最高のライヴ・アルバム・ランキング・ベスト50:ライヴ会場の臨場感や躍動感を味わえる名盤たち

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スタジオでマジックを生み出すのも凄いことだが、それをライヴでやるのもまた格別に素晴らしく、全く新しいレベルの興奮(そして多くの場合、独創性)を音楽にもたらす。最高のライヴ・アルバムとは、バンドのエネルギーの真髄を捉え、聴いている側の人達が実際その場にいるような気持ちにさせてくれるのだ。

それでは過去に発売された最高のライヴ・アルバム50枚を、ランキング形式で紹介しよう。これを読みながら、下記の「ベスト・ライヴ・アルバム」プレイリストも合わせてどうぞ。

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50. ダイアナ・クラール『Live In Paris』(2002)

ヴァーヴ・レコードはビリー・ホリデイ、アニタ・オデイ、エラ・フィッツジェラルド等々、長きに渡り偉大なジャズ・シンガー達のライヴ・アルバムをリリースしてきたが、その中でも21世紀を代表する名作といったら、カナダ人シンガー兼ピアニスト、ダイアナ・クロールの『Live in Paris』だ。

フランスの首都にある歴史的な“オリンピア劇場”でレコーディングされた本作で、ダイアナ・クロールはマイケル・ブレッカーやクリスチャン・マクブライド等の才能豊かなゲストのジャズ・スター達をバック・バンドに迎え、ガーシュウィン、コール・ポーター、ハロルド・アーレン等のスタンダード・ナンバーでスイングし、ビリー・ジョエルやジョニ・ミッチェル等による現代の名曲に、独自の洗練されたスタイルを取り入れている(クラールはミッチェルの「A Case of You」の心地良いヴァージョンを披露)。『Live In Paris』はグラミー賞“ベスト・ジャズ・アルバム賞”を受賞。

49. ハンブル・パイ『Performance: Rockin’ The Fillmore』(1971)

イギリス出身のブルース・ロック・バンド、ハンブル・パイの2枚組のライヴ・アルバムは、マンハッタンの有名な“フィルモア・イースト・クラブ”で、1971年5月、2日間に渡ってレコーディングされた(同クラブはこの1か月後に閉鎖)。

ハンブル・パイはシンガー兼ギタリストのスティーヴ・マリオット、ギタリストのピーター・フランプトン、ベーシストのグレッグ・リドリー、ドラマーのジェリー・シャーリーから成るバンド。アルバムからは大ヒット・シングル「I Don’t Need No Doctor」(レイ・チャールズの1966年ヒット曲)が誕生。またドクター・ジョンの「I Walk On Gilded Splinters」には、20分に及ぶジャムがあり、ハンブル・パイのダイナミックなライヴ・パフォーマンスを見せつけている。このアルバムで滑らかでパワフルなソロを披露したフランプトンは、『Performance』がリリースされた1971年11月の直前にバンドを脱退した。

48. ダイアー・ストレイツ『Alchemy』(1984)

ロンドンの“ハマースミス・オデオン”で、2夜に渡ってレコーディングされた『Alchemy』は、ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーが優雅で素晴らしいギタリストとして見なされている理由が分かるライヴ盤だ。「Sultans of Swing」の11分ヴァージョンの中盤には、ギター・ソロがフィーチャーされており、ノップラーがスピード感ある器用なフィンガー・ピッキングを披露。ダイアー・ストレイツのヒット曲のエクステンデッド・ライヴ・ヴァージョンが、なぜファンの間でこれほど人気があるか納得がいくだろう。14分の「Telegraph Road」然り。

ダイアー・ストレイツは熟達したライヴ・バンドであり、コンサートの雰囲気を自由に変えることができ、その様子はよりスロウで瞑想的な曲「Romeo & Juliet」「Love Over Gold」「Private Investigations」で堪能できる。

47. クリーム『Wheels Of Fire』(1968)

1967年7月から1968年4月の間にレコーディングされた2枚組のアルバム『Wheels Of Fire』は、全盛期のクリームが垣間見られる作品だ。1枚目にはライヴ・レコーディング(場所は“ウィンターランド・ボールルーム”と“フィルモア・ウェスト”)、そして2枚目にはニューヨークのアトランティック・スタジオでのレコーディングが収録され、クリームが両セッティングにもたしたものは明確だ。

ジャック・ブルース、エリック・クラプトン、そしてジンジャー・ベイカーの3人は、ロバート・ジョンソンの「Crossroads」の素晴らしい演奏で、その卓越した音楽的感受力を見せつける。彼等はまたブルースの名曲に何か新しいものをもたらす能力も備え、それはハウリン・ウルフの「Sittin’ On Top Of The World」の素晴らしいヴァージョンでも披露されている。更に16分に及ぶ壮大な傑作「Toad」には、ベイカーの最も優れたドラム・ソロのひとつが収録。アルバムはアメリカ・チャートのトップを飾り、イギリスでは3位を記録した。

46. ザ・ビーチ・ボーイズ『Beach Boys Concert』(1964)

1964年のクリスマスに最も人気のあったプレゼントのひとつが、キャピタル・レコードからリリースされたビーチ・ボーイズのライヴ盤『Beach Boys Concert』だった。この作品はビルボード・チャート1位を記録した初のライヴ・アルバムであり、その地位を1カ月保持した。当時のザ・ビーチ・ボーイズはスーパースターだったのだ。

バンドは既に「I Get Around」等々、17枚のシングル・ヒットを持っており、このキャッチーな曲に対して、バンドの故郷であるカリフォルニア州サクラメントにある、“シヴィック・オーディトリアム”の観客は熱狂的な声援を送った。彼等は「Fun, Fun, Fun」や「Little Deuce Coupe」等自らが書いたヒット曲以外にも、「Long Tall Texan」や、人気のノヴェルティー・ヒット曲「Monster Mash」を取り上げ、バンドの楽しい一面を見つけている。ちなみに生まれながらの完璧主義者だったビーチ・ボーイズの創設者ブライアン・ウィルソンは、幾つかの曲で、気に入らないオルガン・ラインの削除といったスタジオ処理を行なっている。

 

45. ラッシュ『Exit… Stage Left』(1981)

『Exit… Stage Left』は、スコットランドとカナダでレコーディングされ、編集とミキシングはフランスで、と世界中で制作された。ラッシュの2枚目のライヴ盤に当たる本作は、彼等のプログレッシヴ・ロックに対する音楽的信念の再確認であり(“変わったのは我々ではなく、他のみんなだ!”とライナー・ノーツには記されている)、ファンお気に入りの一枚だ。

アルバムを聴くと「Closer To The Heart」や「Red Barchetta」、「Beneath, Between And Behind」や「Jacob’s Ladder」といったハイライト・ナンバーに合わせて歌うオーディエンスの声が聴こえ、アレックス・ライフソンのギターはゲディー・リーのベース・トーンと調和し、ニール・パートが世界最高級のドラマーとして知られている所以を再認識できる。アルバムはイギリスで6位を記録し、アメリカで100万枚を売り上げプラチナ・ディスクとして認定された。

