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『プーと大人になった僕 オリジナル・サウンドトラック』ジェフ・ザネリのインタビューを公開

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2018年9月14日から公開されるディズニー映画、『プーと大人になった僕』。あわせて9月12日にサウンドトラックが発売されたことを記念して、本作を担当した作曲家ジェフ・ザネリのインタビューをお届け。インタビュアーは映画音楽ライターの森本康治さんです。


 

世界中で愛されている人気キャラクター、「くまのプーさん」を新たな構想で実写映画化した話題作『プーと大人になった僕』(2018)。当初、本作の音楽は『博士と彼女のセオリー』(2014)と『ボーダーライン』(2015)でアカデミー賞作曲賞にノミネートされたヨハン・ヨハンソンが担当することになっていた。しかしヨハンソンは2018年2月9日に死去したため、新たにジョン・ブライオンが音楽を担当することになり、その後ジェフ・ザネリが加わって、最終的にブライオンとザネリの二人でオリジナル・スコアの作曲を手掛けることになった。

今回の『プーと大人になった僕』の日本版サウンドトラック・アルバムのリリースにあたって、筆者は昨年の『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)サウンドトラック・アルバムに続いてザネリにインタビューすることができたので、ここでは彼のコメントをもとに本作の音楽を紹介していきたいと思う。

―『プーと大人になった僕』はあなたとマーク・フォスター監督との初めてのコラボレーションであり、ジョン・ブライオンと共同で作曲に臨むのも今回が初めてだと思います。あなたはどのような経緯で本作に参加することになったのでしょうか?

マーク・フォスターとディズニー映画音楽部門代表のミッチェル・リーブから連絡があったんだ。彼らはこの映画に参加したいかどうか聞いてきたんだけど、僕は長年「くまのプーさん」の大ファンだったから、すぐに話に乗ったんだよ!僕は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの音楽にずっと携わってきてディズニーと長い付き合いがあるし、たぶん彼らは『ティモシーの小さな奇跡』(2012)での僕の仕事を思い出して連絡してきたんじゃないかな。

―彼らとの共同作業はいかがでしたか?

ジョン・ブライオンは既に驚くほど見事な音楽を作曲していた。例えばクリストファー・ロビンとプーさんが丸太の上に腰かけて語らうシーンで、彼の素晴らしい曲を聴くことができるよ。僕の仕事は、映画のほかの場面にそれとは異なるカラーを持たせることだったと思う。僕は映画のオープニングで流れるメインテーマを作曲して、それが映画全体を通して演奏されるようになったんだ。それからクリストファー・ロビンの家族のための音楽も書いたんだ。イヴリンとマデリンは物語の重要なキャラクターだし、クリストファー・ロビンと一緒に”100エーカーの森”への美しい旅に出るわけだからね。

マーク・フォスターは監督として、とても深いところまで作品に携わっていた。彼は映画に明確なヴィジョンを持っていたから、それを実現する手助けができて嬉しかったよ。この映画を観たら美しい映像に気がつくと思うけど、マークはとてもアーティスティックな手法を用いるんだ。彼は観客の心を深く感動させるような方法に常にチャレンジしている。多くの監督はこういうことを躊躇してしまいがちだけど、マークは違うんだよ!

―この映画の音楽を聴いた時、プーさんの素朴さや温かさ、そして少年時代のクリストファー・ロビンの純真さのようなものを感じました。

いい表現だね!そう、僕はプーさんの心をストレートに描くようにしたんだ。

―この物語の世界観をどのように音楽で表現しようと考えたのでしょうか?

(くまのプーさんの原作者)A.A.ミルンは本の中で、プーさんについて”A bear of very little brain(脳みそがちっちゃな熊)”という表現を使っていたけど、同時にプーさんは”A bear of very big heart(大きいハートを持った熊)”でもある。これがとても重要なアイデアだった。プーさんのために曲を書くうえでのインスピレーションになったんだ。この映画はクリストファー・ロビンの物語ではあるけれども、物語の中心にあるのはプーさんの広い心なんだ。大人になったクリストファー・ロビンが、再び家族のことを第一に考えるようになるきっかけを与えてくれたものだからね。

この映画の素晴らしい要素のひとつに、マークの映像での色の使い方がある。ある時は鮮やかで、またある時は抑えたトーンで、その色調の変化が曲作りにも大きな影響を与えてくれたんだ。僕はオーケストラ以外にも様々な楽器を使って、映像と同じくらいカラフルなスコアを作りたいと考えた。アコースティックギターのようなシンプルなものから、ジャズ・ベースのように弾いたチェロとか、ワイングラスとか、ジョン(・ブライオン)がロンドンで見つけてきた音が無限に伸びる特殊なピアノとか、いろいろ使ったよ。

―『プーと大人になった僕』の音楽の全体的なコンセプトはどのようなものだったのでしょう?

スコア全体のコンセプトとしては、映画の撮影手法と同じような”マジカル・リアリズム”なタッチの音楽にしたいと考えた。個性的な性格を持ったぬいぐるみの動物たちが人間と会話するような世界を、観客が自然に受け入れられるように、音楽にも”ハンドメイド”なクオリティが求められた。この映画の音楽はちょっと夢心地で、子どもらしさが感じられる場面も確かにあるよね。この物語は、映画を観ている人の子ども時代の想像力と再びつながるような内容だから、音楽はそれを手助けするものであるべきだと考えたんだ。


映画音楽の巨匠ハンス・ジマー率いる「リモート・コントロール・プロダクションズ」に所属し、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『シークレット ウインドウ』(2004)、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』(2015)などの音楽製作に携わったジェフ・ザネリと、ポップ・ミュージック界でプロデューサー/マルチミュージシャンとして高い評価を受け、映画音楽でも鬼才監督たちに重用されているジョン・ブライオン。彼らが作り出したメロディアスで創意工夫にあふれるオリジナル・スコアと、”ディズニー・レジェンド”の作詞家/作曲家シャーマン兄弟の弟で、今年90歳を迎えたリチャード・M・シャーマンが本作のために書き下ろした3曲の貴重な新曲を、『プーと大人になった僕』のサウンドトラック・アルバムで是非楽しんで頂きたいと思う。

Interviewed & Written by 森本康治(映画音楽ライター)
Special thanks to Geoff Zanelli and Bob Badami


©2018 Disney Enterprises, Inc.

『プーと大人になった僕 オリジナル・サウンドトラック』 発売中
日本盤のみボーナス・トラック1曲収録


ディズニー最新作 『プーと大人になった僕』
2018年9月14日(金)全国ロードショー
公式サイト http://disney.jp/Pooh-Boku

《ストーリー》
『美女と野獣』のディズニーが「くまのプーさん」を実写映画化!100エーカーの森を飛び出したプーと仲間たちは、大人になった親友のクリストファー・ロビンと奇跡の再会を果たすのだが・・・。ロンドンを舞台に、忘れてしまった「大切なモノ」を思い出させてくれる感動の物語。主役のクリストファー・ロビンを、『スター・ウォーズ』シリーズの名優ユアン・マクレガーが演じる。


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