アンドレア・ボチェッリの20曲:世界で最も愛されている奇跡のテノール

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『The Complete Pop Albums CD Boxset』の発売を祝って、世界で最も愛されている歌手の一人、アンドレア・ボチェッリの素晴らしいキャリアに注目してみよう。

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国際的スーパー・スターになる前のアンドレア・ボチェッリは、弁護士であった。日中はピサで国選弁護人として働き、夜は地元のバーでピアノを弾きながら歌った。

ロックスターのズッケロがそこで彼を発見し、ルチアーノ・パヴァロッティに送るデモ「Miserere」のレコーディング用にボチェッリを雇った。パヴァロッティはいたく感銘を受け、ズッケロにこの曲を彼の代わりにボチェッリとレコーディングするように勧めたが、最終的にはパヴァロッティが歌った。しかし、パヴァロッティのサポートがボチェッリの扉を開き、彼は間もなくミランにあるSugar Recordsと契約を結ぶ。

「Miserere」は、彼のデビュー・アルバム『Il Mare Calmo Della Sera』と、ボチェッリ・マニアの急増を引き起こした1997年発表のアルバム『Romanza』に収録されている。ジョン・マイルズと共にライヴで歌われた同曲は、ボチェッリが観客の胸に着火する瞬間の熱い感動を捉えている。

『Romanza』はヒット曲を連発し、現在もイタリア人アーティストの史上最高に売れたアルバムという地位を保持している。成功の理由のひとつが、ソプラノ歌手のサラ・ブライトマンとレコーディングした大ヒット曲「Time To Say Goodbye」。このシングルは1200万枚のセールスを達成した。『Romanza』は、レコード代に見合う価値があったことには疑いの余地がない。伝説的なナポリ人テノール歌手のエンリコ・カルーソーにインスパイアされた楽曲、ルーチョ・ダッラの「カルーソ」ボチェッリの見事なヴァージョンまで収録されているのだから。だが、それが全てではない。『Romanza』にはもう一つの強力なバラード、「Vivere(邦題:生きる)」も収録されていて、ボチェッリは花火のように鮮やかな歌声を、作曲者ジェラルディーナ・トロヴァートと共に披露している。

実際、ボチェッリのキャリアを、思いつく限りの多様な音楽スタイルと多様なパフォーマー達との数多くのデュエット曲を通して辿ることは可能である。

もうひとつの彼の世界的な大ヒット曲は、1999年の『Sogno』収録のセリーヌ・ディオンとのデュエット「The Player」だ。二人の声が合わさることによって、少なくとも五人の声に聞こえるかのようなこの曲の勢いは止まるところを知らず、その後、彼もディオンもそれぞれにソロ・ヴァージョンをレコーディング。ディオンが2008年にジョシュ・グローバンとデュエットしたヴァージョンは、再びヒット曲となった。

ボチェッリはどんどん新しいアーティストを見つけて、一緒に仕事をした。『The Amore 』(2006)は、「Somos Novios」(別名:「That’s Impossible」)ではクリスティーナ・アギレラと共演し、『アメリカン・アイドル』出身のキャサリーン・マクフィーとのエルヴィス・プレスリーのヒット曲「 Can’t Help Falling In Love」のデュエットなど、素晴らしいデュエットの数々を収録している。「Les Feuilles Mortes」(もとは1940年代のフランスのヒット曲だが、1950年代にナット・キング・コールとフランク・シナトラが英語ヴァージョン「Autumn Leaves」としてカヴァー)では、ボチェッリはヴェロニカ・ベルティと共演した。そして2013年、アルバム『Love In Portofino』収録の「Andrea & Veronica 」で、アンドレアとヴェロニカは再びチームを組んだ。

ボチェッリの新しい音楽の領域の追求によって、素晴らしいジャンルを超えた実験が生まれることもあった。“ジプシー・マン”、マリオ・レイエスと組んだフラメンコ風の曲「 Sin Tu Amor」(2004年の「Andrea」収録)で、ボチェッリは、彼の熱いテノールを、レイエスの生々しく雄々しい声と見事に融合させている。賛美歌のようなアンセム「Liberta」で、ボチェッリは何百万人もの民衆を先導し、自由の旗を振っているかのような声を響かせている。ラテン・テーマの「O Mare E Tu」(『 Sogno』収録)では新しい変化に挑戦し、ポルトガル人シンガーのドゥルス・ポンテスと、強力なヴォーカルをやりとりした。

2013年のアルバム『Passione』のために、彼は沢山のクラシック・ポップ曲を、エキゾチックなシンガー達を迎えて開拓した。ネリー・ファータドとはセクシーな「 Jobim’s Corcovado」を披露し、ジェニファー・ロペスとは朗らかなマリアッチ風の「Quizas, Quizas, Quizas」(おそらく英語圏で最も知られているのはドリス・デイのバージョンだろうか)をデュエットした。生きる伝説であり続けるだけでは足りないとでもいうかのように、ボチェッリは、偉大な故エディット・ピアフと組んで、彼女の1940年のヒット曲、「La Vie En Rose」をスマートに現代版にアップデートしてみせ、エレクトロニックの方向にも敢えて挑戦した。

しかしボチェッリの魔法は、そのテノール・ヴォイスだけで、彼の内面の感情を表現した時に最もよく現れた。2009年のクリスマス・アルバム『My Christmas』の「Cantique De Noel」は、長々とリリカルな歌声を響かせる彼の素晴らしい能力を知らしめし、古くからの馴染みの曲「White Christmas」ですら、驚くべ深みを披露していた。

最も静かな曲が、時には最も効果的であることを、「Si Volto」(2001年の『Cieli Di Toscana』収録)は見せてくれる。この曲で彼は、最初の妻エンリカとの別れを、ヴァイオリンのソロとアコースティック・ギターをバックに、切々と熟考する。同アルバム収録で、それとは全く逆を行く曲が、「Melodramma」だ。強烈な情熱によって、彼が身を引き裂かれているかのように聴こえるパノラマ級の壮大な曲だ。ボチェッリは彼と同じくトスカーナ出身の作曲家マスカーニの作品『MASCAGNI:CAVALLERIA RUSTICANA』でも、巧妙に、その感情的な温度をコントロールして見せた。やはり彼は、どんな音楽的な季節にも相応しいアーティストである。



アンドレア・ボチェッリ『Sì』
14年ぶりの完全オリジナル・アルバム
発売日:2018年10月26日


映画『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』

世界最高峰のテノール歌手=アンドレア・ボチェッリが自ら書き起こした半生を完全映画化!
2019年11月15日(金)、新宿ピカデリー他全国順次公開
公式サイト:http://bocelli.ayapro.ne.jp

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