MUSIC AWARD JAPAN初の洋楽アクト、サム・スミスとは? 壊れそうな心と自己の解放を歌う英国人

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Photo Stephanie Sian Smith (Courtesy of Interscope Capitol Labels Group)

2026年6⽉13⽇に第2回目が開催される国内最⼤規模の国際⾳楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」(MAJ)。このパフォーマンス・アーティストとしてUK出身のシンガーソングライター、サム・スミス(Sam Smith)の出演が発表された(海外アーティストとしては初)。

自身のYouTubeチャンネル動画総再生数が129億回、Spotifyでは289億回再生を超えるトップアーティストのデビューから現在までの経歴を掲載。

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「Stay With Me」とデビュー・アルバムの超ヒット

2014年に発売されたデビュー・アルバム『In The Lonely Hour』が記録的なヒットとなったこともあり、サム・スミスの物語は、まるで一夜にして世界がその声を見つけたかのように語られるかもしれない。しかしながら、その始まりは決して派手なものではなかった。ロンドンへ出て、アルバイトをしながら歌手を目指した青年が、ディスクロージャーの「Latch」、ノーティー・ボーイの「La La La」で注目され、2014年、デビュー・アルバムで一気に時代の中心へ躍り出た。

決定打となったのがシングル曲「Stay With Me」だった。ゴスペルの響きをまとったこのバラードは、単なるラヴ・ソングではなく、孤独と相手への執着、そして“本当の愛ではないとわかっていても、誰かにそばにいてほしい”という弱さを歌った曲だった。サムは後年Teen Vogue掲載のインタビューでこのアルバムについて「クィアな楽曲として聴かれると思っていた」と語り、「みんなは私を理解していなかった」と振り返っている。

『In The Lonely Hour』は英国で初登場1位を記録し、米英両国で100万枚超のセールスをすぐさま達成。さらに現在までに全世界で2,200万枚以上を売り上げ、2010年代を代表するデビュー作となった。その成功の中心にあったのは、“壊れそうな心”を隠さず差し出すサムの歌だった。

 

太平洋を越えた大ヒットとほぼ独占となったグラミー賞

『In The Lonely Hour』の成功は英国だけにとどまらなかった。「Stay With Me」はアメリカでも大ヒットし、サム・スミスは大西洋を越えたポップ・スターとなる。2015年の第57回グラミー賞では、主要4部門のうちの3つ(最優秀新人賞、年間最優秀レコード、年間最優秀楽曲)だけではなく最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムも受賞し、まさにほぼ独占と呼べる夜を迎えた。

その授賞式でサムは、自分を傷つけた相手へ「私の心を壊してくれてありがとう。おかげで4つのグラミーをもらえたよ」と語った。痛みを歌に変え、失恋を世界的成功へと反転させたこの言葉は、初期のサム・スミスを象徴しているといえる。

ただし、その成功の陰でサム本人は、自分の音楽が本来持っていたクィアな文脈が十分に受け取られていなかったとも感じていた。スーツ姿で歌っていた20歳の自分について、後に「そこには女性的なエネルギーがあった」と語り、「自分の声はジェンダーレスだと感じている」とも述べている。

 

007の主題歌担当とセカンドアルバム~3rdアルバム

グラミーの熱狂のあと、サム・スミスはさらなる大舞台へ向かった。2015年、映画「007 スペクター」の主題歌「Writing’s On The Wall」を担当したのだ。ジェームズ・ボンド映画の近年作品ではアデル(2012)、ジャック・ホワイト&アリシア・キーズ(2008)、クリス・コーネル(2006)、マドンナ(2002)というその時々の圧倒的なスーパースターが担当している。この重厚な伝統に、サムの繊細なファルセットとドラマティックな歌唱が重なり、同曲はみごとアカデミー賞歌曲賞を受賞した。

「(この賞を)LGBTの世界中の皆さんに捧げたいと思っています。私はここに立っていますが、本当に同性愛者として誇りを持っています。そして、同性愛者に対してこれからもっと対等になることを祈っています」

