【追悼】ヴァンゲリスのベスト・ソング20:映画音楽だけではない名曲を紹介

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Photo courtesy of Decca Records

ヴァンゲリス(Vangelis)といえば、1981年の『炎のランナー』と1982年の『ブレードランナー』の2作のサウンドトラックが最高傑作というのが一般的な認識だろう。

前者の英雄的で威厳のあるサウンドトラック・アルバムは、1981年4月に全英トップ5入りしたほどであり、後者はコールド・ウェーブの影響力のあるスタンダードとして認識されても当然の作品だ。しかし、1943年3月29日にギリシャで生まれたヴァンゲリスは、この2作品以上に、はるかに大きな足跡を残している。

リック・ウェイクマン、キース・エマーソン、クラフトワークと同じぐらいの重要性を持つシンセサイザーのパイオニアである、と見なすのは大げさな表現ではない。ヴァンゲリスの最高の楽曲がその事実を裏付けている。ではその楽曲を紹介しよう。

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1. It’s Five O’Clock

ヴァンゲリスは、母国ギリシャでザ・フォーミンクスのキーボーディストとして注目を浴びたとき、まだ20代になったばかりだった。そんなヴァンゲリスの音楽をヨーロッパ本土に紹介したのは、1968年に結成されたバンド、アフロディテス・チャイルドだった。

ベースとリード・ヴォーカルにデミス・ルーソスを迎えたアフロディテス・チャイルドは、ネオ・クラシック調の泣きの入ったポップ・バラードで大ヒットを記録して評判となった。その中でも1970年の「It’s Five O’Clock」は、まるでプロコル・ハルムがバラの花びらで天国へ昇っていくようなサウンドである。

 

2. Aegian Sea

アフロディテス・チャイルドが後世に残した最も重要な遺産は、解散後にリリースされた2枚組アルバム『666』(1972年)だ。この作品は『黙示録』に関する重厚でプログレ的、概念的な論考となっている。

レコーディング中にバンドが分裂したにもかかわらず、『666』は彼らの最も説得力のあるパフォーマンスを見せ、ギリシャの女優イレーネ・パパスが「Infinity」で歌った内臓のような、狂気的なヴォーカルですぐに有名になった。

その収録曲の中でもオゾンの香りが漂う「Aegian Sea」は、その後、映画作曲家や並行して行ったソロ活動でヴァンゲリスが生み出した最高の楽曲の中に並ぶ曲を予見させるものである。

3. He-O

アフロディテス・チャイルドが軌道に乗る前から、ヴァンゲリスはギリシャですでに3本の映画用の音楽を作曲していた。彼の名前を冠した最初のソロ作品は、1970年にフランスのフィリップスからリリースされたアンリ・シャピエの映画『Sex Power』のサウンドトラックだった(ヴァンゲリス・パパタナシウ名義でリリースされている)。

サウンドトラックではない自身初のソロ・アルバム『Earth』は1973年に発売された(2017年まで英国では未発売)。このアルバムにはヴァンゲリスのかつてのバンドメイト、ギタリストのアナルギロス “シルバー “クルーリスがリュートで伴奏をした「He-O」など、太陽の光を浴びた作品が収録されている。

4. Movement 3 (from Symphony to the Powers B)

キーボードの魔術師としてのヴァンゲリスが初めて姿を現したのは、ロンドンに拠点を移した後、自身のネモ・スタジオで録音した1975年の『Heaven And Hell』であった。このアルバムは、20分越えの組曲2曲を収録した重厚な作品だ。

この中の1曲目の組曲「Heaven and Hell Part I」の「Movement 3 (from Symphony to the Powers B)」の堂々としたモチーフが、天文学者カール・セーガンが監修したテレビ番組『コスモス』で利用され、宇宙を扱った番組で感動的な効果をもたらすことになった。

5. So Long Ago, So Clear

同じく『Heaven And Hell』1曲目の組曲にある幽玄な雰囲気の「So Long Ago, So Clear」は、ジョン・アンダーソンが歌詞とヴォーカルを担当したヴァンゲリスの楽曲の中でも、最も優れたもののひとつである。

ヴァンゲリスは、イエスのキーボーディストとして活躍していたリック・ウェイクマンの後任という話もあったがその申し出を断り、ジョン・アンダーソンとの間に永続的な絆を築き、後年、実りある創造的パートナーシップを築くことになる。

6. Bacchanale

『Heaven And Hell』の重厚なコンセプトに包まれた構成は、時代の流れに合致しているだけでなく、ヴァンゲリスのアプローチに繰り返し見られるクラシックの厳格さと最新鋭のエレクトロニクスとのマッチングという原則を確立。1曲目のオープニングの「Bacchanale」では、The English Chamber Choirが印象的な演奏を披露している。

 

7. Pulstar

1976年に発売された『Albedo 0.39(反射率0.39)』は、キーボーディストのヴァンゲリスがスペースロックの領域にうまく入り込んだ作品だ。アルバム・タイトルは地球の反射率を意味し、その宇宙的なテーマは再び大衆の好みに合うようになった。

