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Classical Features

【対談】フルート奏者Cocomi×ピアニスト ニュウニュウ、アルバム『Mélancolie』を語る

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2022年4月に名門レーベル〈DECCA GOLD〉からリリースされたファースト・アルバム『de l’amour』で大きな注目を集め、同年12月のデビュー・リサイタルでも成功を収めたフルート奏者、Cocomi。

11月1日に発売されたセカンド・アルバム『Mélancolie』では、これまでの共演で抜群の相性を見せたニュウニュウをピアノに迎え、フランス近代音楽の名曲に挑んでいる。

『Mélancolie』のリリースを記念して、11月11日に紀尾井ホールで開催されるリサイタルを前に、Cocomiとニュウニュウのふたりが、互いの音楽性や今回のコラボレーションについてじっくりと語ってくれた。音楽ライター 八木宏之さんによるインタビュー。


最初から呼吸が合っていて、本当に気持ちよかった

―――おふたりはCocomiさんのデビュー・アルバム『de l’amour』やデビュー・リサイタル(2022年12月26日、紀尾井ホール)で共演を重ねられてきました。初共演でのお互いのファースト・インプレッションを教えてください。

Cocomi:初めてニュウニュウさんに会ったのは、オンラインでのリハーサルでした。リモートでラフマニノフの《ヴォカリーズ》とグノーの《アヴェ・マリア》を練習したのですが、演奏前にブレスのポイントを伝えただけで、ニュウニュウさんは私が目指しているものを感じ取り、一発で合わせてくださいました。そうしたニュウニュウさんの豊かな感性にとても驚いたのを覚えています。ハーモニーの色彩にも敏感に反応してくれますし、センスが抜群に良い音楽家だと思いました。

Cocomi, Niu Niu – Ave Maria(Performance Video)

ニュウニュウ:Cocomiさんが提案してくださるたくさんのアイデアを、私たちはしっかりと共有して演奏会に臨み、ステージのうえでもお互いにぴたりと呼吸を合わせることができました。前回のリサイタルでは、Cocomiさんと一緒に3曲演奏しましたが、お客さんも私たちのコラボレーションを気に入ってくださり、それがアルバム『Mélancolie』での再共演に繋がりました。『Mélancolie』では全ての曲でピアノを弾くことができて、本当に光栄でした。

Cocomi:『de l’amour』やデビュー・リサイタルでのニュウニュウさんとの共演が本当に素晴らしい体験だったので、2枚目のアルバムでは、ぜひ全曲でニュウニュウさんにピアノを弾いていただきたいと、私からお願いしたんです。

ニュウニュウ:そのように言っていただけて、感激しています!

Cocomi, Niu Niu – Vocalise(Live Video)

―――最初の出会いはオンラインだったのですね。

Cocomi:初めて対面でリハーサルしたのは、リサイタルの前日のクリスマスだったのですが、合わせがあまりにスムーズだったので、あっという間に終わってしまいました。時間は短かったですが、密度の高い練習で、音色に対するこだわりをふたりで追求することができました。

ニュウニュウ:Cocomiさんとのリハーサルは、最初から呼吸が合っていて、本当に気持ちよかったです。

Cocomi:気持ちが良いというのは、本当にその通りで、一緒に演奏していて驚くほどストレスがありませんでした。自分がどう吹きたいのか、言葉で説明しなくても、ニュウニュウさんは完璧に合わせてくれるのです。

ニュウニュウ:私たちは最終目的地が同じなので、短い時間のなかでも、互いの演奏に寄り添うことができるのだと思います。私のアルバム『ライフタイム』に収められている《ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン》という作品では、Cocomiさんがゲストとして参加してくれました。このレコーディングもリモートで行なったのですが、私が最初に作品のイメージを伝えると、Cocomiさんはそれをすぐに理解して、私が思い描いた通りの演奏をしてくれました。

Niu Niu, Cocomi – Løvland: Song from a Secret Garden (Arr. Niu Niu for Flute and Piano)

セカンド・アルバムのテーマはフランス近代音楽

―――『Mélancolie』では19世紀後半から20世紀前半に活躍した3人のフランスの作曲家にスポットが当てられています。フォーレ、ドビュッシー、プーランクを選んだのはなぜですか?