44. アリソン・クラウス・アンド・ユニオン・ステーション『Live』(2002)

アリソン・クラウスは熟達したバイオリン奏者であると共に、現代カントリー・ミュージック界屈指の甘い声の持ち主だ。ケンタッキー州の“ルイビル・パレス”でレコーディングされたクラウスの2枚組のライヴ・アルバムには、彼女とそのバンド(ドブロの名手ジェリー・ダグラス等)の演奏が捉えられている。

演奏された曲には爽快感があり、コーエン兄弟による映画『オー・ブラザー!』からの「Down to the River to Pray」と「I Am a Man of Constant Sorrow」(歌っているのはマンドリン奏者ダン・ティミンスキー)のライヴ・ヴァージョンも収録されている。

43. ジェリー・リー・ルイス『Live at the Star Club Hamburg』(1964)

1935年生まれのジェリー・リー・ルイスは、ロックン・ロールの生みの親のひとりとして知られるシンガー兼ピアニストだ。1964年に、ドイツ・ハンブルグの“スター・クラブ”でレコーディングされたこのライヴ・アルバムは、“ザ・キラー”として知られるようになる男の、生き生きとした様子を思い出させてくれる実に見事な一枚となった。

彼が「Great Balls of Fire」「Whole Lotta Shakin’ Going On」「Good Golly Miss Molly」といった力漲るピアノ・パートで知られる強力なロック・ソングの躍動感溢れるヴァージョンを披露する瞬間、観客は熱狂的な盛り上がりを見せる。フィリップス・レコードからドイツ盤としてリリースされたアルバムには、パフォーマンスの達人が最高に輝いている瞬間が捉えられ、観客を虜にするロックン・ロールが音楽シーンの風景を変えた理由が分かるような、そんなショウが収められている。

 

42. モーターヘッド『No Sleep ’Til Hammersmith』(1981)

へヴィ・メタルを代表する最高のライヴ・アルバム『No Sleep ’Til Hammersmith』は、レミー・キルミスター(シンガー&ベーシスト)、“ファスト”エディ・クラーク(ギター)、そしてフィル・テイラー(ドラマー)のダイナミックな様子を捉えた一作だ。

『Overkill: The Untold Story Of Motörhead』の中で、伝記作家ジョエル・マクアイヴァーは『No Sleep ’Til Hammersmith』を、“レミー/クラーク/フィルシーというラインナップ全盛期の頃”と表現。遊び心のあるアルバム・タイトルが付けられた本作は(レコーディングされたのはノーフォーク、リーズ、ニューキャッスル、そしてベルファスト。バンドはこのツアーでロンドンの“ハマースミス・オデオン”ではプレイしていない)、スピード感があり熱狂的で力強いプレイが詰まったモーターヘッドらしい内容になっている。

ハイライトは力に駆り立てられた「Bomber」と「We Are (The Road Crew)」、そして激しい「Capricorn」を始める前には、“これはスロウな曲だから、みんなゆったりしてくれ”というレミーの粋なひと言がある。

 

41. 『Woodstock: Music From The Original Soundtrack And More』(1970)

1969年に行われたウッドストック・フェスティバルのパフォーマンスを録音するという厄介な仕事を引き受けたエンジニアのエディ・クレイマーは、複数の出演者を相手にし、その場で作られるセットリスト、技術的なミス、そして背後から聞こえる大観衆の騒音を相手にするという困難な状況を見事に乗り越え、音楽史上最も象徴的なフェスティヴァルのひとつを捉えることに成功した。

ウッドストックは1960年代を特徴づけた音楽現象であり、3枚組アルバム『Woodstock: Music from the Original Soundtrack and More』には、大観衆からフィードバックされたエネルギーと活気に刺激されたジョニー・ウィンター、キャンド・ヒート、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ザ・ジェファーソン・エアプレイン、サンタナ、ジョーン・バエズ、カントリー・ジョー・マクドナルド、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング、そしてジミ・ヘンドリックス等の卓越したパフォーマンスがフィーチャーされている。

 

40. LCDサウンドシステム『The Long Goodbye: LCD Soundsystem Live at Madison Square Garden』(2014)

ダンス・ミュージック、エレクトロニック、ポスト・パンクの巧妙な融合に皮肉的な歌詞を組み合わせたLCDサウンドシステムは、21世紀のアメリカを代表する最も評価された影響力のあるバンドとなった。2011年に、ニューヨークの“マディソン・スクエア・ガーデン”で行なわれたフェアウェル・ギグは壮大なものだった。

計3時間、ヴァイナル・レコード5枚分のライヴセットを、フロントマンのジェームス・マーフィーは“完璧な最後のダイヴ”と表現。収録曲は「Dance Yourself Clean」「New York」「I Love You But You’re Bringing Me Down」の心奪われるヴァージョンや哀愁を帯びた「All My Friends」等々計28曲が収録されている。『The Long Goodbye』は独創性に富んだ現代のバンドが残した絶品だ。

39. ボブ・シーガー・アンド・ザ・シルヴァー・ブレット・バンド『Live Bullet』(1976)

デトロイトは世界屈指の音楽の街だ。“モータウン”の本拠地であると共に、ボブ・シーガー等のロックスターを輩出した地としても知られる。1976年、彼は街で名高い会場“コーボー・ホール”でプレイしたが、キャピタル・レコードは絶頂期を迎えたこのミュージシャンと、上質なシルヴァー・ブレット・バンドが熱狂的な大観衆を前にプレイする瞬間を捉えた。

2枚組のアルバムは雰囲気があり、「Nutbush City Limits」「Travelin’ Man」「Beautiful Loser」等のライヴ・ヴァージョンは、デトロイトのラジオ局の定番となった。シーガーはあのステージをライヴ・アルバムに収めるのに懐疑的だったと認めているが、彼のパフォーマンスは魅力的で「Heavy Music」には、一緒に歌うよう観客に呼びかける感動的な掛け合いの瞬間が登場する。

 

38. サム・クック『Live at the Harlem Square Club, 1963』(1963)

サム・クックが1963年に発売したライヴ・アルバムは、同年1月、“ザ・ハーレム・スクエア・クラブ”という名のマイアミの小さなナイトクラブでレコーディングされ、そこでは沸き立つような喜びがノンストップで続いている。ソウル・シンガーのクックは、情熱的な観客の前で「Cupid」「Twistin’ the Night Away」「Chain Gang」といったヒット曲を焼けつくような曲に変えていく中、ギタリストのコーネル・デュプリーやドラマーのジューン・ガードナー等から成る7人編成のバック・バンドが、ワクワクするような演奏で彼をサポートしている。

