ファッツ・ドミノの代わりにピアノを弾いた19才のアラン・トゥーサン

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2015年11月10日、唯一無比のミュージシャン、アラン・トゥーサンがこの世を去った。彼の死は、R&Bの世界にとって大きな損失だった。ここでは、彼が初めてレコードに登場したときのエピソードを紹介しよう。それは1957年のこと。当時19歳のアラン・トゥーサンは、大スターのファッツ・ドミノそっくりに演奏するように頼まれた。アラン・トゥーサンにとって、ファッツ・ドミノはずっと前からレコードで親しんでいた歌手だった。

アラン・トゥーサンは子供時代からニューオーリンズ郊外で暮らしており、音楽面ではファッツ・ドミノとこの街のもう一人の人気者だったプロフェッサー・ロングヘアから影響を受けていた。1957年、スタジオ・ミュージシャンとして独り立ちしようとしていたアラン・トゥーサンは、ファッツ・ドミノの曲「I Want You To Know」でピアノを弾くことになった(ただしアラン・トゥーサンの名前はどこにもクレジットされていない。当時はそれが当たり前だった)。

1988年のNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)のインタビューで、アラン・トゥーサンはそのレコーディングのときの裏話を語っている。「あのころは、他の人とそっくりに演奏すると受けが良かったんだ。私はまだ自分の個性をはっきり確立していなかった。だからどこかでレイ・チャールズやファッツ・ドミノみたいに弾けるピアニストが必要になると、私にお呼びがかかることがよくあった。向こうも承知していたからね。あいつに頼めば望み通りのピアノが聴けるって」

「そうしてファッツ・ドミノが仕事でニューオーリンズを留守にしていたとき、デイヴ・バーソロミューが私に連絡してきた。デイヴはファッツのプロデューサーで、たくさんの曲を共作していた人だった。そのデイヴが、ファッツのようなピアノを弾いてくれと言うんだ。曲は‘I Want You To Know’と、もう1曲、女学生が出てくる曲だった。それでスタジオに行って演奏して、それが私の駆け出し時代の大事件になったわけさ。ミュージシャン仲間のあいだでは、別に秘密でも何でもなかった。みんな知っていたし、まあ楽しかったね」

「I Want You To Know」は、その年の後半にファッツ・ドミノのシングル「The Big Beat」のB面で発表された。A面の「The Big Beat」はウィリアム・レイノルズ主演の映画の主題歌。そちらは全米ポップ・チャートで最高26位を記録している。とはいえ当時ファッツ・ドミノは大人気だったため、B面の「I Want You To Know」もトップ40入りのヒットとなった。チャートには11週ランク入りし、最高32位に達している。

Written by Paul Sexton



ファッツ・ドミノ『They Call Me the Fat Man (The Legendary Imperial Recordings)』

   

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