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『ガンダム』を通っていない音楽ライターが見た映画『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』

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世界中のロックファンから愛されるガンズ・アンド・ローゼズの代表曲「Sweet Child O’ Mine(スウィート・チャイルド・オブ・マイン)」が、2026年1月30日公開のガンダムシリーズ最新作、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』のエンディング主題歌として採用されたことが、映画公開日に発表された。

この件について、長年バンドを追い続け、何度もインタビューを行ってきた一方で、これまでガンダムには触れてこなかったという音楽評論家/ライターの増田勇一さんに、ご寄稿いただきました。

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『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』

1月30日に公開を迎えた映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を観た。宣伝用フライヤーに「物語は、深淵からさらなる高みへと」「もっとも濃密なドラマと、再び劇場で巡り合う」といった言葉が並んでいるのをあらかじめ目にしていただけに、これは相当期待できそうだぞ、と気分の高まりを感じながらスクリーンと向き合うことになった。

――と、言いたいところなのだが実は違う。僕は世代的には当然のように『ガンダム』を通過しているが、正直に白状すれば、その世界に深入りすることもなくむしろ素通りしてきたくちなのだ。もちろん主な登場人物や固有名詞についてはざっくりと把握できているものの、蘊蓄を垂れるほどの知識はない。TVアニメとして『機動戦士ガンダム』の放送が始まった1979年当時、すでに成人間近になっていた僕の興味はもっと他のことに向かっていた。

その後、劇場版映画やテレビアニメとして長くシリーズが続いてきたことも知っているが、たまたま興味をそそられるタイミングが巡ってきても「今作から観てみたところで多分よくわからないだろうな」などと及び腰になってしまう。逆に「きっと面白いんだろうな」「いつか観てみようかな」と思ってはいても、なかなかその機会到来を自分では見つけられずにいたところもあったように思う。

実際、身のまわりにもマニアの域にある人たちは少なくないので、ガンダム好きな人たちの深入りの仕方に圧倒させられたり、場合によっては呆れさせられたりすることもあった。ただ、そんな時に感じさせられるのは、好きな音楽にのめり込んでいる自分もきっと同じように見られているのだろうな、ということだ。だからこそ、一旦足を踏み入れたら抜け出せなくなる怖さというのもどこかで感じていたように思う。

そんな理由から新作が公開されてもなかなか劇場に足を運ぶことができずにいたのだが、今回の場合は、ユニバーサル ミュージックの洋楽担当者から「理由は訊かず、まずは観てみて欲しい」という連絡を受け、それに背中を押される形となった。その時点で、自分と縁の深いアーティストもしくは音楽と何かしら関わりがあるのだろうと感じてはいたが、そこは詮索せずにおいた。そして実際にこの作品と向き合い始めてみると、最後の最後になって、その謎かけのような依頼の理由が判明した。エンディングテーマに使用されているのがガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child O’ Mine」だったのである。

【和訳】Guns N' Roses – Sweet Child O' Mine / ガンズ・アンド・ローゼズ │『機動戦士ガンダム #閃光のハサウェイ キルケーの魔女』エンディング主題歌

 

危険なバンドによる意外だった「Sweet Child O’ Mine」

この楽曲はガンズのデビュー・アルバム『Appetite For Destruction』(1987年)に収録されており、1988年6月に同作からシングルカットされ、9月には全米シングル・チャートにおいて2週連続で首位に輝いている。それは、アルバム自体が発売から丸1年を費やしながらチャートの頂点へと躍り出た翌月のことだった。この曲のポピュラリティの高さ、ハード・ロック層の外側にも訴えかけ得る普遍的な魅力が、ガンズ自体に対する世の関心の高まりに繋がったことは疑う余地もない。

当時この曲が音楽ファンにもたらしたのは“意外性”でもあった。ガンズ自体が危険なバンド、無軌道なバンドといったイメージで捉えられがちだったのは説明するまでもないが、そんな彼らにこんなにも無垢で繊細でロマンティックな一面があるのか、という驚きが伴っていたのだ。実際、この曲はラヴソングである。1987年、『Appetite For Destruction』発売当時の公式資料の中には、アクセル・ローズによる以下のようなコメントが引用されている。

「これは、この曲を作っていた当時のガールフレンドに関する実話。まず詩として書き始めたものがあったんだけど、煮詰まったのでそのまま放置してあった。ところが、のちにスラッシュとイジー(・ストラドリン)が一緒に曲作りをしているところに俺が入っていった時、イジーが弾き始めたリズムを耳にした途端、頭の中にあの詩が頭に浮かんできた。そうやって一気に嵌まっていったんだ。ロック・バンドの多くには、マジでキツい事態に陥った時でもない限り感傷や情感を曲に反映することに腰が引けてしまいがちなところがある。これは俺が初めて書いた前向きなラヴソング。ここまでポジティヴなのを書いたやつは過去にいないと思う」

この発言中にある“ガールフレンド”とは、のちにアクセルとごく短い結婚生活を送ることになるエリン・エヴァリーに他ならない。当時モデルをしていた彼女は、ザ・エヴァリー・ブラザーズのドン・エヴァリーの娘にあたる。

