スティーヴィー・ワンダーが初めてプロデューサーとしてクレジットされた「Signed, Sealed, Delivered I’m Yours」と多数のカバー

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2017年4月に開催されたロサンゼルス拠点に、重度の障害を持つ才能ある子供たちをサポートする非営利団体アート・オヴ・エリュシオンによるチャリティのためにルーファース・ウェインライトが「Signed, Sealed, Delivered I’m Yours(邦題:涙をとどけて)」を見事に再構築したヴァージョンをリリースした。これをきっかけに、このスティーヴィー・ワンダーの1970年のNo.1 R&Bヒットの歴史を振り返ってみよう。モータウンの名曲であると同時に、この曲の歴史にはピーター・フランプトン、マイケル・マクドナルド、スティーヴィー・ワンダーの元妻シリータなども含まれている。

スティーヴィー・ワンダーと時折コラボレートしていたリー・ギャレットと共に、この曲を制作したのがシリータ・ライトだった。この二人の男は、ジャーメイン・ジャクソンのヒット曲でスティーヴィー・ワンダー自身も歌っている「Let’s Get Serious」、そしてスピナーズのヒット「It’s A Shame」も共作している。また、リー・ギャレットもイギリスでは1976年のトップ20入りした自身のヒット曲「You’re My Everything」でも知られていた。

スティーヴィー・ワンダーとシリータ・ライトはこのオリジナル楽曲のリリースから数週間後に結婚した。そしてこの共作曲のクレジットには実はもう一人、スティーヴィー・ワンダーの母親である故ルーラ・メイ・ハーダウェイの名前も連なっている。のちに、スティーヴィー・ワンダーは、彼がメロディ作りをしている時に母親がそのタイトル・フレーズを呟いたと話している。1970年6月、スティーヴィー・ワンダーがモータウンで、よりクリエイティヴ面での主導権を求め始めた頃にこの曲はリリースされた。初めてプロデューサーとして彼の名前がクレジットされたシングルだった。また、グラミー賞に初めてノミネートされた曲でもあった。

1970年の8月と9月に「Signed, Sealed, Delivered I’m Yours」は、R&Bチャートで6週間トップを獲得するという素晴らしい記録を達成し、ソウル・チャートでは「Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Day」以来2年ぶり、自身6曲目となる1位を獲得した。また、全米シングル・チャートで2週にわたって3位を記録し、世界的にも知名度を上げて全英チャートで最高15位にランクインした。2003年には、同曲をボーイ・バンドのブルーが新しいヴァージョンとしてリリース、スティーヴィー・ワンダーもゲスト参加し、アンジー・ストーンをフィーチャリングしたこの曲でまたチャート入りを果たした。

しかし既に70年代時点で「Signed, Sealed, Delivered I’m Yours」は他にも色々なカバー・ヴァージョンで世の中に知られていた。ソウルフルなジャズ・オルガニストのジミー・マクグリフは1971年にカヴァーに挑み、サクソフォンのマエストロ、キング・カーティスも崇拝されているアルバム『Live At Fillmore West』でカヴァーした。1970年代のポップの逸材、オズモンズも1975年にモータウン・メドレーにこの曲を取り入れ、ピーター・フランプトンもアルバム『Frampton Comes Alive』の次作『I’m In You』に収録し、タイトル・トラックに続き、このアルバムからのセカンド・シングルとしてもリリースし、全米18位を記録した。

また、グウェン・マックレイ、チャカ・カーンやルビー・ターナーなど、ソウルフルな女性ヴォーカリストたちもこの曲を歌い(チャカ・カーンのヴァージョンにはスティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加)、共作者シリータも同じく、1980年にモータウンからリリースした『Syreeta』に収録している。

ルーファス・ウェインライトの2017年版の「Signed, Sealed, Delivered I’m Yours」では、ピアニストのダヴマンことトーマス・バートレットが演奏し、この曲を新たにバラードの領域に引き込み、偉大なるモータウンの曲の物語の最新版として語り継いだ。

Written by Paul Sexton




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