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ヒドゥル・グドナドッティルとは?:múmで活躍、『ジョーカー』『チェルノブイリ』のサントラで絶賛されるアイスランド人アーティスト

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Photo by Antje Taiga Jandrig

チェリストであり作曲家、シンガーでもあるアイスランド人アーティスト、ヒドゥル・グドナドッティル(Hildur Guðnadóttir)。彼女は、自身が担当した映画『ジョーカー』のサントラで、女性ソロ・アーティストとして初めてゴールデン・グローブ賞「作曲賞」を受賞。そして、テレビドラマ『チェルノブイリ』のサントラにて、グラミー賞「映画・テレビサウンドトラック部門」も同じく女性ソロ・アーティストとして初めて受賞(女性としても1986年『ビバリーヒルズ・コップ』サントラ以来)という歴史的快挙を成し遂げた。

(2/10追記:女性としては史上4人目となるアカデミー賞作曲賞も『ジョーカー』のサントラにて受賞)

映画・ドラマの作曲家として注目されながら、ムーム(múm)のメンバーとしての活躍やソロ・アーティストとしても幅広く活動する彼女の経歴について音楽ライターの新谷洋子さんに解説いただきました。


Photo by Rune Kongsro

ヒドゥル・グドナドッティル。まだまだ耳慣れない、しかも覚えにくい名前かもしれない。しかし今年のアワード・シーズンが終わる頃には、「ああ、彼女ね」と思い当たる人がかなり増えているはずだ。何しろ、映画『ジョーカー』とTVドラマ『チェルノブイリ』という2019年を代表する2本の話題作のスコアを作曲したこのベルリン在住のアイスランド人コンポーザー兼チェリストこそは、映画・TV音楽の世界に現れた最も革新的な才能。それでいて、本人曰く「成り行き」で手掛けるようになったスコアは、ヒドゥルにとって多岐にわたる表現手段のひとつでしかなく、ここに辿り着くまでに実に軽いフットワークで活動してきた。

1982年にアイスランドの首都レイキャビークに生まれた彼女、母はオペラ歌手で、父はクラリネット奏者。母は妊娠中から「この子は将来チェリストになる」と確信していたそうだが、予言は見事に当たり、ヒドゥルは5歳にしてチェロを学び始める。そしてレイキャビーク・ミュージック・アカデミーを経て、アイスランド・アカデミー・オブ・ジ・アーツとベルリンのベルリン芸術大学で作曲を専攻すると同時に、合唱団で歌ったり、プログラミングを勉強したり、バンドに参加したり、ジャンルの枠にとらわれずに音楽に関わってきた。

実際、日本で逸早くヒドゥルと接点を持ったのは、クラシックではなくオルタナティヴ・ロックのファンだった。というのも彼女の兄グンネル・オルン・ティーネスは、1997年に結成されたアイスランドを代表するバンドのひとつで、度々来日もしている、ムーム(múm)の中心メンバー。それゆえにデビュー当時から彼らともコラボし、4作目『Go Go Smear The Poison Ivy』(2007年)以降は正式メンバー(チェロ兼ヴォーカル担当)としてクレジットされており、同アルバムの資料には次のような記述がある。

「ヒドゥルは正式な教育を受けたチェリストであり、エネルギーを漲らせるパフォーマーだ。最近、初のチェロ・アルバム『Mount A』(2006年)を発表し、エンジェル(ドイツ人ミュージシャンのシュナイダーTM及びフィンランド出身のパン・ソニックの一員イルポ・ヴァイサネンとのユニット)を始めとする他のプロジェクトでも、大きな注目を集めている。また、デレク・ジャーマン監督の1980年公開の映画『イン・ザ・シャドウ・オブ・ザ・サン』の上演イベントで演奏されるサウンドトラックを、伝説的バンドのスロッビング・グリッスルと共作。当日はクワイアの指揮も担当した」

Múm – Green Grass Of Tunnel @ TAICOCLUB'09 KAWASAKI
*2009年にmúmが来日した時の映像。ヒドゥルはチェロを演奏

 

つまりこの時点でソロ、バンド、コラボレーション、演劇やダンスや映像のための音楽などなど、国内外で多彩なプロジェクトを掛け持ちしていた彼女は、それからさらに活動の舞台を広げていくのだが、本格的に映画音楽に関わるようになったきっかけは、同郷の先輩コンポーザー、故ヨハン・ヨハンソンとの出会いだった。

10歳ほど年上のヨハンと意気投合したヒドゥルは、『プリズナーズ』(2013年)以降彼がコンポーザーとして起用された全作品――『ボーダーライン』(2015年)や『メッセージ』(2016年)や『マグダラのマリア』(2018年)といった映画、世界的ヒットを博したアイスランド制作の傑作ドラマ『トラップ凍える死体』(2015年)――のスコアに、共作やチェロの演奏で参加。着々と評価を高めて、2018年にヨハンが急死してからは、『ボーダーライン』の続編『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』と『トラップ凍える死体』の第2シーズンのスコアを、独りで完成させることになる。

