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  • マウリツィオ・ポリーニ生前最後の録音が発売決定

    マウリツィオ・ポリーニ生前最後の録音が発売決定

    2024年3月に惜しくも急逝したイタリアの偉大なピアニスト、マウリツィオ・ポリーニの生前最後の録音『シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番、幻想曲ヘ短調 他』が10月25日(金)にリリースされることが決定した。なお、9月13日よりシングル「幻想曲 ヘ短調 D 940 第1番:Allegro molto moderato」の先行配信がスタートしている。

    1959年のエットレ・ポッツォーリ国際ピアノコンクール、1960年のショパン国際ピアノコンクールで優勝して以来、現代における最も伝説的なピアニストの一人としての地位を確立したマウリツィオ・ポリーニ。ヘルベルト・フォン・カラヤン、クラウディオ・アバド、ピエール・ブーレーズ、カール・ベームなど、世界の著名な指揮者やオーケストラとの共演を果たし、圧倒的な技術に裏打ちされた演奏で聴く者を魅了してきた。また、古典派から20世紀の現代音楽まで幅広いレパートリーを誇るポリーニは、1972年のデビュー作以来、生涯ドイツ・グラモフォンの専属アーティストとして数々の名作を遺している。

    生前最後の録音となった今作は、ポリーニがドイツ・グラモフォンからのデビュー盤から愛用してきた、ミュンヘンのヘラクレスザールで録音を行ったもの。息子でピアニストのダニエレ・ポリーニとの共演作で、2人が愛する作曲家、フランツ・シューベルトのピアノ作品を取り上げている。収録曲はポリーニの演奏による「ピアノ・ソナタ第18番」で始まり、ダニエレによる「楽興の時」、そして親子2人の連弾による「幻想曲 ヘ短調」でアルバムが締めくくられる。

    ©York Christoph Riccius DG

    父の最後の録音に参加したダニエレ・ポリーニは今作について「最近父が亡くなったことで、元々この録音に対して想像していたものと、実現までのプロセスが一気に変わりました。父と共演をするという貴重な出来事として提示されたものが、一度限りの大切な思い出となったのです。シューベルトに捧げるこのアルバムを作る機会を得たこと、そして父の最後の録音となったこのアルバムを父と共有できたことをとても嬉しく思っています」とコメントを寄せている。


    ■リリース情報

    『シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番、幻想曲ヘ短調 他』ジャケット写真

    2024年10月25日 (金)発売
    マウリツィオ・ポリーニ、ダニエレ・ポリーニ『シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番、幻想曲ヘ短調 他』
    CD /Amazon Music /Apple Music / Spotify


  • 雨の日に聴きたいクラシック音楽10選:ショパンの《雨だれ》やドビュッシーの〈雨の庭〉など

    雨の日に聴きたいクラシック音楽10選:ショパンの《雨だれ》やドビュッシーの〈雨の庭〉など

    爽やかで過ごしやすい春の季節を終えたら、次に訪れるのは梅雨の季節。雨の日にぴったりの音楽に身を委ねることで、いつもと違う気分になれるかもしれない。クラシック音楽には、「雨」にまつわる作品がたくさんある。しとしと降ったり、ザーザー降りだったり、時には嵐がやって来たり……。今回は、いろんな「雨」を表現した音楽をセレクト。雨模様の日こそ、音楽で描かれた「雨」にも耳を傾けてみたい。音楽ライター 桒田 萌さんによる寄稿。



    1. ショパン:前奏曲 第15番《雨だれ》

    「雨だれ」の通称で有名な作品。24あるすべての調性を網羅した《前奏曲集》の15番目を飾る。ショパンの恋人であったジョルジュ・サンドの自叙伝に、二人が療養と逃避のために訪れたマジョルカ島で、ある雨の日、体調不良を極めていたショパンが朦朧としながら《雨だれ》を演奏していた様子が語られている。

    多くの人が知る美しい旋律はもちろんのこと、1曲の中に穏やかなメジャーと重く暗いマイナーの対比も見事。A♭(G♯)の音が淡々と繰り返されるが、長調と短調の切り替わりによって、同じ音にもかかわらず聴き手に与える印象をガラリと変える。愛する人との幸福な逃避行、一方で衰弱していく身体。喜びと悲しみの狭間で、ショパンはいかに窓の外の雨を見つめたのだろうか。《雨だれ》を聴きながら、思いを馳せたい。

    牛田智大 – ショパン: 前奏曲 第15番《雨だれ》

    2. ドビュッシー:《版画》より〈雨の庭〉

    ピアノ曲集《版画》に収録されている1曲。ドビュッシーはのちに《映像》《前奏曲集》とフランス印象主義の金字塔的な曲集を残しており、《版画》はそれらに先駆けて書かれている。

    すばやく微細なアルペジオは、まるで庭に強く打ち付ける芯の鋭い雨を連想させる。日本では雨が降ると、湿度の高さからじめっとした空気が流れるが、この作品ではそんな湿っぽさを感じさせない。幻想的で、どこかドライだ。

    Debussy: Estampes, CD 108: III. Jardins sous la pluie

    3. ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番《雨の歌》

    この作品は、ブラームス自身の歌曲《雨の歌》の旋律がそのまま第3楽章に引用されていることから、同じタイトルが通称とされてきた。歌曲《雨の歌》は、ドイツの詩人・グロートの詩が歌われる。雨に喜ぶ幼少期を思い出しては「雨よ降れ」と歌い、かつての情景を思い起こす、ポエティックな作品だ。同じ歌曲集に収録されている《余韻》にも同じ旋律が登場し、こちらでは雨を涙に喩えた情緒的な詩が歌われている。

    ヴァイオリン・ソナタ第1番は、ブラームスが深い交流を続けてきたクララ・シューマン(ロベルト・シューマンの妻)の息子が亡くなる直前に書かれた。第2楽章は彼への見舞いの意を込め、葬送行進曲になっている。そして第3楽章に、懐かしさと悲しみを込めた《雨の歌》と《余韻》の旋律を挿入することで、彼やクララを見舞おうとしたのかもしれない――クララはこの作品を聴き、大変喜んだそうだ。

    Brahms: Violin Sonata No. 1 in G Major, Op. 78: I. Vivace ma non troppo

    4. ベートーヴェン:交響曲 第6番《田園》より第4楽章〈雷雨、嵐〉

    田園の風景を想起させる5つの楽章からなるある交響曲第6番《田園》。楽章ごとに、その町の人々の様子や小川の姿など、朗らかな風景を連想させる副題がついているが、第4楽章〈雷雨、嵐〉は非常に激しい曲調。

    他の楽章にはないティンパニやトロンボーン、ピッコロといったインパクトあるサウンドを鳴らす楽器が加わり、自然の厳しさを訴えるように目まぐるしく音楽は展開していく。その後の第5楽章〈牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち〉とセットで聴くと、晴れの日が恋しくなるかもしれない。

    Beethoven: Symphony No. 6 in F Major, Op. 68 "Pastoral": IV. Gewitter, Sturm. Allegro

    5. 武満徹:雨の樹素描Ⅱ―オリヴィエ・メシアンの追憶に―

    武満徹は雨や水にまつわる作品を多く書いており、《雨の樹素描Ⅱ》もその一つ。武満が敬愛したメシアンへの追悼の意が込められていると同時に、大江健三郎の小説『頭のいい雨の木』からインスピレーションを得て書かれている。

    ピアノならではのクリアな響きが活かされ、大小さまざまな透き通った雨粒が「雨の木」の葉に滴る様子が思い浮かぶ。静かに雨の日を堪能したい時に聴きたくなる1曲だ。

    Takemitsu: Rain Tree Sketch II

    6. プーランク:歌曲集《カリグラム》より〈雨が降る〉

    詩人・アポリネールの詩集『カリグラム』は、詩の言葉が連なっているだけでなく、その文字が絵画のように配置されるという独特の表現がなされていて、文学と他ジャンルの芸術が融合したアート作品だといえる。そこに収録されている「雨が降る」も同じく絵画のように表現されており、言葉が窓に滴る水のように配置されているのがおもしろい。

    プーランクはこの詩を採用した。気まぐれな雨のような短い序奏から始まり、雨が降り出したり、さらに暗雲が立ち込めたりするかのように、音楽は豊かな広がりをみせていく。「聞いてごらん、雨が降っているのを。後悔と蔑みが古い音楽に涙をこぼす間に」――雨にまつわる情景や比喩に、憂鬱さが漂っている。

    Poulenc: Calligrammes – Sept Mélodies sur des poèmes de Guillaume Apollinaire: 4. Il pleut

    7. ヴィヴァルディ:フルート協奏曲 第1番《海の嵐》

    嵐の日の海を想像してみてほしい。強い風に荒れ狂う波を想像する人が多いのではないかと思うが、それが雅に表現されたのがこの作品だ。上下を激しく行き交うフルートのパッセージから、海上が激しくしける様子が思い浮かぶ。その明るい作風から、むしろ嵐に動揺する海を軽々と乗りこなす優雅さすらも感じさせる。弦楽器や管楽器などのコンツェルトを多く書いてきたヴィヴァルディの本領の見せどころとも言える、華やかな作品だ。

    Vivaldi: Concerto in F Major for Flute & Strings, Op. 10, No. 1, RV 433 "La tempesta di mare":…

    8. グローフェ:組曲《グランド・キャニオン》より第5曲〈豪雨〉

    世界遺産に登録されているアメリカの大峡谷、グランド・キャニオン。この壮大な姿をグローフェは鮮やかな描写で表現した。第1曲〈日の出〉に始まり、第2曲〈赤い砂漠〉、第3曲〈山道を行く〉、第4曲〈日没〉と続き、最後は第5曲〈豪雨〉で締められる。

    轟くような激しいティンパニとシンバルの音、新たな地割れをもよおしそうな強い金管楽器の叫び、生き物たちが怯え右往左往しているような弦楽器や木管楽器の高音、効果的に用いられているウインド・マシーン。自然の恐ろしさが、多様な音の重層で表現されている。梅雨の時期に聴くには荒々しいかもしれないが、日常生活では味わえない自然の迫力を感じられることだろう。

    Grofé: Grand Canyon Suite: 5. Cloudburst

    9. シューベルト:歌曲集《美しき水車小屋の娘》より第10曲〈涙の雨〉

    さすらう若者が、旅をして訪れた町の水車小屋の美しい娘に一目惚れするものの、狩人に奪われ自ら命を絶つ――歌曲集《美しき水車小屋の娘》は、全20曲を通して悲劇的な物語が歌われる。

    第10曲〈涙の雨〉は、若者と彼女が二人きりで過ごすひとときが歌われる。彼女を目前にして、若者は口を開くことができず、小川に映る彼女を見つめるばかり。そんな彼に小川は「こっちにおいで」と呼びかけ、彼はなぜか小川に涙をこぼす。彼女はそれを見て「あら、雨が降ってきたわ。家に帰ります」と口を開く――。

    曲の終盤、それまで穏やかだった曲調は突如陰影をみせる。小川からの意味深な呼びかけと、ふとこぼれる涙(=雨)。歌曲集全体を通して、悲しい雨の行方を追いながら、この後の展開に想像を巡らせてみてはいかが。

    Schubert: Die schöne Müllerin, D. 795: No. 10, Tränenregen

    10. チャイコフスキー:幻想序曲《テンペスト》

    「テンペスト」は「嵐」を意味する。シェイクスピアが書いた『テンペスト』は、魔術で嵐を生じさせることで復習を目論むミラノ大公プロスペロー、そして彼を国から追い出し復讐を狙われている弟・アントニオとナポリ王アロンゾーたちの物語。チャイコフスキーは、この作品を元にロマンチックかつ劇的な作風で音楽を書いた。

    曲の中盤に、嵐の描写が登場する。大きく振りかぶるような風を表現するような弦楽器や、それに乗じて急かされるような木管楽器、恐ろしさを象徴するような印象的な旋律を服金管楽器。さまざまなモチーフが絡み合うことで、海上に巻き起こる嵐の激しさは一層増している。ドラマチックな雰囲気を味わいながら雨を堪能したい時に聴きたい作品だ。