同じ資料の中には、イジーの「これは本物のラヴソングだ」という発言も引用されているが、バンドとしてもこの曲がリアルなものであることを強調したかったのだろう。この曲のビデオ・クリップに、当時の各メンバーの実際のガールフレンドが登場しているのもそうした意向の表れだったのではないかと思われる。

 

ガンズと映画

そんな「Sweet Child O’ Mine」は、実は映画と縁のある曲でもある。まず1988年に公開された『悪夢の惨劇』というアメリカのホラー映画でクロージング曲としても使用されているが、それは単純に、当時のガンズがまだ新進気鋭のバンドに過ぎず、使用料がほとんどかからずに済む(=プロモーションと見做される)という理由からだったようだ。

また、1999年には、映画『ビッグ・ダディ』のサウンドトラック盤の中でシェリル・クロウによってカヴァーされており、そのカヴァーは、彼女にグラミー賞(Best Female Rock Vocal Performance部門)をもたらしていたりもする。

Big Daddy- Sweet Child Of Mine

そもそもガンズ自体が映画と無縁ではない。彼らは1991年9月に『Use Your Illusion』という共通タイトルが掲げられたアルバムを2枚同時発売しているが、そこからの先行シングルとして同年6月にリリースされた「You Could Be Mine」(全米29位)はアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター2』の主題歌であり、同楽曲のビデオにもシュワルツェネッガーが登場している。

Guns N' Roses – You Could Be Mine (Official Video HD)

また、ガンズにはアクセル以外のオリジナル・メンバーが不在だった時代があるが、彼の目指す“新たなガンズ”のスタート地点となった「Oh My God」という楽曲は、同じくシュワルツェネッガー主演の『エンド・オブ・デイズ』(1999年)のサウンドトラックに収められている。

End of Days 1999 O My God

さらに言うならば、彼らの看板曲のひとつである「Welcome to the Jungle」は『ジュマンジ』のシリーズの2作目にあたる『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル』(2017年)でエンディングテーマに使用されているが、その採用理由は作品タイトル自体が物語っているだけに説明するまでもないだろう。

JUMANJI: WELCOME TO THE JUNGLE – Official Trailer (HD)

ただ、映画との関わりの深さという意味においては、『ソー:ラブ&サンダー』(2022年)について触れずにおかないわけにはいかない。マーベル・コミックスを原作とするクリス・へムズワース主演のこの映画には、実に「Sweet Child O’ Mine」と「Welcome to the Jungle」、「Paradise City」、さらには「November Rain」まで登場する。この作品が公開された際にも劇場に足を運んだが、まるで各曲の新たなビデオ・クリップを観ているかのような新鮮な興奮をおぼえたものだ。

Thor Love and Thunder Ending Song Soundtrack "Sweet Child O' Mine" MV

 

「閃光のハサウェイ」と「Sweet Child O’ Mine」

そして今回の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』では「Sweet Child O’ Mine」がエンディングテーマとして使用されており、当然ながら作品の最後に流れるのだが、あの象徴的なイントロが始まるタイミングがあまりにも絶妙すぎて、観ていて鳥肌が立つほどだった。思い入れ深い楽曲を映画館の音響で聴けるだけでも感動的だというのに、まるであの曲がこの映画を観たうえで作られたものであるかのような合致感があるのだ。

物語自体の中でもさまざまな人間模様、各々の思惑や心情の揺れが描かれているが、ふとした瞬間に湧き出てくるイノセントな感情というものがひとつの鍵になっているように僕には感じられた。そして、それを象徴するかのように、スラッシュの奏でるあのイントロが聴こえてくるのだからたまらない。加えてこの曲の中で繰り返される“Where do we go now?”という歌詞が、行方の気になる物語を観終えたこちらの心情にも重なってくるのだ。

いかに人気作品とはいえ、なかには僕と同じようにガンダム・シリーズとは無縁だったという読者もいることだろうし、「これまでの物語の流れを把握できていないから」という理由で二の足を踏んできた人たちもいるのではないかと思う。ただ、僕自身もさほど準備せぬままこの作品と向き合うことになり、物語の序盤のうちはその背景を掴み切れないところがあったが、映像の美しさなども含め、観ていてぐいぐいと引き込まれるものがあり、気付いてみれば感情移入している自分がいたのだった。

今は配信などを通じて旧作を容易く観ることができる時代でもあるだけに、物語にスムーズに没入していくためには、少なくともシリーズ前作にあたる『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年)くらいは事前に観ておくのが好ましいのだろう。

ただ、予備知識のないまま味わい、逆に「Sweet Child O’ Mine」が聴こえてくる象徴的なエンディング・シーンを起点としながら物語を遡っていくのも楽しいのではないかという気がする。同時に、この映画を切っ掛けとしながら、改めてガンズ・アンド・ローゼズの世界へと足を踏み入れていく人たちがたくさんいることを願っている。

Written by 増田勇一


ガンズ・アンド・ローゼズ「Sweet Child O’ Mine」
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』エンディング主題歌に
楽曲視聴


ガンズ・アンド・ローゼズ「Nothin’」「Atlas」
2025年12月4日2曲同時配信
Nothin’  /  Atlas

ガンズ・アンド・ローゼズ『Live Era ’87–’93』
2025年11月21日
CD / LP / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


ガンズ・アンド・ローゼズ『Appetite For Destruction』
1987年8月21日発売
BOX SET / CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music


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