YouTubeからテレビに進出した「永野CHANNEL」:仕掛け人が語るこれまでの変遷とこれから

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2020年6月10日に開設されたYouTubeチャンネル「永野CHANNEL」が、2025年12月、BSテレ東にてテレビ番組『永野CHANNEL TV』として番組化され、毎週金曜日の24時から全4回限定で放送されている。

「永野CHANNEL」の発起人兼プロデューサーであり、時には新井Dとして動画にも出演、今回の『永野CHANNEL TV』でもプロデューサーを務める、制作会社IVS41の取締役・テレビ番組演出家・監督の新井勝也さんにお話を伺いました。

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永野がYouTubeを始めた時

── 早速ですが、『永野CHANNEL』を始めたきっかけを教えていただけますでしょうか?

新井:きっかけはちょうどコロナ禍の時期でした。地上波のテレビだけでなく、みんなが「次どうしようか」と模索していた中で、「YouTubeをやってみようか」という話が出てきまして。当時、グループカンパニーにいた「レッドガオ」のREOTOという若手芸人と、僕が昔ロケで一緒だった縁で食事をする機会があったんです。そこで「永野さんでYouTubeをやってみたい」という話になり、永野さんやマネージャーさんを紹介してもらったのが始まりですね。当時はまだ明確に音楽の話をしようといったことではなく、「何か一緒にできたら」という感じでした。

── 多くの芸人さんがいらっしゃる中で、なぜ永野さんだったのでしょうか?

新井:一つには、まだ芸人さんがYouTubeにそこまで積極的に参入していないタイミングだったことがあります。それと僕の中で、永野さんは「ラッセン」で知られる存在ではありましたが、いまいち掴みどころがないというか、世間的には「ラッセンしか知らない」という状況だったと思うんです。でも、トークや他のネタに関する永野さんのスキルや存在感は、コアなお笑いファンから熱烈な支持があった。その部分が世に出たら話題になるのではないか、という予感がありました。

── 新井さんは、永野さんが音楽や映画にお詳しいことは事前にご存知だったのですか?

新井:全然知らなかったです。僕はどちらかというと、永野さんの世界観があるネタを映像化したら面白くなるんじゃないかと思っていて、元々はそっちの方向でした。逆に映画に詳しいことはラジオの発言などで知っていましたが、音楽に関してはここまでとは……。だから最初はネタをやりたかったんです。

── 最初にアップされたのはカミナリさんとの動画でした。あの動画は「THEお笑い芸人のYouTube」という感じでしたが、意図があったのですか?

新井:最初は「ネタを映像化しませんか」と提案したんですが、永野さんにとってネタは聖域であり、YouTubeという当時まだよく分からない場所で無料で配信することに抵抗があったようです。それで、とりあえず事務所の後輩であるカミナリも交えて、それっぽいコンテンツをやってみようというスタートでした。

 

── 最初の方は再生数や反響はどうだったんですか?

新井:全然回ってなかったですね(笑)。それをネタにしていたくらいです。その後、『マヂカルラブリーno寄席』などで永野さんのガヤやトークが注目され始めましたが、当時はまだ「ラッセンの芸人」というイメージが強かったので、トークの面白さは、僕も当時は理解しきれていませんでした。「あ、この人トークもスバ抜けてる」と気づくのはもう少し後ですね。

 

音楽や映画を語り始める

── 今や国民全員が知っていますが、当時はそんなイメージはなかったですね。最初に4本ほどカミナリさんとの動画をあげて、その後、映画『パルプ・フィクション』についての動画を取り上げられました。

新井:改めてそんなに早かったですか。早めに「やべえ、ネタ動画は厳しい」と思ったんでしょうね(笑)。最初は単純に永野さんがお好きな映画だからという理由でした。僕の方からも、永野さんが映画に詳しいことは知ってたので、話を振っていたかもしれません。

── これが最初にグッと反応があった感じですか?

新井:いえいえ、当時は全然です。今見ると18万回も再生されていますが、それは後から伸びた数字ですね。

── その後、ニルヴァーナの回など音楽ネタが増えていきますが、当時は永野さんはあまり音楽の話はしたくなかったそうですね?

新井:永野さんも仰っていますが、やる事がないから嫌々話した、みたいな(笑)。自分の影響を受けたものをあまりつまびらかにしたくなかった人だと思うので、結構苦し紛れだったと思います。

── 新井さん的に「手応えがあった」と感じたのはどの動画ですか?

