースしたころ、筆者吉野家七味もサラの所属するEMIでまさにその担当部署で働いていた。コンスタントに来日公演も来ていたし、日本での人気はこの頃から”高値安定”で変わっていない。
そこに目を付けた東芝EMIは、2002年、かねてよりアプローチしていた念願のテレビ朝日系『ニュースステーション』のオープニング・テーマを獲得。「Sarahbande (サラバンド)」というタイトルから「アーティスト名からつけたタイトル」のように見えなくもないが、これはヘンデルによる「ハープシコード組曲第2番より第4曲」を基にしたフランク・ピーターソン(この2002年当時サラの公私にわたるパートナー、元”エニグマ”のメンバー)プロデュースによる新曲だ。
このヴォーカル・レコーディングに筆者はテレビ朝日のプロデューサーを案内して人生初のハンブルクへ。記録も記憶もないので正確ではないが、2002年7月1日オンエア分の「ニュースステーション」からオープニングに使われたということはその年の春に飛んで行ったはず。プロデューサーさんが二人へのお土産としてミニサイズの「琴」のかなりプロ仕様のおもちゃを持って行った記憶が鮮明にある。それをもらったとたんスタジオの調整卓のところで弾きこなし始めたフランクはさすがプロのミュージシャンであった。
さて、この「Sarahbande」ともかく音域が超絶に高く、ミュージカル出身にして世界でも有数のソプラノ・シンガーであるサラにとってもかなりのプレッシャーがかかっていたようだ。レコーディングが始まってしばらくたつとなかなか最高音を出すあたりで何度もやり直しの指示がフランクから出される。数回繰り返した後「しばらく休ませて」とスタジオに隣接する自宅へ引き上げてしまう。
けっこうピリピリした空気だったので日本人チームも心配したのだが、そこはさすがプロ。しばらくの休憩後、番組側が求める素晴らしいヴォーカル・レコーディングも終わり、日独双方ホッとする瞬間を迎えたのでした……めでたしめでたし!それにしてもフランク・ピーターソン、エナジー・ドリンクばかり飲んでいてサラに「いいかげんにしたら?」と突っ込まれること、我々滞在中の3日間にもしばしば(笑)、自由なドイツのオヤジでした(筆者よりちょっとだけ若いらしい)。
このオープニング、スケールの大きなCGの背景とともにとても好評だったが、1年強で「Sarahbande」のお役目も終了、その半年後には番組自体が終了となった。この曲は2003年4月に発売された前述のアルバム『Harem』日本盤だけのボーナス・トラックとして収録された。
では今日のところはそんな感じで。吉野家七味でした、バイバイ、またね!
Written by 吉野家七味 (連載はこちら)

サラ・ブライトマン『Amalfi』
2009年7月8日発売
CD / iTunes Stores / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
最新ベストアルバム
サラ・ブライトマン『A Starlight Symphony – Best Collection』
2025年6月25日発売
日本盤CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music
- サラ・ブライトマン アーティストページ
- サラ・ブライトマン、5年ぶりのアルバム発売。YOSHIKI作曲の楽曲も収録
- アンドレア・ボチェッリ、復活祭にミラノの大聖堂で無観客コンサートを実施
- アンドレア・ボチェッリの20曲:世界で最も愛されている歌手
- 他のアーティスのランキング記事など
- ボチェッリも収録:史上最高のデュエット100曲


















