ザ・ビートルズ「Blackbird」:ポール本人が語る曲名の比喩と黒人女性たちに向けて書いた意義

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『The Beatles  (White Album) (ザ・ビートルズ : ホワイト・アルバム) 』の収録曲の中で最初にレコーディングされたトラックのひとつである「Blackbird(ブラックバード)」は、ポール・マッカートニーが、1960年代の公民権運動に影響を受けて書いたものだった。

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初めて「Blackbird」が公の場で披露されたのは1968年10月のことだった。ビートルズのメンバーの自宅やレコーディング・スタジオ、オフィスの前にたむろしていた女性たち (ジョージ・ハリスンは自身の作品「Apple Scruffs」でも彼女たちのことを歌っている) へのサプライズとして演奏された。そうしたファンのひとりだったマーゴ・スティーヴンスはポール・マッカートニーと、彼が当時付き合い始めたばかりだったリンダが、緑の多いセント・ジョンズ・ウッドにあるアビー・ロードからほんの数分の距離にあったポールの自宅の立派な門を抜けて行ったことを覚えているという。

「最上階にある”マッド・ルーム”の電気が点いたんです。彼は音楽関連のものや遊び道具をそこに保管していました。するとポールが窓を開けて“まだそこにいる?”って私たちに声をかけてくれたんです。“はい!”と私たちは答えました。彼はその夜すごく気分が良かったんでしょう、アコースティック・ギターを抱えて窓辺に座って、暗闇の中、家の外に立っている私たちに向けて“Blackbird”を歌ってくれたんです」

ポールとジョージは10代のころからバッハの作品をギターで弾いて楽しんでいたが、「Blackbird」はそうしたスタイルから生まれたものだ。この曲はポールが所有していたスコットランドの農場で書かれている。

「スコットランドでギターを弾いていて、”you were only waiting for this moment to arise / きみはずっとこの瞬間を待っていたんだ”っていうフレーズが意味するところに思い至りました。アメリカの南部でつらい目に遭っていた黒人のことを歌っているんです。僕はクロウタドリを使ってそれを表現した。あれは傷ついた翼のクロウタドリのことを歌っているわけじゃない。もう少し象徴的な表現なんです」

 

「聴き手が個人的な問題に重ねることもできる」

1968年4月、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺されたことで公民権運動は危機を迎えた。「Blackbird」はジョン・レノンが書いた「Revolution」やジョージの作品「While My Guitar Gently Weeps」と同様、デモ行進や死、絶望の年として記憶されることになる混沌とした情勢に影響を受けて作られた作品だった。ポールがこう振り返る。

「当時は公民権運動が盛んで、僕たちもみんな強い関心を持っていた。これは僕から、アメリカでそうした問題の渦中にあった黒人女性たちに向けて書いた曲なんです。“諦めず信じ続けるあなたを勇気づけたい、きっと希望はあるんだから”ってね。僕の曲にはよくあることですが“リトル・ロックに住む黒人女性”なんていう風に具体的に表現しないで、敢えて比喩的に表現しています。象徴としてクロウタドリを用いてね。だから聴き手は、自分たちの個人的な問題に重ねながら、あの曲を楽しむこともできるんです」

Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』と『The Beatles  (White Album) 』の大きな違いのひとつは、前者を特徴付ける要素のひとつだったオーケストラ・アレンジが。後者では控え目になっている点にある。ポール・マッカートニーの作品「Blackbird」も、そうした印象を助長するトラックに数えられよう。

『The Beatles  (White Album) 』がリリースされる2日前、ポールはキャベンディッシュ・アベニューにある自宅でラジオ・ルクセンブルクのトニー・マッカーサーの取材を受けている。マッカーサーが『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』のもう一歩先の作品を期待していると述べると、ポールはこんな風に応えている。

「もう一歩進んだ作品になっていると言うことはできる。だけど、みんなが期待しているものとは違っているかもしれません。『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』には、以前よりずっとたくさんの楽器が使用されています。オーケストレーションも、それまでよりかなり多く使用されていて、より手の込んだ、作り込まれたアルバムでした。だけど今回のアルバムではあれほど極端なアプローチを取りたくなかったんです。気の向くままにいろいろな楽器を取り入れるような真似はしなかった。僕たちは、本当に必要な楽器だけを使用して、よりバンドらしいサウンドで仕上げようと心がけました」

 

「楽器ひとつを手に取って、気軽に歌える。そんなタイプの曲」

1968年6月11日にレコーディングされた「Blackbird」について、ポールはさらに以下のように説明している。

「『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』のレコーディングでは、僕たちは、たとえばある曲にヴァイオリンやトランペットの出番が見つかるまで作業を続けるみたいなやり方をしていました。だけど、この曲にはそんなアプローチは不要だと思う。この曲に関していえば……これは楽器ひとつを手に取れば歌うことのできる曲です……もっと気軽にやれる、そんなタイプの曲。手の込んだ伴奏なんて必要ありません。唯一、物足りないと思ったのは、終わり際のところ。一旦終わったように思えて、実はってパートですね。だけどそこには伴奏を入れるんじゃなく、クロウタドリの囀りを入れました。だから最後にはクロウタドリが歌っているんです。あれはツグミの囀りだって言う人もいたけれども、僕に言わせれば絶対にクロウタドリです!」

By Paul McGuinness



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