幼い頃からゴスペルを歌っていたクックの声は実に見事だ。悲しげな「Bring It On Home To Me」のロング・ヴァージョンには「You Send Me」のセクションがあり、最高に楽しい内容になっている。クックはこのコンサートの約2年後に銃弾を受けて33歳の若さで死去。1985年まで発表されることのなかったこの素晴らしいライヴ・コンサートは、ソウルの巨匠のひとりの実力を思い起こすのに相応しい一作だ。

 

37. エミルー・ハリス『At the Ryman』(1992)

20世紀半ば、“グランド・オール・オプリ”主催で毎週ライヴ・パフォーマンスやラジオ放送が行なわれていたナッシュヴィルのライヴ会場“ライマン・オーディトリアム”は、カントリー・ミュージック界で最も重要な建造物のひとつとして知られる。

エミルー・ハリスのライヴ・アルバム『At the Ryman』は、1991年に、ナッシュ・ランブラーズ・バンドとレコーディングされた全アコースティック作品であり、エミルーにグラミー賞“最優秀カントリー・デュオ/グループ・パフォーマンス賞”をもたらし、ライマンがかつての栄光を取り戻すきっかけとなった。ハリスの曲の解釈は見事で、「Half As Much」や「Cattle Call」等カントリーの名作と同様に、ブルース・スプリングスティーンの「Mansion on the Hill」といった現代の名曲のヴァージョンも見事だ。その上、この素晴らしいカントリー・ミュージック・コンサートには、ブルーグラスの父ビル・モンローがゲストとして登場する。

 

36. エルヴィス・プレスリー『Elvis』(1968)

エルヴィス・プレスリーのライヴ・アルバム『Elvis』は、NBCテレビ特番番組『Singer Presents… Elvis』(一般に『‘68 Comeback Special』と呼ばれている)から取られたライヴ・ヴァージョンだ。“キング・オヴ・ロックンロール”であるエルヴィスが、プロデューサーのボーンズ・ハウに“僕の本当に得意なことを、みんなに知って欲しいんだよ”と話していた時期に誕生したのだ。

このアルバムでは仕事に陰りが見え始めていた当時のプレスリーが、1950年代からの音楽仲間達の助けを借りながら、非常に生き生きとした様子を見せている。ドラマーのDJフォンタナと、ギタリストのスコッティー・ムーアが1955年の歴史的サン・レコード・セッションで使用した特注エコーソニック・アンプを携えながら、プレスリーの長所を引き出した本作について、ムーアは“ファンタスティックなジャム・セッション”と評している。

黒レザーのライダーズ・ジャケットとズボンに身を包み、整えられた黒髪ともみ上げのカリスマ性あるプレスリーは、観客を前にリラックスしたムードで「Hound Dog」「Jailhouse Rock」「Heartbreak Hotel」「Are You Lonesome Tonight?」等々、数多くの印象的な曲をこなしていく。フル・コンサート・ヴァージョンには、レイ・チャールズの名曲「I’ve Got a Woman」に取り組むプレスリーのレアな瞬間等も収録されている。史上最高のカムバック・コンサートのひとつだろう。

35. チープ・トリック『Cheap Trick At Budokan』(1978)

『Cheap Trick at Budokan』は、シカゴ出身の4人組チープ・トリックが成功を収めるきっかけとなり、70年代を代表するベスト・ライヴ・バンドという地位を確立した作品だ。コンサートは東京の日本武道館でレコーディングされ、「Hello There」等、ギタリストのリック・ニールセンが手掛けた7曲がフィーチャーされている。

チープ・トリックは日本で非常に人気が高く、バンドのレーベルが『At Budokan』に新曲を入れることを要求。そうして加えられたのが、後にヒットする「Need Your Love」(ニールセンとベーシストのトム・ピーターソンの共作)や、シンガーのロビン・ザンダーとドラマーのバン・E・カルロスが、観客と同じくらい楽しそうにしている、ニュー・オリンズの昔の名曲「Ain’t That A Shame」のカヴァーだ。

34. ジミ・ヘンドリックス『Band of Gypsys』(1970)

『Band of Gypsys』は、1970年1月1日に、ニューヨーク・シティの“フィルモア・イースト”でレコーディングされた最高に魅力的で斬新なジミ・ヘンドリックスを捉らえた作品だ。この8か月後、僅か27歳で亡くなったギタリスト兼シンガーの彼をサポートしていたのは、新しく結成した“バンド・オヴ・ジプシーズ”(ベーシストのビリー・コックス、ドラマーのバディ・マイルス)であり、ヘンドリックスは常に個性的なライヴ・パフォーマーだった。

彼はまたその華やかなソロの中で、ゾクゾクするようなド派手なギター・スキルを見せつけ、キャピトルからリリースされたこのライヴ・アルバムは、ブルージーでサイケデリックな何でもありの偉大な作品となった。また「Who Knows」や「Power to Love」といったナンバーでは、ヘンドリックスの作曲家としての腕も堪能できる。

 

33. デューク・エリントン『Ellington at Newport』(1956)

ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル及びそのフォーク版の創設者であるジャズ・プロモーターのジョージ・ウェインは、1956年の同フェスでのデューク・エリントンのパフォーマンスを、“キャリア中で最も素晴らしいパフォーマンスだ。ジャズの過去と未来を全て体現していた”と評している。

コンサートでは「Sophisticated Lady」「Black and Tan Fantasy」「Mood Indigo」等々が披露され、エリントンが手掛けた作品の生き生きとしたヴァージョンや、この名バンドリーダーの魅力的なピアノ演奏がフィーチャーされている。コンサートには更に、アルト・サクソフォン奏者ジョニー・ホッジスや、テノール・サクソフォン奏者ポール・ゴンザルヴェス等々、ジャズ史に残る至高のソロリスト達の演奏も登場する。ノスタルジアと、過ぎ去りし輝かしい夏の夜の素敵な想い出が詰まったアルバムだ。

 

32. ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド『1969: The Velvet Underground Live』(1969)

ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが絶好調な姿を見せた作品だ。1969年のバンド再結成時のステージには、ニコ、アンディ・ウォーホル、そしてジョン・ケイルは欠けていたが、スターリング・モリソン、ルー・リード、モーリン・タッカー、ダグ・ユールがフィーチャーされたダイナミックでタイトなユニットだった。

ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは1969年当時コンスタントにツアーしており、よく練り上げられたこのライヴ・アルバムは、ダラスの“エンド・オヴ・コール・アヴェニュー・クラブ”やサンフランシスコの“マトリックス”等々、複数の会場でレコーディングされたものだった。

アルバムには「I’m Waiting For the Man」「Femme Fatale」「I’ll Be Your Mirror」の激しいヴァージョンが収録された。ルー・リードは「Rock & Roll」を作曲し、後に見事なソロ・ライヴ・アルバム『Rock ‘n’ Roll Animal』(1974)用に自身のヴァージョンをレコーディングしている。リードはまた「What Goes On」も書き、『1969: The Velvet Underground Live』の9分ヴァージョンには、ダグ・ユールの見事なオルガン・ソロが収録されている。このライヴ盤は最高級のコンサート・アルバムであり、1960年代を代表する伝説のバンドを知るのに最適な入門編だ。

