ヴァイオリン協奏曲トップ10:ブラームス、ブルッフ、パガニーニなど最高のヴァイオリン協奏曲10選

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ブラームス、ブルッフ、メンデルスゾーン、チャイコフスキーなどの作曲家によるヴァイオリン協奏曲の最高傑作トップ10

協奏曲の演奏では、奏者にそなわった技巧の最高のものが発揮され、ソリストとオーケストラが、たがいに音楽を通じて対話を交わし、力を競いあう。ソリストのパートは奏者にそなわった能力の、最高のものが発揮できるように書かれており、難度の高い圧倒的なカデンツァなども登場する。

バッハからショスタコーヴィチにいたるまで、ヴァイオリン協奏曲はいつの時代にも変わることなく、クラシック音楽の世界で愛されつづけている。

このヴァイオリン協奏曲トップ10にはベートーヴェン、ブラームス、ブルッフ、メンデルスゾーン、チャイコフスキーなどの作曲家による、最高傑作が集められている。お好きな作品を選んで、お楽しみいただきたい。

10:サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲 短調

1880年に、サン・サーンスによって書かれたこの協奏曲は、聴き手を魅了すると同時に、演奏者にとっては悪夢のような作品である。冒頭部から爆発するような迫力を感じさせるが、一瞬にして沈んだマルカートへと変化して奏でられる主題は、空中高く舞い上がる。

そして驚くべき早さの16分音符による長いパッセージへと変化して、第1楽章が締めくくられる。続く第2楽章はゆっくりめで、ほっとする印象をあたえる。そして終結部では、ふたたび花火のような圧倒的迫力が甦る。

 

9:ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 長調

この作品はブラームスが書いた唯一のヴァイオリン協奏曲である。ブラームスの友人で、ヴァイオリンの名手でもあったヨーゼフ・ヨアヒムを奏者に想定して書かれた。ブラームスはこの作品を書くあいだ、食事以外のすべての時間をこの協奏曲にそそいだ。

演奏がきわめて難しい数曲のカデンツァ(ヨーゼフ・ヨアヒム自身が書いたカデンツァも1曲残っている)には、超絶技巧を必要とする。このヴァイオリン協奏曲は、聴く者の耳にまさに至福のときをもたらす傑作である。ブラームスが、ヴァイオリンのために協奏曲を2曲しか残さなかったのは、いかにも残念なことだ。

 

8:ベルク:ヴァイオリン協奏曲 第1

この作品は、多くの点でふつうのヴァイオリン協奏曲とはちがっている。ベルクは、伝統的な協奏曲が十二音音楽にあたえた影響を具体的に音で表現し、管弦楽部分でも、野獣のような独奏部分でも、それを明白にあらわそうとした。

その結果生まれたのが非日常的な音の世界であり、それがこの作品を一段と魅力的にしている。ベルクは伝統的なものと革新的なものとを、巧みに融合させたのだ。このヴァイオリン協奏曲の傑作を、私たちは今回の企画からはずすわけにはいかなかった。

 

7:パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲

 その名前が、ヴァイオリン名奏者の代名詞となったパガニーニ。彼の名は作曲家としてよりも、ヴァイオリンの名手としてのほうが知られているかもしれない。だが、彼の書いたヴァイオリン協奏曲は、この分野の名作のひとつであり、曲の中で使われている、巧みで華やかな技巧は名人級と言えよう。

それがみごとに読み取れるのは、第3楽章の〈ラ・カンパネラ〉である。この部分でパガニーニは、ヴァイオリンのさまざまな奏法を巧みに取り入れている。左手を使ったピツィカート、ダブルストップの和音、あまりに速すぎて、指がついていけないほど目まぐるしく移動する音。指示どおりのスピッカートを実現するには、弾き手に勇気が必要だ。そのかわり、うまく弾けたときには、驚異的な効果がある。

 

6:ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 第1長調

ショスタコーヴィチはスターリンの独裁政権時代には、不遇の身を強いられた。そんな彼の苦悩が、彼が残した苛立つような音楽作品の中に、鮮明に聞き取れる。

このヴァイオリン協奏曲もその一例である。1947年に書かれた作品だが、初演は1955年だった。この協奏曲には、彼の暗黙の叫びがこめられている。嘆きにみちた第1楽章では、第2ヴァイオリンのソロが、オーケストラと対抗しあう。ショスタコーヴィチの作品上の署名とも言える「D」音が、くり返しあらわれる美しい旋律の中に溶け込んでいる。

