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デレク&ザ・ドミノス『いとしのレイラ』解説:歴史的な傑作ができるまで

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Photo: Michael Ochs Archives/Getty Images

ルースターズ、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デラニー&ボニー。1970年の初夏、エリック・クラプトンは新しいバンドを結成する前に、いろいろなことを経験していた。同年6月14日、ロンドンのストランドにあるライセウムで最初のライブを行ったとき、この新バンドはまだ自分たちの名前を決めていなかった。

クラプトン以外の他のメンバーは、キーボード、ギター、ボーカルのボビー・ウィットロック、ベースのカール・レイドル、ドラマーで時々ピアニストを務めるジム・ゴードンの3人。彼らはデラニー&ボニーのバンドで一緒に演奏したことがあり、1969年12月にサウス・ロンドンで録音され、1970年3月にリリースされたデラニー&ボニーのライブ・アルバム『Delaney and Bonnie On Tour With Eric Clapton』にその演奏は納められている。

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アルバムレコーディングに至るまで

彼ら4人のミュージシャンはジョージ・ハリスンのアルバム『All Things Must Pass』でも一緒に仕事をしており、デビュー・コンサートの前、彼らはアビー・ロードでジョージのセッションに参加していた。その時にカットされたのが「Tell The Truth」で、これは実際にデレク・アンド・ザ・ドミノスが1970年9月にリリースした最初のシングルとなった(しかしバンドがサウンドを気に入らず発売停止に)。このシングルのB面は「Roll It Over」で、これも『All Things Must Pass』のセッションで録音されたもので、ジョージとトラフィックのデイブ・メイソンがギターとボーカルで参加していた。

Tell The Truth

ロンドンでのコンサート・デビュー後、バンドはリハーサルを経て英国ツアーに出発し、同国で最も権威のある会場の1つ、エセックス州ダゲナムのクラブ、The Village Bluesでツアーを開始した。その後、ロンドンのSpeakeasy Clubから、ケント州ベックスリーのBlack Prince Pub、ヨークシャー州スカボローのThe Penthouseまで、22日間で18回のライブを行い、フランスのBiotまで足を伸ばしライヴを行った。

バンドがツアーに出ている間、マネージャーのロバート・スティグウッドは、デビュー・アルバムのレコーディングの手配に追われていた。彼はオールマン・ブラザーズ・バンドの『Idlewild South』でプロデュースを担当していたトム・ダウドに電話をかけ、バンドがマイアミのクライテリア・スタジオで録音したいと言っていることを伝えた。

イングランドの南西部プリマスのVan Dike Clubでの最後のライブから1週間も経たないうちに、クラプトン、レイドル、ウィットロック、ゴードンの4人はマイアミに移動。そしてクライテリアのスタジオAに入り、レコーディングに向けて準備を整えた。そんな中、8月26日の夜、クラプトンたちはマイアミ・ビーチ・コンベンション・センターで行われたオールマン・ブラザーズ・バンドのコンサートに招待された。クラプトンはそこで初めて見るデュアン・オールマンの演奏は夢中になった。ライヴの後、2つのバンドはクライテリアに戻り、何時間もジャムっていた。

 

デュアンも参加した録音

8月28日の金曜日、『Layla and Other Assorted Love Songs(いとしのレイラ)』のセッションが本格的に始まった。1週間ほどのレコーディングには、クラプトンら4人のミュージシャンと一緒に、デュアン・オールマンも参加することになり、彼はクラプトンとの共演に興奮していた。そこで最初に録音したのは、クラプトンとウィットロックの「Tell The Truth」で、最初の録音よりもはるかに完成されたバージョンに仕上がった。

Tell The Truth

土曜日の録音はなかったが、日曜日とそれから5日間の夜は、激しいレコーディングが行われた。というのも9月4日にデュアンがオールマンとしてミルウォーキーでギグを行うことが決まっていたためだ。日曜日の夜、セッションは進行し、月曜日には「Nobody Knows When You’re Down and Out」と「Why Does Love Got To Be So Sad」が、火曜日にはクラプトンとウィットロックの「Keep On Growing」が録音された。水曜日は「I Looked Away」と「Bell Bottom Blues」、そしてフレディー・キングが有名にしたビリー・マイルスの曲のカバー「Have You Ever Loved A Woman」。キングはクラプトンのお気に入りのブルースギタリストの一人だった。