 

31. MC5『Kick Out The Jams』(1969)

『Kick Out the Jams』は、アメリカのプロトパンク・バンドMC5のデビュー・アルバムだ。エレクトラ・レコードのA&Rチーフ、ダニー・フィールズがバンドのエネルギーと興奮をレコードに捉えるには、これが最適な方法だと考えた為に、彼らのライヴがレコーディングされることになった。

アルバムは1968年、デトロイトの“グランド・ボールルーム”で2夜に渡りレコーディングされた。リード・ギターのウェイン・クレイマーとヴォーカルのロビー・タイナーがフィーチャーされた本作は、ビルボード・アルバム・チャート30位を記録。ハイライトは「Ramblin’ Rose」と「I Want You Right Now」の印象的なヴァージョン等。後者はザ・トロッグスのサウンドを彷彿させる。

 

30. レッド・ツェッペリン『The Song Remains The Same』(1976)

1973年、レッド・ツェッペリンのツアー中に行なわれた“マディソン・スクエア・ガーデン”での公演をテープに収めた3年後、ギタリストのジミー・ペイジはスタジオに入り、ライヴ盤『The Song Remains The Same』収録曲のミキシングを行なった。

このアルバムには「Rock And Roll」「Heartbreaker」「Whole Lotta Love」のパワフルなヴァージョンを収録。「Dazed And Confused」の29分ヴァージョンでは、ジョン・ボーナムのパーカッショニストとしての腕前が光る。更にペイジとプラントが手掛けた、今も変わらず20世紀ロックを代表する大作「Stairway To Heaven」の見事なヴァージョンも収録されている。

29. B.B.キング『Live in Cook County Jail』(1971)

刑務所でライヴ・アルバムを録音した先駆者といえばジョニー・キャッシュだが、その彼を手本にしたのがブルースの巨匠B.B.キングだ。彼は1970年9月に、シカゴの“クック・カウンティ刑務所”に向かい、この傑作『Live in Cook County Jail』をレコーディングした。この作品は彼の『Live At The Regal』と並ぶライヴ盤であり、「Every Day I Have the Blues」や「Sweet Sixteen」といった名作の素晴らしいパフォーマンスが収録されている。

「How Blue Can You Get?」のオープニングを飾るキングのギターは人の心を掴んで離さず、他には真似の出来ないようなオーディエンスとの気さくな会話が、コンサートをひとつにまとめ上げている。キングの歌は絶好調で、アルバムには見事なナンバー「The Thrill Is Gone」の、恐らくはこれまでで最も素晴らしいライヴ・ヴァージョンも収録されている。ジョン・ブラウニング(トランペット)、ルイス・ヒューバート(テノール・サクソフォン)、そしてブッカー・ウォーカー(アルト・サクソフォン)の感動的なホルンが、オリジナル・ヴァージョンのストリングス・パートを担っている。キングの最も熱い瞬間だ。

28. ザ・バンド『The Last Waltz』(1978)

マーティン・スコセッシ監督による『The Last Waltz』は、完璧に撮影された史上最高のロック・コンサートの一つであり、過去16年間ツアーしてきた(しばしばボブ・ディランと)ロビー・ロバートソン率いる才能に溢れたバンド、ザ・バンドの最後の姿を後世に残す映像。そして2枚組アルバムだ。

コンサートが開催されたのは、サンフランシスコの“ウィンターランド・ボールルーム”。素晴らしいミュージシャン達によって支えられたこの『The Last Waltz』は、ロック史上最高のライヴ・アルバムとしての地位を確立した。ディランの歌に加え、ジョニ・ミッチェル、マディ・ウォーターズも登場し、賑やかなヴァン・モリソンが「Caravan」を歌いながら、実に不思議なハイキック・ダンスを披露する場面もあり。

27. ヴァン・モリソン『It’s Too Late to Stop Now』(1974)

ヴァン・モリソンは、最高級のバンド(ブルース、ジャズ、クラシックのミュージシャン達が見事に融合した、11人編成の“カレドニア・ソウル・オーケストラ”)とツアーしていた当時、最も勢いがあった。そしてそのツアー中に2枚組のライヴ・アルバム『It’s Too Late to Stop Now』が録音された。

ベルファスト生まれのモリソンは予測不可能なステージ・パフォーマーだが、ロンドン、ロサンゼルス、そしてサンタモニカのコンサートを捉えたこの作品のショウには、感情を揺さぶられる。ハイライトは、自身が書いた曲「Saint Dominic’s Preview」「Listen to the Lion」(途中でアルバム・タイトル“it’s too late to stop now”と叫ぶ)「Cyprus Avenue」のエクステンデッド・インプロヴァイズド・ヴァージョン。そしてサム・クックの「Bring it On Home to Me」やソニー・ボーイ・ウィリアムソンの「Help Me」等、彼が若い頃に影響を受けた曲の素晴らしいヴァージョンだ。

26. ルイ・アームストロング『Satchmo At Symphony Hall』(1947)

1947年にボストンの“シンフォニー・ホール”でレコーディングされた、ルイ・アームストロング・アンド・ザ・オールスターズのコンサートを収めたこのアルバムは、デッカ・レコードが1951年の夏に初リリースし、あっという間にベストセラーになった。お勧めのベスト・ヴァージョンは、2012年のリイシュー版で、こちらにはオリジナルでは耳にすることのなかった音源が30分以上にも渡り収録されている。

“サッチモ”の愛称で知られる、史上稀にみる偉大なアメリカ人ミュージシャンのひとり、トランペッター/シンガーのアームストロングと共演するのは、魅力溢れるオールスターズの面々(ヴォーカリスト/トロンボニストのジャック・ティーガーデン、クラリニストのバーニー・ビガード、ピアニストのディック・キャリー、ベーシストのアーヴェル・ショウ、ドラマーの“ビッグ”シド・カトレット、シンガーのヴェルマ・ミドルトン)。

この作品は名曲「When It’s Sleepy Time Down South」「Tea for Two」や、人種差別反対を歌った曲「(What Did I Do To Be So) Black and Blue」のいつまでも耳に残るヴァージョン等が演奏される賑やかなミュージカル・ショウだ。ルイ・アームストロングのような人物は、今後現われることはないだろう。この感動的なコンサート・ショウに触れると、その理由が分かる。

25. ジョニ・ミッチェル『Miles of Aisles』(1974)