    Tchaikovsky: The Tempest, Op. 18, TH 44

    Written By 音楽ライター 桒田 萌



  • 春の訪れを喜ぶクラシック音楽作品:ショパンやモーツァルトなど聴くべき作品12選

    春の訪れを喜ぶクラシック音楽作品:ショパンやモーツァルトなど聴くべき作品12選

    春の季節といえば、どんなイメージがあるだろうか。人との出会いや物事の芽生え。寒い時期を終え暖かい季節を迎えると、自然と心までも浮き立ち、未来への楽しい予感さえ生まれてくる。一方で、区切りの季節を迎えたことでナーバスになったり、強い決意で体がこわばったり……。そんな多様なさまを表現しているのも、クラシックである。今回は、「春の訪れを喜ぶ作品」をテーマに、クラシック音楽をセレクト。喜ぶのはもちろんのこと、憂いや焦り、悲しみなど、喜びと表裏一体でもある感情をすくいとった作品も含めて紹介するので、それぞれの作曲家の見つめた「春」を感じ取っていただきたい。音楽ライター 桒田 萌さんによる寄稿。



    シューベルト:春の信仰

    ドイツ・リートの名手であるシューベルトによる歌曲作品。優しく穏やかなピアノの伴奏に乗せて歌われるのは、春への喜び。どうやら詩の主は心が沈んでいるみたいだが、春を機に心を奮い立たせようとしているようだ。この季節を節目に、「心を入れ替えて、今日からまたがんばろう」と前向きに奮起する人が多いだろう。そんな人には、「今、すべてを変えなければならない」と強く歌うこの作品がピッタリではないだろうか。

    Schubert: Frühlingsglaube, D. 686b

    ドビュッシー:交響組曲《春》

    ドビュッシーが20代のころに書いた作品。イタリアのボッティチェリの描いた名画「プリマヴェーラ」に着想を得て書かれている。40種類以上もの花が咲き乱れている絵画にふさわしく、妖艶さと瑞々しさを兼ね備えながら春への喜びが花開く作品だ。ちなみに原版は一度火災によって消失してしまっているが、晩年のドビュッシーの指示によって、作曲家・編曲家のビュッセルが再度オーケストレーションを完成させたものが今日でも演奏されている。

    Debussy: Printemps, CD 68b (Orch. Büsser) : I. Très modéré

    モーツァルト:弦楽四重奏曲 第14番《春》

    モーツァルトは1782年、ハイドンに向けて6つの弦楽四重奏作品を献辞しており、その1曲目となるのがこの作品だ。特に第1楽章や第4楽章で半音階がふんだんに用いられながら旋律が展開されており、音楽の表情の機微が柔軟かつカラフルに変化していく。華麗なる春の訪れが音楽を通して伝わってくるようで、聴いていると心が華やいでくる。

    Mozart: String Quartet No. 14 in G Major, K. 387: I. Allegro vivace assai

    ピアソラ:《ブエノスアイレスの四季》より〈ブエノスアイレスの春〉

    アルゼンチンに生まれ、クラシックに傾倒しながらタンゴに革命を起こしたピアソラ。日本やヨーロッパとは赤道を隔てて反対側にある南半球・アルゼンチンで生まれ育った。その地の四季が表現されたのが、組曲《ブエノスアイレスの四季》だ。

    ブエノスアイレスでは1年が夏から始まるため、組曲も〈夏〉から始まる。ブエノスアイレスにおける春は、大体9月〜11月ごろ。年間を通して日本より温かく、夏は高温多湿。どの季節の音楽を通しても独特の熱量を帯びているのは、そうした気候状況によるものだろうか。特に〈春〉は、他の季節の音楽よりもひときわ熱くグルーヴ感があり、日本と違う季節観が見えてくるようである。

    Piazzolla: Cuatro Estaciones Porteñas – Arr. Desyatnikov: Primavera Porteña

    モーツァルト:歌曲〈春への憧れ〉

    「来ておくれ、愛しい5月よ」。春を待ち焦がれるような、はやる気持ち。ドイツの詩人であるクリスチャン・オーヴァーベックの童詩集『フリッツヒェンの歌』の詩が歌われている。モーツァルトは、同じ季節の歌曲で〈すみれ〉を書いているが、〈春への憧れ〉では生き生きとした春への想いが綴られている一方で、〈すみれ〉は「死」を連想させる。2曲を合わせて聴いてみることで、モーツァルトの中にある春への二面的な価値観が垣間見えるようで興味深い。

    Mozart: Sehnsucht nach dem Frühling, K.596

    ショパン:《17のポーランドの歌》より 第2番〈春〉

    ピアノの詩人と呼ばれたショパンは、作品の大多数をピアノ曲で占めているが、歌曲も多く残している。《17のポーランドの歌》は、ポーランドの詩を採用した歌曲集。

    第2番〈春〉は春の喜びを噛み締めようとしているものの、自らの心の孤独や哀しみの沼から這い出しきれぬさまが歌われている。そんな葛藤を抑え込むかのように、歌もピアノも淡々と静謐に奏でられる。明るい季節を目前にしながら、無理して前を向くのではなく、現在地をしっかり踏み締め、時には後ろを振り返る。そんな春があっても良いだろうと、ショパンの音楽が教えてくれる。

    Chopin: Wiosna, Op. 74 No. 2 (Version for Solo Piano)

    チャイコフスキー:《四季》より〈4月〉

    1月から12月までの季節や風習の様子が、月ごとに1曲ずつピアノで描写された曲集《四季》。それぞれの月に副題が付けられており、4月は「待雪草」。英語で「スノードロップ」と呼ばれるこの花は「春を告げる花」と言われており、下向きに控えめに咲く姿が非常にかわいらしい。

    淡々と刻む和音の上で奏でられる、美しく可憐でどこか物憂げな旋律。高音と中低音を行き来するように歌われる。その一方で軽やかにピアニズムを発揮したりする場面もあり、さまざまな表情のスノードロップが見え、聴いていて心が安らぐ一曲だ。

    Tchaikovsky: The Seasons, Op. 37a: IV. April. Snowdrop. Allegretto con moto e un poco rubato

    ラフマニノフ:《12の歌曲》より〈リラの花〉

    ラフマニノフが妻のナターリヤと結婚した年に書かれた歌曲集が、《12の歌曲》。彼女に捧げた〈ここはすばらしい場所〉などが収録されているが、〈リラの花〉も外せぬ逸品だ。「リラ」は英語でライラックと呼ばれ、春に木から垂れ下がるように咲く紫のかわいらしい花のこと。「ライラックの花の中に、自分の幸せがある」と、ささやかな幸せを希求する心情を、ライラックの花を介して控えめに表現している。物事の始まりや芽吹きを予感させる春の季節に、明るい未来を祈る。この季節にぴったりの歌だ。

    Rachmaninoff: 12 Romances, Op. 21: V. Lilacs

    マーラー:《大地の歌》より第5楽章〈春に酔う人〉

    マーラーにとって9つ目の交響曲。6つの楽章から成り、いずれも李白や孟浩然、王維といった中国の詩を元にハンス・ベートゲが編纂した『中国の笛』のテキストが歌われている。時には世を憂いたり、謳歌したり——第5楽章〈春に酔う人〉も同じく、酒に溺れながら人生を謳歌しているが、一方で「春が何だって言うんだ」とむしゃくしゃする一面もあり、この世を生きる人間の多面的な心情が歌われているともいえる。第5楽章の詩は、李白による漢詩『春日醉起言志』のテキストが元になっている。

    Mahler: Das Lied von der Erde: IV. Von der Schönheit

    ラヴェル:ダフニスとクロエ

    ラヴェルが活躍した20世紀初頭、興行主のディアギレフが率いるバレエ団体「バレエ・リュス」がエンターテイメント業界を席巻していた。《ダフニスとクロエ》は、「バレエ・リュス」から依頼を受けて書かれたバレエ作品。

    2〜3世紀の古代ギリシャの詩人であるロンゴスの書いた原作を採用し、羊飼いの男女であるダフニスとクロエを取り巻く妖艶な恋愛物語が描かれている。ラヴェルと同時代を生きた画家のジャン・フランソワ・ミレーも、「春(ダフニスとクロエ)」という油彩画を残している。成熟しきっていない男女の出会いと、愛の芽生え。それを「春」という季節に見立てるのは、ごく自然なことであるともいえる。ラヴェルの思い描いたダフニスとクロエの恋愛は、ミレーのそれよりも少し艶っぽい。しかし、1組の男女の愛が形になるさまを描いたことを考えると、ラヴェルの作品もまた「春」という季節にぴったりだ。

    Daphnis et Chloé, M. 57, Pt. 3: X. Lever du jour "Daybreak"

    シューマン:交響曲 第1番《春》

    シューマン独特のロマンティックな表情はもちろんのこと、晴れやかさと爽やかさも兼ね備えた作品だ。詩人のアドルフ・ベトガーが春について書いた詩にインスパイアされた作品で、初演時にはそれぞれの楽章に「春の始まり」「夕べ」「楽しい遊び」「たけなわの春」と標題がつけられていた。

    この作品が書かれた1841年、シューマンは最愛の妻であるクララと念願の結婚を果たした直後であり、歌曲をはじめとするさまざまな代表作が多く生まれた豊作の時期でもあった。まさに、シューマンの人生における「春」。そんな時期に生まれた傑作だ。

    Schumann: Symphony No. 1 in B flat, Op. 38 – "Spring": 1. Andante un poco maestoso – Allegro…

    コープランド:アパラチアの春

    20世紀アメリカ生まれの作曲家、コープランドによるバレエ作品。舞台は、1800年代のアパラチアの地域にあるペンシルベニア州。アメリカの開拓民が新たな農地を開いた人々の祝いの場で、とある新郎新婦の門出を祝うさまが描かれている。中でも「シンプル・ギフト」と呼ばれる、アメリカのキリスト教宗派であるシェーカー派の讃美歌が用いられ、喜ばしい場面を美しく爽やかに彩っている。

    Copland: Appalachian Spring – 1945 Suite: Very slowly- Allegro – Moderato – Fast-More…

    Written By 音楽ライター 桒田 萌



  • 世界的ピアニスト 内田光子、ニュー・アルバムを世界に先駆けて日本で先行リリース決定

    世界的ピアニスト 内田光子、ニュー・アルバムを世界に先駆けて日本で先行リリース決定

     

    世界的ピアニスト、内田光子のニュー・アルバム『ベートーヴェン:遥かなる恋人に/シューベルト:白鳥の歌』が11月9日(水)にリリースされることが決定した。今作はイギリスの名テノール歌手、マーク・パドモアとの歌曲アルバムで、11月に予定されている来日リサイタルを記念し、世界に先駆けた日本先行発売となる。

    今作は、今年5月に2人がアーティスト・イン・レジデンスを務めるウィグモア・ホールにてレコーディングされたもので、「ベートーヴェン:歌曲《遥かなる恋人に》」と「シューベルト:歌曲《白鳥の歌》」の2曲を収録。内田光子にとって、第59回グラミー賞「最優秀クラシック・ヴォーカル・アルバム(ソロ)」を受賞したドロテア・レシュマンとの歌曲アルバム以来、7年ぶりの歌曲伴奏アルバムとなる。パドモアと内田光子はリサイタルで何度かこのプログラムを披露しており、カーネギーホールでの演奏について米紙ニューヨークタイムズは「内田光子とパドモアは、知恵と感性の塊であり、まさに対等なパートナーである。終始、ひとつの楽器のように振る舞い、ほとんど合図をせずとも徹底したビジョンを共有していた。」と評している。

    内田光子は11月に来日し、パドモアとのリサイタル・ツアーだけでなく、指揮者アンドリス・ネルソンス率いるボストン交響楽団のベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》の公演も行う予定。今回の来日について内田光子は「親愛なる友人であり、音楽的パートナーであるマーク・パドモアと再び日本に来ることができ、とても嬉しく思っています。そして、長年の繋がりがあるボストン交響楽団とアンドリス・ネルソンスと共演できるのは、この上ない喜びです。」とコメントを寄せている。


    ■リリース情報

    内田光子『ベートーヴェン:遥かなる恋人に/シューベルト:白鳥の歌』
    2022年11月9日発売
    CD


  • 冬にぴったりのクラシック音楽10選:ショパン、ドビュッシー、ヴィヴァルディなどの作曲家の名曲選

    冬にぴったりのクラシック音楽10選:ショパン、ドビュッシー、ヴィヴァルディなどの作曲家の名曲選

    ショパン、ドビュッシー、ヴィヴァルディなどの作曲家による、冬にぴったりなクラシック音楽の名曲をご紹介する。

    自然界は芸術的なインスピレーションを豊かに与えてくれる。特に冬は、硬く凍りついた風景と雪の柔らかさ、霜の冷たい氷とノスタルジーの暖かさが同居する、厳かな美しさがある。

