エンニオ・モリコーネのベスト・サントラ10枚:マエストロが手がけた映画音楽の傑作群

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Ennio Morricone. Photo: Decca Records

エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)は1928年11月10日にローマで生まれ、6歳のときに初めての作曲を経験。学生時代はクラシック音楽を学び、卒業後は演劇やラジオ向けの音楽制作を始めた。それと平行してRCAレコードのイタリア法人に編曲者として雇われた彼は、ポップ・アーティストへの楽曲提供もスタート。

1960年代中盤になると、イタリアの現代音楽シーンから注目され、実験的な即興音楽の作曲家たちにより結成されたグループ、グルッポ・ディ・インプロヴィザチオーネ・ヌオヴァ・コンソナンツァ(Gruppo di Improvvisazione Nuova Consonanza)に参加。同グループでは、革新的なアヴァンギャルド音楽を制作した。

だが言うまでもなく、彼が最も高い評価を受けたのは、映画のサウンドトラックの作曲者としてのことだ。モリコーネはその生涯で、映画やテレビのサウンドトラックを500作以上担当。特に、『続・夕陽のガンマン』や『荒野の用心棒』など、セルジオ・レオーネが監督を務めたマカロニ・ウェスタン作品の音楽で名を知られるようになった。

2007年には、“映画音楽界への多面的でこの上なく優れた功績”を認められ、米アカデミー名誉賞を受賞(プレゼンターはクリント・イーストウッド)。また、2016年にはクエンティン・タランティーノ監督作『ヘイトフル・エイト』のサウンドトラックで87歳にして米アカデミー作曲賞を受賞した。では前置きはこのくらいにして、我々が選んだエンニオ・モリコーネによる珠玉の映画音楽のベストサントラ10枚をご紹介しよう。

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1.『荒野の用心棒』(A Fistful Of Dollars)(1964年)

『荒野の用心棒』のサントラはエンニオ・モリコーネのキャリアを代表する映画音楽にして、『夕陽のガンマン』(1965年)、『続・夕陽のガンマン』(1966年) へと続くセルジオ・レオーネ監督とのコラボレーションの記念すべき第1作でもある。

そんな『荒野の用心棒』の当時のライナー・ノートに「この音楽はその一音一音が、それぞれの場面の興奮とぴったり調和している」と記されている通り、モリコーネが手がけた記憶に残るサウンドトラックは、映画そのものの成功に不可欠な要素だった。

 

2.『夕陽のガンマン』(For A Few Dollars More)(1965年)

『夕陽のガンマン』はセルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウェスタン作品『荒野の用心棒』の続編だ。口笛の音や、歌詞のないヴォーカル、時計の鐘の音などを使用したモリコーネによるムードたっぷりのサウンドトラックは、映画の緊張感を高めるとともに劇的なストーリー展開を見事に補完している。

 

3. 『続・夕陽のガンマン』(The Good, The Bad, and The Ugly)(1966年)

この『続・夕陽のガンマン』のサウンドトラックは、エンニオ・モリコーネのキャリアで最もよく知られた作品といえるだろう。この映画は、クリント・イーストウッドが主演を務めたセルジオ・レオーネの“ドル箱三部作”の最終作。

コヨーテの遠吠えを表現したというあまりに有名なメイン・テーマには、銃声や口笛、歌詞のないヴォーカルも登場し、マカロニ・ウェスタンの世界観を完璧なまでに作り上げている。史上最高の映画音楽のひとつとして広く認知されている1作である。

 

4.『ウエスタン』(Once Upon A Time In The West)(1968年)

ヘンリー・フォンダやチャールズ・ブロンソンが出演したセルジオ・レオーネ監督作『ウエスタン』は、“ドル箱三部作”のすぐ後に公開された1作。耳に残るモリコーネのサウンドトラックの中には、主要な登場人物たちひとりひとりをイメージしたそれぞれのテーマ曲が用意されている。

同作でレオーネは、撮影の開始前にサウンドトラックの制作を終えるようモリコーネに依頼するという、通常では考えられない手法を採用。撮影現場でその音楽を流すことで、イメージにあった演技を俳優陣から引き出そうとした。

 

5.『遊星からの物体X』(The Thing)(1982年)

ジョン・カーペンターが監督を務めたSF/ホラー映画である『遊星からの物体X』。一度聴けばなかなか頭から離れない同作の音楽は、モリコーネが電子音を取り入れ始めたばかりのころの作品という点で特筆に値する。

ジョン・カーペンターは自らサントラを担当することも多かったが、この『遊星からの物体X』の撮影当時は多忙のために作曲に割く時間がなかった。そこで、ヨーロッパ的なサウンドを求めていたカーペンターは、モリコーネに音楽を依頼することにしたのだった。

 

6.『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)

ギャング映画の超大作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、巨匠セルジオ・レオーネの遺作になったことでも知られる。モリコーネによる哀愁漂うサントラは、二度と戻れない過去への喪失感を感じさせる名品で、英国アカデミー賞にも輝いた。

映画の登場人物それぞれに用意されたテーマ曲の中には、歌詞のないエッダ・デル・オルソのヴォーカルをフィーチャーしたモリコーネ屈指の名曲「Deborah’s Theme(デボラのテーマ)」も含まれている。

 

7.『アンタッチャブル』(1987年)

禁酒法時代を舞台にしたブライアン・デ・パルマ監督作『アンタッチャブル』はマフィアのボス、ロバート・デ・ニーロ演じるアル・カポネの暴虐を描いた映画。

モリコーネはこのスリリングなサントラを皮切りに、ブライアン・デ・パルマと計3作(『アンタッチャブル』『カジュアリティーズ』『ミッション・トゥ・マーズ』)で手を組んでいる。物語の緊張感と痛ましさを見事に表現したモリコーネの音楽は、英国アカデミー賞を受賞したほか、米アカデミー賞にもノミネートされた。

 

8.『ニュー・シネマ・パラダイス』(Cinema Paradiso)(1989年)

ある少年と映画館の映写技師との友情を描いたジュゼッペ・トルナトーレ監督作『ニュー・シネマ・パラダイス』 。

この映画のテーマである愛と郷愁を思い起こさせるモリコーネの美しいサウンドトラックは、彼のキャリアを代表する名作である。1989年の米アカデミー賞では、トルナトーレが外国語映画賞を受賞。モリコーネによる音楽も、1991年の英国アカデミー賞で作曲賞に輝いた。

 

9.『マレーナ』(2000年)

シチリア島を舞台に、モニカ・ベルッチが主演を務めたジュゼッペ・トルナトーレ監督の青春映画『マレーナ』。モリコーネが手がけたほろ苦いサウンドトラックは、米アカデミー賞にノミネートされた。映画自体は批評家からこき下ろされたが、その音楽はモリコーネの最高傑作のひとつである。

 

10.『ヘイトフル・エイト』(2015年)

意外なことに、エンニオ・モリコーネが米アカデミー賞の作曲賞を初めて受賞したのは2016年、彼が87歳のときのことだった。その作品はクエンティン・タランティーノが監督した『ヘイトフル・エイト』である。

タランティーノはそれまでも自身の監督作でモリコーネの過去の楽曲を使用していたが、書き下ろしのサウンドトラックの制作を依頼したのは、モリコーネに限らずこれがタランティーノ史上初のこと。また、モリコーネが西部劇の音楽を担当したのは、『続・夕陽のガンマン』の公開以来のことだった。

Written By Sharon Kelly




 

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