ジョニ・ミッチェルは歌詞に対する見識と、人間としての体験を捉える能力によって、現代を代表するシンガーソングライターの地位を確立した。『Miles of Aisles』で、このカナダ人シンガーは、時には自らのギターかピアノのみで、そして時にはトム・スコット(ウッドウィンド&リード)、マックス・ベネット(ベース)、ジョン・ゲラン(ドラムス&パーカッション)、ロビン・フォード(リード・ギター)、ラリー・ナッシュ(エレクトリック・ピアノ)から成る、良質でジャジーなバンド“L.A.エクスプレス”の直感的なサポートを得ながら、18トラック(内16曲は過去にレコーディングしたアルバム収録曲を再構築したもの)を演奏する。

カリフォルニアの“ユニヴァーサル・アンフィシアター”にて透明度の高い音でレコーディングされた曲は、「You Turn Me On, I’m A Radio」「Big Yellow Taxi」「Cold Blue Steel and Sweet Fire」「Blue」「Love Or Money」等の高尚なヴァージョン。ミッチェルはその美しく繊細な歌詞を、至福のファルセットで披露。『Miles of Aisles』は、コンサート・パフォーマーとしてのミッチェルの新たな幕開けを告げた作品。

 

24. サイモン&ガーファンクル『The Concert in Central Park』(1982)

素晴らしいライヴ・コンサートの要は、時としてそこの雰囲気だったりする。1981年9月、フォーク・デュオのサイモン&ガーファンクルが再結成し、ニューヨーク・シティのセントラル・パークにある“グレート・ローン”にて50万人以上もの観客の前でレコーディングされた彼らの初ライヴ・アルバムには、そうした瞬間がたくさん収められている。

アート・ガーファンクルとポール・サイモンは、変わらず見事な歌を披露。曲間のリフは快活で高揚感があり、時には尖がっている。問題を抱えた古い友人達が、10年以上ぶりに再会し、「Mrs Robinson」「Homeward Bound」「America」「Still Crazy After All These Years」「The Boxer」「Bridge Over Troubled Water」「The Sound of Silence」等々、現代ポップ・ミュージック不滅のナンバーの見事なオンステージ・ヴァージョンを披露。デュオの実に素晴らしいヴォーカル・ハーモニーと魅力的な曲は、記憶に残る音楽の夕べを生み出した。

23. U2『Under A Blood Red Sky』(1983)

頂点へと上り詰めようとするバンドを捉えた『Under A Blood Red Sky: Live At Red Rocks』は、U2の数十年に渡るキャリア中、最も画期的なコンサートのひとつとして高い評価を得ている。ビデオ版もリリースされたこのコンサートは、1983年6月、コロラド州の美しい“レッド・ロックス・アンフィシアター”でレコーディングされた。

コンサートはゲリラ豪雨の後に行なわれたが、ぬかるんだ状態の中、シンガーのボノとバンド(ギターのジ・エッジ、ベースのアダム・クレイトン、ドラムスのラリー・マレン)は、堂々としたライヴをやってのけた。特筆すべきは「Sunday Bloody Sunday」の歴史に残るヴァージョン。ボノが曲中で平和の白旗を持つ映像は、現代ロック史上最もアイコニックなイメージのひとつだろう。

22. アレサ・フランクリン『Aretha Live at Fillmore West』(1971)

サンフランシスコに建つ歴史的会場“フィルモア・ウェスト・コンサート・ホール”は、1971年7月4日、アレサ・フランクリンの絶賛されたコンサートの僅か数か月後、音楽ヴェニューとしての幕を閉じた。幸いなことに、フランクリンのショウは後世に残す為にレコーディングされ、シンガーの気品と力強さの永遠の証しであり続けている。

オリジナル・アルバムのオープニング・サイドは全てカヴァー曲で構成され、オーティス・レディングの「Respect」のような早い曲を楽しそうにやったり、ポール・サイモンの「Bridge Over Troubled Water」をゆっくりとソウルフルに表現したりと、当時29歳だったフランクリンの巧みなこなし方は見事だ。またフランクリンは才能のあるピアニストでもあり、それはザ・ビートルズの「Eleanor Rigby」の非常に美しいヴァージョンで堪能できる。

彼女を伴奏するのは、サクソフォンのキング・カーティス、ドラムスのバーナード・パーディ、キーボードのビリー・プレストンから成る一流バンド。フランクリンが最高にエモーショナルに聴こえる『Live at Fillmore West』は、今も昔も必聴ソウル・アルバムだ。

21. グレイトフル・デッド『Live/Dead』(1969)

グレイトフル・デッドは、60年代で最も人気のあるツアー・バンドのひとつだったが、彼等の1969年のショウを収めた2枚組のライヴ・アルバムを聴けばその理由が分かる。史上最高のベスト・ライヴ・アルバムは多数存在するが、『Live/Dead』についてドラマーのビル・クルーツマンはこう語っている。

「僕達にとって初のライヴ・リリースであり、現在でも僕達のアルバム中で最も愛されている作品のひとつだ。あの作品の魅力と言ったら、例えば「Dark Star」や「The Eleven」といった曲の‘その場にいなかったら分からない’ような凄いライヴ・ヴァージョンを、みんなのリビング・ルームに持ち込んだことだ」

アルバムのアートワークはロバート・ドノヴァン・トーマスが担当し、収録された音源では、オルガン奏者トム・コンスタンティン等々バンド・メンバーがその才能を披露している。ここには「Feedback」等、グレイトフル・デッドのオリジナル・ナンバーの感動的なヴァージョンの他、ジェリー・ガルシアが哀愁を帯びた優美さで歌うザ・レヴァランド・ゲイリー・デイヴィスの名曲「Death Don’t Have No Mercy」の感動的なブルース・カヴァーも収められている。

20. アイアン・メイデン『Iron Maiden: Live After Death』(1985)

アイアン・メイデンの1985年ライヴ・アルバムは、デレク・リッグスによるジャケット写真までもが、文句なしの傑作だ。言うまでもなく、その音楽もまた際立っている。

セットリストは、アイアン・メイデンの最初のスタジオ・アルバム5枚から選りすぐった曲で構成され、ロンドンの“ハマースミス・オデオン”でその幾つかの曲がレコーディングされた時、ブルース・ディッキンソンは風邪で苦しんでいたが、それでも見事な歌いっぷりを披露しており、ベーシストのスティーヴ・ハリスを含むメンバー達もまた絶好調だ。

彼等はライヴでも「Aces High」のイントロに、ウィンソン・チャーチルの有名なスピーチ、“我々は海岸で戦うのだ”を差し込むことまでしている。ギタリストのエイドリアン・スミスとデイヴ・マーレイが、ドラマーのニコ・マクブレインにバックアップされながらプレイする「The Number Of The Beast」の豪華なヴァージョンは必聴もの。これぞへヴィ・メタル・アルバムの最高傑作。

19. クイーン『Live at Wembley ’86』(1986)

フレディ・マーキュリーは音楽界を代表する天性の才能を持ったショウマンのひとりだった。フレディは、1986年7月の土曜の夜、ロンドンの旧“ウェンブリー・サッカー・スタジアム”で、“マジック・ツアー”の一環として行なわれたライヴで、カリスマ的パフォーマンスを披露した。ギタリストのブライアン・メイはこう語っている。

