ダイアナ・ロス「Ain’t No Mountain High Enough」:ソロに疑問を唱えた人々を黙らせた曲
2026年5月23日にKアリーナ横浜、5月25日に大阪城ホールにて11年ぶりの来日公演を行うダイアナ・ロス(Diana Ross)。そんな彼女に関する特集記事を随時更新中。今回はソロとしてリリースした初期の楽曲「「Ain’t No Mountain High Enough」」を解説とともにご紹介
また、来日公演の予習プレイリストがこちらで公開されている。
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幸先が良くなかったソロ始動
以前にも何度かあったことだが、1970年9月19日付の全米シングルチャート(Billboard Hot 100)ではモータウンの楽曲同士で首位の交代が起こった。3週に亘ってその座を守っていたエドウィン・スターの「War(黒い戦争)」が、ダイアナ・ロスの楽曲に順位を譲ったのである。ダイアナ・ロス(Diana Ross)による「Ain’t No Mountain High Enough」のカヴァーは、彼女のソロ楽曲として初めて同チャートを制し、そのまま3週間トップに留まった。
シュープリームス脱退後のダイアナ・ロスのソロ・キャリアは、意外にも幸先良いスタートとはならなかった。彼女のソロ名義での最初のシングルは、ニック・アシュフォードとヴァレリー・シンプソンが共作した「Reach Out And Touch (Somebody’s Hand)」だった。しかし、この曲は米ポップ・チャートで20位、英チャートでは33位止まりだったのである。
その上、ダイアナが脱退後、シュープリームスが出した初シングル「Up The Ladder To The Roof」は、「Reach Out And Touch (Somebody’s Hand)」をはるかに上回る全米10位を記録。こうした状況にダイアナも自信を失いつつあるように思えた。
実際、初期のソロ・コンサートで彼女は観客に向けてこんな発言をしていたのだ「皆さん、こんばんは。“ダイアナ・ロスが1人でやれるのか見てやろう公演”にようこそ」
カバー曲のリリース
そんな中で1970年7月、モータウンはアシュフォード&シンプソンが以前に書いた楽曲をダイアナの歌唱でリリース。それは、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルが3年前にヒットさせていた1曲だった。その「Ain’t No Mountain High Enough」をカヴァーするという作者からの提案にダイアナ・ロスは少々驚いたというが、最終的にはこれを承諾したのだった。
モータウンの社長ベリー・ゴーディは、コーラス・パートを冒頭に配さなければ同曲をシングル・カットしないと主張したそうだが、プロデューサーを兼任したアシュフォード&シンプソンはアレンジの変更をきっぱりと拒否。それでも、1970年に発売されたダイアナ・ロスの1stアルバム『Diana Ross』に収録されたこの曲はラジオ局の選曲担当者に取り上げられ始め、ヒット曲になったのだった。
ダイアナ・ロスはこの曲を完全に自分のものにしてみせた。そして同ヴァージョンは、グラミー賞の最優秀コンテンポラリー・ヴォーカル・パフォーマンス賞にもノミネート。結果としてはディオンヌ・ワーウィックの「I’ll Never Fall In Love Again(恋よ、さようなら)」に敗れたが、いずれにしてもロスはこの曲でソロとしてのスター街道を歩み出した。
そうして最終的には、ソロで米ポップ・チャートの首位に5曲もの楽曲を送り込んだ史上初の歌手になった。ライオネル・リッチーとのデュエット「Endless Love」を含めると彼女は6度も同チャートを制している。
Written By Paul Sexton
1970年6月19日発売
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