ダスティ・スプリングフィールドの隠れた名盤『Dusty…Definitely』

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全盛期に当たる60年代にあっても、ダスティ・スプリングフィールドの佳作の多くは過小評価に甘んじ、チャート・インすることもままならなかった。その筆頭はもちろん、不朽の名作『Dusty In Memphis』だろう。今でこそ名盤の呼び声高いアルバムだが、驚くべきことに同作が全英チャートに登場したことはない。しかしここでは、別の隠れた名作に焦点を当てることとしたい。

メンフィスへと拠点を移す直前にリリースされた彼女の4作目は、いくつもの理由で重要なアルバムだった。彼女自身が初めてプロデュースに関わったというのもその理由のひとつである。長年コラボレーションをしてきたミュージシャンとも共演した同作『Dusty…Definitely』は1968年12月21日、全英チャートに初登場している。

当時、彼女はアメリカでアトランティック・レコードと契約を交わしたばかりだった。『Dusty In Memphis』も同レーベルから最初にリリースされることになるが、イギリスではまだフィリップス・レコードとの契約が残っていた。1968年8月にトップ・テン圏内のヒットを記録した名曲「I Close My Eyes And Count To Ten(邦題:この目をとじて)」もフィリップスから発表されたものだった。

『Dusty…Definitely』も他の作品同様、優れたカヴァー・アレンジと彼女の高い歌唱力が楽しめる作品だ。ジェリー・ラゴヴォイとバート・バーンズ作の人気曲「Piece Of My Heart」やアシュフォード&シンプソン作の「I Can’t Give Back The Love I Feel For You」(初めてレコーディングしたのはリタ・ライトと名乗っていた頃のシリータ・ライト)など、彼女のソウルの素養が感じられるものも中には含まれている。

また、バート・バカラックとハル・デイヴィッドのコンビによる楽曲がここでも取り上げられ、「Another Night」と色あせない傑作「This Girl’s In Love With You」の2曲が収録されている。さらにランディ・ニューマンの「I Think It’s Going To Rain Today」のカヴァーは特筆すべきものであるほか、ハーバート・クレッツマーとシャルル・アズナヴールの作「Who (Will Take My Place)」や、サミー・カーンとジミー・ヴァン・ヒューゼンの「Second Time Around」はアダルトで上品な現代風アレンジがなされている。

同アルバムがチャート・インすると、比類ない名曲「Son Of A Preacher Man(邦題:プリーチャー・マン)」もシングル・チャートを駆け上がっていった。同曲は『Dusty…Definitely』にこそ収録されなかったものの、『Dusty In Memphis』に収められることになった。前者のアルバムは当初38位となり、クリスマスから1969年の正月にかけて30位まで上昇した。だがヒット・シングルが含まれていなかったせいか、それ以上の順位を記録することはなかった。それでも同作は数十年経っても一聴に値するアルバムとして輝きを放っているのだ。


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