    そして自然な終わりの悲しみを、回顧と追憶の心地よさで表現しているのだ。その美しさと寓意的な象徴性によって、降りしきる雪や凍てついた風景を音楽的に解釈した作品たちは、クラシックのレパートリーとして常に存在しているのである。木々の葉が落ち、夜が深まり、過ぎ去った一年を振り返りながら、冬にふさわしいクラシック音楽を聴き、心地よい時間をお過ごしいただきたい。このページでは、冬にぴったりのクラシック音楽の名曲をご紹介する。

    冬にぴったりのクラシック音楽作品トップ10
    10.ドビュッシー:雪は踊っている(《子供の領分》より)

    ドビュッシーの〈雪は踊っている〉は、冬にぴったりのクラシック音楽の一つである。このピアノ小品は、その素晴らしいタイトルにふさわしいものだ。容赦のないスタッカートのきらめくような音が鍵盤から流れ落ち、16分音符のもやもやとした霧の中から、軽やかで繊細なメロディが浮かび上がってくる。ドビュッシーは絶妙な音楽的イメージを与えてくれるだけでなく、このピアノ組曲《子供の領分》は、もともとドビュッシーの娘クロード・エマに捧げられたもので、子供のように無邪気で遊び心があり、暖かい郷愁を感じさせる作品なのである。

    9.リムスキー=コルサコフ:組曲《雪娘》

    次はリムスキー=コルサコフのオペラ《雪娘》。これも雪を描いた名作である。この作品は、ロシア音楽の伝統に根ざしている。リブレットは汎神論的な民話に基づいており、冬から春への変化は、ヒロインである雪娘とその恋人ミズギールの和解のメタファーとなっている。リムスキー=コルサコフは、楽曲を通じて民謡を多用しており、自然とのつながりを強調している。組曲は、震えるように奏でられる弦楽器群と氷のような響きの木管楽器群が描き出す冬の情景で始まり、素朴で軽快な「鳥たちの踊り」へと移っていく。

    8.ケージ:冬の音楽

    ケージの《冬の音楽》は、通常の楽譜とは違っている。20に分かれたページがセットになっており、最大20人のピアニストによって演奏することができる。それらのページのいくつか、全部、あるいはどれかがどんな順序でも使用可能。混乱しただろうか? もちろん我々もそうだ。しかしそれがケージの魔法なのである。一見ランダムに見えるページや、対照的なピアノの書法、リズムや音程といった支離滅裂なものの中に、冬への美しい賛歌が隠されているのだ。ある時は厳しく、耳障りであり、氷のように滑っていってしまう。しかしある時は柔らかく、繊細で静謐な風景なのである。この曲の、自由で即興的な、予測不可能な雰囲気が、冬の音楽的特徴を完璧に表現している。

    7.コルンゴルト:雪だるま

    冬に聴きたいクラシック音楽の代表作の一つ、《雪だるま》は、コルンゴルトがまだ11歳のときに書いたバレエ=パントマイムであり、初期の作品の一つである。もともとはピアノのために作曲されたが、1910年のウィーンでの初演で大成功を収め、その後、今日のようなオーケストラ版に発展した。ピエロが雪だるまに変装して、叔父のパンタロンに気づかれぬよう、美しいコロンビーヌと駆け落ちするという物語である。コルンゴルトのスコアは、後期ロマン派、ポスト・ワーグナーの素晴らしい作曲スタイルの典型的なもので、個性、ウィット、魅力、軽妙さを醸し出している。まさに心温まる冬の喜びである。

    6.ショパン:エチュード 第11番 イ短調《木枯らし》

    ショパンの24のエチュードの中で、作品25の第11番イ短調は最も凶暴な曲とされている。この曲は《木枯らし》という通称の方が有名かもしれないが、その理由は簡単に理解できる。この作品はピアニストのテクニックと器用さを向上させるために作られたもので、右手には16分音符の連打、左手には不吉な和音の主題が容赦なく繰り広げられる。吹雪、凍てつく寒さ、吹き荒れる風、砕け散る氷など、高速で演奏されることを前提に作られたショパンのエチュードは、完璧な描写である。この後、なかなか暖かくならないかもしれない。

    5.グラズノフ:《四季》より〈冬〉

    グラズノフのバレエ《四季》の最初の稿では「冬景色」と題されている。音楽で冬を表現する際に、グラズノフはさらに一歩踏み込んで、実際に冬を体現した人物が霜、氷、雪、あられといった仲間たちとともに踊る姿を観客に見せている。この雪をモチーフにした音楽は、登場人物ごとに異なるヴァリエーションが用意されているのだ。冬の天候の擬人化は、チャイコフスキーやグラズノフの師匠であるリムスキー=コルサコフの音楽と同じようなスタイルで、音楽にも反映されている。木管楽器、弦楽器、ハープなど、色とりどりの楽器が登場し、温かみのあるロマンティシズムに溢れた、グラズノフの輝かしいバレエはまさしく冬の美しさをとらえている。

    4.ラター:吹けよ、吹け、冬の風よ

    単体の作品として演奏されることもあるが、もともとはラターの合唱曲集《つららが下がる時》の一曲として書かれたものである。それは、シェイクスピアの『お気に召すまま』第2幕の合唱(ソプラノ、アルト、テノール、バス)からの魔法のような歌の組み合わせである。不吉で鋭いチェンバロとソプラノ歌手の氷のような音色で始まるこの曲は、徐々に低声部によって溶け出し、ラター特有の伸びやかなリリシズムで歌詞が描かれている。

    ハイ・ホー!ハイ・ホー! 緑のヒイラギにハイ・ホー!と歌え
    ほとんどの友情は見せかけで、ほとんどの愛情はただの愚行だ。
    そして、ヒイラギにハイ・ホー!この人生は最も陽気なものである

    3.シューベルト:冬の旅

    シューベルトの有名な歌曲集、“Winterreise”は、ミュラーの24の詩をテノールとピアノのために音楽化したもので、「冬の旅」という意味である。シューベルトはこの作品で、冬を最も荒涼とした形で表現している。歌い手はあてもなくさまよいながら(第3曲:凍った涙 Gefrorne Tränen)、愛と春の夢を見る(第11曲:春の夢 Frühlingstraum)。しかし、彼は冬の現実の冷たい暗闇の中で目を覚ますのである。オープニング(第1曲)の〈おやすみ Gute Nacht〉の荒涼とした質感から、エンディング(第24曲)の〈辻音楽師 Der Leiermann〉での静かな持続音まで、シューベルトは言葉と音楽のバランスを繊細にとり、絶妙なメロディとロマンティックなハーモニーでテキストを盛り立てる。この美しくも胸を締め付けるような愛への賛辞は、冬に最適なクラシック音楽の一つである。

    2.ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲 第7番《南極交響曲》

    1947年に映画「南極のスコット」の音楽を依頼されたヴォーン・ウィリアムズは、その素材を再利用して、壮大でありながら恐ろしい第7交響曲を完成させた。《南極交響曲》というタイトルにふさわしく、ヴォーン・ウィリアムズは凍てつく風景の壮大で素晴らしい力を捉え、危険な吹雪、圧倒的な氷風、探検失敗の不吉な予感を描き出している。第1楽章と終楽章の氷のような風を表現するために、ソプラノ・ソロと言葉のない女声3部合唱、きらめくようなチェレスタ、ハープ、弦、オルガン(第3楽章)、木管2部、グロッケン、ヴィブラフォン、ゴング、鐘、風車などのパーカッション・セクションと巨大なオーケストラの力を使って、ヴォーン・ウィリアムズは圧倒的な風景を表現している。ヴォーン・ウィリアムズは、この曲の楽譜に、広大な風景と、それに比べれば微々たるものである人間の感情を吹き込むことができ、彼の純粋な才能を証明している。

    1. ヴィヴァルディ:《四季》より〈冬〉

    ヴィヴァルディは季節の音楽の王者であることは間違いない。冬に対する氷のような賛辞は、彼の四季の中で最も劇的なものである。ダイナミックで危険な第1楽章は、まさに象徴的だ。脈打つように尖った弦と氷のようなチェンバロが、よく知られた激しいヴァイオリン・ソロに付き従う。技術的に難しい高速の移弦、素早い反復音、氷のように鋭い正確さが求められる。第3楽章はやや殺伐とした雰囲気で、冬の夜の荒涼とした暗黒の現実をとらえている。ヴィヴァルディのすばらしさは、冬のあらゆる側面を、これほどまでに完璧に、しかもドラマティックに音楽として捉えることができるところにある。

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  • シューベルトの聴くべき作品ベスト10:初期ロマン派の偉大な作曲家による名曲選

    シューベルトの聴くべき作品ベスト10:初期ロマン派の偉大な作曲家による名曲選

    シューベルトは初期ロマン派の最も偉大な作曲家の一人。10曲の傑作を取り上げ、最高のシューベルト作品を探求してほしい。

    リストが「最も詩的な作曲家」と評したシューベルト(1797年1月31日〜1828年11月19日)は、初期ロマン派の典型的な作曲家となった。彼は多くの作品を書き、ほとんどすべての主要なジャンルの音楽を書いており、その歌曲は100年以上にわたって他の追随を許さないスタンダードを作り上げた。彼はその短く輝かしい生涯をほとんどウィーンの街で過ごした。31歳の若さでこの世を去った彼の生涯は、さまざまな感傷的な神話に彩られている。幸せなボヘミアンというイメージが、20世紀になっても残っている。真実はもっと暗く複雑だった。生前、シューベルトは歌曲や合唱曲、短いピアノ曲で知られていた。

    1839年、ロベルト・シューマンが、当時演奏されていなかった交響曲第8番ハ長調(通称《グレイト》)の原稿を見つけたのが、シューベルトの幅広い作品を発見するきっかけとなった。1860年代には、交響曲第7番《未完成》や弦楽五重奏曲ハ長調など、管弦楽曲の傑作が初演された。ピアノ五重奏曲《ます》、八重奏曲、ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調などの室内楽曲は魅力と親しみに満ちているが、イ短調ソナタ、《冬の旅》歌曲集、弦楽四重奏曲《死と乙女》は、作曲者の憂鬱と絶望の傾向が鮮明に表れている。シューベルトの短い生涯の中で、彼の音楽が評価されたのは、ウィーンの比較的小さなファンたちの輪に限られていた。しかし、彼の死後、作品はドイツやフランスの著名なロマン派の作曲家たちによって支持され、西洋クラシック音楽における偉大な作曲家の一人として認められるようになった。

    シューベルトのベスト作品:偉大な作曲家による10の重要な作品
    ピアノ五重奏曲 イ長調 D667《ます》

    シューベルトは、彼の最高傑作の一つである五重奏曲《ます》で、最も浮き浮きとした楽しさを味わうことができる。ピアノ四重奏にコントラバスを加えることによって、彼はリズムを鋭い弾みで支えるだけでなく、チェロにリリカルなテノール歌手の役割を与えた。後にも先にも、彼のこの功績に匹敵するものはないだろう。

    ゆったりとしたオープニングから、ピアノの絹のようなアルペジオとトリルがチェロの旋律へと受け継がれていく爽やかなディヴェルティメント、そしてセレナーデが爆発するスケルツォへと展開される。そして、きらめく水面を泳ぐ“ます”を描写する歌曲〈ます(Die Forelle)〉のメロディの変奏で、私たちをオーバーエスターライヒ州の「想像を絶するほど美しい風景」(シューベルト自身の表現)へと誘う。

    交響曲 第8番 ロ短調 D759《未完成》

    シューベルトの初期の交響曲は、さわやかで古典的で、先人の優れた作曲家たちからの影響をほのめかしている。しかし、《未完成》交響曲では、ベートーヴェンが《田園》交響曲でやり残したものを引き継ぎ、偉大なロマン派交響曲へとつながる新しい展望を切り開いているように思われる。

    完全な形で書かれているのは2つの楽章のみだが(奇妙なことにどちらも3拍子)、不思議なほど互いに補い合い、抒情的な書法で成度が高いため、コンサート・レパートリーとして不動の地位を築いている。評論家のエドゥアルド・ハンスリックはアレグロ楽章について、「水の底にある小石がすべて見えるほど透明な…甘い旋律の流れ」と評している。