木曜日はデュアン・オールマンが参加できる最後の日だったが、バンドは「I Am Yours」と「Anyday」、チャック・ウィルスの「It’s Too Late」を演奏。金曜日と土曜日は、デュアンが不在だったため、残りのメンバーは「Key to The Highway」と「Nobody Knows When You’re Down and Out」を除いて、これまでに録音した曲のオーバーダビングに集中した。

「Little Wing」と「Layla」

オールマン・ブラザーズはミルウォーキーでのライブの後、9月6日にデモインのJolly’s Placeでもライヴを行った。その後デュアンは最後の数曲を完成させるためにマイアミに戻ってきた。9月9日(水)には、オーバーダビングを行い、この時点ですっかり意気投合していた5人のミュージシャンは、「Little Wing」と「Layla」に取り組んだ。

「Little Wing」は、ジミ・ヘンドリックスが1967年に発表したアルバム『Axis: Bold As Love』に収録されていた曲で、結果的にジミ・ヘンドリックスへのトリビュートとなった曲だ。タイトな演奏だが、後にウィットロックは、レコーディングまでにこの曲を聴いたことがなく、歌えるようにオルガンの上に歌詞を並べておいたと語っている(その9日後、ヘンドリックスはロンドンのノッティング・ヒルにあるサマルカンド・ホテルで亡くなった)。

Little Wing

そして、「Layla(いとしのレイラ)」だ。クラプトンは、ペルシャの古典詩人ニザミ・ガンジャヴィの『ライラとマジュヌーン』を手にしたことがきっかけで、この曲の最初の部分を書き上げた。この曲は、当時ジョージ・ハリスンと結婚していたモデルのパティ・ボイドに対するクラプトンのラブソングであることは今ではよく知られている。その後、彼女は1979年にクラプトンと結婚している。

この曲は2つの部分で構成されている。前半は、クラプトンの多重録音されたギターとオールマンのソロを含む16トラックでバンドが録音したもの。自分の曲を寝かせた後、スタジオに戻ったクラプトンは、ジム・ゴードンが弾いていたピアノ曲を聴いてすぐに気に入り、それを「Layla」に追加して曲を完成させた。

Layla

アルバムの最後には、ボビー・ウィットロックの曲で、彼も歌っている繊細な「Thorn Tree In The Garden」がふさわしいだろう。この曲は、パーティーの後の朝のように、平和で静かで、内省的な空気に包まれた、詩的でふさわしいクロージングだ。

Thorn Tree In The Garden

 

レコーディングの後

レコーディング終了後、クラプトン、ウィットロック、レイドル、ゴードンの4人はイギリスに戻り、9月20日に南ロンドンのクロイドンのFairfield Hallsを皮切りに大規模なツアーを開始し、9月28日までにイギリスで8回、パリで1回の公演を行った。

ちなみに「Layla」セッションのテープボックスによると、10月1日にマイアミのクライテリアで「Layla」と「It’s Too Late」をオーバーダビングしたセッションがあり、翌日にはクラプトン、オールマン、ゴードンの3人でリトル・ウォルターの「Mean Old World」をカットしている。しかし10月1日には、デレク・アンド・ザ・ドミノスはフロリダから4,400マイル離れたイギリス南部のスウィンドン・タウン・ホールでギグを行っている。いったい何があったのか?9月28日にツアーが狩終了したあと、9月29日、30日の2日間のうちにマイアミへ飛び、その1日後に箱にラベルが貼られたのか? いずれにしても、結果として70年代の最も印象的なアルバムの一つとなった。

2020年には、『Layla And Other Assorted Love Songs』の50周年を記念して、オリジナル・アルバムにアビー・ロード・スタジオのマイルス・ショウェルによるハーフスピード・マスタリング処理が施されました。2枚組のデラックス版には、オリジナル・アルバム「Layla And Other Assorted Love Songs」と、ボーナス音源が1枚が収録されている。

Written By Richard Havers



デレク・アンド・ドミノス『Layla And Other Assorted Love Songs』
1970年11月9日発売
CDiTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music




エリック・クラプトン『The Lady In The Balcony: Lockdown Sessions』
2021年11月12日発売
デラックス・セット<DVD+ブルーレイ+CD> / DVD+CD / DVD / CD
ブルーレイ+CD / ブルーレイ / 2LP / 2LPカラー / 1DVD+1Blu-ray+1CD / 1Blu-ray UHD+1Blu-ray


映画「エリック・クラプトン/ロックダウン・セッションズ」予告編

映画『エリック・クラプトン/ロックダウン・セッションズ』情報
10月8日(金)より新宿ピカデリー他全国期間限定公開

オフィシャルHP / 公開劇場(随時更新): (随時更新中)


 

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