この間彼女は、デヴィッド・シルヴィアンやベン・フロストからドローン・メタル・バンドのSunn O)))に至るアーティストたちとステージやスタジオで共演し、ソロ活動も続行。チェロからガムランまで全楽器を自ら演奏した『Mount A』に続いて、父やヨハンを交えて現代室内楽風に仕上げたセカンド『Without Sinking』(2009年)、チェロとエレクトロクスとヴォーカルでライヴ録音したサード『Leyfdu Ljôsinu』(2012年)、同じくヴォーカルとチェロで形作った4作目『Saman』(2014年)を発表し、2011年にはハウシュカとのコラボ・アルバム『Pan Tone』も登場した。もちろんいずれもチェロを核にしており、ポスト・クラシカルの文脈で語ることが可能な作品だが、しばしばアンビエントやドローン・ミュージックに接近する幽々たるサウンドスケープが、ヒドゥルのデフォルトと言えるのだろう。

そしていよいよ昨年になって、冒頭で触れた2作品『ジョーカー』と『チェルノブイリ』のサントラで一気に知名度を上げて世界的な評価を確立し、ソロ・アーティストとしても、新たに名門レーベルのドイツ・グラモフォンと契約した彼女。どちらの作品もソロ・アルバムと一定のトーンを共有しているが、アプローチはそれぞれに異なり、ヒドゥルのオープンマインドな実験欲を物語っている。

アメリカのHBO局制作の『チェルノブイリ』については、ドラマのロケを行なったリトアニアにある原子力発電所(現在は廃炉)の内部で、フィールドレコーディングを敢行。空間そのものを楽器として用いて、気が遠くなるほどの時間をかけてその音源に後処理を施し、自分の声を交えて編集して、音楽を構築したのだとか。そんな独創的なスコアは、2019年のワールド・サウントトラック・アワードのベスト・テレビジョン・コンポーザー賞をヒドゥルにもたらすと共に、第71回プライムタイム・エミー賞の作曲賞(ミニシリーズ/テレビ映画/スペシャル番組部門)に加えて、第62回グラミー賞の映画・テレビサウンドトラック賞を獲得したばかりだ。

Bridge Of Death (From “Chernobyl” TV Series Soundtrack)

 

一方、監督のトッド・フィリップスのたっての希望で手掛けた『ジョーカー』のスコアは、撮影が始まる前に、脚本だけを頼りにイマジネーションを膨らませ、まずは主人公アーサー・フレックを象徴する音をチェロで見つけて、そこから発展させたという。その後、彼女が作った曲をアーサー役のホアキン・フェニックスに聴かせたところ、ヒドゥルに劣らず絶賛を浴びているあの怪演を引き出す重要なカタリスト(触媒)になったそうだ。

賞レースでは、第25回放送映画批評家協会賞の作曲賞に輝き、第92回アカデミー賞と2020年英国アカデミー賞でも作曲賞にノミネートされているが、大きな注目を集めたのはやはり、ランディ・ニューマン(『マリッジ・ストーリー』)やアレクサンドル・デスプラ(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)ら強豪と競った第77回ゴールデングローブ賞での快挙だろう。女性が単独で手掛けた作品が作曲賞を受賞するのは史上初めてで(01年にリサ・ジェラードがハンス・ジマーと共作した『グラディエイター』で受賞したことがある)、ただでさえ女性が少ないフィールドだけに、ひとつのランドマーク的な出来事と目された。受賞後マスコミの取材を受けた彼女も、エンターテインメント界全体に訪れた女性のポジションを巡る意識の変化がなければ、こんな大作に起用されることはなかったとコメントしたのだ。

最後にヒドゥルのパーソナリティにも触れておこう。なぜって、音楽は徹底して翳りを帯びているものの、インタヴュー映像に見る彼女は対照的に表情豊かで、朗らかに笑い転げながら熱弁をふるっており、いい意味でギャップがある。ゴールデングローブ賞授賞式でも、作曲賞は終盤に発表されたせいか「音楽のことなんか忘れられちゃったのかと思ってた!」とジョークを飛ばしていたが、飄々とハリウッド進出を果たしたこの奇才は、引く手数多の存在になること必至。先の読めない不穏な時代のサウンドトラックを、これからも鳴らしてくれるのだろう。

Written by 新谷洋子



ヒドゥル・グドナドッティル
『TVドラマ《チェルノブイリ》オリジナル・サウンドトラック』
CD / LP / iTunes / Apple Music / Spotify

ヒドゥル・グドナドッティルが2020年1月に公開した新曲。タイトルは「People Get Faces」という意味

Hildur Guðnadóttir – Fólk fær andlit


 

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