    美しき水車小屋の娘 D795

    詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩集に付曲されたこの歌曲集は、粉ひき職人見習いの若者と水車小屋の美しい娘の恋愛を描いており、表面的には伝統的な片想いの物語である。春の陽気、小川の流れ、粉引きのリズム、若い恋人たちの鼓動が融合した、生命力あふれる美しい音楽だ。

    しかし、シューベルトはこの曲の多くを梅毒と診断されたばかりの入院中に作曲している。この粉ひき職人を目指す若者はどれほど純粋で、どれほど不安定なのだろうか。彼はどれほどの深淵に直面しているのだろうか。ピアニストのグレアム・ジョンソンは、この若者について「水車小屋の娘と強い男性的魅力を持つ狩人」によって引き裂かれたと説明している。この作品は、新鮮な素朴さから、哀れな絶望まで、無限の解釈を可能とするものである。

    弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D810《死と乙女》

    シューベルトの四重奏曲は、痛々しいほど美しい《ロザムンデ》から、短く鋭い「四重奏断章」(未完)まで、すべて例外的な作品である。しかし、《死と乙女》ほど歌と室内楽の絶対的な結びつきを成し遂げた作品はないだろう。この曲は、衝撃的な開始をし、最後までそれが持続する。

    マティアス・クラウディウスの詩による歌曲〈死と乙女(Der Tod Und das Mädchen)〉の中の、「心穏やかになさい!私の腕の中で安らかに眠るのだ」という、凍りつくような歌詞に基づく悲痛な変奏曲だ。音楽は葬列を思わせる鋭い一音に固執しており、そこから動くことはほとんどない。悪魔のようなスケルツォの後にやってくる、死神が不気味なギャロップのリズムで去っていく終楽章は、シューベルトの最高傑作の一つである。

    4つの即興曲 Op.90, D899、4つの即興曲 Op.142, D935

    これらの楽しいピアノ曲は、シューベルトとの最初の出会いにふさわしいものだ。完璧な配置で、特徴的な性格の楽曲が対照的に並んでいるため、これらは天才の純粋な音楽があふれ出したもののように見える。最初の旋律的なハ短調の憂鬱な行進曲から、変ホ長調の魅力的な無窮動、そして変イ長調のアレグレットを爆発的な怒りのアレグロ・スケルツァンドへと駆り立てる慰めの讃歌であるヘ短調の陰鬱な舞曲(D935)まで、各作品は、一見自由奔放にテーマが展開しているように見えるが、熟練した技が隠されている。

    交響曲 第9番 D944《グレイト》

    シューベルトが《未完成》交響曲で新境地を開拓したとすれば、演奏時間に1時間近く要する《グレイト》は、持続的なパワーを持つ大規模な交響曲である。1839年、兄のフェルディナント・シューベルトがこの曲をシューマンに託し、シューマンはすぐにライプツィヒに持ち帰り、メンデルスゾーンが初演を行ったという、信じられないようなエピソードが残っている。

    しかし、それでも、楽曲の容赦ない要求を演奏家が受け入れるには、何年もの時間を要した。ブラームスの後期作品を思わせるホルンの響きと広がりのあるコラールで始まり、ブルックナーの作品のように力強く終わるこの壮大な作品は、シューベルトが偉大な交響曲家の一人であることを証明するものである。

    弦楽五重奏曲 ハ長調 D956

    この五重奏曲は、他のどの室内楽作品よりも「デザート・アイランド・ディスク(無人島に持っていくべき一枚)」で取り上げられた。おそらく、人間であることの意味を凝縮したような作品だからだろう。シューベルトの晩年に書かれたこの曲は、まるで最初からそこにあったかのように、天から与えられたかのように、自然と入ってくる。

    チェロの二重旋律の輝きが広がるやいなや、影が落ちてくる。ハ長調でこれほどまでに苦悩を表現した曲はこれ以前にあっただろうか?生と死の間を行き来するような重厚な緩徐楽章では、時間はほとんど止まっている。躍動的なスケルツォは希望を与え、野蛮な舞曲風のフィナーレは明るい幸福をもたらすが、シューベルトは最後の小節でもう一度ナイフを突き刺してくる。

    ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 Op.100, D929

    強烈に美しい緩徐楽章、ベートーヴェンの作品のような壮大さと重厚さを感じさせ、シューベルトの最も愛されている室内楽作品の一つとなっている。曲は切ない歌のような問いかけが長調の応答によって変容していく、壮大な「アンダンテ」で幕を開ける。緩徐楽章では、有名なスウェーデンの民謡「ほら、太陽が沈んでいく」が、催眠的な反復和音にのって聴こえてくる。

    スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』、『クリムゾン・タイド』、『ピアニスト』など、多くの映画で感動的に使われている。軽快な装飾が施されたフィナーレは、ほとんどコミカルといえるほど「正統派」の風格のある舞曲風のロンドに見えるが、唐突な名人芸の爆発によって中断される。そしてスウェーデン民謡の旋律が、まるで無垢な記憶に窓を開けるかのように回帰してくる。

    ピアノソナタ 第21番 変ロ長調 D960

    シューベルトは最後のピアノ・ソナタが演奏されるのを聴けるほど長生きしなかったが、この天空の瞑想曲は30歳の若さで、自分がどれほど死と隣り合わせにいるのか(腸チフスや梅毒の影響による)知らずに書いたことを、私たちは忘れてはならないだろう。これらの晩年の作品の「天国的な長さ」は構成上の弱点ではなく、むしろそれらの作品の重要性を高める役割を果たしていることを認識したのはシューマンであった。

    官能的で叙情的な3つの主題を静かに織り交ぜた内省的な第1楽章で始まり、強烈な緩徐楽章がこのソナタの核となっている。ウィットに富んだバレエ的なスケルツォがその呪縛を解き放ち、ハンガリーの香りを漂わせながら、力強く踊るようなロンド・フィナーレとなる。

    冬の旅 D911

    シューベルトは死の床で、並外れた歌曲集である《冬の旅》の校正を行っていた。そして、これはなんという旅なのだろう。詩人ミュラーが《冬の旅》で描く“さすらい人”は社会から疎外された現代人であり、氷のような孤立に閉じ込められ、愛の記憶に苦しめられている。彼の前には死か理性の喪失しかない。

    シューベルトの友人ヨーゼフ・フォン・シュパウンは、シューベルトがこの曲を聴かせたときのことをこう回想している。「背筋が凍るような歌の数々を君たちに歌うよ…これらは他の歌曲にない大きな影響を僕に与えてくれたんだ」と。〈菩提樹〉の穏やかな懐かしさ、〈春の夢〉の悲痛さ、催眠的で痛ましい〈辻音楽師〉などが収められたこの歌曲集が、シューベルトの最高傑作であることは間違いない。

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  • ハロウィーンのための最高のクラシック音楽:最も恐ろしい作品トップ20

    ハロウィーンのための最高のクラシック音楽:最も恐ろしい作品トップ20

    寒くて暗い冬の夜には、完璧なクラシック・ハロウィーン・サウンドトラックでハロウィーンの場面を演出しよう。今回は、クラシック音楽の中でも最も暗く、恐ろしい20曲をご紹介する。スクロールして、ハロウィーンにぴったりのクラシック音楽の名曲を探そう。

    ハロウィーン・クラシックを聴きながら、下にスクロールして、ハロウィーンに最適なクラシック音楽を探してほしい。

    ハロウィーンのための最高のクラシック音楽

    20プロコフィエフ:《ロメオとジュリエット》より〈モンタギュー家とキャピュレット家〉

    プロコフィエフのバレエ《ロメオとジュリエット》は、シェイクスピアの悲劇を音楽でドラマティックに表現したもの。よく知られている〈モンタギュー家とキャピュレット家〉のテーマは、一族の間の恐ろしい対立を描いているが、それが致命的な結果をもたらすことは周知の通りである。堂々とした金管楽器セクションがゆっくりとした行進を奏で、重々しい弦楽器群と軍楽調の打楽器が重苦しい予感を与える。この作品は、将来のビジネスパートナーの心に恐怖を与えることも保証されている(BBCの番組「The Apprentice」のテーマ曲として使用され、有名になっているためである)。

    Prokofiev: Romeo and Juliet / Abbado · Berliner Philharmoniker

    19ドヴォルザーク:水の精

    《水の精》は、ハロウィーンの時期にぴったりの悪戯好きの水の精を描いた交響詩である。
    ドヴォルザークは、水の王国で溺死を引き起こすと言われているヨーロッパの民間伝承の悪しき生物、特にカレル・ヤロミール・エルベンの詩に登場するものにインスピレーションを受けた。エルベンの物語の中で、ゴブリンは彼のもとから逃げた妻への罰として自分の子供を殺してしまう。ドヴォルザークの個性的なスコアでは、忍び寄ったり飛び跳ねたりする臆病な弦楽器群を、和音の衝突と残酷なイメージを想起させる金管楽器群の音色が支えているように書かれている。

    Dvořák: The Water Goblin, Op. 107, B. 195

    18:パーセル:《ディドとエネアス》より〈私が大地に横たわるとき〉

    死の必然性について書かれた心に響く瞑想曲である。自ら命を絶つことを決意したこのアリアは、「ディドの嘆き」として知られており、悲しみを吐露している。天使のようなソプラノが、ゆっくりと半音階で下行する固執低音の上に絶望的に浮かび、「忘れないで」という言葉が繰り返されることで、記憶の中に刻み込まれ、ディドの墓場の向こうから聴き手を悩ませる。

    When I Am Laid In Earth (Dido's Lament)

    17:ラヴェル:夜のガスパール

    ラヴェルのピアノ独奏曲は、アロイジウス(・ルイ)・ベルトランの詩と絵に基づいており、「ガスパール」はサタンの呼び名である。第1楽章の〈オンディーヌ〉は、水の精が男を誘惑しようとする様子を音楽的に表現している。第2楽章の〈絞首台〉は、絞首台にぶら下がっている男の死体、最後の〈スカルボ〉は、恐ろしい悪戯で犠牲者を苦しめる邪悪なゴブリンを描いている。作曲者はこの曲について 「ガスパールは悪魔のようにやってきたが、詩の作者が彼(ベルトラン)である以上、それは理にかなったものである」と語っている。

    Ravel: Gaspard de la nuit, M. 55: I. Ondine

    16:ショスタコーヴィチ:交響曲第10番より「アレグロ」

    ショスタコーヴィチは、壮大な交響曲第10番の第3楽章が物語るように、実験的で近代的な語法で有名だ。演奏者にとって悪夢のようなこの作品は、正気ではない弦楽器、悲鳴を上げる木管楽器、耳障りな打楽器、武骨な金管楽器、そして解決されず不快な和音進行の渦など、異常なノイズが渦巻く不協和音で書かれている。あなたのハロウィーンにドラマと劇場を加えることを保証しよう。

    Shostakovich: Symphony No. 10 in E Minor, Op. 93: II. Allegro

    15:リゲティ:アトモスフェール

    常にモダニストであるリゲティの《アトモスフェール》は、ルールに縛られない作品で、クラシック音楽というよりもサウンドデザインへの進出と言えるものである。緻密で削り取られたような構造、音色の実験、トーン・クラスターの使用は、黒板に釘を打ち付けたような冷ややかな雰囲気を醸し出していくが、リズムや拍子の感覚がなく迷ってしまう聴き手を導いていく役割を果たしている。スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』にも登場した《アトモスフェール》は、不気味なシーンの演出に最適で、ハロウィーンにぴったりのクラシック音楽の一つだ。

    Ligeti: Atmosphères (1961)

    14:シューベルト:魔王

    〈魔王〉は、シューベルトの恐ろしいリートの一つである。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの詩のテキストは、超自然的な存在である魔王に追われる子供と父親の物語である。シューベルトはゲーテの詩文を鮮やかに描いた。ピアノは馬のひづめを執拗に打ち鳴らし、声は子供の泣き叫ぶ声と魔王の甘い誘惑の声を表現している。

    Schubert: Erlkönig, D. 328 (Orch. Berlioz) (Live)

    13:ラフマニノフ:死の島

    この幽霊のような交響詩は、ハロウィーンに最適なクラシック音楽の一つだ。ラフマニノフが楽器編成と音楽的象徴を巧みに用いており、見事なまでに荒涼とした音の風景を創り出している。低音弦のうねり、8分の5拍子の不規則なうねり、深みのある陰影のある金管楽器は、死者の島を囲む海の中で小舟を引きずるオールを表現している。気が遠くなるような静かな導入部に続いて、〈怒りの日(Dies Irae)〉が引用され、この旅が必然的に水の中の墓場で終わってしまうという絶望感を呼び起こす。

