ジャクソン5とはどんなグループだったのか:マイケルを輩出した大人気兄弟ボーイグループ
アメリカでは2026年4月24日に、日本では6月に劇場公開されることが決定したマイケル・ジャクソンを描く伝記映画『Michael/マイケル』。先日初めて映像が公開され、マイケルの実の甥(マイケルの兄、ジャーメイン・ジャクソンの息子)であるジャファー・ジャクソンが演じるマイケルの姿に対して、全世界からすでに賞賛の声が上がっている。
そんなジャファー・ジャクソンの兄ジャーメイン・ジャクソンがマイケルとともに人気を二分した兄弟グループ、ジャクソン5(Jackson 5)の経歴を紹介しよう。
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偉大なる家族:ジャクソン家
ジャクソン一族は、音楽史における偉大な存在だ。その功績と成功はあまりに計り知れず、その魅力を語るには図書館を満たすほどの書物が必要だろう。そして、それはこれからも変わらない。
しかし実際のところ、彼らのカリスマ性の源泉は、絶妙な歌唱、ショービジネスの定義を塗り替えたステージパフォーマンス、そして常に彼らをポップ・ソウル・ムーブメントの最前線に立たせた画期的なサウンドにある。それに加え、テレビの前のティーンエイジャーを虜にする訴求力、筆舌に尽くしがたいと評されるライブ、そして商業音楽としてのアフリカ系アメリカ人音楽を誰よりも長く定義し続けたという紛れもない事実も見逃せない。
彼らの合計売上はエルヴィス・プレスリーやザ・ビートルズに匹敵する。さらに、フロントマンであるマイケルのソロキャリアと、後に続くジャネット・ジャクソンの成功を加えれば、彼らはあらゆるライバルをたやすく凌駕するだろう。
1969年10月にモータウンからリリースされたデビューシングル「I Want You Back」を皮切りに、彼らはナンバーワンヒットを連発し、次々と記録を塗り替えていった。マイケル、ジャーメイン(後に弟のランディと交代)、マーロン、ティト、ジャッキーの5人は、家族、特に父親ジョーから厳格な価値観を教え込まれており、決して業界の操り人形ではなかった。
「ABC」「The Love You Save」「I’ll Be There」もまた、モダンなアプローチの楽曲だった。「I’ll Be There」は700万枚を売り上げるモータウン史上最大のヒットとなり、マーヴィン・ゲイの「I Heard It Through the Grapevine」に代わってレーベルの金字塔となった。
デビューから4曲連続でナンバーワンを獲得したことも歴史的な快挙だ。彼らはまた、ジャクソンマニアと呼ばれる熱狂的なファンに支えられ、時にはその熱狂に耐えなければならなかった。ヒースロー空港では何千人ものファンが彼らを待ち受け、警察の護衛が常に付き従った。ツアーの規模はどんどん拡大し、「デスティニー」「ヴィクトリー」「トライアンフ」といったツアーは、行く先々の領土を征服する古代ローマ軍団さながらだった。LAのドジャー・スタジアムでは7夜連続公演を行い、これも記録となった。毎晩9万人もの観客を動員したのだ。
そして彼らは進化した。モータウンが彼らをバブルガム・ポップの枠に留めようとしたとき、彼らはそれに抗い、エレクトロニカの要素、モーグやARPシンセサイザー、エフェクト処理されたパーカッションを取り入れた。これらは当時のポップ・グループとしては極めて革命的な試みだった。
モータウンでの彼らの指導者には、創設者のベリー・ゴーディ・ジュニアをはじめ、ホーランド=ドジャー=ホーランド、ダイアナ・ロス、スティーヴィー・ワンダーといった最高の才能が揃っていた。やがてマイケル・ジャクソンが「マンチャイルド(子供の心を持つ大人)」と称される伝説的なスターとなり、ムーンウォークを生み出すと、もはや誰も彼を止められなくなった。
ムーンウォークは、R&Bグループ、シャラマーのジェフリー・ダニエルらと共にスタジオで磨き上げられたものだ。1983年、完成したムーンウォークを引っさげ、マイケルと兄弟たちはテレビ特番『モータウン25』に旋風を巻き起こした。
そして「Billie Jean」と驚異的なアルバム『Thriller』は、その後誰も成し遂げていないレベルのポップ支配時代の幕開けを告げた。
ジャクソン5(そして後のザ・ジャクソンズ)はグラミー賞を受賞したことがなく、アメリカン・ミュージック・アワードでも評価は高くなかった。しかし、彼らは大統領や王族(ネルソン・マンデラ、バーレーンやヨルダンの君主)と親交があった。結局のところ、彼ら自身がポップ界のロイヤリティだったのである。
しかし1997年、彼らはロックの殿堂入りを果たす。その驚異的なセールスを考えれば当然のことだろう。ジャクソン5、ザ・ジャクソンズ、そしてソロとしてのマイケル、ジャネット、兄弟たちは皆、既存のポップの世界観を覆し、誰も見たことのない境地を切り開いたのだ。
大成功への経緯:デビューと2作目
