reDiscover:飛行機旅行の夢を与えたフランク・シナトラの『Come Fly With Me』

Published on

フランク・シナトラがこの素晴らしい作品で全米アルバム・チャートの1位に5週間連続ランクインしたのは1958年2月のことだった。『Come Fly With Me』はフランク・シナトラにとってビリー・メイをアレンジャーとコンダクターとして迎えた初めての作品だ。非常にスタイリッシュで洗練されたアルバムであり、中部アメリカの人々に世界を見るように呼びかけた。いつもそうであるように、フランク・シナトラのタイミングは完璧である。1956年になりようやく船ではなく飛行機で北大西洋を渡る人々が増え始めた頃だった。

ネルソン・リドルと6枚のアルバム、そしてゴードン・ジェンキンズと1枚のアルバムを制作した後に、フランク・シナトラはやっと好きなキャピトルのアレンジャーを自由に選ぶことを許された。キャピトルでのキャリアが始まった当初からビリー・メイと仕事をすることを望んだフランク・シナトラがなぜそこまでビリー・メイとの共作を望んだのか理解することは難しくない。マンダレー、ハワイ、カプリ、ロンドン、パリ、もしくはローマ? フランク・シナトラの“一緒に飛び出とう”という呼びかけは当時の1.75億人のアメリカ人の心を揺さぶった。

1958年、殆どの人にとっては飛行機での旅行は夢見るだけで自分の人生には関係のないもので、フランク・シナトラのようなお金持ちや有名人だけが遠く離れた異国の地を訪れる機会を手に入れていた。実際、パスポートを持っていたアメリカ人はごく少数だった。しかし『Come Fly With Me』の素晴らしい曲のセレクションは、リスナーを世界一周の旅へと連れて行ってくれた。ハリウッドに建つキャピトルのスタジオAにてレコーディングされ、ヴォイル・ギルモアがプロデュースを手掛けた12トラックが収録されている。「Come Fly With Me」や「Let’s Get Away From It All」のリズムを取りたくなるスウィング・トラックから、「Autumn In New York(邦題:ニューヨークの秋)」や「Moonlight In Vermont(邦題:ヴァーモントの月)」のようなロマンチックなバラードまで、どの曲も最大限のインパクトをもって丁寧に作られている。軽くユーモアのある「The Road To Mandalay(邦題:マンダレイへの道)」と「Isle Of Capri(邦題:カプリ島)」はこの素晴らしい作品に新たな次元を加えている。(ビリー・メイは『Come Fly With Me』用に「Flying Down To Rio」のアレンジを手掛けたと言い張っているが、そのレコーディングはまだみつかっていない。)

1958年11月8日に発売された『Come Fly With Me』でフランク・シナトラは初めてイギリスのアルバム・チャートに登場した。ハイ・フィデリティ誌は1958年3月にアルバムを称賛している。フランク・シナトラは、「Moonlight In Vermont」、「Autumn in New York」、「April In Paris」、「Brazil」などのスタンダード曲を“まるで旅をするように”軽やかに歌っている。この作品のシナトラは限りなくベストに近く 、特にタイトル・トラックと「Isle Of Capri」はそれを証明している。「Isle Of Capri」では面白おかしく良く訪れるハリウッドにあるレストランについて歌っており、 “彼女は指に素敵なミートボールをはめていた/ヴィラ・カプリでお別れを告げた”と言葉を置き換えている。

By Richard Havers


 

『Come Fly With Me』

   

 

 

シールとシナトラによるクリスマス・シングル「サンタが街にやってくる」

  

 


『Come Fly With Me』はキャピトル・レコードの75周年の傑作75作品のひとつに選ばれた!

♪ プレイリスト『Through The Decades

 

 

Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了