「あの日のフレディは素晴らしく、我々が頂点を極めた瞬間だった。みんな素晴らしかったし、フレディは本当に輝いていた。彼はみんなを結ぶ役割を見事に果たしながら、スタジアム全体を相手にしていた」

10万人もの観客もまた、このコンサートを素晴らしいものにする為に、自分達の役目を果たした。例えば、ロジャー・テイラーの喜びに満ちた曲「Radio Ga Ga」の、曲に合わせて拍手し歌うヴァージョンでは、満員のスタジアムのオーディエンスは、上半身裸のフレディにリードされながら、声を揃えて歌いながら上機嫌だった。アリーナの舞台を得意とするバンドだったクイーンは、あの晴れ渡った夏の日、いつも以上にその能力を発揮していた。

18. レーナード・スキナード『One More From The Road』(1976)

『One More From The Road』は、レーナード・スキナードの最初のライヴ・アルバムであり、リード・シンガー兼ソングライターのロニー・ヴァン・ザント及び、スティーヴとキャシー・ゲインズが、飛行機墜落事故で亡くなる1年前にリリースされた。

ヴァン・サントは「Searching」と「The Needle And The Spoon」を優しく歌い上げ、ロック、ブルース、カントリー等に影響を受けたバンドは、ジミー・ロジャーズの名曲「T For Texas」のパワフルなヴァージョンを披露。スティーヴ・ゲインズ、アレン・コリンズ、ゲイリー・ロッシントンのギター・ワークは最初から最後まで素晴らしく、レーナード・スキナードはロバート・ジョンソンへのトリビュートとして、「Crossroads」のふたつの見事なヴァージョンを披露している。

17. ディープ・パープル『Made In Japan』(1972)

1972年8月、大阪と東京で行なわれたコンサート3日分のレコーディングは、2枚組のライヴ・アルバム『Made In Japan』に収録され、イアン・ギラン(ヴォーカル)、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(オルガン)、ロジャー・グローヴァー(ベース)、そしてイアン・ペイス(ドラムス)の面々の、かつてないほど激しい姿が捉えられている。アルバムには画期的なナンバー「Smoke On The Water」等、『Machine Head』収録曲が数多く散りばめられている。アルバム全体を占めるのは「Space Truckin’」の20分に及ぶ凄まじいヴァージョン。

 

16. グランド・ファンク・レイルロード『Live Album』(1970)

グランド・ファンク・レイルロードは、1969年の“アトランタ・ポップ・フェスティヴァル”での絶叫する10万人もの若者達の前でデビューを果たし、当時のロック批評家からは不評だったにも拘らず、後にこの時代屈指のライヴ・バンドとしてその名を馳せた。

1970年11月にキャピタル・レコードからリリースされた、最初のライヴ・アルバムには、マーク・ファーナーのワイルドな歌いっぷり、メル・サッチャーの安定したベース・グルーヴ、そしてドン・ブリューワーのパワフルなドラミングといった彼等の非常に刺激的なステージ・ワークが捉えられている。

“グランド・ファンク”として知られていた彼等は、ラウドでダイナミックなバンドだった。人気ナンバー「Mean Mistreater」を含む曲の大多数はファーマーが書き、アルバム収録曲は、ジャクソンヴィル、オーランド、そしてウェスト・パーム・ビーチを廻るタイトなツアー中のパフォーマンスから集められた。

 

15. ニール・ヤング・アンド・クレイジー・ホース『Live Rust』(1979)

1978年10月に、サンフランシスコの“カウ・パレス”でレコーディングされた『Live Rust』は、当初はニール・ヤングのコンサート・ドキュメンタリー映画『Rust Never Sleeps』のサウンドトラックだった。

ヤングのコンサート・レコーディングは過去にもあったが、『Live Rust』は彼が制作したライヴ・アルバム中で間違いなくトップクラスの作品だ。ヤングはギターとハーモニカを巧みにプレイしながら「Sugar Mountain」「I Am A Child」「Comes A Time」といった内省的なナンバーを間断なく披露した後に、ピアノへと移動し魅力的なナンバー「After The Gold Rush」の心に強く残るヴァージョンを披露し、その多才ぶりを見せ、「Powderfinger」の非常に美しいヴァージョンも収められている。音楽の達人、絶好調の瞬間を捉えた一作だ。

14. シン・リジィ『Live And Dangerous』(1978)

アルバム『Bad Reputation』が1977年にUKトップ10チャートで4位を記録した後、彼らが次に行うのはライヴ・アルバムだとシン・リジィは決意した。コンサートを得意とするバンドの賢明な決定だろう。

ギタリストとフィル・ライノットによって、アルバムのプロデューサーに指名されたトニー・ヴィスコンティは、パリの“スタジオ・デ・ダム”でファイナル・ミックスが行ない、より均一なサウンドを得る為にオーバーダビングを施した。その結果生まれた『Live And Dangerous』もまた大ヒットし、U2は初期に影響を受けたものとしてこのアルバムを挙げている。ゲスト・ミュージシャンは、「Baby Drives Me Crazy」でハーモニカを吹き、“ブルージー・ルイス”としてクレジットされている、ヒューイ・ルイス等だ。

 

13. ピーター・フランプトン『Frampton Comes Alive!』(1976)

ギタリスト兼シンガーのピーター・フランプトンはライヴ盤『Frampton Comes Alive!』で“ここでちょっとファンキーにいくぞ”と言いながら「Doobie Wah」を紹介する。同アルバムは1976年のリリース後、97週チャートにランクインし続けたこの時代を代表するベスト・ライヴ・アルバムであり、『Rolling Stone』誌の人気投票で“アルバム・オヴ・ザ・イヤー”にも選ばれた。

当時26歳のフランプトンのバックを務めるのは、ボブ・メイヨー(リズム・ギター、ピアノ、フェンダー・ローズ、エレクトリック・ピアノ、ハモンド・オルガン)、スタンリー・シェルドン(ベース)、ジョン・シオモス(ドラムス)だ。アルバムからは「Show Me The Way」「Baby, I Love Your Way」「Do You Feel Like We Do」のヒット・シングルが誕生し、ザ・ローリング・ストーンズの名曲「Jumpin’ Jack Flash」の心奮い立つ7分ヴァージョンも収録されている。

12. フランク・シナトラ&カウント・ベイシー『Sinatra at The Sands』(1966)

ライヴ盤『Sinatra at The Sands』の指揮を執り、才気あふれるアレンジメントを提供したクインシー・ジョーンズはこう振り返っている。

「当時のフランク・シナトラは絶頂期にあり、僕は彼の音楽船である世界最高のバンドの舵を取っていた」

アルバムはラスベガスの“ザ・サンズ・ホテル・アンド・カジノ”の“コパ・ルーム・スタジオ”で、7夜に渡り約600人の前でレコーディングされた。ジョーンズが絶賛したバック・バンドは、ハード・スウィンギングで華やかでリズミカルなカウント・ベイシーが率いていた。

