サイレント・ビートル:後年になるにしたがって評価が上がりつづけるジョージ・ハリスンの世界
1980年代から20年以上にわたって東芝EMIの洋楽ディレクターを務め、2025年には『東芝EMI洋楽部の輝ける日々』という書籍も発売した森 俊一郎さんが、“吉野家七味”として音楽出版社フジパシフィックミュージックの公式noteにて連載を執筆中。
今回はザ・ビートルズのメンバー、ジョージ・ハリスンについて。他の連載はこちら。
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ジョージによる歌い継がれる楽曲
グループ、集団には「よくしゃべるやつ」「ただうるさいだけのやつ」「理屈っぽいやつ」「ほぼしゃべらないが全体をよく見てるやつ」など、それぞれの性格、関係性で現れる“特質”をもつ“構成員”がいる。ザ・ビートルズ、という今年、唯一の来日から60年が経つグループの“構成員”にも、それぞれの“特質”がある。
ジョージ・ハリスンは“サイレント・ビートル”と呼ばれ、“主役”であるジョン・レノンとポール・マッカートニーの影にいる。「しゃべらないやつ」だが、もちろんそれだけの存在ではない。数字だけで見ると、213曲(アンソロジーなど、発売前のザ・ビートルズとしての公式発表曲数)のうち、ほぼ1割程度を創っているにすぎないが、楽曲ごとの個性は明確。
特に後期、「Something」「While My Guitar Gently Weeps」「Here Comes the Sun」など、後世スタンダード化して聴き継がれる、歌い継がれる楽曲をつくったことの貢献度は大きい。
解散後のジョージ
そして、ザ・ビートルズ解散後、初めて全米・全英アルバム・チャートの1位を『All Things Must Pass』で獲得したのは、ポールでもジョンでもないジョージ・ハリスンだった、というのも、彼の“抑えられていた才能”が一気に開花した当然の結果だったのかもしれない。
ジョージの場合、ザ・ビートルズ解散後、トラベリング・ウィルベリーズ後、死後、トリビュート・コンサート後……と、後年になるにしたがって評価が上がっている気がする。もちろん1970年代、ビートルズが解散した後の世界で洋楽を聴き始めた筆者のような世代にとって、ポールやジョンのソロ、これまたヒット曲を生んでいたリンゴのそれぞれの作品は、各人の個性がよく出たもので楽しめた。
しかし当時のチャート番組を聴いていると、「あれ? これなんだ? ディンドン?」。今歌詞を読んでも、今ひとつ言いたいことは理解できない気がする不思議な曲だ。『All Things Must Pass』、『Living in the Material World』に続く『Dark Horse』からの日本でのファースト・シングルがこれ? なんか教会の鐘の音を歌にしただけみたいな……。しかしこの「Ding Dong, Ding Dong」、ラジオから聴くと妙に耳に残って、いつの間にか口ずさんでいたりする。そんな不思議な面も含めて、それがジョージの魅力だったのかもしれない。
今となっては奇跡の“覆面プロジェクト”、トラベリング・ウィルベリーズも、自分のシングルのB面用に知り合いが集まってレコーディングした「Handle with Care」があまりに出来がよくて、レコード会社が本気になり、アルバムまで出してしまったのは、まさに神の配剤かご愛嬌か?
そんなジョージが、2001年に58歳で亡くなってしまったのは若すぎたと言える。本人逝去後の2002年11月に、息子ダニー(Dhaniというスペルからはダーニという表記もあるが、ここでは最近のレコード会社などの発信を参考に、ダニーと表記)が、トラベリング・ウィルベリーズ時代以来の盟友ジェフ・リンと協力して仕上げたアルバム『Brainwashed』が発表された。
本人の死後であるが、敬意をこめて言えば、グラミーでも『Brainwashed』が「Best Pop Vocal Album」に、「Any Road」が「Best Male Pop Vocal Performance」にノミネートされ、収録曲の「Marwa Blues」が「Best Pop Instrumental Performance」を見事獲得している。
以前も紹介したが、ここではジョージのビートルズ時代の代表曲と、ソロになってから、ウィルベリーズも含めた代表曲を別々のプレイリストにまとめてみた。
それでは今日はこの辺で。吉野家七味でした。バイバイ、またね!
Written by 吉野家七味 (連載はこちら)
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