エクストリーム『Pornograffitti』解説:ベストセラーとなった2ndアルバムと意図しないヒット曲

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Cover: Courtesy of A&M Records

1990年8月にリリースされたエクストリーム(Extreme)のセカンド・アルバム『Extreme II: Pornograffitti』は、アメリカとイギリスの両方でチャートのトップ20に入り、アメリカでは後にダブル・プラチナ・ディスクに認定されている。

このアルバムはエクストリームにとって最も売れたアルバムとなっているが、その成功はほろ苦いものでもあった。というのも、チャートで再浮上するきっかけとなったのはこのバンドとしては異例なほど優しげなアコースティック曲であり、その曲を作った側もエクストリームを代表する曲ではないと感じていたからだ。

ギタリストのヌーノ・ベッテンコートは、2014年の『Classic Rock』誌のインタビューで次のように語っている。

「“More Than Words”が好きな人たちは、エクストリームのファンというわけじゃない。ただただあの曲が好きなだけなんだ。それはクールなことだし、素晴らしいことだ。けれど本物のファンには、エクストリームがその曲だけのバンドじゃないということがわかっている」

「More Than Words」はエクストリームがチャートで成功を収めるきっかけになった。振り返ってみれば、そこに至る経緯は、バンド自身にとっても所属レーベルのA&Mにとっても驚きだった。

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ファンクなハード・ロック

1989年にリリースされたエクストリームのファースト・アルバム『Extreme』は大ヒットとはならなかったが、それでも25万枚以上を売り上げていた。このボストン出身のロック・バンドはファンク風味のハード・ロックがトレードマークであり、A&Mは『Pornograffitti』でさらに多くのファンを獲得できるだろうと考えていた。

当初の結果を見ると、その想定は理にかなったものだった。なぜならアルバム『Pornograffitti』には、前作に続いて、エクストリームが得意とする楽曲が並んでいたからだ。

ここには、ガンズ・アンド・ローゼズ風の自堕落で派手なロック・アンセムの曲「Decadence Dance」や「Money (In God We Trust)」もあったし、ファンクの要素を取り入れたメタル・ソング「When I’m President」などもあったし、レッド・ホット・チリ・ペッパーズを思わせる小生意気な「Get The Funk Out」もあった。

実際、こうした楽曲のおかげもあってエクストリームの知名度はさらに高まった。「Decadence Dance」はMTVで頻繁にオンエアされ、「Get The Funk Out」は全英チャートでトップ20入りを果たした。ちなみにイギリスでは、伝説的なクイーンのギタリストであるブライアン・メイがヌーノ・ベッテンコートの演奏技術を称賛している。

ブライアン・メイは2017年のYouTubeのインタビューで熱っぽくこう語っていた。

「“Get The Funk Out”は、ロックの歴史に残る画期的な作品だ。純粋なテクニックという点だけを見ても、驚くべきものだよ。僕にはとても無理だ。いくら時間をかけても、あのソロを演奏することなんて僕にはできやしない。あれはヌーノならではの演奏で、とてつもないものだ」

確かに『Pornograffitti』にはエクストリームの代名詞とも言えるヘヴィ・ロックがふんだんに盛り込まれていた。しかしながらこのアルバムを世間一般に知らしめたのは、詰まるところ、まったく趣の異なる曲だった。

 

全米1位となった「More Than Words」

ヌーノは、2017年にFacebookで「More Than Words」について「宇宙が俺に授けてくれた、妙にメロディアスだけれど少しひねくれた曲」と書いていた。彼は、ヴォーカリストのゲイリー・シェローンに歌詞を書いてもらい、このアコースティックの名曲を完成させた。ヌーノによれば、この曲は完成するまでに「ほんの数分」しかかからなかったらしい。

あっという間にできたとはいえ、この軽快で心温まるバラードには特別な魅力があった。MTV にうってつけのプロモーション・ビデオも効果を発揮した結果、この「More Than Words」は1991年6月に全米シングルチャート首位に輝いた。さらには『Pornograffitti』に収録されていたもう1つのアコースティック・バラード「Hole Hearted」も続けてヒットし、アメリカのシングル・チャートでトップ5入りを果たした。

こうして『Pornograffitti』は勢いを取り戻し、ビルボード誌のアルバム・チャートで再び順位を上げ最終的に最高10位という記録を残している。このヒットは、エクストリームにとって念願だったメインストリームでの成功をもたらした。彼らは1993年にも『Extreme III: Sides To Every Story』をヒットさせ、こちらもゴールド・ディスクを獲得。前作の成功の再現まであともう少しというところまで行った。ヌーノ・ベッテンコートは2014年の『Music Radar』誌の特集記事でこう振り返っている。

「(『Pornograffitti』をレコーディングしたのは)素晴らしい時期だった。あのアルバムは俺たちの無邪気な時代を終わらせた作品だから、今でも誇りに思っている。あのころの俺たちはツアーが大好きなただの若造のバンドで、純粋な気持ちで活動していた。あの成功は、俺たちがずっと夢見ていたものだったんだ」

Written By Tim Peacock


エクストリーム『Extreme II: Pornograffiti』
1990年7月19日発売
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