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イヤホン×スマホで楽しむドルビーアトモスのすすめ:立体音響で聴くおすすめクラシック13選

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クラシック音楽、イヤホンでは聴きづらいと感じたことはないだろうか。

先日、ユニバーサルミュージックのスタジオにお邪魔して、Dolby Atmos®︎(ドルビーアトモス)と呼ばれる音響技術についてお話を伺った。

ドルビーアトモスは従来のステレオ方式と比べて、高い没入感を得られる立体音響技術。本来は天井や壁にいくつものスピーカーを設置しなければドルビーアトモスの音響を楽しむことはできないが、実はスマホとイヤホンを活用することで自宅でもドルビーアトモスを楽しむ方法があったのだ。

前回のスタジオ取材編に続き、今回はドルビーアトモス実践編。スマホとイヤホンを使った実際の設定方法や、ドルビーアトモスに対応したクラシック作品をまとめた“ドルビークラシック・プレイリスト”をご紹介する。ピアニスト・編集者・ライター門岡明弥さんによる寄稿。


ドルビーアトモスを楽しむために必要なモノ

iOS15.1以降を搭載したiPhoneかドルビーアトモスに対応したAndroid端末(対応機種一覧はコチラ)があれば、イヤホン(ヘッドホン)は有線でもワイヤレスでもOK。日本ではApple Music、Amazon Music Unlimitedのみドルビーアトモスに対応しているため、どちらかのサービスに加入したら準備万端だ。

ちなみにApple製品には特定のイヤホンとiPhoneが連動することで頭の向きを判別するダイナミック・ヘッドトラッキング技術が用いられている。頭の向きに合わせて音の位置を逆算的に配置してくれるため、以下のイヤホン(ヘッドホン)を持っている方はぜひiPhoneと合わせて使ってみてほしい。イヤホンで再生しているにも関わらず、まるで会場で聴いているような感覚を得られることだろう。

• AirPods Pro (第1または第2世代)
• AirPods Max
• AirPods (第3世代)
• Beats Fit Pro

設定方法も楽ちん

スマホとイヤホンを用意したら、あとは本体の設定を行おう。僕はiPhoneを使っているので、実際のスクリーンショットをお見せしながら紹介していく。

画像の通りではあるが、ドルビーアトモスを有効にするためには以下3つの手順を踏めばOKだ。

① 「設定」を開き、「ミュージック」をタップ
② 「オーディオ」の下にある「ドルビーアトモス」をタップ
③ 「自動」「常にオン」のどちらかを選択

Appleのサイトを見ると、有線のヘッドフォンを使う場合は「常にオン」を選択しておくといいとのこと。

コントロールパネルからドルビーアトモスのオン・オフを切り替える(①を長押し)ことも可能だ。ダイナミック・ヘッドトラッキングに対応したイヤホンを使っている場合は、③でヘッドトラッキングの設定も行えるため、お好みで設定を変更するのも◎。

ドルビーアトモス音源の見分け方

現状では全ての楽曲がドルビーアトモスに対応しているわけではないが、ドルビーアトモス対応の作品は再生中の画面にバッジが表示されるようになっている。

曲単体ではなく、アルバムに収録されている全ての曲がドルビーアトモスに対応している場合も、アルバムの詳細ページにバッジが表示されるためわかりやすい! Apple MusicとAmazon Music、どちらもこの仕様になっているため、ドルビーアトモスの作品を探すときはバッジをチェックしよう。

ここまでiPhoneを使ったドルビーアトモスの設定方法を詳しく紹介してきたが、もちろんiPadやMacなどの機種でも楽しむことは可能である。また、Androidの場合は機種ごとに設定方法も異なるため、ご自身の端末に合った方法を各公式サイトで確認してみてほしい。

早速、プレイリストを聴いてみよう

ドルビーアトモスを楽しむ準備は整っただろうか? 冒頭で触れた通り、今回はドルビーアトモスに対応したクラシック作品を集めたプレイリストを作成したため、早速聴いていただけたら嬉しく思う。ピアノ・ソロに室内楽、交響曲にオペラまで。あえてさまざまな編成の作品をピックアップしてみたので、聴こえ方の違いを楽しんでいただけるハズ!

