4月4日一夜限りの上映:野球とロックをつないだパール・ジャム『Let’s Play Two』の素晴らしさ

Published on

パール・ジャム(Pearl Jam)のフロントマンであるエディ・ヴェダー(Eddie Vedder)が、キャリア初となるソロ来日公演を2026年4月14日から名古屋・大阪・京都・東京にて行うことが決定した。

この来日公演を祝し、バンドの伝説的なライブ・ドキュメンタリー映画『レッツ・プレイ・トゥー(Let’s Play Two)』が、2026年4月4日(土)に東京・名古屋・大阪の3都市限定で特別上映されることが決定した。

この作品は単なるコンサートではなく、それ以上のものとなっているが、その魅力について、パール・ジャムを追い続けている新谷洋子さんに解説いただきました。

<関連記事>
パール・ジャム特集・記事一覧
エディ・ヴェダー来日記念、『Earthling』DX盤とパール・ジャム『武道館ライヴ!』発売
ロックの殿堂でのパール・ジャムの紹介役、デヴィッド・レターマンのスピーチ


 

エディ・ヴェダーとシカゴ

ホームタウンのシアトルのほかにパール・ジャムと特別な絆で結ばれた都市があるとしたら、それはやはり、フロントマンのエディ・ヴェダーの生まれ故郷のシカゴになるのだろう。厳密にはシカゴの北側に位置する町エヴァンストン出身で、8歳の時にサンディエゴに引っ越してからはずっと西海岸で暮らしてきた彼。にもかかわらず心のどこかでシカゴアンであり続けてきた理由はほかでもなく、MLBのシカゴ・カブスと、4歳の時に叔父に連れられて以来足繁く通い続けているカブスの本拠地、リグレー・フィールドへの深い深い愛着にある。

そんなリグレーで、パール・ジャムが10作目『Lightning Bolt』(2013年)に伴うツアーの最終公演として2016年8月20、22日に行なったライヴの記録『Let’s Play Two』が、2026年4月4日に全国3カ所の映画館にて再映されることが決まった。

ここにきて初めてソロ・アーティストとして来日公演を敢行するエディ・ヴェダーという人物を知る上で、これまでに発表してきたソロ・アルバムの数々もさることながら、バンド誕生の遥か昔に始まっていた彼のもうひとつ人生を掘り起こしている本作以上に雄弁な作品はほかにないのではないかと思う。

 

カブス108年ぶり悲願の優勝

というのも、2017年に公開・DVDリリースされた本作は、『Pearl Jam LIVE AT WRIGLEY FIELD』とシンプルなサブタイトルが添えられていながら、単なるライヴ・ドキュメンタリーではない。なぜって2016年と言えば、前年の監督交代を経てカブスが快進撃を見せ、実に108年ぶりに悲願の優勝を果たした年。

フォトグラファーとしても多数の大物ミュージシャンを撮ってきた監督のダニー・クリンチは、両日のライヴ・パフォーマンスに加えてリハーサルやバックステージでのバンドと、世界中から集まった熱狂的ファンの姿を捉えると共に、球団関係者や、どうにも勝てないチームを一途に支えてきたカブス・ファンを取材し、盛り上がる町の様子もカメラに収めた。その末に、22日の公演が終わった時点でエディとセオにこう提案したそうだ。もしカブスがリーグ優勝を果たしたら、改めてシカゴを訪れて撮影を続けたい――と。

実際カブスは見事ワールド・シリーズに進み、クリーブランド・カーディアンズと対戦。11月初めの最終戦の延長10回にようやく優勝を決めるまで、ダニーは一喜一憂するエディとチームとファンに寄り添った。そして、カブスの歴史やパール・ジャムの過去のシカゴ公演に関するアーカイヴ映像も用いて、両者の歩みを重ね合わせるようにしてストーリーを編み、野球とロックの接点をあぶりだす異色のライヴ・ドキュメンタリーを完成。つまりカブスの成績次第で全く違う作品になっていただろうし、この年にパール・ジャムがリグレーでプレイしたことは運命的と呼ぶしかない。

 

リグレー・フィールドという“聖なる”場所

そう、110年以上前に建てられた全米最古の球場のひとつであるリグレーは、エディにとっては聖地。或いは、我が家も同然だ。著名なカブス・ファンのひとりとして以前から始球式に招かれたりしていたものの、そこでバンドとしてプレイすることが持つ意味の大きさは計り知れない。

結果的には、デビュー作『TEN』発表に先立つ1991年7月21日に行なった初のシカゴ公演から、リグレーに辿り着くまでに20年以上を要し、まずはブルース・スプリングスティーンのリグレー公演に、やはりシカゴ近郊出身でカブスの大ファンであるトム・モレロとゲスト出演したのが2012年9月のこと。次いで翌年7月19日にパール・ジャムのリグレー公演が実現する。これがまた本作でも触れているように、雷雨で2時間中断したのちに再開して午前2時までプレイするという伝説の公演となった。

そしてさらに3年後、MLBのシーズン折り返し点というタイミングでいつになく熱いシカゴに帰ってきたパール・ジャムは、スポーツ界から多彩なゲストを迎えつつ、2日間で計69曲をプレイ。時間にして3時間を超えたのだろうか、彼らの基準に照らしても大盛りの部類に入るショウだ。