    Rachmaninoff: The Isle of the Dead, Op. 29

    12:ワーグナー:《神々の黄昏》ハイライト

    ワーグナーの傑作《ニーベルングの指環》の中の《神々の黄昏(Götterdämmerung)》は、ハロウィーンの前夜にぴったりのサウンドトラックだ。演奏会用の管弦楽版は、ワーグナーの複雑で歪んだ作曲法を、不穏で暗いオーケストラのパレットで表現した、邪悪な喜びに満ちたものある。スコアは非常に重くて密度が高く、壮大な金管楽器セクションと無愛想な低弦セクションによって構成されており、日の光をほとんど感じさせないほど重く、濃密なものである。

    Wagner: Götterdämmerung – Concert version / Dritter Aufzug: Siegfried's Funeral March

    11:バッハ:トッカータとフーガ ニ短調

    バッハの《トッカータとフーガ》ニ短調は冒頭の音で、聴く者に一瞬にして恐怖を与える。これは、この音型がドラキュラによって激しくオルガンが奏でられているかのようであり、フレーズの間に不気味な沈黙があるせいかもしれない。首の後ろの毛を逆立てるのは、悪魔的な半音階のメロディや、その下の唸るようなベースペダルによるものであろう。この血も凍るようなテーマの先に、バッハは劇的で力強いトッカータとフーガを作曲しており、悪魔のような名人芸で演奏しなくてはならない。

    J.S. Bach: Toccata and Fugue in D Minor, BWV 565

    10:ホルスト:《惑星》より〈火星-戦争をもたらすもの〉

    ホルストの音楽による赤い惑星の描写は、ドラマティックで力強く、また冷酷なものである。ホルストは、弦楽器がコル・レーニョ(*弦楽器で弓の木の部分で弦をたたいたり、こすったりして演奏すること)で奏でる連続的な音型、木管のうねり、広大なクレッシェンド、激しいパーカッション、低音の金管でサスペンスを構築している。ギザギザとした4分の5拍子に隠された規則的なパルスの欠如は、聴き手に取るに足らないものを感じさせ、オーケストラの不協和音の中に迷い込んだような気分にさせる。

    Holst: The Planets, Op. 32: I. Mars, the Bringer of War

    9:リスト:死の舞踏

    「死の舞踏」を意味する「Totentanz」は、リストの作品の中でも、死生観や死後の世界、天国と地獄の二項対立に魅せられた作品の一つである。《死の舞踏》は、〈怒りの日(Dies Irae)〉の定旋律による6つの変奏で、ピアノとオーケストラのための名人芸的な作品である。容赦のない難しさによるピアノ・パート、リストは光と影を駆使している。猛烈な勢いで、ほとんど暴力的ともいえるような和音進行をしている部分と、軽やかで美しい部分を対比させているのだ。

    Liszt: Totentanz, S. 525

    8:グリーグ:《ペール・ギュント》より〈山の魔王の宮殿にて〉

    グリーグの〈山の魔王の宮殿にて〉の壮大なフィナーレは、歴史的なクレッシェンドの一つである。この劇付随音楽は、ペール・ギュントがトロルの王国を冒険する姿を描いている。用心深い弦楽器のピッツィカートが、ハロウィーンに最適なクラシック音楽の一つであるこの曲のメイン・テーマを奏でていく。このテーマは終始繰り返され、オーケストラの中で無限に構築、強化され、速くなり、クレッシェンドしながら、強烈で熱狂的なクライマックスを迎える。最後に合唱が入り、ペールが魔王のもとに運ばれていくところで、「やつを殺せ!やつを殺せ!」という言葉が響く。

    Grieg: Peer Gynt Suite No. 1, Op. 46: IV. In the Hall of the Mountain King

    7:ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調

    ショパンのピアノ・ソナタ第2番変ロ短調の第3楽章、通称「葬送行進曲」は、死と表裏一体の関係にある。ピアノの低音は死を悲しむ者たちの沈んだ重い足音を示しており、胸が締め付けられ、血の気が引くようだ。死の代名詞ともいえる音である。この冷たく耳障りなテーマは楽章全体に展開され、一時的に牧歌的なトリオの部分と対比された後、葬送のテーマが戻ってきて、死の不可避性を示していく。この曲はハロウィーンに最適なクラシック音楽の一つであり、ショパンが書いた中でも最も暗い曲の一つである。

    Chopin: Piano Sonata No. 2 in B-Flat Minor, Op. 35: III. Marche funèbre. Lento

    6:モーツァルト:《レクイエム》ニ短調より〈怒りの日(Dies Irae)〉

    モーツァルトの《レクイエム》は、彼が最後に書いた作品である。これを作曲中にモーツァルトは病に倒れ、完成前に亡くなってしまった。彼は「自分の葬式のための曲を書いている」と不吉な予言のような言葉も残している。この〈怒りの日〉は、カトリックの典礼を厳粛に、しかし力強く表現したもので、大規模な合唱に、強烈な弦楽器、密集した金管楽器、鳴り響く打楽器が活躍する。

    Berliner Philharmoniker & Claudio Abbado – Mozart: Requiem In D Minor: Sequentia: Dies Irae

    5:ベルリオーズ:《幻想交響曲》より〈魔女の夜宴の夢〉

    ベルリオーズの《幻想交響曲》は、複雑なものを抱えた主人公による、歪んだ、超自然的な幻想的な想像に基づく、標題音楽の傑作である。第4楽章の〈断頭台への行進〉では、恋人を殺した罪で処刑される主人公が行進する様子が描かれており、ピッツィカートによる低弦のソロでは、断頭された頭が地面に跳ねる様子が表現されている。

    フィナーレの〈魔女の夜宴の夢〉について、ベルリオーズは「彼は魔女の饗宴にいる自分を見出す。そこには彼の葬儀のために集まった亡霊や魔術師、あらゆる種類の怪物たちといった恐ろしい存在が集まっている」と楽譜に記している。鐘が真夜中に鳴り響くと、グロテスクな異世界が、泣き叫ぶようなE♭クラリネットのソロと金管楽器が奏でる不吉な低音によるテーマで表現される。この奇妙な物語が自伝的なものだと言われていることで、ハロウィーンに最適なクラシック音楽の一つであるベルリオーズの自己陶酔的な交響曲は、より一層グロテスクなものになっている。

    Berlioz: Symphonie fantastique, H. 48: V. Songe d'une nuit du Sabbat

    4:オルフ:《カルミナ・ブラーナ》より〈おお、運命の女神よ〉

    〈おお、運命の女神よ〉は、オルフのカンタータ《カルミナ・ブラーナ》の巨大な序曲と終曲である。この作品の演劇性は、耐え難い緊張感を生み出していく。それは弦楽器の静寂と狂乱、冷たくささやくような合唱、大迫力のオーケストラ、そして何よりも、泣き叫ぶようなソプラノと叩きつけるような打楽器によるフォルティシモへの突然の噴出によって示される。映画『オーメン』のサウンドトラックとして有名なように、ポピュラーカルチャーで広く使われているこの作品は、クラシックの力作であると同時に、映画音楽といえるものでもある。

    André Rieu – O Fortuna (Carmina Burana – Carl Orff)

    3:ムソルグスキー:禿山の一夜

    もう一つの見事に幻想的な物語であるムソルグスキーの《禿山の一夜》は、聖ヨハネの前夜、魔女の安息日の音楽で描いた現実主義の作品だ。ムソルグスキーは、自身で「野蛮で不潔」と表現しているように、荒々しいハーモニー、暴力的で熱狂的な弦楽器セクションの音型、大胆なオーケストラ効果、悪魔的なテーマを書いている。混沌とした一夜の後、禿山から太陽が昇り、魔女たちは姿を消し、不気味なほど静かなフルート・ソロのみが、このムソルグスキーの名曲を締めくくる。

    Mussorgsky: Night on Bald Mountain (Original Version) (Live)

    2:ヴェルディ:《レクイエム》より〈怒りの日(Dies Irae)〉

    ヴェルディの《レクイエム》の〈怒りの日〉ほど象徴的なオープニングを持つ曲はない。紛れもなく突き刺すような、叫び声を思わせるオーケストラの音色は、聴き手に音楽的な地獄の火を放つ。トランペットとパーカッションに支配されたオーケストラが悔い改めない魂に対する永遠の天罰を与えている間、声楽の急速な下行音型は、裁き、報い、そして永遠の天罰を警告する。まぎれもなくハロウィーンにふさわしいドラマである。

    Verdi: Requiem: IIa. Dies irae

    1:サン=サーンス:死の舞踏

    サン=サーンスが超自然的な不気味さを追求したオーケストラのためのワルツである《死の舞踏》は、ハロウィーンに最適なクラシック音楽の一つだ。真夜中に鳴り響く心地よい鐘の音は、悪名高いヴァイオリンのソロが登場するまで、聴き手を誤った安心感に落ち着かせる。病的な軽薄さが続く前に開放弦のみで奏でられるヴァイオリン・ソロの音型は、グールたちが墓場から蘇り、病的な浮世離れをしていく様子を表現している。魅惑的でありながら、恐ろしいハロウィーンの傑作である。

    Saint-Saëns: Danse macabre, Op. 40

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  • 3歳までに音楽を『モンテッソーリ教育×ハーバード式子どもの才能の伸ばし方』伊藤美佳インタビュー

    3歳までに音楽を『モンテッソーリ教育×ハーバード式子どもの才能の伸ばし方』伊藤美佳インタビュー

    大反響を得ている子育て本「モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」(かんき出版)とのコラボレーションによる、クラシックのコンピレーションアルバム『モンテッソーリ教育Xハーバード式 子どもの才能を伸ばすクラシック』がリリースされた。

    リズム編とメロディ編という編成の2枚組にはクラシックの名曲が計30曲も収録されている。モンテッソーリ教育とはどういうものなのか、そのなかでクラシックとはどんな存在なのか。著者の伊藤美佳さんにお話を聞いた。


    ―まず20世紀初頭のイタリアで考案されたモンテッソーリ教育と、伊藤さんとの出会いを教えていただけますか。

    「我が家には3人子どもがいるのですが、長男は普通の幼稚園に通いました。長女も最初は普通の幼稚園に入園しましたが、管理の厳しいところだったので、友人から転園させたいとの相談を受けたことで、彼女といろいろな幼稚園を見学に行くなかで出会ったのがモンテッソーリの幼稚園でした。

    他とは様子が明らかに違い、子ども達がすごくイキイキとしていて、しかもパッと見た感じでは先生の姿がないので、子ども達しかいないように見えました。でも、ちゃんと子ども達を見守っているので、何かあると、どこからかスーッと現れる感じでした。

    さらに見ていると、アルコールランプを使って、塩水から塩を作る実験をしていたり、本物のアイロンでアイロン掛けをしている子がいたり。なかなか危ないという理由で、子ども達にさせないことも経験させているんです。

    また、見学をしている時にテーブルの花瓶を倒してしまった子がいて、私達に説明をしてくれている先生のところに来て、「お水をこぼしちゃった」と言ってきたんですね。その先生は、叱ることなく、一緒に雑巾を取りに行き、拭き方から雑巾の洗い方、絞り方まで教えてあげていて、私達に「次から自分ひとりで出来るように教えてあげることが大事なんです。失敗は決して悪いことじゃないので」って。そのやりとりに私は、今まで何をしていたんだろうってショックを受けて、すぐに長女を転園させました」

    ―実際に転園して何か変化は起きましたか。

    「幼稚園のお迎えのバスに乗る前から、毎日ワクワクしていて、今日は縄跳びをするんだとか言って。実際に幼稚園に着いてから、縄跳びをずっとやっているみたいで、1週間後にはビュンビュン飛べるようになっているんですよ。それは本人が満足するまで、やり遂げるまで、先生が止めずにずっとやらせてくれるからなんですよね。

    縄跳びを習得すると、長女は次に鉄棒に取り組んでいました。見守って最後までやらせてくださることで、子どもの能力は、伸びるんだってわかりました。これが嫌々だったら、それほど本人がヤル気になっていなかったかと思います。本人がやりたいと思った時に発揮される爆発的な力は、本当にすごいものだと思いました」

    ―全員が同じことをすることなく、自由にやりたいことができるということですか?