1.P.I.チャイコフスキー:《くるみ割り人形》より〈花のワルツ〉

《くるみ割り人形》の中で最も有名な曲であり、チャイコフスキーのメロディ・メーカーとしての才能が遺憾なく発揮された名曲。ハープの即興的独奏の後、ホルンにより主題が提示され、メリーゴーランドを彷彿とさせる絢爛豪華なワルツへ。ドルビーアトモスで楽しむ〈花のワルツ〉、各パートがより聴き分けやすくなったことで多幸感に満ちたメロディの存在感が際立つ。

2.F.ショパン:《24の前奏曲》より第1番

J.S.バッハの《平均律クラヴィーア曲集》に影響を受け、平均律における全ての調性を用いてショパンが書き上げた作品だ。1曲1曲が極めて簡潔に書かれており、第1番は本作品のはじまりにふさわしい期待感とロマンに満ちている。ハ長調のアルペジオに乗って、短い曲でありながらもグラデーションのように移ろう色彩美。空間に溶ける響きを楽しんでみて。

3.ドビュッシー:《ベルガマスク組曲》より第3曲〈月の光〉

ドビュッシーが生み出した作品の中でも、特に有名な1曲。題名の通り、幻想的な月夜を思い浮かべられる曲想だが、元々はフランスの詩人・ヴェルレーヌが生み出した詩からインスピレーションを受けているのだそう。この詩には、楽しいことも悲しいことも全てがひとつとなった曖昧な世界が描かれており、そんな世界観がピアノ1台で表現されている。

4.E.ワイルド:《ガーシュウィンによる7つの超絶技巧練習曲》より第1曲〈アイ・ガット・リズム〉

《ラプソディ・イン・ブルー》や《サマータイム》に続く、ガーシュウィンの有名曲《アイ・ガット・リズム》。アメリカの作曲家、ピアニストであるアール・ワイルドの手によって、“超絶技巧”の作品へと生まれ変わった。クラシックとジャズの要素が見事に混ざっており、あまりの華々しさに思わず笑みがこぼれてしまうだろう。

5.R.シューマン:《子供の情景》より第7曲〈トロイメライ〉(ミロシュによる編曲)

シューマンのロマンティシズムが遺憾なく発揮された曲集《子供の情景》。その中でも、第7曲目に位置する〈トロイメライ〉は「夢」や「夢想」にふけることを意味し、終始穏やかで幻想的な空気が漂う作品となっている。本来はピアノ独奏曲だが、ギター・アレンジ版はより夢見心地な曲想に。

6.C.フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調より第1楽章

フランクが晩年に作曲した、唯一のヴァイオリン・ソナタ。この作品は友人のヴァイオリニスト、イザイの結婚祝いに書かれたことでも有名で、言わずと知れたヴァイオリン界の名曲だ。ここまで独奏曲が続いたこともあり、同じドルビーアトモス作品でもデュオ作品になると聴こえ方はどのように変わるのか……、ぜひ味わってみてほしい。

7.F.クライスラー:《愛の喜び》

デュオの次は、ピアノ・トリオをお届けする。エネルギッシュなテンポで曲が展開されていき、2拍目を少し早めに演奏する“ウィンナ・ワルツ”の要素が取り入れられた快活な作品。本来はヴァイオリンとピアノのために書かれた作品だが、こちらはフルート、ヴァイオリン、ピアノのトリオ編成に。溌剌とした音色が心地いい。

8.J.S.バッハ:《甘き死よ来たれ》BWV 478(シェク・カネー=メイソンによるチェロ五重奏編曲)

新進気鋭のチェリスト、シェク・カネー=メイソンがJ.S.バッハのコラールをチェロ五重奏版に編曲した作品。先日、ご本人にインタビューをさせていただく機会があったが、5本のチェロが合わさったらものすごく特別な響きになるだろうと思い、チェロのアンサンブルを深く考えてアレンジを進められたのだとか。ぜひインタビュー記事もチェックしていただけたら嬉しく思う。

