『Aja』の後に発売されたスティーリー・ダンの「FM (No Static At All)」

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『FM』という映画の話を持ち出しても、誰もがピンとくるわけではない。これは1970年代後期の映画で、マイケル・ブランドンがアメリカのロック・ラジオ局のプログラム・ディレクターを演じていた作品だ。しかし「FM (No Static At All)」と口にすれば、スティーリー・ダンや当時のアルバム指向の音楽が好きな人ならすぐにピンとくるだろう。これはスティーリー・ダンの代表曲であり、1978年6月3日に米Billboardのアルバム・チャートに初登場した。

当時スティーリー・ダンは、前年9月に出した6枚目のスタジオ・アルバム『Aja』で大成功を収めている最中だった。このアルバムで、スティーリー・ダンは洗練されたジャズ指向の作風をさらに強めていた。その傾向はこの新曲「FM」でも顕著だったが、それでもなおキャッチーな魅力は失われていなかった。このシングルは、スティーリー・ダンの熱狂的なファンにとってはさらに魅力的だった。なぜなら、これは『Aja』に収録されておらず、しかも驚くべきことに、シングル発表の数カ月後に出た初のベスト盤『Greatest Hits』(1978年11月下旬にABCレーベルから発売)にも未収録だったからだ。これが初めてスティーリー・ダンのアルバムに収められたのは、1982年のコンピレーション『Gold』でのことだった。

この曲は、例によって中心メンバーのドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーが共作している。ここではフェイゲンの個性的なヴォーカルやベッカーのベースが聴けるほか、ドラムスのジェフ・ポーカロ(TOTO)をはじめとした一流スタジオ・ミュージシャンの演奏も楽しめる。スティーリー・ダンならではの洒落た音作りはやはり健在。ストリングスのアレンジには、ジョニー・マンデルが起用されている(彼はフランク・シナトラペギー・リーカウント・ベイシー、その他の大物のレコーディングを手がけてきたベテランだった)。またこの曲のバック・コーラスには、イーグルスのメンバーも3人(ドン・ヘンリーグレン・フライティモシー・B・シュミット)参加している。

「FM (No Static At All)」は全米シングル・チャートで初登場67位を記録。その4週後にはトップ40圏内に入り、7月下旬には最高22位まで上がった。この曲は、翌年にはグラミー賞でも(技術系の部門ではあったけれど)栄誉に輝いている。エンジニアのロジャー・ニコルスが最優秀レコーディング賞(クラシック以外)を受賞したのだ。彼は前年にも『Aja』でグラミーを獲得していた。

Written By  Paul Sexton



「FM」も収録の『The Very Best Of Steely Dan』

  
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