    「“自由選択活動”というのですが、自分の意志で選択して、活動することを尊重しているんです。普通の幼稚園だと、先生からこれをやりましょう、と言われるまで園児は待っているわけですよね。何も考えることなく、ただ待つことになります。でも、モンテッソーリでは自分でやりたいことを朝から考えて、ワクワクしながら幼稚園に行くことができるんです」

    ―伊藤さんもその後、もっとモンテッソーリ教育を学ばれたそうですが…。

    「はじめは、次女が卒園した時に幼稚園から働きませんか、と声を掛けられたことがきっかけでした。すでに次女が入園したと同時に私もモンテッソーリ教育の学校に学びに行っていたのですが、実習に行った幼稚園で本当に驚く経験がありました。ひとりだけ10時半頃にお弁当を食べ始める子がいたんですね。でも、先生は誰も注意をしない。勝手にお弁当を食べるのはおかしいことなんだ、と自分で気付くことが大事だから、という考え方なんです。

    普通だったら、先生が他の先生の目を気にして、慌てて注意したり、たとえば、お母さんも自分の子どもが公園でおもちゃの取り合いをしたら、他のお母さんのことが気になって止めに入ったりしますよね。でも、大人の管理のもとで育ってしまうと、叱られるからいい子にしていようという発想になってしまうんです。全て指示されることを待ってしまう子どもになりがちだと思います」

    ―そういう教育のなかで、音楽が果たす役割というのはどういうものですか?

    「まず私の著書『モンテッソーリ教育Xハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』のハーバード式が提唱することに“9つの知能”というのがあります。いろんな分野にアプローチをして、子ども時代に土台を作るのが大切という考え方です。その9つのうちのひとつに音楽があります。受験に関係ない科目なので、日本ではどうしてもなおざりになりがちですが、音楽はとても大切な知能のひとつです」

    ―その知能というのは?

    「これは私の考え方ではありますが、子ども達は、物語の世界というか、空想とか、想像とか、現実社会とは異なる世界で生きているもので、その想像力というのは大人では計り知れない、とても豊かなものです。そんな感性豊かな時期に音楽に触れることがとても大切で、感じる心がどんどん育っていくんです。

    脳の神経回路は、年齢とともに淘汰されていくと考えられています。なので、この時期に音楽に触れていないと、成長してから急に聴きだしてもあまり興味が持てなかったりするので、音楽を聴いてリフレッシュしたり、元気をもらったりということが難しくなってしまいます」

    ―この時期というのは3歳頃ですか?

    「実は3歳までが大事です。よく3歳からの英才教育と言いますが、実際は、3歳までが重要で、子ども自身が音楽を求めていると思っていただくといいと思います。無意識のなかで心地好くなる音楽を聴きながら眠りたいとか求めているので、それを与えてあげる環境を作っていくことが重要です」

    ―伊藤さんの家では音楽を流れているような環境でしたか。

    「まず私の話からすると、父がモーツァルトを好きだったので、父が家にいる時は、いつもモーツァルトが流れていました。そのことに反発した時期もありましたが、子どもの頃に始めたピアノは、大学入学までは続けていました。

    子育てをしている時は、年の近い子どもが3人もいたので、小さい頃は10分おきくらいにケンカが起きるような日常でした。それを聞くのが嫌で、私は止めるのではなく、自分のためにピアノを弾くことにしていたんですね。時にはピアノを弾きながら、歌ったりして。そうすると、子ども達がケンカをやめて、ピアノの周りに集まってきては一緒に歌ったり、踊ったりし始めるんです。私が楽しんでいると、子ども達も自然と楽しくなるみたいで、ピアノにはずいぶん助けられました。

    他にもお風呂上りに裸のままで楽器を持って、私のピアノに合わせてリトミックのように歩いたり、止まったり、そんな遊びを毎日やっていましたね。私の気分転換というのもありましたが、子どもを叱ってばかりいるのは嫌なので、よかったと思います」

    Mozart: Eine kleine Nachtmusik – Concertgebouw Kamerorkest – Live Concert – HD

    ―でも、クラシックに対して敷居が高いと感じているお母さんはいるかと思いますが。

    「今回のCDも子どもが遊びながら聴けるような編成になっています。1枚はリズムが楽しい15曲、もう1枚はメロディを楽しめる15曲を選んでいます。たとえば、「くるみ割り人形」の「花のワルツ」などをかけると、きっと子ども達はそれぞれの情景を浮かべて、楽しむと思うんですね。私もこの曲を聴くと、いろいろな映像が浮かんできます。そういう聴き方で全然いいと思います」

    Tchaikovsky: Waltz of the Flowers / Järvi · Berliner Philharmoniker

    Interviewed & Written By 服部のり子(音楽ライター)


     

    ■伊藤美佳 プロフィール
    (株)D・G・P代表取締役。0歳からの乳幼児親子教室「(社)輝きベビーアカデミー」代表理事。
    幼稚園教諭1級免許。日本モンテッソーリ協会教員免許。保育士国家資格。小学校英語教員免許。NPO法人ハートフルコミュニケーションハートフル認定コーチ。サンタフェNLP/発達心理学協会・ICNLPプラクティショナー。日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー。自身の子どもがモンテッソーリ教育の幼稚園で素晴らしい成長を遂げたことに感銘を受け、モンテッソーリ教師の資格を取得。
    伊藤美佳公式サイト「輝きベビーアカデミー


    ■リリース情報

    2021年4月7日発売
    『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能を伸ばすクラシック』
    CD / iTunes / Amazon Music / Apple Music / Spotify

    収録予定曲:
    Disc 1: リズムを楽しもう!
    01. アイネ・クライネ・ナハトムジーク~第1楽章 (モーツァルト) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    02. 歌劇《フィガロの結婚》序曲 (モーツァルト) / ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、指揮:カール・ベーム
    03. 熊蜂の飛行 (リムスキー=コルサコフ) / スイス・ロマンド管弦楽団、指揮:エルネスト・アンセルメ
    04. 弦楽セレナード~第1楽章 (チャイコフスキー) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    05. ピアノ五重奏曲《ます》~第4楽章 (シューベルト) / アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
    06. 剣の舞 (ハチャトゥリアン) / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:アラム・ハチャトゥリアン
    07. 歌劇《セビリアの理髪師》序曲 (ロッシーニ) / ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、指揮:リッカルド・シャイ―
    08. ユーモレスク (ドヴォルザーク) / クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)、ジャン=クロード・アンブロシーニ(ピアノ)
    09. ピアノ・ソナタ第11番~第3楽章 (モーツァルト) / アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
    10. 無伴奏チェロ組曲第1番~前奏曲 (J.S.バッハ) / ピエール・フルニエ(チェロ)
    11. バレエ《くるみ割り人形》~序曲 (チャイコフスキー) / モントリオール交響楽団、指揮:シャルル・デュトワ
    12. 協奏曲集《四季》第1番〈春〉~第1楽章 (ヴィヴァルディ) / イ・ムジチ合奏団、ピーナ・カルミレッリ(ヴァイオリン)
    13. 《アルルの女》第2組曲~ファランドール (ビゼー) / ロンドン交響楽団、指揮:クラウディオ・アバド
    14. ローマの松~アッピア街道の松 (レスピーギ) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    15. バレエ《くるみ割り人形》~花のワルツ (チャイコフスキー) / モントリオール交響楽団、指揮:シャルル・デュトワ

    Disc 2: メロディを楽しもう!
    01. 《ペール・ギュント》第1組曲~朝 (グリーグ) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    02. 別れの曲 (ショパン) / ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
    03. 亡き王女のためのパヴァーヌ (ラヴェル) / フィルハーモニア管弦楽団、指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
    04. 聖母の御子 (リョベート) / エドゥアルド・フェルナンデス (ギター)
    05. 歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》~間奏曲 (マスカーニ) / ミラノ・スカラ座管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    06. 組曲《動物の謝肉祭》~白鳥 (サン=サーンス) / マルタ・アルゲリッチ、ネルソン・フレイレ(ピアノ)、ミッシャ・マイスキー (チェロ)
    07. パッヘルベルのカノン (パッヘルベル) / イ・ムジチ合奏団
    08. 子供の情景~トロイメライ (シューマン) / ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
    09. 愛の挨拶 (エルガー) / チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、フィリップ・モル(ピアノ)
    10. ピアノ協奏曲第21番~第2楽章 (モーツァルト) / フィルハーモニア管弦楽団、ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ&指揮)
    11. 月の光 (ドビュッシー) / ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ)
    12. 歌劇《カルメン》~第3幕への間奏曲 (ビゼー) / ロンドン交響楽団、指揮:クラウディオ・アバド
    13. ピアノ・ソナタ第11番~第1楽章 (モーツァルト) / アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
    14. アイネ・クライネ・ナハトムジーク~第2楽章 (モーツァルト) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    15. 春への憧れ (モーツァルト) / ペーター・シュライアー(テノール)、アンドラーシュ・シフ(ピアノ)



     

  • 「モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」シリーズ初となる公式CDがリリース

    「モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」シリーズ初となる公式CDがリリース

    発刊以降13万部を突破、多くの芸能人からも絶賛されTVやネットで大反響を呼んでいる「モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」シリーズ(かんき出版)。

    そのシリーズ初となる公式CD『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能を伸ばすクラシック』が本日リリースされ、早速Amazonや楽天ブックスといったクラシック各主要チャートで1位を獲得するなど大きな話題を呼んでいる。

    本作の監修を担当するのは、書籍の著者でもある伊藤美佳。2枚組となるCDでは「感性を磨くには、乳幼少期の環境として最適」と著者が語るクラシック音楽にフォーカスし、ユニバーサルミュージックが所有する豊富なカタログの中から名演・名曲をセレクト。

    ベルリン・フィルやウィーン・フィル、カラヤン、ベーム、アバド、アルゲリッチ、フルニエといった錚々たる面子による音源を収録しており、親子で楽しむクラシックの入口としてはこれ以上無いクオリティとなっている。さらにディスクごとに「リズム」と「メロディ」というテーマを設定し、子どもが純粋に音楽を楽しめる内容に仕上がっている。クラシック音楽への入門盤としても最適の1枚だ。

    ブックレットには、伊藤美佳による書き下ろしのエッセイ、そして書籍でもマンガ・イラストを担当した齊藤恵による描きおろしのマンガを収録。エッセイでは収録曲について子どもとどのように楽しめば良いかについても触れられている。

    モンテッソーリ教育とハーバード大学のガードナー教授が提唱する「多重知能」を分かりやすくアレンジした「9つの知能」を掛け合わせた、これまで約10,000組の親子が体験した「輝きメソッド」で大きな話題を呼んでいる本シリーズ。

    著者の伊藤美佳は今回のCDについて、「おうちde楽しく!簡単!面白い!AI時代を生きていく子どもに必要な感性を育てるために「子どもの才能を伸ばすクラシック音楽」を日常に!親子で楽しく取り入れる方法が曲ごとに解説されているCDです」とコメントしている。

    また、本日12:15からはCDリリースを記念した無料のオンラインイベント「子どもの才能を伸ばすクラシック音楽祭」も行われます。親子揃っておうちで過ごす時間も増えている今、本作のクラシック音楽を通じて楽しい時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

    ■CD発売記念無料オンラインイベント「子どもの才能を伸ばすクラシック音楽祭」

    日時:2021年4月7日(水)12:15~13:00
    参加方法:こちらよりお申し込み可能。


     

    ■伊藤美佳 プロフィール
    (株)D・G・P代表取締役。0歳からの乳幼児親子教室「(社)輝きベビーアカデミー」代表理事。
    幼稚園教諭1級免許。日本モンテッソーリ協会教員免許。保育士国家資格。小学校英語教員免許。NPO法人ハートフルコミュニケーションハートフル認定コーチ。サンタフェNLP/発達心理学協会・ICNLPプラクティショナー。日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー。自身の子どもがモンテッソーリ教育の幼稚園で素晴らしい成長を遂げたことに感銘を受け、モンテッソーリ教師の資格を取得。
    伊藤美佳公式サイト「輝きベビーアカデミー


    ■リリース情報

    2021年4月7日発売
    『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能を伸ばすクラシック』
    CD / iTunes / Amazon Music / Apple Music / Spotify

