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『スター・ウォーズ』の未来につながる物語:『スター・ウォーズ:アソーカ』の音楽

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 2023年8月22日にディズニープラスにて配信されたドラマシリーズ『スター・ウォーズ:アソーカ』。

アナキン・スカイウォーカーの生涯唯一の弟子にして、二本のライトセーバーを操る伝説の”元”ジェダイ、アソーカ・タノが主役のこのドラマについて、そして巨匠ジョン・ウィリアムズから多くを学んだケヴィン・カイナーによる音楽について、井筒 節さんに解説頂きました。

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スター・ウォーズ:アソーカ | 本予告 | Disney+(ディズニープラス)

 

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が2019年に劇場公開され、42年の時をかけて紡がれてきた「スカイウォーカー家」の物語が幕を閉じてから、4年。その間、世界は激動の時代を経験し、『スター・ウォーズ』も大きな変化を遂げてきた。その一つに、新たなオリジナル作品が、ディズニープラスで次々と発表されるようになったことも挙げられるだろう。

そんな新しい『スター・ウォーズ』の時代、『マンダロリアン』と並んで、もっとも話題と人気をさらった作品の一つが、2023年8月から配信開始された『スター・ウォーズ:アソーカ』の全8エピソードだ。

1977年公開の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から始まるオリジナル3部作や、1999年公開の『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』からの旧3部作を観て育った世代はもちろん、映画はオンタイムで観ていないが、2008年に始まった3Dアニメーション・シリーズ『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』を子供時代に自宅で観て育った世代からも愛されてきた特別なキャラクター「アソーカ」の物語だ。

アソーカは、宮崎駿監督の『もののけ姫』に登場するサンに影響を受けて生み出されており、日本とも関連深い。そして、近年公開予定の『スター・ウォーズ』新作映画の一つが、アソーカの物語となる予定であることから、本作は、『スター・ウォーズ』の未来につながる、最も重要なプロローグとも言えるのだ。その意味で、2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』以降のファンの方にとっても、是非視聴していただきたい作品だ。

 

アソーカとは何者か

主人公アソーカ・タノは、今やスター・ウォーズ・ファンの間で最も人気があるキャラクターの一人でありながら、実は、『スター・ウォーズ』の劇場公開映画には一度も登場しないユニークなキャラクターだ。実写映画9本または11本を全て鑑賞したのに彼女を「知らない」という方も多いはず。

トグルータ族のアソーカは、後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの生涯唯一の弟子=パダワンで、ライトセーバーを二刀流で扱う伝説の“元”ジェダイ。

アソーカは、ジョージ・ルーカス製作総指揮、デイブ・フィローニ監督の2008年の劇場公開版を皮切りに、テレビとオンライン配信を通して愛されてきたアニメーション・シリーズ『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』で登場し、活躍したキャラクターだ。『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』と『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』の間を描いた『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』は、2018年のファイナル・シーズンまで、10年に渡って発表されてきた7シーズン133話からなるストーリー(その後、2021年から2023年にかけて、関連作品である『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』が配信された)。

『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』では、戦争の時代に生を受けたアソーカが、アナキンのパダワンとして戦う中で、多くの命と心を救い、傷つきつつも、成長していく様子、そして、その後、ジェダイ騎士団から去ることとなる経緯や、アナキンや仲間たちとの深い絆や痛みが描かれる。

更に、ディズニープラスで配信された『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ』(2022)ではアソーカの幼少期などが描かれた他、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』と『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の間の帝国支配時代を描いた『スター・ウォーズ 反乱者たち』では、宇宙船ゴーストで帝国に立ち向かうエズラ、ケイナン、ヘラ、サビーヌ、ゼブ、チョッパーの仲間として登場した。

テイルズ・オブ・ジェダイ|予告編|Disney+ (ディズニープラス)

『スター・ウォーズ:アソーカ』とほぼ同時代を描く『マンダロリアン』(2019~2023)(シーズン2第5話)や『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021)(シーズン1第6話)にも、ディン・ジャリンやグローグー、そしてあの伝説のジェダイと共に登場する。すなわち、劇場映画には登場しないにも関わらず、数々のスター・ウォーズ作品に登場してきた、唯一無二の存在なのだ。

これらの作品を視聴していない方には、ディズニープラスで公開されている記事「アソーカ・タノの活躍をおさらい!アナキンとの出会いやライトセーバーの戦闘スタイルも」が大いに参考になる。

 

『スター・ウォーズ:アソーカ』

そんな彼女を中心に描いた作品が『スター・ウォーズ:アソーカ』。ジョージ・ルーカスの思いを継ぐデイブ・フィローニのもと、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』の続きとして実写化されることを想像していたファンを驚かせたのは、本作が、『スター・ウォーズ 反乱者たち』の「続編」でもあったということだ。

驚きといえば、今回、アソーカ・タノを演じるのはロザリオ・ドーソンだが、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』の日本語版において、10年以上に渡りアソーカの声優を務めてきた伊藤静が続投していることも、これまで同作品を日本語で視聴してきたファンを歓喜させた。そして、果たして『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』時代のアナキンや、『スター・ウォーズ 反乱者たち』のエズラを実写で観ることができるのか。

