ロブ・ゾンビ『Hillbilly Deluxe 2』解説:最も容赦なく低俗なレコード

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ロブ・ゾンビの昔のアルバム、2006年の『Educated Horses』のアルバム・ジャケットと比較しながら、『Hillbilly Deluxe 2』のジャケットを見て欲しい。かなり思い切った変更ではなかろうか。もしキャラクター、そしてポップ・カルチャーのフィギュアとしてのロブ・ゾンビを知らなかったのであれば、『Educated Horses』のジャケを見て、唯一のヒントはロブ・ゾンビの名前が書かれたギザギザのフォントだが、内省的なアコースティック・アルバムか何かだと簡単に見間違えてしまうだろう。

2006年、彼はこれまでで一番クリーンでノーマルに、そしてあれやこれやとじっくり考えながら、沈痛な面持ちでじっと遠くを見つめているかのように見えた。『Hellbilly Deluxe 2』のアルバム・ジャケットで、顔から血が滴り、ゾッとするような傷跡と牙を剥き出したロブ・ゾンビが真っ向から睨み倒してきたとしても、ド派手な彼の輪郭を囲ったド派手で堂々としたロゴがコミック・ブックから飛び出したひとこまのように彼を縁取る。このメッセージは明白だ。これはワイルド・ライドな一枚になる。

ロブ・ゾンビのオリジナルのサイケデリックな悪夢のヒットファクトリーに続く、アルバムの第二弾だと思うしかなかった。アルバムのシリーズ化は危険なアイデアであることが多い。過去数え切れないほど多くのアーティストたちが、彼らの過去作品と比較されながら、新作作りに絶えず取り組まなければいけなかった。大抵それらの過去アルバムは全面的に全く別の環境、別の時間、そして根本的に異なる人々によって作られたものであることが多いという事実にも関わらずだ。多くは彼らの成長と発展を強調しながら、必然的にそのアイデアから自分たちを切り離すためにベストを尽くすのである。

そのように、あなたが過去の有名な代表作の続編として新しいアルバムを発表することを決めるとしよう。あなたはただ比較してもらうことを望み、これまで以上に吟味されることになる。それに加えて、オリジナルの『Hellbilly Deluxe』は、続編の物語の必要性を高めながら新しい作品に流れ込む明確なストーリーとコンセプトがあるキング・ダイアモンドの『Abigail』のようなものに匹敵するものではない。『Hellbilly Deluxe』は単にホラーをテーマとしたメタル・クラブ・バンガーを大量に集めたにすぎず、ロブ・ゾンビは彼の意にかなった名前ならどんな名前でもそれを作り続けることが出来ただろう。

それは衝撃に近いものがあった。実際どれぐらい (フル・タイトルを挙げれば)『Hellbilly Deluxe 2: Noble Jackals, Penny Dreadfuls And The Systematic Dehumanization Of Cool』が成功したのか。このアルバムは取っておきの切り札としてお祭り騒ぎのスリルをたくさん備え、久しぶりにロブ・ゾンビが作った最も容赦なく低俗なレコードだったのだ。オープニング曲の「Jesus Frankenstein」はシンプルに叩きつけるような音で始まり、ロブ・ゾンビの映画のひとつに出てくる折れた首のような場所にバースのリフがはめこまれ、薄気味悪いギターがかき鳴らされる。この繰り返されるコーラスはひどく単純すぎるものだが、自分も大きな声でシャウトしたい気にさせるコーラスだ。同様に、「Sick Bubblegum」は典型的なロブ・ゾンビのスタンパーになる全ての素質を持っている。そして最初のシングル「What?」は、第一声 “Alright!“ から彼がどれほど楽しんでいるかを実演する無制限のライオットだ。

「Mars Needs Women」やマニアックなハード・ロック・ホーダウンの「Werewolf, Baby!」といった曲に『Educated Horses』でも披露したブルージーな要素が増えたように、このアルバムをハードリセットとして説明するのは大げさかもしれない。しかしそこから見えるのは、ロブ・ゾンビが初めて、実際のツアー・バンドと共に協力的なやり方で曲作りを行っているということだ。結果、『Hellbilly Deluxe 2』にガレージ感を与えたと言ってもいいほど、インダストリアルなメタル・アルバム感は減ったものの、ロブ・ゾンビが聴いて育った70年代のショック・ロックがより同調し、投げ込まれた狂乱状態の飾りだけで、実行可能なほど過激で逸脱したアルバムを作った。「Werewolf Women Of The SS」は、率直に言って精神病患者のアニメとも言えるロブ・ゾンビの映画『El Superbeasto』に合わせた滑稽なカートゥーンのテーマとも思える一曲。そして、アルバムが「The Man Who Laughs」で終わりを迎えると、ロブ・ゾンビの音楽に必要以上の異質な要素、つまり巧妙化を加えるストリングのアレンジの裏で、典型的なロブ・ゾンビのグルーヴィーなリフが重なってくる。

2000年代にわたって、そもそも音楽の世界に戻ってくる気はあるのだろうかとファンが疑問に思うほど、ロブ・ゾンビは下劣なダンスフロアのヒップシェイカーに向けたもう一枚のアルバムを作ることよりも、彼の愛するホラー映画の制作にはるかに強い興味を抱いていた。ただ、彼がつながった人々の数に関しては、彼を責めることはできない。彼のアルバムを手に取った人よりも多い人間が、ロブ・ゾンビが出掛けた『ハロウィン(原題:Halloween)』のリメイク映画を鑑賞した。映画は8,000万ドルの興行収入を得た。『The Sinister Urge』 と『Educated Horses』の間には5年間のブランクがあり、さらに『Hellbilly Deluxe 2』のアルバムまでには4年間のブランクがあった。『Hellbilly Deluxe 2』のレコーディングが完了したのは2008年の終わりだったが、2010年2月2日まで、アルバムが日の目をみることはなかった。なぜならロブ・ゾンビは映画『ハロウィン』の続編の制作に忙しかったからである。

それと対照的に、『Hellbilly Deluxe 2』以降、ロブ・ゾンビは3年おきに確実にアルバムをリリースしており、相変わらずフェスを回る主要バンドのままである。『Hellbilly Deluxe 2』は忠実で信頼できる奇妙な存在として、ロブ・ゾンビをしっかりと音楽の世界へと戻してくれたアルバムと言っても過言ではない。それは、ハリウッドが彼にどんなチャンスを与えようとも、ロブ・ゾンビがロックの山を再び登り、いつか彼がいたところよりもさらに高い頂点に彼の旗を固定させる瞬間を見たからだ。それだけに、彼の画期的な過去作品に取ってかわるアルバムの続編は、当時、恐らく我々が予想もしていなかったやり方で、適切に見えるのである。

Written By Terry Beezer


『Hillbilly Deluxe 2』


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