Cocomi:フランスのポスト印象派の画家、アンリ・ル・シダネルが今回のアルバムのインスピレーションの源になりました。シダネルの絵を見たときに、思い浮かんだのがフランス音楽、とりわけフォーレ、ドビュッシー、プーランクでした。

―――『de l’amour』に引き続き、『Mélancolie』でも歌曲作品をフルートで演奏されていますね。

Cocomi:プーランクの《消えた男》という歌曲は録音の種類も少なく、広く知られている作品とは言えませんが、ぜひ多くの方に聴いていただきたい名曲です。レコーディングするにあたって、残されている録音のひとつ一つを聴き比べながら、ブレスの位置や時間を取るべき箇所を決めていきました。

―――『de l’amour』のタイトルは、プーランクの歌曲《愛の小径》から取られたものでした。プーランクはCocomiさんにとって特に思い入れのある作曲家なのでしょうか?

Cocomi:プーランクは素晴らしいフルート・ソナタを残してくれた作曲家です。プーランクのソナタは、プロコフィエフやサンカンのソナタとともに、フルート奏者のもっとも重要なレパートリーとなっています。フルート・ソナタをきっかけに、プーランクという作曲家に興味が湧いて、フルートのための作品だけでなく、ピアノ独奏曲や歌曲なども聴くようになりました。今回レコーディングした《消えた男》や《メランコリー》《エディット・ピアフを讃えて》は、そのようにして出会った作品でした。

―――ニュウニュウさんにとって、フォーレやドビュッシー、プーランクのようなフランス音楽のレパートリーはどういった存在ですか?

ニュウニュウ:私はフランス音楽が大好きです。2021年と2023年には、香港の『French May Arts Festival』に参加して、フランス人の音楽家たちとプーランクを含むフランスの作曲家たちの作品を演奏しました。フランス音楽は色彩豊かで、魔法のようでもあり、弾き手と聴き手の両方の想像力をかき立てるものだと思います。フランス音楽を演奏していると、しばしば中国の水彩画を思い出します。フランス音楽では、いろいろな音を絵の具のように混ぜ合わせながら表現するのです。

―――これまでもフランス音楽はニュウニュウさんのレパートリーのなかで重要な位置を占めていたのでしょうか?

ニュウニュウ:先ほどお話しした香港のフェスティバルやフランスでのリサイタルでは、ドビュッシーやラヴェル、プーランクの作品を弾いてきましたが、これまでフランス音楽をレコーディングする機会はほとんどありませんでした。けれどもフランス音楽にはずっと関心がありましたし、とりわけプーランクの《エディット・ピアフを讃えて》は、昔から私のお気に入りの作品でした。ですから、Cocomiさんとともに、フランス音楽のレコーディングにチャレンジできたことは、とても嬉しいことでした。

Cocomi:ニュウニュウさんの弾くフランス音楽を堪能できるという点で、今回のアルバムとリサイタルは貴重な機会ですね。

お互いの作品に対するイメージを補完し合ったリハーサル

―――ここまでプーランクのお話を伺いましたが、フォーレとドビュッシーも強い個性を持った作曲家ですね。

Cocomi:ドビュッシーはジャポニズムをはじめとする異文化に関心を持って、それを楽しみながら自作に取り入れた人ですよね。煌びやかな響きのなかにサプライズがあるところもドビュッシーの音楽の特徴だと思います。

ニュウニュウ:ドビュッシーは自然を音楽で巧みに描いた作曲家でした。一方でフォーレはとても内向的な人だったと思います。

Cocomi:フォーレの音楽はときにシャンパンのように感じます。滑らかだけれども、ところどころでキラッと輝いているような。重厚なフレーズでもスムースな軽さがあって。ペティヨン(フランス語できらきらと輝く、ぱちぱちと弾けるの意)な魅力が、フォーレの《幻想曲》のアレグロ部分には感じられます。

