4日間で録音され9曲がカバー曲だったザ・ローリング・ストーンズの1stアルバム

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ザ・ローリング・ストーンズのファースト・アルバムは、1964年4月中旬に発売された。それから4年後、ミック・ジャガーはこう語っている。「ファースト・アルバムはとても好きだね。ライヴでよくやってた曲がたくさん入ってるから」。このアルバムの録音に費やされた期間は、1964年の1月の初めに2日間、2月末にさらに2日間の合計4日間。この1964年1~2月という時期のストーンズは毎日ツアーやライヴをこなしていた。それをふまえると、最初のアルバムのレコーディングでよく知っていた曲を採り上げたのは当然のこと。また、そうした曲は彼らの大のお気に入り曲でもあった。

イギリスでリリースされたデビュー・アルバムに収録されている楽曲のうち、9曲は他アーティストのレパートリーのカヴァー、1曲はミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作曲で、残りの2曲はメンバー全員の共作だった(うち1曲はフィル・スペクターから少し力を借りている)。レコーディングはすべてリージェント・サウンドで行われた。ここはロンドンのスタジオの中でもとりわけ設備がお粗末で、ただし使用料は安い場所だった。オーヴァーダビングはほとんど行われていない。このアルバムの仕上がりは、ストーンズのライヴ・サウンドにかなり近いものになっている。どの曲も、ここまでの1年間にノンストップで続いたツアー生活のあいだに演奏が磨き抜かれていた。

当時ザ・ローリング・ストーンズのマネージャーだったアンドリュー・ルーグ・オールダムは、舞台裏でかなりクリエイティヴな働きをしていた。このファースト・アルバムでは、そうした働きぶりがピークに達している。彼は自分の手腕に自信を抱いていたし、ストーンズに対してもかなりの信頼感を抱いていた。それゆえ、アルバム・ジャケットにはグループ名や紹介文は一切出さず、写真だけで勝負することにした。もしレコード会社の許しさえあれば、デッカ・レーベルのロゴも外したかったところだろう。

『THE ROLLING STONES』に収録されている9曲のカヴァー・ヴァージョンの出所は以下の通りだ。
・「I Just Wanna Make Love To You」: ウィリー・ディクスンが作った曲で、マディ・ウォーターズが1954年4月に録音。
・「Route 66」: もともと1946年6月にキング・コール・トリオが全米R&Bチャートでヒットさせた曲。ただしストーンズのヴァージョンは、1962年のチャック・ベリーのカヴァーに影響されている。
・「Honest I Do」: 1957年10月に全米R&Bチャートのトップ5に入ったジミー・リードのヒット曲。彼にとっては全米ポップ・チャートでの最大のヒットとなった(最高32位)。
・「I Need You Baby (Mona)」: 1957年のボ・ディドリーのヒット曲。
・「I’m a King Bee」: 1957年のスリム・ハーポの曲。
・「Carol」:1958年9月に全米R&Bチャートでヒットしたチャック・ベリーの曲。全米ポップ・チャートにも入っている(最高19位)。
・「Can I Get a Witness」: 1963年11月に全米R&Bチャートと全米ポップ・チャートでヒットしたマーヴィン・ゲイの曲。バック・コーラスにはシュープリームスが参加。
・「You Can Make it If You Try」: 1958年1月に全米R&Bチャートのトップ5に入ったジーン・アリソンのヒット曲(全米ポップ・チャートでは最高36位)。
・「Walking the Dog」: 1963年10月に全米R&Bチャートのトップ5、全米ポップ・チャートのトップ10に入ったルーファス・トーマスのヒット曲。

このファースト・アルバムは、全英チャートで5月上旬から12週間も首位を獲得。そして1年間に渡ってチャートに留まっていた。また発売から2カ月後には、『England’s Newest Hitmakers』と改題され、ザ・ローリング・ストーンズ初の米国盤アルバムとして発売された。

Written by Richard Havers



ザ・ローリング・ストーンズ『The Rolling Stones』

  



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