このファミリー・グループはインディアナ州ゲイリーの出身。シカゴ都市圏の陰にある、何の変哲もない中西部の町だ。彼らはジャクソン・ブラザーズとしてダンスとハーモニーを披露することからキャリアを始め、すぐに地元のチトリン・サーキット(黒人向けのクラブ巡業)やタレントショーで頭角を現した。
実は1967年にスティールタウン・レコードと最初に契約したが、そのインディーズレーベルでは彼らの才能を収めきれなかった。やがてモータウンが興味を示したことで、彼らは大舞台へと駆け上がる。1969年に契約を交わした彼らは、ジャンルを超えて誰もが知るスターを育てたいという創設者ベリー・ゴーディの悲願を見事に実現した。
17曲のトップ40シングルを放った彼らは、ゴーディが期待した以上の成果を上げた。ゴーディはサウンドに厚みを出すため、自身のブレーンであるザ・コーポレーションを組織。モータウンの作家チームや、シュープリームス、グラディス・ナイトといった先輩たちの後押しもあり、彼らはモータウンのスーパースターへと変貌を遂げた。その当初から、彼らが手がけるものすべてがゴールドディスクに変わったのだ。
テレビ特番やアニメ、そして彼らが牽引した黒人メディア発のティーンブームがその名声を飛躍的に高め、デビューアルバム『Diana Ross Presents the Jackson 5』が世に送り出された。このデビュー作は今なお愛される一枚であり、「I Want You Back」をはじめ、多くの人が知るヒット曲が収録されているため、最初の一枚として特におすすめだ。
マイケルの後のニックネーム「キング・オブ・ポップ」は有名だが、当時でさえ彼はしばしば「プリンス・オブ・ポップ」と呼ばれていた。
デビュー・アルバムは、セカンドアルバム『ABC』(1970年)と双璧をなす作品と言える。最終的に600万枚以上を売り上げた『ABC』は、バブルガム・ソウルやソフト・ポップなどと評されることもあるが、そうした言葉だけではタイトルトラック「ABC」や「The Love You Save」の甘いメロディの奥にある本質を捉えきれない。
若者の純粋なエネルギーを映し出すようなバラードから、ダンスフロアを揺らすアンセムまで、ジャクソン5はあらゆる要素を網羅していた。同時に、デルフォニックスの「La-La (Means I Love You)」やスティーヴィー・ワンダーの「Don’t Know Why I Love You」など、見事なカバーも披露している。
3枚目以降
控えめなタイトルの『Third Album』は、文字通り、比喩的にも、そしてジャケット写真においてもマイケルを前面に押し出した作品だ。この1970年のアルバムが録音された当時、彼らがどれほど若かったかを知れば驚かされるだろう。
幾重にも重ねられたハーモニー、愛らしい語りの間奏、そしてデルフォニックスのカバー「Ready or Not Here I Come」で聴けるようなエッジの効いたファンクのバッキングなど、モータウンのザ・コーポレーションならではの手法がすべて詰め込まれている。この曲は、ジャクソンズの楽曲の中でも特にサンプリングされることの多い一曲だ。
この『Third Album』は現在、5枚目『Maybe Tomorrow』とセットになった便利な2枚組で入手可能だ。しかしその前に、1970年の4枚目のアルバムである『Jackson 5 Christmas Album』も忘れてはならない。クリスマス・アルバムの傑作だ。ジャクソンズのすべての作品同様、リマスター盤やボーナス素材にも注目したい。聴くべきものは多い。
そして『Maybe Tomorrow』。このアルバムは、ジャクソン5が成熟期を迎え、ゴーディら重鎮たちとの関係を保ちつつも、自らの音楽性を広げていったことを明確に示している。それまでの作品より洗練された本作は、「Never Can Say Goodbye」や「Maybe Tomorrow」といった壮大なトラックでソウルの核心を突く。
ゴーストフェイス・キラーやパフ・ダディといったヒップホップのアーティストたちがフックやフレーズを借用し、アイザック・ヘイズやグロリア・ゲイナーらがカバーしたことからもわかるように、これは彼らの作品の中で最もサンプリングされたアルバムかもしれない。
スターたちとの共演作
この5つ星の作品に続くのは、1971年のテレビ特番に合わせてリリースされた『Goin’ Back to Indiana』だ。これはまさにある時代のスナップショットであり、クロスオーバー・ポップとショービジネスが野暮ではなく、魅力的なものとして受け入れられた無垢な時代を思い出させる。
ビル・コスビーやトミー・スマザーズ、当時のスポーツスターたちがゲスト参加しているこの作品は、真に時代の産物だ。オリジナル盤はカルト的な人気を博し、200万枚以上を売り上げた。スライ・ストーンの「Stand!」やトラフィックの名曲「Feelin’ Alright」といったファンク・ソウルの名演にも注目したい。これらの曲は、スライのもう一つの曲「I Want to Take You Higher」を挟む形で披露されている。