ニュウニュウ:お酒で例えるなら、プーランクは赤ワインだと思います。私はプーランクが用いる和音が大好きで、作曲するときにはよく参考にしています。

Cocomi:プーランクの音楽は感情が豊かですね。短調の暗い響きにも、突然光が差し込む瞬間があって、そうした突発性こそがプーランクの魅力ではないでしょうか。

―――『Mélancolie』のレコーディングは、リモートではなく対面で行ったと伺いました。

Cocomi:2日間リハーサルをしたあとに、3日をかけてのレコーディングを行いました。前回のレコーディングと同様に、今回も私たちが音楽から感じ取るものがとても近かったので、細かく方向性を擦り合わせる必要はありませんでしたが、歌曲作品では、歌詞の意味を踏まえてどう演奏すべきなのか、ふたりで話し合いました。私がついフレーズを歌い過ぎてしまうようなところでは、音楽が停滞しないよう、ニュウニュウさんがピアノで自然とリードしてくださり、とても心強かったです。

ニュウニュウ:今回のプログラムには、ドビュッシーの《アラベスク》第1番やプーランクの《メランコリー》《エディット・ピアフを讃えて》など、ピアノ独奏のためのレパートリーが含まれていたので、私はオリジナルのピアノ独奏版を弾いて、ピアニストとしての意見を伝えました。Cocomiさんも《美しき夕暮れ》や《消えた男》のような歌曲作品では、いくつかのフレーズを歌ってくださり、お互いの作品に対するイメージを補完し合うことができました。Cocomiさんの歌声は本当に素晴らしいのです!

Cocomi:ありがとうございます。声楽は、桐朋学園の先生にずっとレッスンをしていただいています。フルートも声楽と同じように息を使うので、歌を学ぶことは、フルートの演奏にもとても役立っています。

Cocomi, Niu Niu – Arabesque No. 1(Music Video)

ヴァイオリン演奏から学んだこと

―――『Mélancolie』に収められたフランス音楽を聴いて、パリの風景を思い浮かべる人も多いかと思います。おふたりには、パリのお気に入りの場所はありますか?

Cocomi:コンコルド広場のすぐ側にあるチュイルリー公園は、私のお気に入りの場所です。今年の5月にパリを訪れた際にも、このチュイルリー公園を散歩しました。木漏れ日が本当に美しくて、日常のなかのふとした風景がこんなにも魅力的だから、画家たちはそれを描こうと思ったのだと深く感じ入りました。街全体に歴史を感じさせる特別な空気が漂っています。私は美術館へ行くのが好きなのですが、パリは街そのものが暮らすことのできる美術館のようです。

ニュウニュウ:7歳のとき、ヨーロッパで初めてリサイタルをした街がパリでした。もう20年も前のことです。それ以来何度もパリを訪れています。今年の7月にもパリへ行きました。シャンゼリゼ通りが、私のパリでのお気に入りの場所です。シャンゼリゼを歩きながら、人生を謳歌するフランス人たちを眺めるのが好きなのです。リサイタルでも、パリの人たちはみな自由に、リラックスしながら音楽を楽しんでいます。

―――Cocomiさんは11歳でフルートを始められましが、フルートのどんなところに惹かれたのでしょうか?

Cocomi:当時ピアノとヴァイオリンを習っていた音楽教室で、偶然にフルートの音色を聴き、なんて綺麗な響きなんだろうと心揺さぶられました。その後、サン=サーンスの《動物の謝肉祭》の〈水族館〉を聴く機会があったのですが、そこでも強く惹きつけられたのはフルートの音でした。それで私はフルートが好きなんだと気がついて、フルートのレッスンも受けるようになりました。最初は身体が小さかったので、ピッコロからのスタートでした。

―――フルートを始めてからも、ヴァイオリンやピアノは続けられたのですか?