この物語の舞台は、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』後、帝国が崩壊してから一定の時を経た銀河。『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』からも『スター・ウォーズ 反乱者たち』からも大分時が経っているのだ。

今回初めて実写で登場するのが、『スター・ウォーズ 反乱者たち』でダース・ベイダー亡き後、帝国軍を率いる存在として登場した、最大の敵スローン大提督。スローン大提督は、これまでのヴィランとは一線を画し、敵の文化や心理を把握した上で戦略を練る知性派。その存在は、反乱者たちや多くの人々を苦しめてきたが、エズラの活躍で、彼と共に遥か遠くへと消えた(スローン大提督を演じるのは、『ローグ・ワン』でゲイレン・アーソを演じたマッツ・ミケルセンの兄ラース・ミケルセン)。

本作では、そんなスローン大提督をめぐり、アソーカ、『スター・ウォーズ 反乱者たち』の懐かしいキャラクター、そして新たな魅力ある登場人物たちが活躍する。

更に、これまでの『スター・ウォーズ』とは別の銀河が初めて登場し、また、時空を超えた謎の「世界の狭間の世界」が再び描かれる点でも注目を集めている。これまでの『スター・ウォーズ』にはほぼ存在せず、一方で、これからの新しい『スター・ウォーズ』の世界線とつながっていく可能性があるため、すでに様々な考察が飛び交っている。

スター・ウォーズ:アソーカ|日本版本予告|Disney+ (ディズニープラス)

 

『スター・ウォーズ:アソーカ』の音楽

この作品の音楽を担当したのは、ジョン・ウィリアムズから多くを学び、今では『スター・ウォーズ』の音楽を最も多く書いた音楽家とも言われるケヴィン・カイナー。『CSI:マイアミ』等の音楽を手掛けた後、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』、『スター・ウォーズ 反乱者たち』、『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』、『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ』でも音楽を担当してきたベテランだ。

若かりし頃は、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、オールマン・ブラザーズ・バンド、イエス等が好きな、ガレージバンドのギタリストで、クラシック出身ではない。かつて演劇をやっていたことも、『スター・ウォーズ』において、脚本やキャラクターを理解した上で音楽を作る際、役立っているそうだ。

『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』では、ルーカスから、ジョン・ウィリアムズの『スター・ウォーズ』の世界を原点に、新たにワールド・ミュージックやエスニック楽器を取り入れるよう指示された。様々な星独自の文化を描くためだ。また、ルーカスは、常に新しい音楽を追求し、ヒップホップ等の最新CDをカイナーに手渡しては、参考にするよう伝えたという。

そのようなこともあって、ウィリアムズには見られない、エレクトロニックな音楽も多い。世界中で愛されるアイコニックなウィリアムズの音楽のパワーに葛藤しつつも、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』のオープニング曲では、「スター・ウォーズ」のテーマを五拍子に編曲し直すなど、各所に工夫がこらされている。一方で、ウィリアムズのテーマも、スパイスのように時折顔を出す。その様や、音楽の形式は、作品によってカラーが少し異なる。

例えば、『スター・ウォーズ 反乱者たち』では、劇場版『スター・ウォーズ』に近いクラシック音楽が基調となり、ウィリアムズが作ったテーマ曲が多用されるようになった。近年は、カイナーの息子、兄ショーンと弟ディーンも曲作りに参加している。こうして、ルーカスやフィローニと共に作られた最初の楽曲であるアソーカのテーマの他、ショーンによるサビーヌやスローンのテーマ等、様々な登場人物のテーマや、惑星のテーマ等が作られ、これからの『スター・ウォーズ』においても様々な場面で意味を持つであろう、ライトモチーフ群も生み出されてきた。

Kevin Kiner – Ahsoka – End Credits (From "Ahsoka"/Visualizer Video)

『スター・ウォーズ:アソーカ』では、『マンダロリアン』の世界観とも相通ずるような新たなテーマソング、そして、そこかしこに登場するアソーカやサビーヌ等のテーマ、時を経たスローン大提督を描く独特なおどろおどろしい響き、そして、時に、ウィリアムズの作曲したテーマが適材適所で登場する。これまでのカイナー作品と比べても、更にパワーアップし、様々な作品の要素を集めて強化したような、壮大な音楽だ。

これらの響きは、ウィリアムズの音楽と共に、これからの『スター・ウォーズ』においても、重要な意味を持つことになるだろう。『スター・ウォーズ:アソーカ』のサウンドトラックには、Vol. 1とVol. 2があり、様々な音楽配信サービスにて、楽しむことができる。是非、『スター・ウォーズ』全体のプレイリストと併せて体感しながら、『スター・ウォーズ』の未来に思いを馳せよう。

Written by 井筒節


ケヴィン・カイナー
『スター・ウォーズ:アソーカ – Vol. 1 (Episodes 1-4)(オリジナル・サウンドトラック)』
2023年9月15日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music / LINE MUSIC

ケヴィン・カイナー
『スター・ウォーズ:アソーカ – Vol. 2 (Episodes 5-8)(オリジナル・サウンドトラック)』
2023年10月6日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music / LINE MUSIC

スター・ウォーズ公式プレイリスト
『スター・ウォーズ ベスト』
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