 

5:シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 短調

この作品は、シベリウスが書いた唯一のヴァイオリン協奏曲である。ソリストは低音部のオーケストラ的な響きを思わせる伴奏にのって、感傷的で美しい旋律を奏でる。この暗く沈んだ雰囲気は、3つの楽章全体にわたって漂っている。

それを強く感じさせるのが、シベリウスがソリストに要求している深い響きだが、それには超絶技巧が求められる。だが名ヴァイオリニストの手にかかれば、そうした技巧的な面を超えて、このヴァイオリン協奏曲の名曲全体に漂う、ほの暗い詩のような雰囲気のほうが強く心に響くようになる。

 

4  ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 長調

ヴァイオリンの協奏曲集では、ベートーヴェンが書いたヴァイオリン協奏曲の名曲を、はずすわけにはいかない。意外なことに、多作であったベートーヴェンが、ヴァイオリン協奏曲はこの1作しか書いていない。

だが、作品の内容はきわめて質が高く、数あるヴァイオリン協奏曲のなかでも間違いなく傑作のひとつであり、ヴァイオリン奏者であれば誰もが演奏したがる作品となった。この作品にはロマン派の詩情があふれていると同時に、超絶的な技巧が要求されており、それが燃えあがるようなフィナーレで頂点に達し、長いカデンツァと、美しさにあふれる旋律を形作っている。聴き手は、ひたすら心を奪われてしまう。ぜひともお聴きいただきたい。

 

3:チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 長調

この協奏曲は、ヴァイオリンではあまりに演奏が難しい部分があるため、以前は「ヴァイオリンにふさわしくない」と考えられていた。レオポルト・アウアー、カール・ダヴィドフ、エミール・ソーレなどのヴァイオリンの名手たちでさえ、この作品を弾きたがらなかった。

そんなふうにこの協奏曲が無視されたなか、1879年に、さいわいにもレオポルト・ダムロシュがこのすぐれた協奏曲をみずから演奏し、以来この作品はヴァイオリン協奏曲の名曲となった。

 

 2:メンデルスゾーン/ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 短調

ブルッフの協奏曲と同じCDに収められているメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、時代を超えて人びとに愛される名曲である。冒頭部からヴァイオリンが勢いの良いドラマティックな主題で、聴き手の心を奪う。そしてソリストとオーケストラとのあいだに鮮やかな応答があり、つねにオーケストラのほうが押され気味である。

最後は明るいパッセージへと向かい、かなりな力わざが要求される、活気あふれるスピ.ッカート(弓を弦の上で跳躍させる奏法)で頂点に達する。この協奏曲はヴァイオリンのために書かれた名曲のひとつであり、演奏される機会も非常に多い。

 

1:ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 1 短調

  ブルッフは協奏曲の傑作をいくつか書いている。その作曲時期は、最初に書かれたこの第1番ト短調(1866)から、スコットランド幻想曲(1879~1880)にいたるあいだに集中している。

そしてヴァイオリン協奏曲第1番は、とりわけ人びとに衝撃をあたえた。この作品は、数あるヴァイオリン協奏曲の中でも、美しさと豊かさと詩情が難度の高い演奏技巧と一体となった、名曲のひとつである。

おすすめの録音
アンネ=ゾフィー・ムター(Vn)/ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団
ムターは、こう語っている。「カラヤンは私に、スコアの中から全体を通して感じられる“流れ”を見つけなさい、基調となる長いフレーズの中で音を同じように並べて弾くのではなく、ひとつひとつの音を音楽の流れにそぐわしいものとして、考えながら演奏しなさいと教えてくれました。その言葉は、私の記憶の中に、特別な力をもって宿っています」。

フランツペーター・メスマーは、ライナーノートの中で、こう記している。「ねばり強いリハーサルと、すばらしい理解力を通して、カラヤンはアンネ=ゾフィー・ムターから、当時のレコード全盛時代に要求されていた技巧面での完璧さだけではなく、自然そのものの音までも引き出した。彼女が世界的な名声をえた背景には、カラヤンの力があったと言えるだろう……」

Written By uDiscover Team



 

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