シューベルトの聴くべき作品ベスト10:初期ロマン派の偉大な作曲家による名曲選

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シューベルトは初期ロマン派の最も偉大な作曲家の一人。10曲の傑作を取り上げ、最高のシューベルト作品を探求してほしい。

リストが「最も詩的な作曲家」と評したシューベルト(1797年1月31日〜1828年11月19日)は、初期ロマン派の典型的な作曲家となった。彼は多くの作品を書き、ほとんどすべての主要なジャンルの音楽を書いており、その歌曲は100年以上にわたって他の追随を許さないスタンダードを作り上げた。彼はその短く輝かしい生涯をほとんどウィーンの街で過ごした。31歳の若さでこの世を去った彼の生涯は、さまざまな感傷的な神話に彩られている。幸せなボヘミアンというイメージが、20世紀になっても残っている。真実はもっと暗く複雑だった。生前、シューベルトは歌曲や合唱曲、短いピアノ曲で知られていた。

1839年、ロベルト・シューマンが、当時演奏されていなかった交響曲第8番ハ長調(通称《グレイト》)の原稿を見つけたのが、シューベルトの幅広い作品を発見するきっかけとなった。1860年代には、交響曲第7番《未完成》や弦楽五重奏曲ハ長調など、管弦楽曲の傑作が初演された。ピアノ五重奏曲《ます》、八重奏曲、ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調などの室内楽曲は魅力と親しみに満ちているが、イ短調ソナタ、《冬の旅》歌曲集、弦楽四重奏曲《死と乙女》は、作曲者の憂鬱と絶望の傾向が鮮明に表れている。シューベルトの短い生涯の中で、彼の音楽が評価されたのは、ウィーンの比較的小さなファンたちの輪に限られていた。しかし、彼の死後、作品はドイツやフランスの著名なロマン派の作曲家たちによって支持され、西洋クラシック音楽における偉大な作曲家の一人として認められるようになった。

シューベルトのベスト作品:偉大な作曲家による10の重要な作品
ピアノ五重奏曲 イ長調 D667《ます》

シューベルトは、彼の最高傑作の一つである五重奏曲《ます》で、最も浮き浮きとした楽しさを味わうことができる。ピアノ四重奏にコントラバスを加えることによって、彼はリズムを鋭い弾みで支えるだけでなく、チェロにリリカルなテノール歌手の役割を与えた。後にも先にも、彼のこの功績に匹敵するものはないだろう。

ゆったりとしたオープニングから、ピアノの絹のようなアルペジオとトリルがチェロの旋律へと受け継がれていく爽やかなディヴェルティメント、そしてセレナーデが爆発するスケルツォへと展開される。そして、きらめく水面を泳ぐ“ます”を描写する歌曲〈ます(Die Forelle)〉のメロディの変奏で、私たちをオーバーエスターライヒ州の「想像を絶するほど美しい風景」(シューベルト自身の表現)へと誘う。

交響曲 第8番 ロ短調 D759《未完成》

シューベルトの初期の交響曲は、さわやかで古典的で、先人の優れた作曲家たちからの影響をほのめかしている。しかし、《未完成》交響曲では、ベートーヴェンが《田園》交響曲でやり残したものを引き継ぎ、偉大なロマン派交響曲へとつながる新しい展望を切り開いているように思われる。

完全な形で書かれているのは2つの楽章のみだが(奇妙なことにどちらも3拍子)、不思議なほど互いに補い合い、抒情的な書法で成度が高いため、コンサート・レパートリーとして不動の地位を築いている。評論家のエドゥアルド・ハンスリックはアレグロ楽章について、「水の底にある小石がすべて見えるほど透明な…甘い旋律の流れ」と評している。

美しき水車小屋の娘 D795

詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩集に付曲されたこの歌曲集は、粉ひき職人見習いの若者と水車小屋の美しい娘の恋愛を描いており、表面的には伝統的な片想いの物語である。春の陽気、小川の流れ、粉引きのリズム、若い恋人たちの鼓動が融合した、生命力あふれる美しい音楽だ。

しかし、シューベルトはこの曲の多くを梅毒と診断されたばかりの入院中に作曲している。この粉ひき職人を目指す若者はどれほど純粋で、どれほど不安定なのだろうか。彼はどれほどの深淵に直面しているのだろうか。ピアニストのグレアム・ジョンソンは、この若者について「水車小屋の娘と強い男性的魅力を持つ狩人」によって引き裂かれたと説明している。この作品は、新鮮な素朴さから、哀れな絶望まで、無限の解釈を可能とするものである。

弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D810《死と乙女》

シューベルトの四重奏曲は、痛々しいほど美しい《ロザムンデ》から、短く鋭い「四重奏断章」(未完)まで、すべて例外的な作品である。しかし、《死と乙女》ほど歌と室内楽の絶対的な結びつきを成し遂げた作品はないだろう。この曲は、衝撃的な開始をし、最後までそれが持続する。

マティアス・クラウディウスの詩による歌曲〈死と乙女(Der Tod Und das Mädchen)〉の中の、「心穏やかになさい!私の腕の中で安らかに眠るのだ」という、凍りつくような歌詞に基づく悲痛な変奏曲だ。音楽は葬列を思わせる鋭い一音に固執しており、そこから動くことはほとんどない。悪魔のようなスケルツォの後にやってくる、死神が不気味なギャロップのリズムで去っていく終楽章は、シューベルトの最高傑作の一つである。