Cocomi:高校1年生までは、フルートとヴァイオリンとピアノの3つを並行して学んでいました。中学校ではオーケストラに所属していたのですが、ある曲ではコンサートミストレス、ある曲ではフルート奏者といったように、ふたつの楽器を曲によって持ち替えていたので、毎朝ヴァイオリンとフルートの両方を持って通学していました。

ニュウニュウ:私も10歳から20歳までの10年間、ヴァイオリンを勉強していました。ピアノにはヴァイオリンのようにフレーズを歌い込むことは難しく、私もヴァイオリンで旋律をたっぷりと歌ってみたかったのです。ピアノとヴァイオリンを両方続けるのは手に負担が大きいので、今はピアノに集中していますが、ヴァイオリンでの経験は、フレージングを考えるうえでとても役に立っています。

Cocomi:フルートは口を使って演奏する楽器なので、顎で挟んで演奏するヴァイオリンとの両立は難しく、私もヴァイオリンを一旦お休みして、フルートの勉強に集中しています。ヴァイオリンを弾かなくなってからも、ボウイングの知識はフルートを演奏する際のイメージを助けてくれていて、ヴァイオリンで弾くとしたらアップかな、ダウンかなと考えながらフルートを練習しています。

ニュウニュウ:今度一緒にバッハの二重協奏曲を演奏しましょう!笑

フランス語の響きを感じながら

―――ニュウニュウさんは中国とアメリカで音楽を学ばれましたが、中国とアメリカの音楽教育にはどのような違いがあるのでしょうか?

ニュウニュウ:中国の教育は私に強固な基礎を与えてくれました。アメリカでは、自由な発想や、形式、構成をどのように捉えて解釈するか、その考え方を学びました。中国とアメリカの教育のどちらも、私の成長に欠かせないものだったと思います。国際的に活躍する演奏家になるためには、さまざまなアプローチによる多角的な教育を受けることが大切です。

Cocomi:私は高校から桐朋学園に通い、現在はソリスト・ディプロマコースで学んでいます。桐朋学園の魅力は自由で縛られないところです。各々の個性を伸ばしながら、目標に向かって自分のペースで進んでいくことができます。必要ならば、声楽を学ぶことができるのもその一例です。

―――Cocomiさんも今後のグローバルな活躍が期待されています。

Cocomi:言語、とりわけフランス語をもっと学んでいきたいですね。今回のレコーディングを通して、その気持ちが一層強まりました。フランス音楽のフレーズには、フランス語が聞こえてくるようなものがたくさんありますからね。フルートを演奏しているときのアンブシュアや舌の動きもフランス語を話しているときのそれとそっくりで、フランス語を話しているようなイメージで演奏すると、不思議と上手くいったりするのです。

―――最後にリサイタルへ向けてメッセージをお願いします。

Cocomi:私たちはふたりとも、ステージでさまざまなアイデアを即興的に繰り出すのが好きなタイプの音楽家なので、予想がつかない刺激的な演奏を楽しんでいただけると思います。前回のリサイタルのときには、ニュウニュウさんが舞台袖で「なにをしても大丈夫、必ずついていくから」と声をかけてくれて、とても勇気づけられました。相性抜群のふたりの、ステージ上での化学反応にぜひ注目していただけたら嬉しいです。

ニュウニュウ:Cocomiさんと一緒に2時間のコンサートを作り上げるのは今回が初めてですが、紀尾井ホールという素晴らしい空間でそれを実現できるのが、今から楽しみです。ぜひご期待ください!

Interviewed & Written by 八木宏之

 


■リリース情報

Cocomi『Mélancolie』
2023年11月1日発売
CD / Apple Music / Spotify /Amazon Music 


■公演情報

Cocomiリサイタル『Mélancolie』
日時:2023年11月11日(土) 18:30 開場/19:00 開演 
会場:紀尾井ホール
出演: Cocomi(フルート) ニュウニュウ(ピアノ)

主催:ユニバーサル ミュージック合同会社/株式会社AMATI
協力:パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン株式会社
問合せ:㈱AMATI
入場料:S¥6 ,000  A¥4 ,000  9月10日一般発売開始
詳細・チケットお申込みはこちら


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