    収録予定曲:
    Disc 1: リズムを楽しもう!
    01. アイネ・クライネ・ナハトムジーク~第1楽章 (モーツァルト) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    02. 歌劇《フィガロの結婚》序曲 (モーツァルト) / ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、指揮:カール・ベーム
    03. 熊蜂の飛行 (リムスキー=コルサコフ) / スイス・ロマンド管弦楽団、指揮:エルネスト・アンセルメ
    04. 弦楽セレナード~第1楽章 (チャイコフスキー) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    05. ピアノ五重奏曲《ます》~第4楽章 (シューベルト) / アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
    06. 剣の舞 (ハチャトゥリアン) / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:アラム・ハチャトゥリアン
    07. 歌劇《セビリアの理髪師》序曲 (ロッシーニ) / ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、指揮:リッカルド・シャイ―
    08. ユーモレスク (ドヴォルザーク) / クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)、ジャン=クロード・アンブロシーニ(ピアノ)
    09. ピアノ・ソナタ第11番~第3楽章 (モーツァルト) / アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
    10. 無伴奏チェロ組曲第1番~前奏曲 (J.S.バッハ) / ピエール・フルニエ(チェロ)
    11. バレエ《くるみ割り人形》~序曲 (チャイコフスキー) / モントリオール交響楽団、指揮:シャルル・デュトワ
    12. 協奏曲集《四季》第1番〈春〉~第1楽章 (ヴィヴァルディ) / イ・ムジチ合奏団、ピーナ・カルミレッリ(ヴァイオリン)
    13. 《アルルの女》第2組曲~ファランドール (ビゼー) / ロンドン交響楽団、指揮:クラウディオ・アバド
    14. ローマの松~アッピア街道の松 (レスピーギ) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    15. バレエ《くるみ割り人形》~花のワルツ (チャイコフスキー) / モントリオール交響楽団、指揮:シャルル・デュトワ

    Disc 2: メロディを楽しもう!
    01. 《ペール・ギュント》第1組曲~朝 (グリーグ) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    02. 別れの曲 (ショパン) / ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
    03. 亡き王女のためのパヴァーヌ (ラヴェル) / フィルハーモニア管弦楽団、指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
    04. 聖母の御子 (リョベート) / エドゥアルド・フェルナンデス (ギター)
    05. 歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》~間奏曲 (マスカーニ) / ミラノ・スカラ座管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    06. 組曲《動物の謝肉祭》~白鳥 (サン=サーンス) / マルタ・アルゲリッチ、ネルソン・フレイレ(ピアノ)、ミッシャ・マイスキー (チェロ)
    07. パッヘルベルのカノン (パッヘルベル) / イ・ムジチ合奏団
    08. 子供の情景~トロイメライ (シューマン) / ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
    09. 愛の挨拶 (エルガー) / チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、フィリップ・モル(ピアノ)
    10. ピアノ協奏曲第21番~第2楽章 (モーツァルト) / フィルハーモニア管弦楽団、ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ&指揮)
    11. 月の光 (ドビュッシー) / ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ)
    12. 歌劇《カルメン》~第3幕への間奏曲 (ビゼー) / ロンドン交響楽団、指揮:クラウディオ・アバド
    13. ピアノ・ソナタ第11番~第1楽章 (モーツァルト) / アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
    14. アイネ・クライネ・ナハトムジーク~第2楽章 (モーツァルト) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
    15. 春への憧れ (モーツァルト) / ペーター・シュライアー(テノール)、アンドラーシュ・シフ(ピアノ)



     

  • 史上最高のクラシック作曲家トップ20:前半

    史上最高のクラシック作曲家トップ20:前半

    史上最高のクラシック作曲家は誰か?常に上位3位にランクインしているのはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの3人だが、それ以外については意見が分かれている。私たちは議論を重ね、最も偉大で影響力のあるクラシック作曲家のリストを作成した。歴代最高のクラシック作曲家トップ20を10人ずつ、2回に分けてご紹介する。


    史上最高のクラシック作曲家トップ20:前半

    ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685 – 1750)

    バッハが音楽を生み出したのは、偉大なる神の栄光のためであり、バッハの言葉を借りれば、”魂の浄化”のためだったのである。オルガン音楽、教会のカンタータ、雇い主のための付随音楽の作曲は彼の毎日の糧となっていた。バッハは、クラシック界で最も偉大な作曲家の一人であり、絶え間なく作曲を続けていた。最も仕事をした作曲家が完璧な音楽に最も近づいた一人でもあったことは興味深い。

    多くの人にとって、バッハの永遠に続くかのような旋律線、精巧な対位法、流麗なハーモニーは、人間の生命の短さや偶発性を超え、すべての音楽の理想的な状態を表現している。鍵盤や独奏楽器でバッハの音楽を演奏することは、心のバランスを整える素晴らしいセラピーでもある。

    一般的にクラシック音楽の歴史の中で最も重要な作品の一つとみなされている、バッハの長調と短調による24の前奏曲とフーガによる曲集、《平均律クラヴィーア曲集》の第1巻から「前奏曲ハ長調」を聴いてみよう。

    Lang Lang – Bach: The Well-Tempered Clavier: Book 1, 1.Prelude in C Major, BWV 846

    ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756 – 1791)

    彼の音楽を聴くと、神からの教えをすべて忘れてしまおうとすら思える。モーツァルトは常に仕事をし、より良い作曲家になるために学び続け、ただ音楽を作る者以上の存在になろうとしていた。モーツァルトは音楽を言語とする哲学者であり、世界は音楽の力によって癒されると信じる、純粋な啓蒙主義者であった。

    彼は、万物をこれまでに考えられてきた中で最も純粋な響きで私たちの耳へと届けようとしたために、私たちは、最高のクラシック作曲家の一人であるモーツァルトの音楽が語る、知的で政治的な重みを過小評価してしまうことがある。

    モーツァルトの偉大なオペラ《フィガロの結婚》から「序曲」をお聴き頂こう。

    Mozart: Le nozze di Figaro, K. 492: Overture

    ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770 – 1827)

    ベートーヴェンの音楽は、単なる曲ではなく、燃えるような勝利や雷鳴の情景、もしくは瞑想的な賛美歌や狂詩曲でもある。私たちがベートーヴェンを愛しているのは、彼が世界や彼自身の感情、そして聴覚障害との闘い続けたのにもかかわらず、決して理想主義や信仰を失うことがなかったからである。

    ベートーヴェンは、偉大なクラシック作曲家の一人で、英雄的な作曲家である。さらにたったひとりで宇宙を音楽によって理解して表現し、さらに崇拝し、改善しようと努力を重ねた。この途方もない闘争は、彼が書いたほとんど全ての作品に見出され、叙情的な優しさと、音楽が新しい時代に引きずり込まれていくという圧倒的な感覚が共存している。

    ナポレオンに敬意を表して書かれたベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調作品55《英雄》を聴いてみよう。

    Beethoven: Symphony No. 3 in E Flat Major, Op. 55 "Eroica": I. Allegro con brio

    ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840 – 1893)

    ロマン派の作曲家であるチャイコフスキーの美の極致は、ロシアの音楽をヨーロッパに伝搬させることに成功した。モーツァルト、ベッリーニ、ドニゼッティの音楽の熱心な研究は、輝かしいオーケストラのセンスと結びついたチャイコフスキー自身の果てしないメロディ・メーカーとしての才能や非常に激しい感情に反映されている。

    彼の音楽は、愛と死と運命に執拗に焦点を当てた、非常に内面的なものである。クラシック界を代表する偉大な作曲家の一人であるチャイコフスキーは、魅力的なバレエやピアノ協奏曲で知られているが、彼の交響曲にはそれ以上の情緒的な深みがある。彼のオペラ、特に《エフゲニー・オネーギン》は、レパートリーの中で最も愛すべきものの一つとなっている、深く感動的な個性を持っている。

    チャイコフスキーの最も人気のあるバレエ《くるみ割り人形》から〈葦笛の踊り〉をお聴き頂こう。

    Tchaikovsky: The Nutcracker, Op. 71, TH 14 / Act 2: No. 12e Divertissement: Dance of the Reed…

    リヒャルト・ワーグナー(1813 – 1883)

    他の作曲家をもっと好きなのは構わないが、クラシックの偉大な作曲家の一人であるワーグナーが史上最も無限の音楽的想像力を持っていたことに異を唱えるのは難しいだろう。彼は言語表現の可能性を拡大することで、ベートーヴェン以来、あるいはそれ以前に存在していた形式や和声構造に極限の緊張感を与えて、オーケストラに全く新しい表現を創造し、驚くほどの深みのある感情や意欲を伝えたのである。

    ワーグナーのオペラにおいて、オーケストラは、オペラの登場人物の言葉や経験を常に語っており、潜在意識へと印象的な方法で切り込んでいく。ワーグナーの音楽は、他では味わえないほど、あなたを虜にするだろう。そして物語も素晴らしいのだ。

    BBC音楽誌で「史上最高の録音」と評されたワーグナーの叙事詩《ニーベルングの指環》のゲオルグ・ショルティの録音をお聴きいただこう。

    Das Rheingold: Prelude (2012 Remaster)

    ヨハネス・ブラームス(1833 – 1897)

    一世代前に全盛期を迎えたような形式や書法を用いたため、ブラームスは(誤って)アカデミックで退屈な存在と思われてきた。また、厳格で髭を生やした老人を想像するかもしれないが、若き日のブラームスは、師であるロベルト・シューマンの妻への愛に悩まされた、情熱的なロマン派の美青年である。

    ブラームスは交響曲と協奏曲において、対位法と動機の発展を非常に知的に扱い、純粋な音楽の思想に基づく、叙情的で精神的な側面と組み合わせる理想的な手段を見出した。これは、通常の主観的で激しいロマン派の作曲家には珍しい方法であった。

    ブラームスは、偉大な交響曲第1番を書いた頃からすでに音楽人生における地位を確実なものとしていた。

    Brahms: Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68: I. Un poco sostenuto – Allegro – Meno allegro

    フランツ・シューベルト(1797 – 1828)

    シューベルトは偉大なクラシック作曲家の一人であり、彼の作品の多くには平安がある。しかしあなたがシューベルトのことをよく知らなければ、それらの全てがもしかしたら簡単に書かれたものだと思うかもしれない。

    だが、彼の音楽には特別な内面性があり、イタリアの音楽のように豊かな旋律と、ドイツ音楽の厳格な和声と動機の発展のアイデアが組み合わさって表現されている。シューベルトの管弦楽作品の多くは、瞑想的な雰囲気を漂わせ、ゆっくりとした動きのある美しさが魅力的だ。

    しかし、彼が最も正確に自分自身を表現しているのは、彼の何百もの歌と室内楽作品の中である。喜びから最も虚ろな悲しみまで、すべての人間の経験の源と表現を間違いなく見つけ出している。シューベルトの名曲《アヴェ・マリア》をお聴き頂こう。

    Schubert: Ave Maria, D. 839 (Live)

    ロベルト・シューマン(1810 – 1856)

    シューマンはロマン派時代の偉大な作曲家の一人として広く評価されている。特にピアノ音楽、歌曲(リート)、管弦楽曲で有名だ。彼の作品の独創性は、感情的、構造的、哲学的な境界線を押し広げた。シューマンの音楽は主に標題的なものであり、(具体的な言葉ではなく、音楽を通して)物語を語る。

    彼の音楽的な影響力は数十年先まで続き、ブラームス、リスト、ワーグナー、エルガー、そしてフォーレと、さらにそれ以上に計り知れない影響を与えている。そして、彼は19世紀の作曲家の中で最も愛されている作曲家の一人であり続けているのだ。

    謝肉祭で仮面を被って酔っぱらっている人々を表現した、シューマンのピアノ小品集《謝肉祭》をお聴き頂こう。

    Schumann: Carnaval, Op. 9 – 14. Reconnaissance

    ジュゼッペ・ヴェルディ(1813 – 1901)

    19世紀半ばのイタリアのオペラは、偉大な作曲家を生み出すにはあまりにも繊細さに欠けているように思える。しかし、ヴェルディは50年の歳月をかけて、その率直すぎる表現を、信じられないほど強力な方法で涙の感情を伝えるための手段に変えていったのである。

    イタリアの音楽は、特に声を通して伝わる旋律の力に常に依存していたが、クラシックの偉大な作曲家の一人であるヴェルディは、和声と管弦楽の書法を洗練させていったのである。彼は深い慈悲の心に、人間の孤独と偽善という通常は黒く見えるものを組み合わせ、人々の強烈な愛と死のドラマを創り出し、大きな悲しみの力を、メロディづくりにおける天賦の才によって伝えている。