1976年10月に全英トップ20にランクインしたこのアルバムには、毅然としたトップラインが印象的な「Pulstar」が収録されている。

8. Ballad

『Albedo 0.39』の発売からわずか半年後の1977年4月、『Spiral』が登場する頃には音楽シーンが様変わりしていた。パンクが登場し、ゴールポストを動かすどころか、完全に根こそぎ奪っており、ヴァンゲリスの商売道具であるシンセサイザーは突然、時代にそぐわなくなったのだ。

しかし、『Spiral』は全英アルバム・チャートでは失速したものの、ファンの間では人気作となり、それまでのヴァンゲリスの楽曲の中で最高の1枚とみなされ続けている。特に「Ballad」は、ヴァンゲリスの重く加工されたヴォーカルがエーテルの中でおぼろげに存在し、魅力的で薄暗いムードを醸し出している。

 

9. Multi-Track Suggestion

80年代になると音楽シーンの振り子は反対方向に振られ、ヴァンゲリスの音楽は突然、流行りだした。1980年のアルバム『See You Later』には、イージー・ストリートのピーター・マーシュがヴォーカルを務め、皮肉にも自己言及的で明らかに流行に乗った「Multi-Track Suggestion」が収録されている。

 

10. Chariots Of Fire

80年代になって音楽シーンの移り変わりとともに、ヴァンゲリスのもっとも有名な曲の一つであり、1981年に公開された映画『炎のランナー』の主題歌となった「Chariots Of Fire」が登場。この楽曲はUKシングル・チャートでトップ10入りするほどのヒットとなった。

 

11. I’ll Find My Way Home

ヴァンゲリスがジョン・アンダーソンとのコラボレーションを再開したことで、彼の芸術的・商業的地位はより高くなることになった。1982年に発売したジョン&ヴァンゲリスによるメロディアスで甘い献身的な楽曲「I’ll Find My Way Home」はUKで6位となり、皆に愛される1曲となった。

 

12. State Of Independence

1981年に発売したジョン・アンド・ヴァンゲリスのセカンド・アルバム『The Friends of Mr Cairo』は全英アルバム・チャート6位となった。このアルバムには、後にドナ・サマーがヒットさせた「State Of Independence」も収録されている。

 

13. Movement 1 (from Soil Festivities) / 14. Message

ヴァンゲリスは映画作品やジョン・アンド・ヴァンゲリスの活動もしながら、ソロとしても精力的に動いており、1984年には大作『Soil Festivities』を発売した。このアルバムは5つの楽章に分かれており、地中の生命の誕生を思わせる。

『Soil Festivities』に収録された18分の「Movement 1」が文字通りの土っぽさを示しているとすれば、1988年の『Direct』に収録されている「Message」は、クリエイターを星の間に連れ戻す。これは80年代に登場したヴァンゲリスの中でも最高のものの1つである。

 

15. Good To See You

ソロ・アルバム『The City』においてヴァンゲリスはムーディーな雰囲気で90年代を迎え、その中「Good To See You」は印象的なものだ。

さらに、ヴァンゲリスは1992年に公開されたリドリー・スコット監督の映画『1492 コロンブス』にふさわしい壮大な音楽を提供し、ヴァンゲリスの最高の曲のいくつかが彼のサウンドトラックに登場し続けることを示唆している。

 

16. Movement VI (from El Greco)

また1995年に制作された、ギリシャ出身の画家エル・グレコをモチーフにした『El Greco』では、そのサウンドが絵画的に表現されている(その中でも「Movement VI」が傑出したものだ)。

 

17. Ask The Mountains

1995年のソロ作品『Voices』には、スウェーデンの歌手スティーナ・ノルデンスタムが参加した「Ask The Mountains」が収録されている。

 

18. Movement 3 (from Mythodea)

21世紀に入ってからも、ヴァンゲリスは途方もなく大規模なプロジェクトに挑み続けていた。2001年の『Mythodea』には、NASAの火星探査機マーズ・オデッセイのために書き下ろされた音楽が収録されている。ここに収録された「Movement 3」は、合唱が渦巻く典型的な例である。

 

19. Roxane’s Veil

『Mythodea』から3年後、ヴァンゲリスはオリバー・ストーン監督の『アレキサンダー』(2004年)のサウンドトラックを担当した。ここに収録された「Roxane’s Veil」はヴァネッサ・メイのヴァイオリンが印象的な1曲だ。

 

20. Albedo 0.06

ヴァンゲリスが2016年に発売した『Rosetta』は、欧州宇宙機関のミッション「ロゼッタ」のために書かれた楽曲を収録しており、ロゼッタ宇宙船がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸したタイミングに合わせてリリースされた。ここに収録された彗星の反射率を意味する「Albedo 0.06」は、1976年の自身のアルバム『Albedo 0.39』をモチーフにしたものだ。

Written By Oregano Rathbone



 

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