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ガンズ・アンド・ローゼズ『Live Era ’87–’93』: メンバーが語る唯一のライヴ盤の経緯とその内容

ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)が1999年に発売したバンド唯一のフル・ライヴ・アルバム『Live Era ’87 -’93』。このライブ盤が初めてリマスターされて2025年11月21日にアナログ・レコードと日本のみCDが発売となった。
このアルバムができるまで、そしてその内容など、当時のメンバーが語るインタビューを引用しながらご紹介。
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長年の構想
ガンズ・アンド・ローゼズの初のライブアルバムは、忍耐強いことで知られるファンにとっても、まさに待望の一枚だった。1999年11月にリリースされた2枚組アルバム『Live Era ’87-’93』は、全盛期のガンズが放つ爆発的なパワー、比類なきショーマンシップ、そして抗いがたいロックンロールの姿勢を、まざまざと思い起こさせる作品であった。
このアルバムの構想が初めて示唆されたのは、1994年にまでさかのぼる。当時、フロントマンのアクセル・ローズとギタリストのスラッシュが、ロサンゼルスのラジオ局KLOS-FMの番組『Rockline』に出演。ファンからの質問に答える中で、1991年1月から1993年7月にかけて行われた大規模ツアー『Use Your Illusion』で録りためた、膨大なライブ音源の存在をほのめかしたのだ。アクセルはこう語った。
「俺たちは全公演を録音してきた。その中から何かを編集しようとは以前から話していた。まだ全編を聴き直す時間すら取れていないんだ」
スラッシュは冗談めかして「要するに、全編を聴き通せる忍耐力のある人間を探しているんだ」と付け加え、アクセルはさらに壮大な構想を明かした。
「映画を作りたいんだ。ここ数年のツアーでやったことは全部映像に収めてある。ドキュメンタリー映画を作って、それにサウンドトラックを付けたい」
アルバム制作の経緯
あのインタビューから5年が経ち、最も楽観的で忍耐強いファンでさえ、あのライブ音源が公式に日の目を見ることを諦めかけていたかもしれない。バンドがオリジナル楽曲のフルアルバムを最後にリリースしたのは1991年9月の『Use Your Illusion I』と『II』であり、その後ガンズは事実上の崩壊状態にあった。
創設メンバーであり、アクセルの主要な共作者でもあったリズム・ギタリストのイジー・ストラドリンは1991年11月に脱退。スラッシュが1996年10月に続き、1997年8月にはベーシストのダフ・マッケイガンがバンドを去り、『Appetite For Destruction』時代のオリジナル・メンバーはアクセル・ローズただ一人となった。彼はその後も、次々とメンバーを入れ替えながら、次作『Chinese Democracy』の制作を続けていた。
ここで登場するのが、ガンズのロード・マネージャーであり、『Live Era ’87-’93』の陰の立役者であるデル・ジェームズだ。彼はこのアルバムの制作に計り知れない貢献をした。1999年にアクセルがMTVで次のように語っていた。
「彼は数年にわたり断続的に作業にあたり、『Use Your Illusion』ツアーの全公演のDATテープを聴き込み、入手可能な全てのテープを調べ、未公開テープを探し出し、録音した人物を探し当てた。そうして、ガンズ・アンド・ローゼズの活動期間全体を通して、最高品質の録音素材を把握してくれたんだ」
アクセルはさらに、『Live Era ’87-’93』がバンドの第一期に終止符を打つための作品だったと示唆している。
「これは、一つの時代への別れの言葉として世に送り出したかったものだ。当時の音源を聴いたり、関係者と関わったりするのは……感情的に、決して楽な作業ではなかった」
一方、スラッシュはこのアルバムの制作過程で、かつてのバンドを再評価することになった。彼は音楽誌『Rock Hard』にこう語っている。
「まず、代表曲を網羅するセットリストを考えなければならなかった。このアルバムで、バンドのありのままの姿を正直に見せることが、俺にとって重要だったんだ。これまで、レコーディングとミキシングが終わった後のアルバムを聴き返すことはなかった。でも今回、このテープの山を掘り起こしているうちに、当時の俺たちがどれだけ凄かったかを実感したんだ」
ライブの栄光を捉える
『Live Era ’87-’93』は、冒頭の数秒から、ガンズのライブが持つ圧倒的な興奮を捉えている。ダフのベース・テクニシャンであり、バンドの隠れた人気者であるベーステックのマクボブがこう唸る。
「最高のものが欲しいか? だが奴らは時間通りに出てきやしねえ。だから代わりにこいつらをくれてやる――ハリウッドから来た、ガンズ…アンド…ローゼズ!」
観客の歓声が爆発する中、バンドは『Appetite For Destruction』収録の「Nightrain」の堂々たる演奏を叩きつける。完璧なオープニングだ。無軌道な生き様を讃えるこの曲には、ロックンロールの精神そのものが宿っている。アクセルが「クラッシュして燃え尽きる準備はできてるぜ」と臆面もなく歓喜に満ちて叫ぶ姿から、スラッシュが繰り出す綱渡りのようなギタープレイまで、そのすべてがそれを物語っている。