当時モータウンで進行していたプログレッシブな動き(スティーヴィー・ワンダーの壮大なアルバム『Music of My Mind』を思わせる)を考えれば、『Goin’ Back to Indiana』は1971年の重要な一枚であり、深く掘り下げたいファンなら見過ごせない。
ベスト盤と中期作
1971年にリリースされた必然とも言える『Greatest Hits』も、単なるベスト盤ではなかった。すでにオリジナル盤を所有していたファンでさえ、新曲「Sugar Daddy」に惹きつけられたことで、驚異的なセールスを記録した。
意識的に大人びた『Lookin’ Through the Windows』(1972年)では、マイケルの少年のような声がソプラノから滑らかなテナーへと変化し、アレンジもグループの新たな姿勢を反映している。楽曲の内容も同様に変化し、ジャクソン・ブラウンやアシュフォード&シンプソンのカバー、ザ・コーポレーションによるファンク主導のグルーヴは、ティーンアイドルだった彼らと共に成長してきたファンの間でセンセーションを巻き起こした。
同様に、1973年の『Skywriter』はポップからディスコへの移行を示唆し、『G.I.T. Get It Together』ではノーマン・ホウィットフィールドがプロデュースを手がけた。この頃になると、ジャクソン一族とベリー・ゴーディの間で、彼らの音楽的成長について意見が必ずしも一致しなくなっていた。しかし、だからこそこうしたアルバムが今もなお興味深く、現代性を保っているのだ(ちなみに1973年には日本でのライヴ・アルバム『The Jackson 5 in Japan』も当時日本で発売されていた)。
『Dancing Machine』と『Moving Violation』がモータウン時代の最後を飾り、その後にリリースされたベスト盤『Joyful Jukebox Music』(1976年)はアナログ盤での入手が困難になっている。
改名とレーベル移籍
ザ・ジャクソンズと改名してレーベルを移籍し、フィラデルフィアのシグマ・サウンド・スタジオで制作されたセルフタイトルアルバム『The Jacksons』は、新たな章の幕開けとなった。当時引く手あまただったギャンブル&ハフやマクファーデン&ホワイトヘッドをプロデューサーに迎え、マイケル・ジャクソン作の「Blues Away」は、彼が発表した最初の自作曲として、その後の主導権を予感させる。
その名も適切な『Goin’ Places』、そして大成功を収めた『Destiny』は、ディスコや新たなアーバン・サウンドが主流となり、ワールドツアーがニュースの一面を飾るにつれて、ボーイ・グループのイメージを完全に払拭した。
その後、「Blame It on the Boogie」や「Shake Your Body (Down to the Ground)」といったヒット曲が生まれた時期は、マイケルがソロの傑作『Off the Wall』の制作を始めるタイミングと重なる。『Triumph』収録の「Can You Feel It」もまた画期的な一曲であり、この頃にはザ・ジャクソンズは作詞作曲を自らこなし、よりディープなグルーヴを生み出す能力を完全に身につけていた。
しかし、その地点に到達するためには、彼らは純粋なポップ・ソウル・グループから、変化する時代を映し出す、より大きな存在へと進化する必要があった。後年には論争や悲劇もつきまとったが、彼らの魅力と世界的な人気は誰にも否定できない。
他にもおすすめの作品がある。『20th Century Masters – The Millennium Collection: The Best of The Jackson 5』や、Hip-O-Selectからリリースされたレア音源集『Come and Get It: The Rare Pearls』も良いだろう。ライブが好きなら『Live at the Forum』をじっくり聴くのもいい。『I Want You Back! Unreleased Masters』や『The Very Best of The Jacksons』もおすすめだ。包括的な内容の『Anthology』は素晴らしい。元々は3枚組LPだったが、現在は2枚組CDで入手可能で、初期のダイナミックな時代をすべて網羅している。
ジャクソン・ファミリーは、文化的な重要性を持つ稀有な存在だ。彼らはまた、キャリアの最初から最後まで素晴らしい音楽を作り続けた。その道のりは「ABC」の歌詞のように簡単なものではなかっただろう。しかし当時、ファンは彼らが次に何を見せてくれるのかと心配する必要はなかった。ただ彼らを楽しみ、その芸術性と献身に驚嘆していればよかったのだ。
Written By uDiscover Team
1969年12月12日発売
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