エリオット・スミス『XO』:アカデミー賞ノミネート後のメジャー移籍第1作

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才能に溢れ複数の楽器を使いこなすエリオット・スミスは、インディからリリースされたLP『Roman Candle』、『Elliott Smith』、そして『Either/Or』の頃から熱狂的なファンが生まれ、1997年のアカデミー賞受賞映画『グッド・ウィル・ハンティング』のサウンドトラックに彼の曲が数曲収録されることにより世界から注目を浴びるようになった。

そのアカデミー賞にて「Miss Misery」は最優秀オリジナル楽曲にノミネートされた。最終的には『タイタニック』の主題歌「My Heart Will Go On」に敗れてしまうが、エリオット・スミスはアカデミー賞授賞式で生演奏することになり、突然スポットライトの中へと放り込まれた。そしてすべてがすっかり変わった。

ドリームワークスは、インディーのキル・ロック・スターズ・レーベルからエリオット・スミスを奪い取り、4枚目となる作品『XO』を1998年8月にリリースし、評論家たちから称賛を受けた。ファンたちは巨額のお金を持ったメジャー・レーベルがエリオット・スミスを変えてしまうのではと最初心配したが、そんな心配は無用だった。

しかし、彼が増えた予算を利用しなかったというわけではない。オープニング・トラック「Sweet Adeline」では、エリオット・スミスのトレードマークであるアコースティック・ギターと密接にレコーディングされたヴォーカルによって作品全体の雰囲気が決定付けられている。エリオット・スミスの生まれながらに持つザ・ビートルズ調のメロディを奏でる才能と共にドラム、ピアノ、そしてマルチ・トラック・ヴォーカルが滝のように流れ出し、さりげないが効果のあるアレンジととげのある歌詞を通じて表現される。

「Amity」では、エリオット・スミスが昔メンバーだったポートランドのパンク・バンド、ヒートマイザーのように激しくディストーションが使用され、「Bottle Up And Explode!」ではビッグ・スターらしいパワー・ポップにストリングスが加えられている。

「Waltz #1」と「Waltz #2 (XO)」のワルツ2曲は、他と比べて一番上品に仕上がっている。一見シンプルな楽器使いのように思えるが、「Waltz #2 (XO)」では破壊的なリリックに小さな野心、絶たれた希望、そして悲痛で共感できる孤独感が詰まっている。高い評価を受けたドキュメンタリー『Heaven Adores You』では未完成の「Waltz #1」が紹介され、彼の創作過程が爆発する様子をうかがえる。エリオット・スミスが抱くヴィジョンの強さの証しである作品を通じて 曲が完成していく様子が分かる。

44分という長さのアルバムには、まるで彼の人生経験がまるごと詰まっているような気にさせられる。インディーズから始めたにも関わらず、エリオット・スミスはこの瞬間に向けて努力してきたことが伝わってくる。ボング・ロード・レーベルの共同創立者であるトム・ロスロックとロブ・シュナップが、エリオット・スミスが作り出す親密な雰囲気を損なうことなくその優れた能力でアレンジをフルに活かしている。結果は壮大でありながら破壊的で、エリオット・スミスが可能な限り楽しみながら、同時にプライヴェートな曲をそれまでにない多くの観客たちの心に響かせた。

Written By Jason Draper




エリオット・スミス『XO』
  



 

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