新井:ザ・スミスの回ですかね。エミネム、スタローンなどを経てザ・スミスを取り上げたあたりで、コメントの反響もありましたし、単純に再生数の勢いが良かったです。ただ、完全にブレイクスルーしたのはリンプ・ビズキットの回です。あそこで急に回りましたね。

 

音楽への特化

── リンプ・ビズキットの回が跳ねた理由は分析されていますか?

新井:YouTubeの気まぐれなアルゴリズムだと思っています(笑)。未だに分からないです。ただ、当時リンプを真正面から語る人はいなかったんですよね。教科書に載るようなレジェンド級のバンドについては語る人が多いですが、リンプは爆発的に売れたものの、歴史的には語られにくい存在でしたから。「あ、そんな狭いところ行くか」とは思いましたが、他の動画に比べて熱量が大きかったんだと思います。

── SNSなどの反応も違いましたか?

新井:「待ってました!」という感じで、ファンの熱量が違いましたね。正直、リンプをやりたいと言い出したのは永野さんからで、僕らは「なんでリンプ?」とクエスチョンマークでした。でもファンの方々が飛びついてくれたのは大きかったです。

── それ以降、音楽に特化していくわけですね。他に思い出深い回はありますか?

新井:『スポーン』のサントラ回ですね。金子ノブアキさんも大好きと言っていましたが、今『スポーン』を取り上げるって、90年代を供養する番組ですよね(笑)。我々世代の音楽ファンにとっては絶対に通った道ですし、あの当時のロックとテクノの融合みたいな音楽が、個人的には一番かっこよかったんじゃないかと未だに思っていて。イナタさも含めて。

── 確かに。レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『One Hot Minute』回などもそうですが、よくある「当時の権威主義への批判」というか、「俺たちもそう思ってたぜ!」という攻めが共感を呼んだ気がします。

新井:そうですね。この辺りはすごく攻めてますよね。

 

ゲストと一番好きな回

── ちなみにゲストのブッキングはどうされているんですか?

新井

金子ノブアキさんに関しては、永野さんが本(『僕はロックなんか聴いてきた』)を出すタイミングで対談をする機会があって、出版社さんに乗っかった感じです(笑)元々、映画『MANRIKI』などでご一緒して仲が良かったので。千原ジュニアさんは向こうのチャンネルからのオファーでした。ジュニアさんのチャンネルに永野さんが出るコラボ企画で、僕は撮影にも行っていないんです。ギターウルフのセイジさんも本の対談がきっかけですね。永野さんが大ファンなのでリクエストを出したんだと思います。

── 新井さんが個人的に一番好きな回はありますか?

新井:洋楽ではないですが、『稲村ジェーン』ですね。僕がサザンオールスターズが好きでBlu-rayを買って勧めたら、永野さんが「『レポマン』みたいだ!」とハマって。「ベストワンくらい気に入りました」となって動画で語ったら、桑田佳祐さんがラジオで「永野チャンネルで語ってくれた」と触れてくださったんです。夜中に二人でLINEして盛り上がりました。あれは印象深いです。

── 永野さんはサザンをずっと聴いてらしたんですか?

新井世代なので聴いてはいたと思いますが、どこまで深く聴いてたかは知らなかったです。僕たちはお互いの音楽や映画の趣味をそこまで探ったことはないんですよ。話してみると「大体知ってるよね、被ってるよね」という感じで話が通じるだけで、厳密な音楽談義みたいなことはあまりしたことがないですね。ただ、同時代で、広く洋楽を聴いてきた世代なので、なんとなく共通体験がある感じです。毎回「次は何にしましょうか」と二人で話し合って決めています。

 

『永野CHANNEL THE MOVIE』

── 『永野CHANNEL』から派生して、映画『MAD MASK』の制作もされていますね。

新井そうですね、『永野CHANNEL THE MOVIE』と言っていいと思います。きっかけは、以前コントを映像化して短編オムニバス映画として山形国際ムービーフェスティバルに出したことでした。そこで大きなスクリーンで観て、面白いという声をもらったんです。その後、永野さんと斎藤工さんの関係性や、金子ノブアキさんとの熱い雑談から「本当に作りましょうか」と加速していきました。金子さんがすぐに乗ってくれたのは大きいです。