    ヴェルディの《レクイエム》を聴いてみてほしい。この曲はレクイエムの中でも最も有名で心を奪われるものの一つだ。

    Verdi: Requiem: IIa. Dies irae

    ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685 – 1759)

    彼はバッハと全く同時代を生きた作曲家だったかもしれないが、ヘンデルとバッハの違いほど大きいものはない。ヘンデルの関心は、非常に人間的なもの-本当に痛む心-に満ちており、彼は一見シンプルな音楽の言語を使って大規模な効果を生み出す達人であった。

    しかし、壮大で儀式的な舞台と、迫力のある合唱に惑わされないでほしい。それらは刺激的で喜びに溢れているかもしれないが、この作曲家の本質は、オペラやオラトリオの中で傷心と道徳的な選択を扱う愛の歌やアリアの中に見出すことができる。

    それはまさしく強烈な感情や孤独な瞬間とその感情の正確な音楽表現を見つける正確さを示しており、そのことがヘンデルを最も偉大なクラシック作曲家の一人にし、唯一無二の存在にしている。さらに、誰も彼のように休符を扱うことはできなかった。

    ヘンデルの《メサイア》に耳を傾けてみよう。これはイエス・キリストの物語を辿るオラトリオで、史上最高の合唱作品の一つに挙げられる。

    Handel: Messiah, HWV 56 / Pt. 2: Hallelujah

    Written By uDiscover Team



     

  • クラシック・ピアノ独奏曲トップ10:バッハ、ベートーヴェン、ショパンなど最高のピアノ独奏曲10選

    クラシック・ピアノ独奏曲トップ10:バッハ、ベートーヴェン、ショパンなど最高のピアノ独奏曲10選

    ピアノのレパートリーは、あらゆる楽器の中でも膨大なのものだ。今回、何百万もの作品から、バッハ、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーの作品を中心とした最高のピアノ独奏曲をセレクト。
    クラシック・ピアノ独奏曲トップ10のセレクションをご覧いただきたい。

    ピアノのレパートリーは、その規模と範囲が無限に感じられることがよくある。
    ベートーヴェンとシューベルトの最も偉大なソナタから20世紀の最高の作曲家に至る革新の成果、ショパン、リスト、ラフマニノフ、スクリャービンといったコンポーザー・ピアニストの世界…可能性は無限に感じられる。このセレクションは最も美しいピアノ曲を探索する際のガイドのスタートとして扱っていただきたい。

    ピアノ独奏曲ベスト―クラシック トップ10

    1: Beethoven: Sonata Op.106 in B flat major, ‘Hammerklavier’
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 作品106《ハンマークラヴィーア》

    この作品106は、ベートーヴェンの32のピアノ・ソナタの中で最も規模が大きく密度の高いもので、最後に聳える3つのピアノ・ソナタ(おそらくアルプス山脈のオーバーランド三山のアイガー、メンヒ、そしてユングフラウのような)に至る直前に書かれたものだ。約18分におよぶ緩徐楽章(テンポにもよる)で、ピアノと演奏者の両方の能力を限界まで押し上げる。

    ラフマニノフはより速く指を動かすことを、そしてリストはより明確にテクニックを要求するかもしれないが、ベートーヴェンは何よりもまず、根気から対位法の理解(最後のフーガはおそらくバッハすら目を回すかもしれない)といった全ての面で脳への挑戦を行い、また当時の楽器に、長く静かなラインを保つことを課している。

    2:Bach: Goldberg Variations
    バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

    ヨハン・セバスティアン・バッハによるこの1741年の傑作は、2段鍵盤のチェンバロのために作曲されたが、多くのピアニストたちのレパートリーとして非常に重要なものとなっている。実際、その最も優れた演奏のほとんどは、現代のグランドピアノで演奏された。

    アリアと30の変奏曲から成るこの作品の創作背景として、次のようなことが知られている。
    不眠症に悩むヘルマン・カール・フォン・カイザーリンクのために非常に優れた宮廷鍵盤楽器奏者のヨハン・ゴットリーブ・ゴルトベルクが演奏するために書かれたということだ。ただし真偽は定かではない。

    注目すべき特徴の1つはこの楽曲の構造。3曲ごとにカノンの変奏がくるように配置されており、声部間の音程間隔が、最初の第3変奏では1度(同じ音)、続く第6変奏のカノンでは2度、第9変奏では3度…と、音程のずれが順次上行するように配列されている。

    それぞれのカノンの後の変奏曲には、バロック・ダンス、フゲッタ、アリアなどのジャンルが取り入れられ、その後に「アラベスク」が続く。最後の変奏曲は、当時人気のあった2曲の流行歌を組み合わせた楽曲である「クォドリベット」で、最後には最初のアリアが戻ってくる。

    Lang Lang – Bach: Goldberg Variations, BWV 988: Aria

    3:Beethoven: Diabelli Variations
    ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲 作品120

    ベートーヴェンは、珍しい音楽的なユーモアを交えながら、作曲家のアントニオ・ディアベリによる小さく軽やかなワルツをあらゆる形に変容させた。

    1819年から23年の間に作曲されたこの最高のピアノ独奏曲は、新鮮で驚くべきサウンドに満ちている。ベートーヴェンの初期の伝記作家、アントン・シンドラーによると、これを書いている時のベートーヴェンは「バラ色の気分」のようで、「珍しく楽しそうだった」と書かれている。

    第22変奏は、モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》からの引用で始まる。第32変奏の駆け巡るようなフーガを終えた後、最後の第33変奏は風格のあるメヌエットに落ち着き、あらゆる意味で優雅な状態で全曲を閉じていく。

    Beethoven: Diabelli Variations, Op. 120: Var. 12. Un poco più moto

    4:Chopin: Sonata No.2 in B flat minor
    ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35

    ショパンにはダークサイドがある。静かで夢見がちな、天使のようなイメージとは違い、ショパンが想像力を完全に解き放った時は、恐ろしい悪魔のような力を持った音楽を生み出すことができた。

    彼が1839年から書き始めたピアノ・ソナタ第2番は、おそらく彼の大作の中でも最も独創的なもので、当時の批評家たちを驚かせた。

    主題の素材が断片化され、熱狂的に駆り立てられる2つの楽章の後に、有名な葬送行進曲が続きます。この楽章はもともとこのソナタを書く約2年前に書かれていたものだった。

    フィナーレは、ピアニストの両手が鍵盤の上をユニゾンの音型で一気に駆け抜けていくというもので、アントン・ルビンシュタインは、かつて「教会の墓地を覆う夜の風」を連想させると語っている。

    Chopin: Piano Sonata No. 2 in B-Flat Minor, Op. 35: III. Marche funèbre (Lento) (Live)

    5:Schumann: Fantasie in C, Op.17
    シューマン:幻想曲 ハ長調 作品17

    シューマンのピアノ曲の大部分は作曲家としてのキャリアの初期に書かれており、その多くは彼が熱烈に想いを寄せ、後に結婚することになる若いピアニスト、クララ・ヴィークのためのものだった。
    彼女の父親によって会うことを禁じられた2人は、音楽を介して言葉を交わし、シューマンはしばしば音楽的な暗号を込めてクララに音楽を送った。

    《幻想曲ハ長調》では、ベートーヴェンの連作歌曲《遥かなる恋人に》からの引用がある。しかし、このことを除いても、《幻想曲ハ長調》は最高のピアノ独奏曲の傑作だ。

    第1楽章は事実上、意識の流れの中で展開し、無数の心と心の状態を駆け巡る。
    第2楽章は、かなり高い精度でピアニストの手がキーボードを飛び跳ねるコーダをもった凱旋行進曲だ。
    フィナーレは、ピアノ曲に限定すれば、おそらくこの作曲家にとって最も美しい愛の歌といえるだろう。

    Schumann: Fantasie in C, Op. 17 – 1. Durchaus fantastisch und leidenschaftlich vorzutragen – Im…

    6:Beethoven: Piano Sonata No.21 in C, Op.53, ‘Waldstein’
    ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53《ワルトシュタイン》

    またしてもベートーヴェンだ。残りの31のソナタのほとんどすべてがこの項目に値する作品といえるが、《ワルトシュタイン》はおそらくベートーヴェンの偉大な「中期」におけるソナタの探求が集約されたものだ。

    例えばオーケストラを想定した構成、魅力的で活気に満ちた、推進力、そして地平線の彼方へと飛び立とうとするビジョン。

    第1楽章は純粋なエネルギーであり、静かな和音の反復を吹き抜けて爆発する。緩徐楽章はない。代わりに、フィナーレへの静かな導入部があり、それに続くフィナーレは、シンプルでありながら忘れられない旋律と、見せ場があり、緊張とそれを克服する自信が入り交じっていて驚かされる。

    Beethoven: Piano Sonata No. 21 in C Major, Op. 53 "Waldstein": II. Introduzione. Adagio molto

    7:Schubert: Sonata in A major, D959
    シューベルト:ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959

    シューベルトのピアノ・ソナタは、非常に個人的な音楽の宝庫だ。
    最後から2番目のピアノ・ソナタであるD959は、1828年の春に書かれたもの。この曲とセットで書かれた第19番ハ短調(D958)と第21番変ロ長調(D960)もここで挙げられるべき作品だが、この第20番は、緩徐楽章が際立っている。

    シューベルトが奈落の底を凝視しているように見える、混沌とした、即興的なパッセージが挿入される瞑想的な舟歌だ。しかし、この終末論的なビジョンは、眩い輝きを放つ輝くスケルツォと、長く紡がれた旋律の寛大な流れが私たちを混沌とは対局の世界へと運ぶ、フィナーレのロンドによってすぐに打ち消される。

    Schubert: Piano Sonata No. 20 In A Major, D.959: IV. Rondo (Allegretto)

    8:Brahms: 6 Klavierstücke Op. 118
    ブラームス:6つのピアノ小品 作品118

    ブラームスの後期のピアノ小品集は、すべてが精巧に作られているため、1つを選ぶのは難しい。
    ブラームスは、クララ・シューマンを念頭に、晩年、間奏曲やラプソディ、シンプルなピアノ小品集などの小規模な作品に目を向けた。彼女は加齢と共に関節炎に悩まされ、超絶技巧とスタミナを要求する作品を演奏することができなくなっていた。

    ブラームス(20歳のときの最初の出会いから彼女の近くにいた)は、彼女のために彼の最も親密で思慮深い音楽をいくつか書いた。作品118(1893)には、よく知られている間奏曲イ長調(第2曲)や、哀れみ深いホ短調の終曲など、対照的なキャラクターの曲が6つ収められている。

    Brahms: 6 Piano Pieces, Op. 118: No. 1, Intermezzo in A Minor

    9:Debussy: Preludes, Books 1 & 2
    ドビュッシー:前奏曲集 第1巻&第2巻

    この曲集は、私たちが選んだピアノ独奏曲ベスト10の中で、最も繊細で穏やかな作品かもしれない。

    ドビュッシーの前奏曲は、1909年から1913年の間に作曲された各12曲の全2巻に、風、霧、雪といった自然の力に吟遊詩人、カプリ島のワインのボトルまで、さまざまなインスピレーションを取り入れた示唆的なタイトルが続いている。

    さらにはボードレールとバーンズの詩、チャールズ・ディケンズの長編小説『ピクウィック・クラブ』まで。ドビュッシーは完璧主義者で、どの作品にも過剰なメモは残していない。雰囲気の創造が絶対的に最優先であり、想像力の範囲は無制限に見え、ユーモアと優しさに満ちている。

    Debussy: Préludes / Book 1, L. 117: VIII. La fille aux cheveux de lin

    10:Chopin: Polonaise-Fantaisie, Op. 61
    ショパン:ポロネーズ 第7番 変イ長調 作品61《幻想》

    ショパンの《幻想》ポロネーズ(1846年に出版)は、彼の作品において唯一無二の存在であり続けている。

    母国ポーランドの音楽に対するショパンの情熱と革新的な構造への傾倒を組み合わせたこの作品は、集中力の高い瞑想的な作品であり、重要な作品と言える。

    即興的な序奏の後にポロネーズの主題が続き、驚くほど次々と転調が行われ、魅惑的な中間部へと進んでいく。
    そしてポロネーズが回帰し、クライマックスに達すると身震いするようなトリルで終わりを迎える。

    Chopin: Polonaise-Fantaisie in A-Flat Major, Op. 61

    Written By uDiscover Team