2007年発表の映像作品『Immagine In Cornice』も監督するなど長年バンドとコラボしてきたダニーは、曲のセレクションを一任され、カヴァーも交えてキャリアを網羅する17曲を選定。初日のオープニング曲「Low Light」と、2日目のフィナーレを飾ったザ・ビートルズの「I’ve Gotta Feeling」ではさみこむ形で、彼曰く「2日間のパフォーマンスと同じスピリットとフロウを備えた」独自のセットリストを本作のために構成した。従ってライヴ映像はごく一部しか使われていないわけだが、カブスの勢いに刺激を得るようにしてバンドが入魂のパフォーマンスを披露したことは、十二分に伝わってくる。

 

絶妙なる編集と選曲

また本作にはこうしたライヴ本番の映像のほかに、リハーサルで演奏しているラモーンズの「I Believe in Miracles」、1992年のシカゴ公演から掘り出した「Even Flow」、ワールド・シリーズの最中でエディが歌ったベースボール・アンセムの古典「Take Me Out To The Ball Game(私を野球に連れてって)」などなど様々な出自の曲がさらに数曲フィーチャーされ、ダニーはこれらを巧みに各シーンに織り込んでいる。

例えば、カブスの名監督ジョー・マドン(その後、大谷翔平が在籍した時期にロサンゼルス・エンゼルスの監督も務め彼の才能を花開かせた人物として知られる)に言及するシーンで「Given To Fly」が聞こえるのは恐らく、周囲からのネガティヴな言葉に屈せずに自分を貫くことを歌うこの曲が、エキセントリックなアプローチで知られる監督に似合っていたからだろう。

他方でリーグ戦の最終戦に際し、「この試合に勝てば1948年以来初めてワールド・シリーズに進みます」というアナウンスを受けて「Corduroy」(“待たされている間に頭がおかしくなったよ”)が始まり、奇跡を信じるカブス・ファンの気持ちを「I Believe in Miracles」に代弁させる。

そして、あと1ゲーム負けたらワールド・シリーズ敗退というピンチを切り抜けたところで「Alive」を配し、遂にMLBの頂点に立った場面では、カブス・ファンとしての誇りに満ち満ちた「All the Way」(カブスの伝説的選手アーニー・バンクスに乞われてエディが綴った応援歌)が最高のサウンドトラックを提供するのだ。

あれから10年が経ち、パール・ジャムはこの間にさらに2度――2018年と2024年――リグレーでライヴを行ない、今やファンにとって彼らをリグレーで観ることは、ある種の聖地詣のように位置付けられている。そしてエディも相変わらず時間を見つけてはシカゴに足を運んでカブスを見守り、昨年MLBの公式オープン戦としてロサンゼルス・ドジャーズとカブスが日本で対戦した『MLB東京シリーズ2025』にもやって来た。22年ぶりの日本では、本作にも数回登場する俳優のビル・マーレイやジャック・ホワイトとつるんで楽しんでいたことは周知の通り。カブスこそいないが、4月にまた来日する時もどこかの球場で彼の姿が目撃されるんじゃないかと、そんな予感がしている。

Written By  新谷 洋子


パール・ジャム『レッツ・プレイ・トゥー』一夜限定特別上映

【上映日時】4月4日(土)18:00~

109シネマズプレミアム新宿 HP
109シネマズ名古屋 HP
109シネマズ箕面 HP
(※各種割引、招待券等は利用不可)

【上映劇場・料金詳細】

◎東京:109シネマズプレミアム新宿(シアター3/142席)
・CLASS S:6,500円(シネマポイント会員6,000円)
・CLASS A:4,500円(シネマポイント会員4,000円)
※両席種ともウェルカムコンセッション(ソフトドリンク・ポップコーン)含むサービス料金込み
※CLASS Sはプレミアムラウンジ「OVERTURE」利用可能

◎愛知:109シネマズ名古屋(シアター6/255席)

◎大阪:109シネマズ箕面(シアター1/345席)
・一般:2,000円
・エグゼクティブシート:3,000円
※シネマポイント会員はエグゼクティブシートを通常料金で利用可能

【チケット販売】
2026年3月13日(金) 0:00より、109シネマズ各劇場公式ホームページにて販売開始
※シネマポイント会員は3月12日(木) 21:00より販売開始
※劇場では3月13日(金)のオープン時より販売
※オンライン販売で完売になった場合、劇場販売はございませんのでご注意ください。


エディ・ヴェダー 来日公演情報

・名古屋4/14 (⽕) Niterra ⽇本特殊陶業市⺠会館フォレストホール
・⼤阪 4/16 (⽊) フェスティバルホール
・京都 4/17 (⾦) ロームシアター京都 メインホール
・東京 4/20 (⽉) 東京ガーデンシアター

公演詳細はこちら



エディ・ヴェダー『Earthling (Japan Tour Edition)』

2026年4月10日発売
日本独自企画盤/SHM-CD仕様

最新ソロ・アルバム『Earthling』(2022)の来日記念
初CD化音源8曲収録のディスク(2020年『Matter of Time EP』+ 2曲)付き
CD予約

パール・ジャム『武道館ライヴ!』
2026年4月10日発売
2003年3月3日の日本武道館公演を収録したライヴ・アルバムが、エディ・ヴェダーの来日公演に合わせて待望の再発。全30曲、2時間20分の熱演を完全収録
CD予約






Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了