シェリル・クロウ『Threads』:24人の豪華なゲストを迎えたキャリア最後かつ過去最高傑作が持つ魅力

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シェリル・クロウのニューアルバム『Threads』は、発売に先行して公開されていた楽曲によって、錚々たるロックやルーツの大物アーティストたちをゲストに迎えた特別な作品になるであろうと噂されてきたが、2019年8月30日に米レーベル、Big Machineからリリースされた17曲を収録したこのアルバムは、彼女のキャリアに燦然と輝く、新たな代表作になることを紛れもない確信へと変えた。

もしこの作品が、本人が予見していたような“シェリル・クロウにとって最後のアルバム”であるとすれば、今作のリスナーは決してそうなることを願わないであろうが、同時にそれは素晴らしい締め括りの言葉となる。彼女は、ひとつのアルバム・プロジェクトとしては、史上最も豪華なゲストのラインナップを迎えてこの作品を作ることを決意した。

また、その見事なまでのゲスト参加や刺激的なコラボレーションもさることながら、シェリル・クロウという歌手が元来持っているユニークな声の魅力を再認識できることこそがこの作品の素晴らしさなのである。90年代の栄光を彷彿とさせる切れ味たっぷりの歌声を披露しつつ、13曲にクレジットされている彼女のソングライティングは、ここ数十年で最高の輝きを放っている。うち3曲が彼女自身で完成させたソロ作品であり、2曲は長年の友人で、アルバムの共同プロデューサーでもあるジェフ・トロットとの共作である。

 

収録曲のひとつ「Redemption Day」(2003年にジョニー・キャッシュとのデュエットがレコーディングされる以前に、1996年のセルフ・タイトルのデビュー作に収録されていた)は将来的にクラシック・ミュージック・アワード(CMA)を競う楽曲になるであろう。賞レースの絶対的王者であるクリス・ステイプルトンと共作で、サビ部分で二人のヴォーカルが重なり合う「Tell Me When It’s Over」も同じくCMAの舞台においてライバルになり得る楽曲だ。それこそが、1993年のアルバム『Tuesday Night Music Club 』以降、彼女の存在を際立たせている骨太且つ柔軟なロック・スタイルの明確な答えなのである。

 

アルバム冒頭では、スティーヴィー・ニックスとマレン・モリスをゲストに迎えたオープニング曲「Prove You Wrong」、そしてそれに続くボニー・レイット、メイヴィス・ステイプルズとの「Live Wire」と、まるで世界一級のキャスティング・ディレクターによって巧みに配役されたかのような同胞の女性アーティストたちが今作に花を添えている。4曲目の「Story Of Everything」では、注目のR&Bシンガー、アンドラ・デイとブルース・ロック界屈指のギタリスト、ゲイリー・クラーク・ジュニアという顔ぶれに、サプライズ・ゲストとしてチャックDが加わり、ヒップ・ホップとロックの申し分のないコラボレーションが繰り広げられている。

 

アルバム後半に収められているシェリル・クロウ作曲による美しいバラード曲「Don’t」は、まるでバート・バカラックが書いたかもしれない最高傑作のひとつを思わせる。また、キース・リチャーズは、ザ・ローリング・ストーンズの『Voodoo Lounge』収録曲で、過小評価されてきた二人のデュエットにぴったりな剥き出しの愛を歌ったラヴ・バラード「The Worst」に入念なアレンジを施している。

 

その他、ユニークな参加ゲストとして、クリス・クリストファーソン(1972年に発表した彼のアルバム『Border Lord』のタイトル曲で共演)やエミルー・ハリス、ウィリー・ネルソンらがいる。ジョージ・ハリスンの「Beware Of Darkness」では、エリック・クラプトンに加え、スティング、ブランディ・カーライルと豪華共演を果たしている。

さらに、ジェイムス・テイラーが今作のためにクリス・ステイプルトンと共作したアップテンポな新曲「Flying Blind」では、シェリル・クロウが人生の気まぐれな上り坂と、数多くの下り坂を、長年の経験から培った英知のような響きを持つ鋭敏さと共に歌いあげる。

 

ヴィンス・ギルは、ピアノが主体となり、美しいストリング・アレンジを取り入れたシェリル・クロウ作曲による「For The Sake Of Love」の感動的な締め括りに一役買っている。あまりのゲストの多彩さに、ジェイソン・イズベル、ルシウス、ルーカス・ネルソン、そしてジョー・ウォルシュらの参加ついては言及できていなかったが、アナログ盤収録の「Cross Creek Road」では、ルーカス・ウィルソンに代わってマーゴ・プライスがゲスト参加を果たしている。

米メディア“Variety”は、シェリル・クロウの新作には「彼女が手掛けた過去最高傑作」が収録されていると称えれば、インデペンデント紙は「彼女のキャリアを網羅する全てのサウンドの集大成」と絶賛する。これらの“スレッズ(Threads)”は文字通り彼女の音楽的本質を成すものなのであろう。

Written By Paul Sexton


シェリル・クロウ『Threads』
2019年8月30日発売

   




 

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