彼のジャズ・スター軍団は「Fly Me to the Moon」「One O’Clock Jump」「Come Fly with Me」等の名曲で、シナトラの声が滑らかに流れるような完璧なバッキングを提供した。ベイシーのピアノ演奏、ハリー“スイーツ”エディソンの甘いトランペットの音色、エディ“ロックジョウ”デイヴィスの耳に心地よいテノール・サックス、そしてシナトラの豊かなヴォーカルは、音楽的に完璧なコンビネーションだった。シナトラは人を惹きつけるライヴ・パフォーマーであり、このサンズ・ホテルのショウはシナトラ・ライヴ・アルバムの決定版として、偉大な音楽家達が出会うことで何が起こり得るかをまざまざと思い起こさせてくれる作品だ。

 

11. ボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズ『Live!』(1975)

「No Woman, No Cry」の『Live!』ヴァージョンは、すぐさまこの曲の決定版になった。それだけでこの収録アルバムは、ベスト・ライヴ・アルバムのひとつとして相応しい作品だ。またこの曲は1975年にシングルとしてリリースされ、UKチャートの22位まで上昇してボブ・マーリー初のヒット作にもなった。その後この曲はマーリーの死後の1981年に再リリースされ、イギリスで8位を記録。アメリカでチャートインすることは一度もなかったが、後に『Rolling Stone』誌が選ぶ“オールタイム・グレイティスト・ソング”で37位にランクされている。

現代ポップ・ミュージックの屈指のライヴ・アルバム『Live!』は、1975年7月18日、ロンドンの“ライシアム・ボールルーム”で2回行なわれたソールド・アウト・ライヴの、2回目にレコーディングされ、同年12月5日にイギリスでリリースされた。

ロンドンを訪れた“ザ・ウェイラーズ”のラインアップは、長年リズム・セクションを務めていたアストン・バレット(ベース)&カールトン・バレット(ドラムス)に加え、アル・アンダーソン(リード・ギター)、タイロン・ダウニー(キーボード)、アルヴィン・パターソン(パーカッション)、そしてリタ・マーレー&マルシア・グリフィスという豊かなヴォーカル・セクションだ。

このライヴ盤には「Trenchtown Rock」「Burnin’ And Lootin’」「I Shot The Sheriff」、そして「Get Up, Stand Up」の魅力あるヴァージョンも収録されている。スピリチュアルで素晴らしい音楽に溢れたアルバムだ。

10. ボブ・ディラン『The Bootleg Series Vol. 4: Bob Dylan Live 1966, The ‘Royal Albert Hall’ Concert』(1966)

典型的なボブ・ディラン作品をひとつ挙げるとしたら、1974年の『Before the Flood』になるが、彼最高のライヴ作品といったら、『The Bootleg Series Vol. 4: Bob Dylan Live 1966, The “Royal Albert Hall’ Concert』という洒落たタイトルのついた作品だろう。これは1998年にようやく正式リリースされた、音楽史上最も人気があった“アンダーグラウンド”レコーディングのひとつで、激動の時代の中にいた卓越したミュージシャンを捉えた一作だ。タイトルは“ロイヤル・アルバート・ホール”になっているが、アルバムが実際にレコーディングされたのは、マンチェスターの“フリー・トレイド・ホール”だった。

セットリストは2部に分けられ、コンサート前半ではディランがひとりでステージに立ちながら、全曲アコースティック・ナンバーを披露。コンサート後半では、ロビー・ロバートソンとディランがエレキ・ギター片手に、自らのバンド“ホークス”と共にセットをこなしている。

このフォークの伝統を破ったやり方はヤジを誘発し、ひとりのファンがディランに向かって“ユダ”と叫ぶ瞬間もある。しかしながら、最初のパートに登場する、余計なものを削ぎ落とした、ハーモニカによる「Mr. Tambourine」から、セカンド・パートの最後を飾る「Like a Rolling Stone」のエネルギッシュでエレクトリックなヴァージョンまで、ディランのどちらの側面も実に魅力的だろう。

 

9. ジョニー・キャッシュ『At Folsom Prison』(1968)

1968年1月13日にカリフォルニアの“フォルソム・ステート・プリズン”で行なわれた、ジョニー・キャッシュのコンサートが収められたこの作品は、カントリー・ミュージック屈指のライヴ・アルバムだ。「I Walk The Line」や「Ring Of Fire」等のヒット曲によって一躍有名になったキャッシュは人間の弱さを熟知し、囚人に対する共感をもっていたこともあり、見事なライヴ・パフォーマンスを見せた。

セットに含まれていたのは、1955年のヒット曲「Folsom Prison Blues」、伝統的な歌「Dark As A Dungeon」の情熱的なヴァージョンも披露。まっすぐでイカした傑作だ。

8. KISS『Alive!』(1975)

いくつかのコンサートから選り抜かれた音源で収録された『Alive!』(1975年秋発売)で、KISSはロックン・ロールのスーパースターになった。アルバムは全米アルバムチャート9位まで登り詰め、収録シングル曲「Rock And Roll All Nite」も全米シングルチャートで12位に輝いた。

ベースをかき鳴らす“ザ・デーモン”ことジーン・シモンズから、ギターを使っておどけるポール・スタンレーや、ピーター・クリスのドライヴするドラム・ワークまで、アルバムにはハード・ロックのファンが求めるものすべてが入っている。バンドの若々しいエネルギーは、聴く側を巻き込むほどだ。初期の傑作のガンガン響くエレクトリック・ヴァージョンもあり、間違いなく史上最高のベスト・ライヴ・アルバムのひとつだろう。

7. プリングスティーン & ザ・E ストリート・バンド『Live/1975-85』(1986)

ブルース・スプリングスティーンは、驚異的なパフォーマーであり、刺激的でも情熱的でもあり、優しくてエネルギーに満ち溢れている。この5枚組ライヴ・アルバム『Live/1975-85』には、その10年間に行なわれたパフォーマンスと、誉れ高き“ザ・イー・ストリート・バンド”(ギターにスティーヴ・ヴァン・ザント、サクソフォンに今は亡きクラレンス・クレモンズ等)にバックアップされた、最も勢いがあった頃の彼が収められている。

最もゾクゾクするのは、自ら書いた「Independence Day」「Thunder Road」「Racing In the Street」といった名曲、そしてトム・ウェイツの「Jersey Girl」とウディ・ガスリーの「This Land is Your Land」のセンセーショナルなカヴァー等。