4つの即興曲 Op.90, D899、4つの即興曲 Op.142, D935

これらの楽しいピアノ曲は、シューベルトとの最初の出会いにふさわしいものだ。完璧な配置で、特徴的な性格の楽曲が対照的に並んでいるため、これらは天才の純粋な音楽があふれ出したもののように見える。最初の旋律的なハ短調の憂鬱な行進曲から、変ホ長調の魅力的な無窮動、そして変イ長調のアレグレットを爆発的な怒りのアレグロ・スケルツァンドへと駆り立てる慰めの讃歌であるヘ短調の陰鬱な舞曲(D935)まで、各作品は、一見自由奔放にテーマが展開しているように見えるが、熟練した技が隠されている。

交響曲 第9番 D944《グレイト》

シューベルトが《未完成》交響曲で新境地を開拓したとすれば、演奏時間に1時間近く要する《グレイト》は、持続的なパワーを持つ大規模な交響曲である。1839年、兄のフェルディナント・シューベルトがこの曲をシューマンに託し、シューマンはすぐにライプツィヒに持ち帰り、メンデルスゾーンが初演を行ったという、信じられないようなエピソードが残っている。

しかし、それでも、楽曲の容赦ない要求を演奏家が受け入れるには、何年もの時間を要した。ブラームスの後期作品を思わせるホルンの響きと広がりのあるコラールで始まり、ブルックナーの作品のように力強く終わるこの壮大な作品は、シューベルトが偉大な交響曲家の一人であることを証明するものである。

弦楽五重奏曲 ハ長調 D956

この五重奏曲は、他のどの室内楽作品よりも「デザート・アイランド・ディスク(無人島に持っていくべき一枚)」で取り上げられた。おそらく、人間であることの意味を凝縮したような作品だからだろう。シューベルトの晩年に書かれたこの曲は、まるで最初からそこにあったかのように、天から与えられたかのように、自然と入ってくる。

チェロの二重旋律の輝きが広がるやいなや、影が落ちてくる。ハ長調でこれほどまでに苦悩を表現した曲はこれ以前にあっただろうか?生と死の間を行き来するような重厚な緩徐楽章では、時間はほとんど止まっている。躍動的なスケルツォは希望を与え、野蛮な舞曲風のフィナーレは明るい幸福をもたらすが、シューベルトは最後の小節でもう一度ナイフを突き刺してくる。

ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 Op.100, D929

強烈に美しい緩徐楽章、ベートーヴェンの作品のような壮大さと重厚さを感じさせ、シューベルトの最も愛されている室内楽作品の一つとなっている。曲は切ない歌のような問いかけが長調の応答によって変容していく、壮大な「アンダンテ」で幕を開ける。緩徐楽章では、有名なスウェーデンの民謡「ほら、太陽が沈んでいく」が、催眠的な反復和音にのって聴こえてくる。

スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』、『クリムゾン・タイド』、『ピアニスト』など、多くの映画で感動的に使われている。軽快な装飾が施されたフィナーレは、ほとんどコミカルといえるほど「正統派」の風格のある舞曲風のロンドに見えるが、唐突な名人芸の爆発によって中断される。そしてスウェーデン民謡の旋律が、まるで無垢な記憶に窓を開けるかのように回帰してくる。

ピアノソナタ 第21番 変ロ長調 D960

シューベルトは最後のピアノ・ソナタが演奏されるのを聴けるほど長生きしなかったが、この天空の瞑想曲は30歳の若さで、自分がどれほど死と隣り合わせにいるのか(腸チフスや梅毒の影響による)知らずに書いたことを、私たちは忘れてはならないだろう。これらの晩年の作品の「天国的な長さ」は構成上の弱点ではなく、むしろそれらの作品の重要性を高める役割を果たしていることを認識したのはシューマンであった。

官能的で叙情的な3つの主題を静かに織り交ぜた内省的な第1楽章で始まり、強烈な緩徐楽章がこのソナタの核となっている。ウィットに富んだバレエ的なスケルツォがその呪縛を解き放ち、ハンガリーの香りを漂わせながら、力強く踊るようなロンド・フィナーレとなる。

冬の旅 D911

シューベルトは死の床で、並外れた歌曲集である《冬の旅》の校正を行っていた。そして、これはなんという旅なのだろう。詩人ミュラーが《冬の旅》で描く“さすらい人”は社会から疎外された現代人であり、氷のような孤立に閉じ込められ、愛の記憶に苦しめられている。彼の前には死か理性の喪失しかない。

シューベルトの友人ヨーゼフ・フォン・シュパウンは、シューベルトがこの曲を聴かせたときのことをこう回想している。「背筋が凍るような歌の数々を君たちに歌うよ…これらは他の歌曲にない大きな影響を僕に与えてくれたんだ」と。〈菩提樹〉の穏やかな懐かしさ、〈春の夢〉の悲痛さ、催眠的で痛ましい〈辻音楽師〉などが収められたこの歌曲集が、シューベルトの最高傑作であることは間違いない。

Written By uDiscover Team



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