コートニー・バーネット来日公演レポ:獰猛さを秘めつつもどこかチャーミングでロックなライヴ
4作目の最新スタジオ・アルバム『Creature Of Habit』を2026年3月27日に発売したオーストラリア出身のシンガー・ソンングライター、コートニー・バーネット(Courtney Barnett)。
彼女が7年ぶりとなる来日コンサートを東京・大阪・名古屋で行った。この東京公演の清水祐也さんによるレポートを掲載します。
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“君の貴重なアドヴァイスには感謝するけど/でも髪を綺麗に整えたりはしたくない/これが気に入ってるんだ、このままがいい”
3月にリリースされた最新アルバム『Creature of Habit』の収録曲「Great Advice」で、そんな風に歌っていたコートニー・バーネット。「ちいさい頃の自分がお婆ちゃんから言われてたことなんだけどね」とはライヴ前に楽屋で行ったインタビューでの本人の談だが、実に7年ぶりの来日公演となるこの日も、ルー・リードの「New Sensations」に乗せて、デビュー当時とほとんど変わらない風貌でステージに現れた。
そのお婆ちゃんの家のトイレに貼ってあった『くまのプーさん』のポスターにタイトルを由来するという2015年のファースト・アルバム『Sometimes I Sit and Think, Sometimes I Just Sit』でブレイクを果たして以来、多少の変遷こそあれど、ライヴではシンプルな3ピースのロックンロールにこだわってきた彼女。今回はステージ左手に陣取り、右手に10年来のベーシストであるボーンズ・スローン、中央にドラムセットという配置だったが、長年連れ添ったデイヴ・ムンディに替わってドラマーを務めるのが、LAのロック・バンド、ウォーペイントのステラ・モズガワだ。前作から共同プロデュースも手掛ける彼女が、時にリズムマシンやデジタル・エフェクトなどを駆使しながら繰り出す力強いビートは、まさにサウンドの中心。パンデミックの最中に制作され、ソロ・プロジェクトのようだった2021年の前作『Things Take Time, Take Time』とは対照的な、ロック・バンドとしての現在のコートニー・バーネットを象徴していた。
そんなこの日のライヴは、最新作のオープニングも飾るパンキッシュなナンバー「Stay Your Lane」からスタート。その後はクラウト・ロック風のハンマー・ビートが印象的なセカンド・アルバム収録の「City Looks Pretty」、トレードマークとも言えるトーキング・スタイルのヴォーカルを聴かせる初期EPからの「Avant Gardener」、さらにファースト・アルバム収録のブルージーな「Small Poppies」といった懐かしい曲が立て続けに演奏されたが、負けず劣らず輝いていたのが、最新作の収録曲だ。
カマキリを意味する「Mantis」の演奏が始まるとステージ後方に映し出されたのは、海外では幸運の兆しでもあるという、アルバムのジャケット写真のカマキリ。制作中はポール・マッカートニーの『McCartney II』を愛聴していたというコートニーだが、ポールと同じ左利きの彼女がボーンズと向かい合い、ギターのネックを客席に向けて演奏する姿は、まるで往年のビートルズのようだった。この曲を筆頭に、先行シングルだった「Site Unseen」や「Wonder」など、どの曲も自転車を漕ぐように緩やかなテンポとハーモニーが心地良く、アルバムが録音されたというカリフォルニア州ジョシュア・ツリーの、開放的な空気を運んでくれる。
そんな新曲と並んで、ライヴ中盤には同郷オーストラリアのバンド、ゴー・ビトウィーンズに影響を受けたというファースト・アルバムの名曲「Depreston」も披露されたが、この曲で聴けたようなコートニーのメロディ・メイカーとしての才能が全編に渡って堪能できるのが、最新作だと言えるだろう。
本編ラストを飾ったのも、アルバムではレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーがベースを弾いていた、最新作からの「One Thing At A Time」。コートニーがフリーと出会ったのは、パティ・スミスのデビュー作『Horses』のリリース50周年記念イベントだったそうだが、コートニーによればパティの髪型が本人の意思に反してフォトショップで加工されてしまうことがあったそうで、そんなエピソードも冒頭で触れた「Great Advice」の歌詞に反映されていたのかもしれない。今日も披露されたこの曲について、彼女はインタビューでこんな風に説明してくれた。
「でも、子供みたいにムキになるんじゃなくて、ちょっとガードを下げて、あなたの言ってることも実際は役に立つのかもねって、誰かの建設的な批判を受け入れるようになる、そんな曲でもあるんだよね」
アンコールではひとりでステージに戻ってきたコートニーがギター1本で最新作からの「Mostly Patient」を弾き語ると、ボーンズとステラも加わり、ファースト・アルバムからのアンセム「Pedestrian At Best」と「Nobody Really Cares If You Don’t Go To The Party」の連発で、熱狂に包まれたままライヴは終了。曲によって様々な表情を見せ、「デヴィッド・ボウイみたいに見た目がコロコロ変わるのもいいと思う」と話してくれたコートニーだが、「じゃあ、次のアルバムが出る頃には髪型が変わってたりして?」と尋ねると、「たぶんね」と首をかしげておどけてみせた彼女は、獰猛さを秘めつつもどこかチャーミングな、ジャケット写真のカマキリのようだった。
Written By 清水祐也 / Photo by Erina Uemura
コートニー・バーネット『Creature Of Habit』
2026年3月27日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
<来日公演日程>
6月16日(火) 名古屋 NAGOYA CLUB QUATTRO
6月17日(水) 東京 Spotify O-EAST
6月18日(木) 大阪 Yogibo META VALLEY
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