驚くべきことに、そのエネルギーは「Mr. Brownstone」でも衰えることはない。これも『Appetite For Destruction』収録のナンバーで、歌詞は快楽の闇を描いている。この曲で観客は狂乱の渦に巻き込まれ、アクセルは演奏を中断して「何人もの奴が担ぎ出されるのを見た……ショーは始まったばかりだぜ……心配するな、俺たちはまだまだやるからな」と観客に落ち着くよう呼びかける。このMCを収録した判断は、フロントマンとしての彼の観客掌握術を示すだけでなく、全盛期のガンズを取り巻いていた熱狂的な雰囲気を伝えるのに一役買っている。
とはいえ、同世代最高のロックンロール・バンドを目の当たりにすれば、観客が興奮するのも無理はない。『Live Era ’87-’93』には、扇動的な楽曲が満載だ。ふてぶてしさが見事な「It’s So Easy」に続き、アクセルの「お前らはジャングルにいるぜベイビー、目を覚ませ、死ぬ時だ!」という楽しげな叫びで始まる、パワフルな「Welcome To The Jungle」が炸裂する。
イジー・ストラドリンがリードボーカルをとる、スウィートの「Blockbuster」を80年代サンセット・ストリップ風にアレンジしたような、グラムロック調の「Dust N’ Bones」も収録。さらに「My Michelle」「You’re Crazy」「Pretty Tied Up」といった豪快なロックナンバーの連打が、絶頂期のバンドが放つ、狂おしいほどの魔法を捉えている。
『Live Era ’87-’93』は、バンドの繊細な側面も垣間見せる。1993年4月のメキシコシティ公演で録音された、『GN’R Lies』収録のパワーバラード「Patience」のアコースティック・バージョンがそれだ。観客はオープニングのリフを聴いた瞬間から主役となり、歌詞の一言一句を歌い上げ、アクセルの声をかき消すほどである。それは並大抵のことではない。
この曲はスラッシュにもアコースティック・ギターの腕前を披露する機会を与え、息をのむようなソロの後、エレクトリックなフィナーレへと雪崩れ込む(1992年1月ラスベガス公演より)。その雰囲気は、アルバムの中でも特に感動的な瞬間へと続いていく。
アクセルがピアノの弾き語りでカバーしたブラック・サバスの「It’s Alright」が内省的なムードを作り出し、その後、12分半に及ぶ「November Rain」が「叙事詩」という言葉の定義を塗り替える。セットの後半では、ボブ・ディランの「Knockin’ On Heaven’s Door」の長尺カバーが大合唱へと発展。アクセルが「レゲエをくれ!」と叫ぶと、バンドは即座に応じ、ディランの名曲をアップテンポのスカ調へと変貌させ、観客を熱狂させたのは言うまでもない。
代表的なキラーチューンは終盤に固められている。バンドが持つ名曲の層の厚さを思い知らされる展開だ。ジェット燃料を噴射したような「Rocket Queen」、圧倒的な輝きを放つ「Sweet Child O’ Mine」、感情を揺さぶる「Estranged」、そして最後に「Paradise City」を灼熱の演奏で駆け抜ける。しかし、LP版にはさらなるサプライズが用意されていた。めったに演奏されなかった『Use Your Illusion』収録曲「Coma」の生々しいライブバージョンだ。
この「Coma」音源は、新たにリマスターされた4枚組LP再発盤や日本のみのCD『Live Era ’87-’93』にも収録されている。スラッシュはこの曲について2000年に『Player』誌で語っている。
「レコードに入れた“Coma”は、俺たちがライブでやった初回か2回目の演奏だと思う。あのツアー全体で、たぶん2、3回しかやらなかった。とにかく複雑で…イジーはあの曲をやる時、ステージにコード進行を書いたテーブルサイズのカンペを置いていたくらいだからな」
『Live Era ’87-’93』のリリースは、バンドの輝かしい功績をファンに再認識させるだけでなく、彼ら自身にも、失ったものの大きさを自覚させた。スラッシュは2000年に『Guitar World』誌でこう語っていた。
「ガンズは今でも俺の心の奥底にいる。死ぬまで忠誠を誓うつもりだ」
2000年1月の『Rolling Stone』誌による貴重なインタビューで、アクセルもまたバンドの栄光の日々を懐かしみ、「昔のバンドを俺以上に愛した奴はいない」と語った。『Live Era ’87-’93』は、この二人の世代を代表する才能がなぜそう感じたのかを、雄弁に物語っている。
最高のものが欲しかったか? ならばこれがそうだ。ボリュームを上げろ。
Written by Jamie Atkins

2025年11月21日
CD / LP / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
ガンズ・アンド・ローゼズ『Appetite For Destruction』
1987年8月21日発売
BOX SET / CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music
- ガンズ・アンド・ローゼズ アーティストページ
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