9.J.S.バッハ:《2つのヴァイオリンのための協奏曲》BWV1043より第3楽章(ヤーノシュカ・アンサンブルによる編曲)

“鍵盤の魔術師”と称されるピアニスト、フランティシェク・ヤーノシュカが率いるヤーノシュカ・アンサンブル。J.S.バッハの精神性やバロック音楽の構造美を尊重しつつも、その上にジャズの色彩を添えることで、J.S.バッハの名曲が変貌を遂げた。かつてこれほどの編曲があっただろうか……、ヤーノシュカ・アンサンブルの手にかかれば、あの名曲もここまで痛快な作品に!

10.L.v.ベートーヴェン:《ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲》より第1楽章

3名のソリストによって熱演が繰り広げられる、ベートーヴェンのトリプル・コンチェルト。複数のソリストが演奏する協奏曲作品はあまり多くはなく、ピアノ・トリオとオーケストラの響きが融合した稀有な作品。各ソリストの技巧はもちろん、3つの楽器がトリルを重ねるクライマックスの盛り上がりには、思わず圧倒されてしまう。

11.L.v.ベートーヴェン:交響曲 第7番より第1楽章

「ベト7」と言えば、「のだめカンタービレ」。バレエ音楽を思わせるリズムに明朗快活なメロディが特徴の作品で、一度耳にしたら忘れないキャッチーなフレーズは聴く人の心を勇気づけてくれる。この作品の持つ中毒性は、どこかポピュラー音楽にも通ずるところあるのではないだろうか。

12.F.ショパン:ピアノ協奏曲 第2番より第1楽章

出版順は逆になってしまったが、ピアノ協奏曲第2番は第1番よりも先に作曲されたため、実質的にはショパンが初めて生み出したピアノ協奏曲である。多くのピアノ協奏曲には“カデンツァ”と呼ばれるアドリブ風のソロが盛り込まれているが、この作品にはそれがない。しかし、全体を通してカデンツァのような華々しさを持ったパッセージが散りばめられているため、ショパンのピアニズムを終始感じられる作品となっている。

13.G.プッチーニ:歌劇《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉

中国の北京を題材にしたオペラ《トゥーランドット》。その中でも特に有名な曲が、〈誰も寝てはならぬ〉だ。トゥーランドット姫と結婚するためには3つの謎を解く必要があったのだが、姫に一目惚れしたカラフ王子はそれらを全て解いてしまう。しかし、それでも姫はカラフ王子の求婚を受け入れなかったため、カラフ王子は「夜明けまでに私の名を当てたら、命を捧げる」と、逆に謎掛けを出したのであった。勝利を確信したカラフ王子が歌い上げるアリア、それが〈誰も寝てはならぬ〉だ。

何百回聴いた作品でも、新しい発見がある

さまざまな編成でお届けしたプレイリスト、お楽しみいただけただろうか。

前回の取材編ではユニバーサルミュージックのスタジオでドルビーアトモス音源を聴かせていただいたが、あのシステムをスマホ×イヤホンで擬似的に楽しめるのは本当に素晴らしいなぁと感じている。

ドルビーアトモスで聴くことによって各パートの音がよりハッキリ聴こえたり、演奏者が目の前にいるようなライヴ感を味わえたりするため、これまで何十回、何百回と聴いた作品でも全く違った音楽体験を得られるのだ。ヘビロテしてきた曲でも、聴き方を変えるだけで新しい発見があるなんて、このうえない喜びではないだろうか……。

ドルビーアトモスに対応した作品はどんどん増えているため、もしかしたらあんな作品やこんな作品もドルビーアトモスで配信されていくのかもしれない。これからも“耳”が離せない!

Written By 門岡明弥


※Dolby、ドルビー、Dolby AtmosおよびダブルD記号は、アメリカ合衆国とまたはその他の国におけるドルビーラボラトリーズの商標または登録商標です。



 

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