アメリカ中のクラブ、コンサート・ホール、スタジアムでレコーディングされたこの回顧作品は、自国のロックの様式の重要要素をすべて繋げたシンガーであり、アメリカン・ミュージック界のレジェンドの素晴らしいキャリアをまとめ上げたものだ。自身が書いた1970年代アンセム、「Born to Run」のスプリングスティーン・ヴァージョンは特に圧巻。この高邁なアルバムは、ライヴ・ミュージックのもつ痛快なパワーを明らかにした作品である。

6. トーキング・ヘッズ『Stop Making Sense』(1984)

80年代ポップスで最も記憶に残るファッション哲学のひとつといえばデヴィッド・バーンの“ビッグスーツ”だが、トーキング・ヘッズによるショーマンシップは、彼等のライヴ・アルバム『Stop Making Sense』で聴くことができる。

ホルン・セクションと力強いバッキング・シンガー達に盛り立てられた「Psycho Killer」の刺激的なヴァージョンや、「Take Me To The River」は非常に魅力的。1984年発表の同コンサート映像及びサウンドトラック(全編デジタル・オーディオ技術を駆使し制作されたコンサート映画でもある)は、このエッジの効いた知的なバンドの楽しさに溢れている。

 

5. ジェイムス・ブラウン・アンド・ヒズ・フェイマス・フレイムス『Live At The Apollo』(1963)

1962年10月、ジェイムス・ブラウンはハーレムの“アポロ・シアター”でレコーディングしたこのライヴ・アルバム『Live At The Apollo』を当時所属していたキング・レコードから発表した。この作品はヴォーカル・トリオ“ザ・フェイマス・フレイムス”(ボビー・バード、ボビー・ベネット、ロイド・ストールワース)に支えられた、若く生き生きとしたジェイムス・ブラウンが捉えられている。

胸を締め付けられるような「Please, Please, Please」で8曲に及ぶ壮大なメドレーが始まり、ジミー・フォレストのブルース・ソング「Night Train」の情熱的なヴァージョンでアルバムは終わる。観客をすっかり掌中に収める能力を見せる、この夜のブラウンは絶好調だ。

4. ニルヴァーナ『MTV Unplugged In New York』(1994)

1993年終盤、MTVの『Unplugged』シリーズによって、アーティスト達がどんどんアコースティック・パフォーマンスに惹きつけられていた頃、ニルヴァーナは同ショウで行なわれたパフォーマンスを撮影した。それはアルバム『MTV Unplugged In New York』としてリリースされ、シングル1曲「About A Girl」が収録されていた。アルバムは5度のプラチナ・ディスクに認定され(500万枚)、グラミー賞“ベスト・オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞”を受賞した。

アルバムには「Dumb」と「All Apologies」の強力なヴァージョンやデヴィッド・ボウイの「The Man Who Sold The World」のカヴァーも収録。ヴァセリンズの「Jesus Wants Me For A Sunbeam」では、後にフー・ファイターズを結成したドラマーのデイヴ・グロールがバッキング・ヴォーカルを担当。同アルバムは、コバーンの才能と多芸ぶりを証明した一作だ。

3. ザ・ローリング・ストーンズ『Get Yer Ya-Ya’s Out!: The Rolling Stones In Concert』(1970)

『Get Yer Ya-Ya’s Out!』は、1969年11月に、バルティモアとニューヨークの“マディソン・スクエア・ガーデン”でレコーディングされ、UKチャートで1位に輝いた初ライヴ・アルバムだ。ふざけたチャーリー・ワッツのジャケット写真は、デイヴィッド・ベイリーが撮影。アルバム・タイトルは、妻の脚を撃った罪で刑務所に服役していたブルース・シンガー、ブラインド・ボーイ・フラーの曲から取られた。

バンド・メンバーたちは純粋に楽しんでおり、それは「Midnight Rambler」の大胆なヴァージョンでも堪能できる。キース・リチャーズのギター・ワークは非常に熱く、熱狂的なショウは「Honky Tonk Women」と「Street Fighting Man」の素敵なヴァージョンで幕を閉じる。また、デラックス・ヴァージョンには、B.B.キングやティナ・ターナーといったクラスのパフォーマー達による曲が収録されている。『Get Yer Ya-Ya’s Out!』は、偉大なローリング・ストーンズによる、史上最高のロック・アルバムのお手本的な作品だ。

2. ザ・オールマン・ブラザーズ・バンド『At Fillmore East』(1971)

ザ・オールマン・ブラザーズ・バンドの前身バンドであるセカンド・カミングとアワー・グラスが消滅後、デュアンとグレッグのオールマン兄弟は、彼らのファミリー・ネームを付けた偉大なバンドを結成し、1971年には、ニューヨークの有名な会場“フィルモア・イースト”で、ロック史上屈指のライヴ・アルバムをレコーディングした。

ヴォーカリストのグレッグ(オルガン&ピアノ担当)とギタリストのデュアンと共に参加するのは、ギタリストのディッキー・ベッツ、ハーモニカ奏者のトム・ドーセット、コンゴ奏者のジェイ・ヨハニー・ヨハンソン、ドラマーのブッチ・トラックス、パーカッション奏者のボビー・コールドウェル。

ブルースとロックの魅力的な融合は、ブラインド・ウィリー・マクテルの「Statesboro Blues」や、「Stormy Monday」「Trouble No More」「Done Somebody Wrong」といった名曲で著明だ。全編を通して、ギター、ドラムス、そしてハモンドB3オルガンによるこの感動的なブレンドが、オールマン独自の“ウォール・オブ・サウンド”を生み出している。『At Fillmore East』は、70年代初頭を代表する真の名作であり続ける。

1. ザ・フー『Live At Leeds』(1970)

60年代末までに、世界屈指のライヴ・ロック・バンドとしての名声を得たザ・フー。彼らによるライヴ盤『Live At Leeds』は、この“史上最高のライヴ・アルバム”のリストの1位を飾るに相応しい作品だ。

リリースの際にニューヨーク・タイムズが、“史上最高のライヴ・ロック・アルバム”と評したこの作品は、1970年2月に、英リーズの大学キャンパス内でレコーディングされ、ジャズ・ソングライターの巨匠モーズ・アリソン作「Young Man Blues」のヴァージョン等で大胆な選曲を聴かせている。

ザ・フーは、サニー・ボーイ・ウィリアムソンの「Eyesight To The Blind」もカヴァー。更に「I Can’t Explain」や「Happy Jack」といったバンド初期のヒット作や、「Tommy」のエクステンデッド・ヴァージョンも披露。終盤には「My Generation」と「Magic Bus」をフィーチャーしたメドレーもあり、ギタリストのピート・タウンゼントが、ベーシストのジョン・エントウィッスル&ドラマーのキース・ムーンと並び、その腕前を得意そうに見せている。シンガーのロジャー・ダルトリーはこう言っていた。

「ダビングした箇所はこの中には殆どない。付け足したものよりも取り除いたものの方が多い。観客もたくさん引っこ抜いた。聴いていて邪魔になったからさ」

Written By Martin Chilton



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