── 映画制作となるとスタッフィングなども大変そうですが。

新井:いや、ここまでのオールスター映画になるとは思っていなくて(笑)。最初は短編映画のつもりで、ミュージシャンが作る長いMVみたいな感覚でスタートしたんです。でも、永野さんの交友関係もあって、金子ノブアキさんやA.B.C-Zの戸塚祥太さん、斎藤工さん、さらにアイナ・ジ・エンドさん、といった主演級のキャストが集まってしまって大作っぽくなりましたが、予算も決めていないし、公開日も決まっていない状態で、とりあえず台本と絵コンテを作って3日くらいで撮りました。でも、結局編集してたら話が膨らんできて、かなり追撮しました(笑)。

── ゴア描写などがかなりリアルでしたが。

新井:そこはしっかりした方に作ってもらいました。それとアナログ撮影の良さが出ていると思います。CGだと血の流れとかも計算通りになりますけど、アナログだと予想してなかったリアルな動きになるので、演者もマジでビビるんですよ(笑)。NGカットの方がキモチ悪いみたいな。それが撮れたのが面白かったです。

── 海外の映画祭にも出品されていますが、反応はいかがでしたか?

新井:国によって全然違いましたね。イタリア、韓国、あとウィーンの映画祭にも入選しました。イタリアでは笑いが起きていましたし、韓国ではすごく真面目に、作品の意味も含めて深く考えて観てくださっている感じがしました。言葉は分からなくても、永野さんのパフォーマンスが持つプリミティブな面白さが伝わったのかもしれません。

 

テレビへの進出

── そして、BSテレ東での『永野CHANNEL TV』放送をお聞かせください。今回テレビに進出した経緯は?

新井:たまたまBSテレ東のプロデューサーさんと別の仕事でお話ししていた時に、「永野CHANNEL 見てます」と言われて。そこからトントン拍子で「永野CHANNEL TVという名前でやってみます?」という話が進みました。「出会い」と「ノリ」ですね(笑)。

── 反響はいかがですか?

新井:YouTubeを見ていたファンの方はもちろん、それ以外の方からも「永野さんがこんなに音楽に詳しいとは知らなかった」「深夜にこういう番組があるのは嬉しい」といった声をいただいています。これを機にレッチリを聴いてみようという方もいて、入り口になれたのは良かったですね。

── TVerなどでも配信(1か月)されますが、見どころを教えてください。

新井:YouTubeよりも、もしくは変わらず、いい意味で「不親切」だと思います(笑)。初心者向けの入門編的な説明はせず、同世代やファンの人が友達と話しているような感覚をそのまま届けています。でも、大人がこれだけ熱く語っているんだから、きっと悪いものではないだろうと思ってもらえれば。
知識の深さというよりは、「熱量」と「広さ」を楽しんでほしいですね。評論家の方は専門的に深く掘り下げる方が多いですが、僕らの世代はロックもヒップホップもテクノも、いい意味で軽薄に全部聴いていた世代なので、話があちこちに飛ぶ面白さがあると思います。「広く、ちょっと深い」、マグマにぶち当たるくらいの深さというか。評論家の方はマグマを超えて冷たい岩盤まで行っちゃってる気がするので(笑)。

── 分かりやすいですね(笑)。最後に、今後の『永野CHANNEL』の展望があれば教えてください。

新井:次は「永野CHANNELフェス」をやりたいですね。映画が先にあって実現できていなかったんですが、実際にチャンネルに出てくれた金子ノブアキさんやヒャダインさん、D.Oさんや、ギターウルフのセイジさん、A.B.C-Zの戸塚祥太さんなど、おかげさまでアーティストとの繋がりは広がっているので。あわよくば海外のアーティストも呼んで(笑)。ラジオ、書籍、テレビ、映画、コント番組と、永野CHANNELを中心にいろんなメディアに広がってきているので、僕としては全て勝手に「永野チャンネル○○」だと思って応援しています。屋号こそ違えど。

── 『永野CHANNELコンピレーションアルバム』なんかも期待してしまいます。

新井:いいですね! リンプとガンズを並べた2枚組とか(笑)。ニルヴァーナはどっちに入れるんだ、みたいな。

── ぜひ実現させてください! 本日はありがとうございました。

新井:ありがとうございました!


『永野CHANNEL TV』

2025年12月毎週金曜日 深夜24時00分~24時30分
放送局:BSテレ東(BS 7ch)全国無料放送
番組公式HP

広告付き無料配信サービス「TVer」などで見逃し配信
TVer / ネットもテレ東

放送回
12月5日:レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
12月12日:ニルヴァーナ
12月19日:プリンス
12月24日:U2


YouTube永野チャンネル

https://www.youtube.com/@nagano-channel


 



 

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