(*サムは2014年にゲイ男性として、2017年にジェンダークィアとして、2019年にノンバイナリーとしてカミングアウトをしている)

続くセカンドアルバム『The Thrill Of It All』では、デビュー作の延長線上にある壮大なバラードとソウル色をさらに深めた。リード曲「Too Good At Goodbyes」には、傷つく前に身を引こうとする人間の防衛本能が刻まれていた。サム・スミスはこの時期、世界的スターでありながら、なおも“愛されることへの恐れ”を歌い続けていたのだ。

そして3作目のアルバム『Love Goes』では、よりポップなサウンドへ接近する。「Dancing With A Stranger」「How Do You Sleep?」「Diamonds」など、失恋の痛みをダンス・ポップへ変換する曲が並んだ。当初予定されていたアルバム名『To Die For』は、時代の空気に合わないとして変更され、サムは「考えた結果、タイトルとリリース時期が正しく感じられなかった」と説明している。

 

ノンバイナリーの公言と4枚目『Gloria』での挑戦

2019年、サム・スミスはノンバイナリーであることを公表し、のちに代名詞をthey/themへ変更した。「私は男性でも女性でもない。そのあいだのどこかにいる」と語ったこの告白は、単なる私生活の発表ではなく、表現の中心そのものを変えていく転機となった。

サムは音楽についても、「音楽は自分の安全な場所だった」「(音楽は)今も私にとっての聖域だ」と語っている。その言葉どおり、4作目『Gloria』では、これまでの“失恋を歌うバラード歌手”というイメージから大きく踏み出した。10代でジェンダー肯定医療を受けたトランスジェンダー女性「トランス・ポップ・スター」と評されていたキム・ペトラスをゲストに迎えたシングル「Unholy」は、妖しく挑発的なビートと今までのサムのイメージとは全く違ったクィア表現のヴィジュアルで、サム・スミスの新しい時代が告げられた。

サムは「Unholy」について、「(今までにないサムのビジュアルや歌詞が)危険すぎるから、みんなに見捨てられるかも」と感じたと振り返っている。また、アルバム『Gloria』については「女性の影響が大きい」と語り、スタジオで男女のバランスを意識したことも明かしている。それは、声、身体、欲望、信仰、ユーモアをすべて解放するようなアルバムだった。

 

ノンバイナリーとして初のグラミー、そしてもう一度“歌そのもの”へ

2023年、「Unholy」はグラミー賞の最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)を受賞した。サム・スミスはノンバイナリーを公言するアーティストとして、キム・ペトラスはトランスジェンダー女性として、それぞれポップ史に残る瞬間を刻んだ。受賞スピーチでは、サムはマイクをキムに譲り、彼女は34歳の若さで亡くなったトランスジェンダーのプロデューサーのソフィーへの友情や追悼、LGBTの権利のために闘ってくれているマドンナへの感謝などを述べていた。

『Gloria』以降、近年のサムの表現は、削ぎ落とした表現へ向かっている。2025年に発表した2曲の新曲「Love Is A Stillness」や「To Be Free」では、原点回帰のような自身の声をフィーチャーする楽曲となっており、後者では自身初のワンテイク・レコーディングにも挑戦。巨大なポップ・スターとなり自己を解放した後のサムが、もう一度、歌そのものへ戻っていくようでもある。

そして2026年6月13日、サム・スミスは「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」に出演する。約2年8か月ぶりの来日であり、同アワードでは洋楽アーティストとして初のパフォーマンスとなる。

「Stay With Me」で孤独を歌ったデビューから、ノンバイナリーとして自分自身を解放し、「To Be Free」へたどり着いた現在まで。サム・スミスの歩みは、痛みを隠すのではなく、痛みの奥にある自由を歌い続けてきた旅だった。そしてその旅は、まだ続いていく。

Written by uDiscover Team





サム・スミス『In The Lonely Hour (10th Anniversary Edition)』
2024年8月2日発売
CD&LPiTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


 

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